戦略的創造研究推進事業(公募型研究)における平成16年度
新規採択研究代表者・個人研究者及び研究課題の決定について


○個人型研究(さきがけタイプ)
戦略目標:「情報通信技術に革新をもたらす量子情報処理の実現に向けた技術基盤の構築」
       「新しい原理による高速大容量情報処理技術の構築」
研究領域:「量子と情報」
 
氏名 機関名 所属部署名 役職名 研究課題名
池上 弘樹 (独)理化学研究所 中央研究所 研究員 量子ビット構築へ向けてのヘリウム液面電子量子ドットの研究
趙 福來 早稲田大学 各務記念材料技術研究所 客員講師 超伝導クパー対を使用した電子EPR対高密度ビームの開発
長谷川 祐司 Austrian Universities Atominstitut Research assistant 光学実験を手段とした量子情報処理のための量子力学的物理現象の研究
浜田 充 (独)科学技術振興機構 ERATO今井プロジェクト 研究員 代数的量子情報処理技術の研究
森越 文明 日本電信電話株式会社 物性科学基礎研究所 社員 量子非局所性を用いた情報処理における不可逆性
五十音順に掲載

研究総括 : 細谷 曉夫 (東京工業大学大学院理工学研究科 教授)

 本研究領域は、量子力学的現象を利用した情報処理を実現するために、量子力学と情報処理の間に横たわる諸問題を解決することを目標にしています。
 重ね合わせを利用して多数の計算を同時に行い、全体として超高速の計算を実現する量子計算や量子もつれを利用した量子暗号などの量子情報技術は、情報通信分野に大きな革新をもたらすことが期待されています。しかし、量子情報技術の実現はまだ基礎的な段階にあり、その実現に向けて、デバイスの多量子ビット化、及び長寿命化とともに、演算を行うための新しいアルゴリズムの開発等が必要であり、これらを組み合わせて基本的な論理演算を行うための素子を実現することが課題となっています。
 量子情報処理の本質部分は量子もつれにあるため、その本質的な理解と情報処理能力に結びつけた応用は中心的テーマではありますが、安全かつ高速の情報処理を実現させるための基盤を拡充するための抜本的、革新的な研究や、将来的に量子もつれにつながる研究等も広く対象としています。
 本研究領域の募集に対し、ナノサイエンスや化学分野などからも応募があり、昨年度と比べてより広い研究分野から計35件の応募がありました。これらの研究提案を領域アドバイザーの協力を得て書類選考を行い、特に内容が優れた研究提案を面接対象として選考しました。面接選考は、研究のねらい、研究計画などの観点の他、特に、研究実施体制が個人規模であること、研究構想が提案者のオリジナルのアイデアに基づくものであること、当該研究分野において新規性に富んでいることを重視して実施し、選考の結果、5件を本年度の採択課題としました。量子情報技術に革新性をもたらすことが期待できる理論研究と、新しい発想に基づく意欲的で挑戦的な実験研究とを採択することができ、将来の量子情報技術の実現に向けての貢献が十分に期待されます。
 今年度は昨年度と比べて競争倍率が高く、優れた提案であっても残念ながら採択に至らなかったものもありました。より深く研究構想を練り上げて頂き、ぜひ来年度も挑戦してほしいと思います。
 「量子と情報」は、昨年度、チーム型研究「量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出」領域と同時に発足し、本領域は個人が主体の研究領域となっております。この領域の趣旨を踏まえ、研究者自身のオリジナルな発想に基づき、個人が主体性を持って研究を推進し、具体的かつ将来の量子情報処理技術に資する提案の応募を期待します。
 来年度はさらに、情報科学分野を始めとする異分野の研究者にも本領域に参入を促し、また最先端の研究者を目指す若い方々にも斬新なアイデアで挑戦して頂いて、本研究領域を量子と情報を核にした広がりのある領域に発展させたいと考えています。

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