戦略的創造研究推進事業(公募型研究)における平成17年度
新規採択研究代表者・研究者及び研究課題の決定について


○チーム型研究(CREST)

戦略目標「教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明」
研究領域:「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」

氏名 機関名 所属部署名 役職名 研究課題名
北澤 茂 順天堂大学 医学部 教授 応用行動分析による発達促進のメカニズムの解明
小林 和人 福島県立医科大学 医学部附属 生体情報伝達研究所 教授 ドーパミンによる行動の発達と発現の制御機構
藤田 一郎 大阪大学 大学院 生命機能研究科 教授 大脳皮質視覚連合野の機能構築とその生後発達
和田 圭司 国立精神・神経センター 神経研究所 部長 脳発達を支える母子間バイオコミュニケーション

五十音順に掲載

総評:研究総括 津本忠治(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター ユニットリーダー)

 近年の脳研究によって、初期の遺伝情報によって形成された神経回路網は環境からの入力や脳自身の活動によって精緻化や改変を受けること及びこの活動依存的変化には学習と共通のメカニズムがあることが明らかになってきました。このような知見は従来、主に実験動物で得られてきましたが、最近、ヒト脳機能の非侵襲的計測技術の発展によって、ヒトにおいても脳機能発達や学習のメカニズムを解明する道が開けてきました。その結果、脳を育み、学習を促進するという視点から、健康で活力にあふれた脳を発達、成長させ、さらに維持するメカニズムの解明をめざす研究、及びそのような研究成果の社会への還元が期待されるようになりました。
 本研究領域はこのような脳研究の進展状況及び社会的要請に合わせて平成15年度に設定され、研究提案の公募が開始されました。平成15年度は78件、16年度も73件に達する多数の提案があり、その中から平成15年度は6件、平成16年度は5件を厳選のうえ採択しました。これらの研究は、期待通り、我が国の脳科学、科学技術のみならず一般社会にとっても有意義であると思われる研究成果をあげつつあります。
 本年度は、公募の最終年度にもかかわらず、我が国において脳研究者が激増しているという状況を反映し、59件もの研究提案を受けました。昨年度と同様、本年度も実験動物を用いた分子生物学的研究提案が目立ちました。この59件について、9名の領域アドバイザーが書類による一次審査を行いましたが、レベルの高い提案が多く絞り込みに困難を感じ、時間的に面接可能な限界に近い13件を各領域アドバイザーの採点をもとに選びました。次に、この13件について研究代表者による口頭説明とそれに対する質疑応答で疑問点を明らかにするという面接審査を行いました。その後、各領域アドバイザーの採点をもとに合議し、充分に議論を尽くして4件の採択を決定しました。
 以上の審査は科学的観点から独創性、妥当性、必要性の高い提案であるかどうかを重視し、厳正に行いました。特に、利害関係或いは利益相反の可能性がある者は採点に加わらないように留意しました。本年も非常に優れた提案が多く、4件のみの採択は極めて困難な作業で、予算、件数の制約上、採択できなかった提案にも国際的にトップレベルの非常に優れたものがあり、そのような提案を採択できないことを大変残念に感じました。