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用語解説

*1 ペプチド
アミノ酸が鎖状につながった分子で、アミノ酸の種類とつながった順番の組み合わせにより様々な機能を発揮します。無機材料に結合する人工ペプチドでは、7?12個のアミノ酸がつながったものが一般的です。
*2 人工進化系
人工的に天然には存在しない機能性人工ペプチドや人工核酸などを取得する手法です。1990年代初期に確立されました。ペプチドは20種のアミノ酸が特定の順番で連結したもので、その連結の順番が特定の活性を生み出します。例えば、「チタンに結合する活性」をもったペプチドが欲しい時、どのようなアミノ酸がどのような順番で連結したらよいのか、それがチタンに結合する活性をもつかどうかは、頭で考えてもわかりません。そこで、あらかじめ、いろいろな順番でアミノ酸の並んだ、つまり、ランダムなアミノ酸配列をもったペプチドの多様性集団を用意し、その中からチタンに結合するペプチドを捜す、といった操作を進めます。その結果、チタンに結合する活性をもつのに必要なアミノ酸の並び方がわかります。この手法は、従来、酵素・受容体などの生体高分子に結合する人工ペプチドの取得方法として使われてきましたが、近年、半導体やナノカーボン化合物などの無機物に結合するペプチドの取得に対しても盛んに使われるようになってきています。 なお、ここでの「人工」は「天然には存在しない配列」を意味します。ペプチドを構成するアミノ酸は、あくまで天然アミノ酸が用いられています。
*3 TBP-1/minTBP-1
チタン結合ペプチド1(Titanium Binding Peptide 1)の略で、人工進化系によって、実験室で創られたチタンに結合する能力をもつ12個のアミノ酸が繋がったペプチドのことです。チタン以外にもシリコンや銀の表面にも結合しますが、金、プラチナ、クロム、錫、亜鉛、鉄、銅には結合しません。TBP-1の変異体の機能解析から、TBP-1の初めの6個のアミノ酸からなるペプチドが、チタン、シリコン、銀への結合に重要な役割を果たしていることが分かっており、このコアになる6個のアミノ酸からなる短いペプチドをminTBP-1 (mini Titanium Binding Peptide 1)と言います。minTBP-1は、アルギニン、リジン、ロイシン、プロリン、アスパラギン酸、アラニンの6つのアミノ酸がこの順番につながったものです(図3)。これらのアミノ酸のうちアルギニンとアスパラギン酸は、チタン、シリコン、銀表面との結合に、プロリンはminTBP-1の構造に重要な役割を果たしていることが示唆されています。
*4 フェリチン
籠(かご)状のタンパク質のことで、もともと体の中の鉄の濃度を調節する働きをしていますが、試験管内で鉄の代わりに様々な半導体材料などのナノ粒子を内包することができることから、ナノバイオテクノロジーの分野で注目を集めています。
*5 ナノ粒子
粒子をナノメートルサイズ(ナノメートルは10のマイナス9乗メートル)まで小さくすると、本来考えられていた特性とは全く別の新しい特性が現れます。特に、量子サイズ効果は次世代デバイスには欠かせないものと考えられています。