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別紙

平成28年熊本地震関連「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)」採択課題一覧

研究・調査課題 日本側
研究代表者
所属・役職 研究・調査課題概要
相手国側
研究代表者
平成28年熊本地震災害の全体像の把握 藤原 広行 防災科学技術研究所
レジリエント防災・減災研究推進センター センター長
防災科学技術研究所は、地震発生当日から「クライシスレスポンスサイト」を設置し、地震活動、阿蘇山の火山活動、地盤災害の現状と今後の推移予測、道路閉鎖、建物被害調査結果、避難所対応、水道復旧などに関する情報の収集・集約・発信を行ってきた。このサイトでは一般向けサイトと防災関係者向け限定サイトの2つを運営し、各種情報を日々更新するなど、多分野に渡る今回の地震災害の全体像についての「状況認識の統一」を図ることを目的としている。一方米国においては地震工学会(EERI)が従来から定評があるLearning from Earthquakes(LFE)を通して地震災害研究者間のさまざまなデータを相互に利用できるようにするクリアリングハウス機能をはたしている。本研究では両機関のこれまでの成果を持ち寄り、地震災害の全貌の迅速で正確な科学的理解の確立と効果的な災害対応の実現のための必要となる情報総合のあり方を実証的に検討し、国際的な協力の枠組みを構築する。
ジェイ・バーガー 米国地震工学会 エグゼクティブ・ディレクター
繰り返し大地震動を受けた建築物の崩壊メカニズムと残存性能に基づく次世代型被災度判定と耐震設計法の構築 前田 匡樹 東北大学
大学院工学研究科
都市・建築学専攻 教授
本研究は、繰り返し大きな地震動を受けた際の建築構造物の耐震性能の劣化(残存耐震性能)を評価し、崩壊に至るメカニズムを明らかにすることで、被災建築物の将来の地震に対する安全性評価法、さらには、繰り返し地震動の影響を考慮した次世代型の耐震設計法を提案することで、地震災害に強くレジリエントな建築・都市の実現に寄与することを目的とする。日本、ニュージーランド両チームの連携のもとに、被災地域の建築物(主としてRC造学校建築や公共建築)の被害状況および構造特性の現地詳細調査、構造詳細に基づく被災建物の(保有および残存)耐震性能と損傷状況の分析、崩壊メカニズムの検討、残存耐震性能評価に基づく被災度判定法の適用性の検証、繰り返し地震動による性能劣化を考慮した次世代型耐震設計法の提案を行う。
ケネス・エルウッド オークランド大学(ニュージーランド)
土木環境工学部 教授
平成28年熊本地震による流動性地すべりの発生機構と不安定土砂の危険度評価~日米共同研究による実態解明調査~ ヘマンタ・ハザリカ 九州大学
工学研究院 教授
平成28年熊本地震ではM6.5の前震とM7.0の本震が28時間の間に連続して発生し、ともに最大震度7を記録した。これによって発生した地すべりや斜面崩壊は、宅地盛土、道路、堤防などのインフラに甚大な被害をもたらしただけではなく、多くの人命が失われた。これらの被害の実態を把握し、地すべり・斜面崩壊地域の危険度地図を作成するため、日米合同チームによる現地調査と共同研究を実施する。実施調査、資料の収集、現地資料の室内実験、被害データの分析・解析を行い、その結果に基づき日米で地すべり地域の危険度図を完成させ、その信頼性について議論し、今後の防災対策の提言を行う。
ロバート・E・ケイエン カリフォルニア大学(アメリカ合衆国)
ロサンゼルス校 教授
活断層ごく近傍の強震動調査に基づく地震ハザード評価の高度化 郝(はお) 憲生 防災科学技術研究所 主幹研究員 本研究では、現地調査を通して地震被害の状況と地震動の分布の関係を検証する。特に、断層ごく近傍での強震動を評価することに加え、地震発生後の余震活動推移を迅速かつ正確に把握する。日本チームは、断層ごく近傍を対象とした現行の強震動評価手法の課題を検討する。ニュージーランドチームは、地震カタログ(地震の発生リスト)によらない累積地震エネルギーに基づく新たな余震系列モデリング方法を検討する。両チームの検討結果をもとに、断層ごく近傍の強震動評価精度を向上させ、大地震直後の活発な余震活動に対して、これまでよりも迅速かつ正確な活動推移予測手法を提案することにより、強震動予測および余震活動推移予測の両面から地震ハザード評価の高度化に資する。
