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<用語解説>

注1 らせん磁性体
 原子が作る1つの層(原子面)内で一方向に配列した電子スピンが、原子面が変わるごとに少しずつ向きを変えて、らせん状に回転しているような、らせんスピン配列をもつ物質のことです。希土類金属 Tb、あるいは MnSi 合金などが有名です。酸化物、硫化物、有機物でも見いだされています。らせん回転の周期は数ナノメートルから数百ナノメートルにも及ぶものまで様々です。

注2 ローレンツ電子顕微鏡
 電子線は磁場中や磁性を有する物質を透過する際に横方向の力(ローレンツ力)を受けその軌道が曲がります。この性質を利用すると、電子顕微鏡の結像面を本来の焦点からずらすことで、物質内の磁場の極性・強度に対応したパターンの画像が観察できます。ローレンツ電子顕微鏡は物質の磁化状態の観察に特化した透過型電子顕微鏡です。本研究では物質 ・材料研究機構のローレンツ電子顕微鏡を用いました。

注3 欠陥構造
 規則性が存在するところには、その乱れや破れが存在します。これは、原子が規則的に配列した結晶や分子が規則的に配列した液晶にもあります。各々の系で種々のタイプの欠陥が存在しますが、物性あるいは構造変形などのダイナミクスと密接に関係しています。

注4 らせん磁気ドメイン境界
 スピンのらせん配列が規則的にならぶ領域がらせん磁気ドメインです。らせん磁気ドメインとらせん磁気ドメインとの間をらせん磁気ドメイン境界と呼びます。らせん磁気ドメイン境界ではスピンのらせん配列が乱れています。結晶の場合の結晶粒界、強磁性体の場合の強磁性ドメイン境界に対応しています。

注5 転位欠陥
 欠陥の一種。結晶の場合、転位は線状に原子の並び方がずれた欠陥です。結晶の変形には転位の運動と増加が関わっています。