JST(理事長 濵口 道成)は、国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム:SICORP)注1)「日本-シンガポール共同研究」において、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)注2)と共同で「細胞の動的計測・操作を可能にするバイオデバイスの技術基盤の開発」分野に関する共同研究課題の募集および審査を行い、平成27年度新規課題として以下の3件を決定しました(別紙1)。
(1)「細胞信号伝達機構を模倣した人工細胞系バイオセンサーの開発」
日本側研究代表者:上田 宏 教授(東京工業大学 資源化学研究所)シンガポール側研究代表者:ショーン・フーン 上級研究員(科学技術研究庁 生物医科学研究所)
本研究は、単層リポソームからなる人工細胞(プロトセル)に、抗原結合能と酵素活性をもつ人工受容体を構築し再構成させ整列させることにより、超高感度デジタルバイオセンサーを実現することを目指す。
(2)「細胞の自己組織化のメカニクスを可視化する新しい光学プラットフォームの開発」
日本側研究代表者:大浪 修一 チームリーダー(理化学研究所 生命システム研究センター)シンガポール側研究代表者:茂木 文夫 主任研究員(テマセク生命科学研究所)
本研究は、細胞の自己組織化の原理の解明のために、世界最速の超解像顕微鏡と牽引力顕微鏡およびレーザー微細手術技術を融合し、細胞内のナノスケールの分子動態と細胞に働く力を同時計測する新しい光学システムを開発することを目指す。
(3)「神経細胞を近赤外光操作するバイオ・ナノデバイスシステムの開発」
日本側研究代表者:八尾 寛 教授(東北大学 大学院生命科学研究科)シンガポール側研究代表者:アンジェロ・アル 助教(シンガポール国立大学)
本研究は、ランタニドナノ粒子の近赤外光エネルギーを可視光に変換する性質(アップコンバージョン)と、チャネルロドプシンなどの可視光に応答する光感受性タンパク質を利用し、近赤外光による神経活動操作の実現を目指す。
今回、共同研究課題の募集を平成27年3月30日(月)から6月29日(月)の期間に実施し、25件の応募がありました。応募課題について、日本およびシンガポールの専門家が評価を行いました(別紙2)。その結果をもとにJSTとA*STARが慎重に審査・協議を行い、研究アプローチや独創性、チームの相乗効果や研究成果が与える影響などさまざまな観点から、両国がともに支援すべきと合意した3件を支援課題として決定しました。
支援期間は3年間を予定しています。