研究領域「生命時空間情報」の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
細胞や生物個体の中で起こる生命現象は、現在の我々の理解を超えて巧妙な時空間的な制御を受けています。制御の動的様相に関する情報をもたらしてくれるものとして、細胞、組織、個体を"生きたまま"可視化するライブイメージング技術が注目されています。可視光を利用するライブイメージング技術は、蛍光ラベル技術の革新を端緒に、過去10年ほどの間に色素・機能プローブと顕微鏡技術の両面から著しく発展してきました。観察対象は、細胞から組織、個体へと広がりを見せようとしています。しかし、個体といっても線虫、ハエ、魚、トリ、マウスなど、扱う生物種は多岐に亘ります。また、同一の生物種でも、発生の時期や部位により状況が大きく異なります。このため、生物個体に向かうライブイメージングは様々な問題に遭遇します。それぞれのライブイメージングに適した色素や光学系の特別な工夫が要求されます。 本研究領域では、多細胞生物における生命現象の時空間的制御の動的な理解を目指して、生物個体を扱うライブイメージングの技術革新と実践応用を学際的に実施します。 具体的には、細胞の増殖、分化、移動、死などをめぐる細胞内外の現象を可視化するために、独自のタンパク質性色素を材料に、それらの特性を最大限に活用した機能プローブを創出します。そうした機能プローブの性能を最大限に引き出すことを可能にするとともに、様々な生物個体の観察を可能にするための先端的光学機器システムを開発します。例えばサンプルに対して、様々な光源、対物レンズ、検出器を自在に配置できる柔軟性に富んだ顕微鏡システムを作製します。これにより、対象とする生物種やその状態に応じて、適切な向きから、落射型(反射型)もしくは透過型の明視野、蛍光・発光、暗視野観察が可能となります。こうした技術革新の各要素によって、ライブイメージングの新たな潮流が生まれることが期待されます。さらに開発技術の実践応用を通じ、細胞の増殖、分化、移動、死などの現象について、生物種や状況の違いにかかわらず比較可能な定量性の高いデータを集積し、モデル構築を試みます。生命現象の時空間的制御に関して、生物種を超えた共通的な理解を深めることを目指します。 本研究領域は、色素・機能プローブと光学機器の研究開発を並行して進めるとともに、先端的技術の革新と問題意識に導かれる実践応用を双方向に展開させるものです。その成果を世界に発信していくことによって、ライブイメージング技術の適用範囲の拡大と普及に貢献すると見込まれ、戦略目標「新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出」に資するものと期待されます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究総括 宮脇敦史氏の略歴等 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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