JST(理事長 中村 道治)は、フィリピン科学技術省(DOST)注1)と協力して、平成25年11月に発生し、フィリピンなどに大きな被害をもたらした台風第30号注2)に関連する11件の研究・調査課題を決定しました(別紙)。これは「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)注3)」の一環として行われるものです。
今回、台風発生の数週間後からDOSTと調整を始め、平成26年2月17日に共同研究や調査課題の募集を開始しました。3月28日の締め切りまでに、日本とフィリピンの大学、研究機関から25件の応募があり、11件の研究・調査課題の支援を決定しました。支援期間は半年~1年で1課題あたり300万円程度を支援します。
JSTは、平成23年に東日本大震災が発生した際に、至急取り組む必要がある研究や調査、特に海外研究者と協働して行われる国際共同研究・調査を支援するためのプログラムとしてJ-RAPIDを立ち上げ、地震・津波防災、建築・土木、原子力・放射線安全などの分野でアメリカやフランスを含む4ヵ国とそれぞれ協力する課題(33件)を支援しました。
その後、平成23年11月にタイで発生した洪水ではタイ国家科学技術開発庁(NSTDA)注4)と協力し、2件の日タイ共同研究・調査を支援しました。
J-RAPIDを発動するのは、世界的に稀有な災害で、社会的・経済的影響が大きく、緊急の取り組みが必要とJSTが判断した場合とし、主として以下のいずれかの緊急性を有する研究・調査を支援対象とします。
- 時間の経過とともに消失する恐れがあり将来取得することが難しくなるなど、データ取得に関する緊急性(例えば、津波被害の痕跡調査、汚染発生直後の初期分布の計測)
- 問題解決の緊急性(例えば、感染症のアウトブレイクのように社会的影響が大きく対策に緊急性を有する場合)
これまでに実施されたJ-RAPID課題はそれぞれ、観測データの提供や災害復旧対策 の提言、研究ネットワークの形成など、本格研究や調査、災害復興、防災対策に貢献しています。
例えば、谷口 栄一 京都大学 教授は東日本大震災の後、アメリカの研究者とともに、震災時における実際の救援物資配送データを収集しました。同時に、救援物資配送に携わった官庁、民間物流事業者、荷主をインタビューし、配送での問題点や成功点を抽出しその原因を分析することによって、将来起こりうる災害時の救援物資配送の改善を目指しました。日米の研究者が協力し対象者の記憶が鮮明なうちにインタビューを実施することによって極めて有効な情報収集と分析を行うことに成功しました(参考1)。
JSTは今後も必要に応じ迅速にJ-RAPIDを発動し、科学技術的に貴重な情報の確保、災害からの速やかな復旧、将来の防災力の向上などに資する研究調査活動を支援します。