マット・ガーステンバーガー GNSサイエンス(ニュージーランド)
リスクと社会・ハザード部門 チームリーダー
熊本地震による農山村地域の被災状況に関する現地調査と農業基盤情報を取り入れたGISデータベースの構築 岡澤 宏 東京農業大学
地域環境科学部 教授
本研究は、熊本地震を対象とした農山村地域における農地と水利施設の被害状況を把握し、復興に向けた農業基盤情報をGISデータベースとして提供することを目的とする。熊本県阿蘇山周辺地域、益城町周辺を対象に農地と農業基盤施設の現地踏査を行い、被災状況をGISデータベースに反映させて解析を進める。また、被災地が広域にわたることから、衛星画像や航空写真によるリモートセンシング解析からもアプローチする。さらに、衛星画像では撮影周期や分解能に制限があることから、現地において無人航空機によるモニタリングを行う。取得データに基づいて、被災地の農業復興に必要な農業基盤施設の被害状況、災害リスクに応じた農地の土地利用分類図を作成し、迅速な農業復興を行うために必要な基盤情報データベースの作成モデルを提案する。
ビム・プラサド・シュレスタ カトマンズ大学(ネパール)
工学部 教授
熊本地震による阿蘇火山性堆積土の大変形挙動に起因する被害メカニズムの解明 清田 隆 東京大学
生産技術研究所 准教授
熊本地震での主な地盤被害は阿蘇地域の斜面流動、地盤沈下など大変形を伴ったもので、いずれも地形と地盤(火山性堆積土)の特殊性に起因するものと考えられる。本研究では、地震で生じた地盤災害のうち、特に構造物・インフラ被害や人的被害を引き起こした事象を対象とし、復旧・復興計画に考慮される被害発生メカニズムの解明を目的とする。これらの被害がその地域・地点で選択的に生じた原因を、表面波探査とサウンディングの結果、および地形情報とを組み合わせて明らかにする。また、特殊な地盤構造に起因する災害メカニズム解明には、基本的な強度特性に加え、それらの保水性、粒子破砕性、締固め特性の調査も必要である。これらが地盤の大変形挙動に及ぼす影響は、申請者らが開発してきた先進的な室内実験機を導入して解明に取り組む。
ガブリエル・キアロ カンタベリー大学(ニュージーランド)
土木・天然資源工学部 講師
熊本地震による地下水汚染の実態把握に関する緊急環境調査 中田 晴彦 熊本大学
大学院先端科学研究部 准教授
熊本市は、飲用水の全てを地下水に依存している。今回の熊本地震では、熊本市とその周辺に埋設された下水管が破壊され、下水や生活排水が地下水に混入した可能性が高い。地震後にどの地域の下水管が破壊され、どの程度地下水が汚染されたのかを把握することは、地下水の保全管理や今後の下水インフラの復旧のための喫緊の課題である。本研究は、熊本地域の地下水や河川水などを採集して下水マーカーとなる化学物質や栄養塩・重金属類を分析し、下水管の破損規模や急な対策を要する地点を早期かつピンポイントで把握することを目的とする。得られた情報は、下水管管理者の熊本市上下水道局等に還元・共有し、下水管の復旧や地下水汚染対策に資する提言を行う。
クルンタチャラム・カンナン ニューヨーク州立大学(アメリカ合衆国)
環境保健科学部 教授
現地調査とリモートセンシングを融合した熊本地震による構造物の被害把握と被害予測モデル構築 山崎 文雄 千葉大学
大学院工学研究科 教授
一連の熊本地震は、益城町、熊本市、南阿蘇村などを中心とする広い地域において、建物やインフラ施設に大きな損害を与えた。地震発生直後に広範囲にわたる被害状況を迅速に把握することは、災害対応において極めて重要な課題である。本研究では特に新型レーダー衛星ALOS-2(だいち2号)に着目し、緊急撮影で得られたSAR画像から、建物や道路・橋梁などの損壊状況がどの程度把握可能か検討する。この結果を現地調査結果や航空機・ドローン空撮、車載カメラによる光学画像などと比較し、検出精度について検証する。また、現在、国や自治体の地震被害想定に使用されている建物や交通・ライフラインの被害予測モデルは、兵庫県南部地震の被害からの経験則が中心であるが、熊本地震による詳細な被害データを収集分析することにより、これらの高度化を目指す。
ペンヌン・ワルニチャイ アジア工科大学院(タイ)
工学研究科 教授

今回採択分(4件)