JST(理事長 中村 道治)は、イスラエル科学技術宇宙省(MOST)注1)と共同で「ライフサイエンス」分野の中の「高齢化に伴う神経・変性疾患」に関する課題の募集および審査を行い、以下の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注2)の「日本-イスラエル研究交流」注3)の一環として行われるものです。本公募において、JSTとMOSTは、分子レベル、細胞レベル、神経ネットワークの観点から、神経疾患、精神疾患にアプローチする課題を重視し、これらの疾患については、高齢化に伴う疾患に加え、幼少期、青年期、中年期等の年齢層に多く発症する傾向が見られる疾患も公募の対象としました。
支援を決定した課題は次の通りです。
(1)「RNAプロセシング異常を標的とした筋萎縮性側索硬化症(ALS)のバイオマーカーの開発」
(研究代表者:東京大学 大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 臨床医工学部門 郭 伸 客員研究員、バル-イラン大学 生命科学講座 エレツ・レバノン 上級講師)
本研究は、孤発性ALSに見いだされた疾患特異的かつ病因的意義を持つ分子異常(RNA編集低下)を血液・髄液などの末梢体液中RNAより検出することによるバイオマーカー開発を目指すものです。
(2)「統合失調症における神経発達障害の分子基盤解明」
(研究代表者:名古屋大学 大学院医学系研究科 貝淵 弘三 教授、ワイズマン研究所 分子遺伝学講座 オリリー・ライナー 教授)
本研究は、統合失調症発症関連分子に着目し、疾患モデル細胞およびマウスを作製・解析することで統合失調症の分子病態機構の解明を目指すものです。
(3)「老年期うつ病の神経回路異常とその分子病態に関する研究」
(研究代表者:広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 山脇 成人 教授、ハダサ-ヘブライ大学 メディカルセンター病院 生物学的精神医学研究室 バーナード・レラー 教授)
本研究は、老年期うつ病の克服にむけて、その神経回路異常と分子病態を明らかにすることを目指すものです。
今回の「日本-イスラエル研究交流」に関する募集では24件の応募があり、これらの応募課題を日本側およびイスラエル側の外部専門家により評価しました。JSTとMOSTはその結果をもとに協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本とイスラエルがともに支援すべきとして合意した3件を支援課題として決定しました。各国とも来年2月に支援を開始する予定で、研究期間は3年を予定しています。