この度、平成17年度に開始しました研究開発課題「二次元培養細胞マニピュレーション装置の開発」(開発代表者:金森 敏幸 独立行政法人 産業技術総合研究所 研究チーム長、起業家:柳沢真澄)が以下の3つの技術を開発し、その成果をもとにメンバー等が出資して、「Cytonics株式会社」(代表取締役・柳沢 真澄、本社:長野県松本市、資本金:300万円)を平成19年12月17日に設立しました。
Cytonics 株式会社は、汎用のPC制御型微小パターン光照射装置および光応答性細胞培養ディッシュの販売により事業化後3年で5,000 万円の売り上げを見込んでいます。さらに、医薬品メーカー等とのアライアンスに基づき、創薬支援など目的を特化した装置・ディッシュを開発することにより、飛躍的な発展を目指します。
今回のCytonics 株式会社設立により、プレベンチャー事業および大学発ベンチャー創出推進によって設立したベンチャー企業数は、64社となりました。
<開発の背景>
バイオインフォマティクス注1の進展に伴い、個々の細胞に発現している機能を精密かつ網羅的に調べるセロミクス(Cellomics)が注目されています。
そこで開発代表者らは、生きた細胞を培養基板注2上に個別に配列する、あるいは培養基板上から個別に除去する技術の必要性を認識し、光照射によって培養基板の細胞接着性を制御する技術について研究、開発してきました。
光は主にIT 産業で様々な技術に応用され、その結果、サブミクロン領域に光を照射したり、あるいは光を信号としてデジタル化するデバイスを安価に入手することができます。また、大きさが数十ミクロンの細胞を個別に、あるいは集団として取り扱う際には、光は極めて便利な制御手段となります。
さらに、細胞をマイクロ空間で配列・培養し、その機能を分析・評価する細胞チップへの応用も期待されます。
<開発内容と成果>
開発代表者らは、以下の3つを開発しました。
PIECA を用いることにより、播種注3・培養後の細胞に任意のパターンを形成させることがきるほか、観察中の細胞を選別することもできます。
これを用いることにより、複数種類の細胞を任意のパターンに基づいて精密パターン共培養注4 することができます。(図3・4)
<今後の展開>
これらの技術、装置を組み合わせて用いることにより、例えば、異種細胞間相互作用の解明、形状に基づく細胞の一括選抜、あるいは精密共培養に基づくマイクロ組織の構築などが可能となり、バイオサイエンスやバイオエンジニアリングの分野における全く新しい細胞操作ツールとなることが期待されるほか、創薬分野への応用が期待されます。
(図1)光誘起細胞接着性促進技術(PIECA) |
(図2)光追記型細胞培養基板 |
(図3)光追記型細胞培養基板を用いた精密パターン共培養の一例 |
(図4)精密パターン共培養の効果 |
(図5)PC制御型微小パターン光照射装置 |
用語解説 |
■企業概要・事業形態 |
<本件お問い合わせ先>
Cytonics(サイトニクス) 株式会社
〒399-0033 長野県松本市笹賀5652-83
柳沢 真澄(ヤナギサワ マスミ)
Tel: 0263-26-1212 Fax: 0263-26-1299
E-mail:
独立行政法人 科学技術振興機構 産学連携事業部 技術展開部新規事業創出課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
松本 葵(マツモト アオイ)、浅野 保(アサノ タモツ)
Tel:03-5214-0016 Fax:03-5214-0017