研究交流課題 | 日本側 研究代表者 |
所属・役職 | 研究交流課題概要 | |
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フィリピン側 研究代表者 |
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1 | 台風30号のフィリピン・ビサヤス地方における住民生活基盤と生態系への影響調査 | 石川 智士 | 総合地球環境学研究所 研究部 准教授 |
本研究では、台風30号の被害を受けたフィリピン・ビサヤス地域で、生態系と生業への影響の両面を調査し、台風被害に対する脆弱性を引き起こす要因を特定する。 生態系への影響調査は、合同現地調査を実施し、マングローブ林や陸域の被害状況を調べるとともに、物質動態分析用標本を入手する。分析などは日本側が担当する。生業への影響調査については、日本側で調査項目と質問表の作成を行い、フィリピン側が聞き取り調査とデータの取りまとめを行う。全てのデータは、GISにて統合し、被災前のデータと比較することで、影響が甚大であった地点を特定し、その要因を推察する。 両国の研究チームにおける災害復旧研究の手法を統合することで、共同研究のさらなる発展が期待される。 |
リカルド・ババラン | フィリピン大学 ビサヤス校 水産海洋科学部 副学長 |
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2 | 台風Yolandaによる高潮災害の根源的検証と災害リスク軽減のための工学・社会科学融合研究 | 高木 泰士 | 東京工業大学 大学院理工学研究科 准教授 |
本研究では、フィリピンと日本における将来の高潮災害リスク軽減に資する研究を行う。具体的には、日本側研究者とフィリピン側研究者が協働して、①台風Yolandaによる巨大高潮災害の検証、②高潮災害に対する社会的脆弱性・防災力の検証、③高精度高潮数値モデルの適用性の検証の3つの研究テーマについて取り組む。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、双方の知識や研究手法の共有化や連携関係の深化、高潮防災分野の高度人材育成につながることが期待される。 |
マリオ・デ・レオン | デラサール大学 土木工学科 准教授 |
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3 | フィリピン・レイテ島および他地域における、 災害に対する学校の準備、対応、復興能力強化に関する研究 | 小林 潤 | 琉球大学 医学部 教授 |
本研究は台風などの災害に対しての準備、急性・慢性期の対応、復興を促進する学校保健のガイドライン作成を目的とする。 具体的には日本側は国際的学校保健の動向分析をもとに現地調査分析、分析結果からの指針作成を支援する。フィリピン側はフィリピンでの政策分析と現地調査実施・フィリピンでのガイドライン作成を行う。また共同で現地調査・分析を行い東南アジア地域への還元を図る。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、効率的に現地調査が実施できることのみならず現地被災地への直接的裨益やフィリピン全体の災害対応能力の向上、さらには得られた知見が他の東南アジア開発途上国にも還元されることが期待される。 |
エルネスト・グレゴリオ・ジュニア | フィリピン大学 公衆衛生校 ヘルスプロモーション・健康教育学講座 主任教授 |
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4 | 巨大台風と大規模高潮による災害廃棄物の合理的な応急処理と環境と調和した持続可能な管理方法のための緊急調査 | 竹村 次朗 | 東京工業大学 理工学研究科 土木工学専攻 准教授 |
本研究は、大規模災害後の復旧の障害、さらには長期的な環境劣化原因となるがれき・廃棄物の特性と量、それらに起因する問題を調査、整理し、その合理的な対策方法の提案を目指す。 具体的には、フィリピン側は、初期調査、関係機関やコミュニティーへの聞き取りを主体的に行い、重要な場所での環境モニタリングなどの定期的調査を実施する。日本側は、フィリピン研究者とともに現地調査を実施し、廃棄物の発生源、種類、性質などを調べ、それらが土壌や水環境に与える影響などについて検討する。 自然環境、社会環境が異なる両国の研究チームが相互補完的に本研究課題に取り組むことで、災害廃棄物が災害復旧、復興に及ぼす種々の課題が明らかになり、災害時対応も想定した持続可能な廃棄物マネジメントに貢献することが期待される。 |
マリア・アントニア・タンチューリン | フィリピン大学 ディリマン校 工学部土木工学科 准教授 |
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5 | 台風30号 (Yolanda)によるフィリピン中部沿岸域の有害化学物質汚染に関する緊急環境調査 | 中田 晴彦 | 熊本大学 大学院 自然科学研究科 准教授 |
本研究は、2013年11月に甚大な台風被害が発生したフィリピン中部のレイテ島とパナイ島沿岸域において、有害化学物質における汚染実態の把握などを目的とする。 具体的には、日本側はフィリピンの被災地で環境試料を採集して日本に持ち帰り、難分解性有機汚染物質と重金属類の分析を行う。フィリピン側は、被災地情報の収集と現地調査時のサポートを担当し、水試料の前処理実験も行う。 両国のチームが相互補完的に取り組むことで被災地の化学汚染の現状が把握され、フィリピン政府や地元自治体が留意すべき課題や汚染対策の方向性が明確になることが期待される。 |
マリカール・プルデント | デラサール大学 科学教育学部 教授 |
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6 | 台風30号(Yolanda)による強風・豪雨・高潮の複合災害の広域被害把握とマッピング | 越村 俊一 | 東北大学 災害科学国際研究所 教授 |
本研究では、台風Yolandaによって被害を受けた地域について、複数の衛星センサーから得られたリモートセンシングデータを解析し、被災地外から被害の状況を把握する技術(広域被害把握技術)を開発する。そして、将来の巨大台風・高潮災害の迅速な被害把握に向けて、広域被害把握技術の有用性を実証することを目的とする。 日本側は、複数の衛星画像解析による広域被害把握手法を開発し、フィリピン側は現地調査結果に基づき、把握結果の検証・実証を行う。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、リモートセンシングによる巨大台風・高潮災害の広域被害把握技術の確立につながることが期待される。さらに、これを国際標準の技術として実用レベルまで高めていくことを目指す。 |
ルエル・ベレン | 国土地理・資源情報庁 地理・測地局 局長 |
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7 | フィリピンの災害対応を目的とする地理空間情報シェアリングシステムのプロトタイプの開発 | 小口 高 | 東京大学 空間情報科学研究センター 教授 |
本研究は日本とフィリピンの研究者が連携し、フィリピンの地理空間情報をとりまとめたデータベースを整備し、それを地理情報システムと結びつけて災害対応に活用するためのデータシェアリング・システムのプロトタイプを構築することを目的とする。 具体的には日本側は地理情報システムとオープンソース・ソフトウエアの活用を行い、フィリピン側は情報工学に基づくネットワークやハードウエアの活用を行う。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、災害への備えや災害発生時の対応に有効なシステムの構築につながることが期待される。 |
ルネ・メンドーサ | フィリピン高度科学技術研究所 ディヴィジョン・チーフ |
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8 | 台風Yolandaの強風被害原因の究明に基づく効果的な被害低減策の策定と復旧への反映 | 西嶋 一欽 | 京都大学 防災研究所 准教授 |
本研究は、台風Yolandaによって甚大な被害を受けた一般住宅・学校建築が損傷に至った物理的な過程を明らかにすることで、将来の台風による被害を効果的に低減するための、改良耐風設計手法の提案を目指す。 具体的には、日本・フィリピンの研究者が共同で現地建物調査を行ったうえで、日本側は耐風性能評価に関わる風洞実験、材料強度試験、飛散物衝撃試験および解析を担当し、フィリピン側は耐風設計手法への反映・実装方法の検討を担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、現地の文化・気候による建築的特徴および社会的な制約を考慮した、強風被害低減のための改良耐風設計法の確立が期待できる。 |
マリー・アン・エスピーナ | フィリピン大学 建築学部 学部長 |
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9 | 台風30号はフィリピンでの観測史上最強の台風だったか? | 久保田 尚之 | 海洋研究開発機構 大気海洋相互作用研究分野 研究員 |
本研究はフィリピンを襲った台風30号の強度と同規模の台風の来襲頻度を把握することで、台風30号がフィリピンで観測史上最強の台風だったのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、日本側は過去130年間にフィリピンに上陸し高潮被害をもたらした類似コースの台風を明らかにする。フィリピン側は、台風30号が通過した際に観測した気象データを収集し、強度の把握を行う。両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、台風30号の強度と同規模の台風の来襲頻度が明らかになり、今後の台風対策に貢献し、台風災害の軽減につながることが期待される。 |
エスペランザ・カヤナン | フィリピン気象庁 マニラ首都圏地域サービス事業部 事業部長 |
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10 | フィリピン台風30号の心理社会的側面への影響に関する実態調査 | 富田 博秋 | 東北大学 災害科学国際研究所 教授 |
本研究はフィリピン台風30号被災者の心理社会的影響の把握し、災害時の心理社会支援をより有効にするための情報を集積し、支援体制の強化・発展につなげることを目的とする。 具体的には、フィリピン側はフィリピン台風30号被災地域の現地調査の中心的な役割を担い、日本側はフィリピン側と密に連携し、調査支援、東日本大震災からの情報との統合、調査結果を今後の災害対応に反映するための調整、検討を行う。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、フィリピン台風30号被災コミュニティーの心理社会的支援体制の発展・強化とともに、フィリピン台風30号と東日本大震災からの教訓を今後の災害対応に反映させることにつながることが期待される。 |
ジューン・パガディアン・ロペス | フィリピン大学−フィリピン総合病院医療センター・精神科 教授 |
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11 | 被災公的文書等法的基盤保全のための科学技術的修復方法の調査研究と社会文化的評価 | 津田 守 | 名古屋外国語大学 現代国際学部 教授 |
本研究では、フィリピン、とりわけレイテ州都タクロバンの20以上の機関において、高波と暴風雨により水を被った土地台帳、人口統計記録、裁判記録などの重要文書の廃棄を防ぎ、救済・修復する科学技術的技法をフィリピンの関係者とともに構築することを目的とする。さらに、今後の災害に備え、重要公文書被災による再建への支障・損失、被災者への影響を社会学的に現地調査し、盲点のように抜け落ちていた課題をクローズアップさせることを目的とする。 阪神淡路大震災を発端に、巨大地震・津波に襲われたインドネシア・アチェや東日本大震災において被災した公文書の救済・修復を担ってきた日本の先進的な経験とフィリピンのアーキビスト協会が協力することによって、重要文書が保存されるとともに、将来の被災文書の保存技術の向上が期待される。 |
ヨランダ・カンラス・グランダ | フィリピン・アーキビスト協会 理事 |