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研究領域「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」
中間評価

1.総合所見

 本研究領域は情報機器の普及と発展に重要な基礎的技術であり、学術的・社会的・経済的意義も高く成果への期待も高い。数値目標を明確にし、ULP統合システムのデモを企画するなど、研究領域での求心力を維持する管理運営を行っており、進捗状況は課題ごとのバラツキもあるものの、特記すべき優れた成果も多く概ね良好と評価できる。
 消費電力あたりの処理能力を2〜3桁向上する数値目標は大変野心的である。今後の研究推進・評価においては、性能向上の比較対象の明確化と、実システムでの効果の評価と定量的貢献要素分析、およびULP統合システムへの戦略的組み入れが重要である。中間評価時点ではやや曖昧なULP統合システムデモ企画の詳細も漸次明確化されたい。
 採択課題ではデバイス階層での主流技術項目が相対的に少なく、反面、システム階層ではオーソドックスな取り組みが目立つ。各階層で今回採択していない“代替え技術”も日々進歩しており、採択技術の相対的改善だけでなく代替技術との比較も忘れてはならない。また階層ごとに目標達成の難易度も異なり、課題の達成度評価、予算配分等では注意が必要である。
 研究総括、アドバイザリーの方針を研究計画の変更・更新によりよく反映できるトップダウン体制の強化に努められ、最終目標達成に向け選択と集中を期待したい。
 最終目標の達成やULP統合システムデモ企画成功には、初期段階は広い範囲の可能性を試みつつも、徐々に目標への貢献度にしたがって予算やテーマを組み替え絞り込む選択と集中が必要である。アドバイザリーと研究総括の方針に従い、評価が実際の研究計画に反映する体制を強化されたい。研究総括のラボ訪問等でも当該領域の海外の研究者を招き同行し議論するなど、より国際的評価に耐えるものにされたい。
 一方、全ての課題が最終目標達成に貢献することは一般には困難であるが、このような課題についてもその将来性を十分精査し、将来の大切な技術の芽を損なうことのないような研究総括の的確な判断およびマネジメントを期待したい。
 今回の研究総括の真摯な中間報告には評価委員全員、大変感銘を受けた。最終報告書では、個別課題担当者の自己評価だけでなく、研究総括ご自身の考えと評価を全面に出したものにしていただきたい。

2.研究領域のねらいと研究課題の選考

 本領域のねらいは時宜を得ており、デバイス・回路技術、プロセッサアーキテクチャ・VLSI、およびシステムソフトウェア・応用の3階層を基軸とし、‘10年代半ばに消費電力当りの処理能力を各階層で2〜3桁向上する数値目標とULP統合デモシステムを構築する目標は、技術上のブレークスルーを求める明確な意志を強く示したもので高く評価できる。
 選考方針と領域アドバイザーの構成は基軸とする階層をよくカバーしたものとなっているが、上層階層はややビジネス応用側に寄っておりメディアコンテンツやシステムソフトウェア等の技術面にも配慮することが望ましい。
 採択課題の構成では極めて優秀な研究者を結集しており評価できるが、デバイス階層では主流技術がやや少なく、システム階層ではすでに主流のインターネット方式の性能向上だけでなくポストインターネットのビジネス世界をも見据えた、より野心的取り組みも望まれる。また各階層相互の関連性がやや弱くなっており、プロジェクト進行に従い、より柔軟に目的指向でテーマを収斂することも重要であろう。

3.研究領域のマネジメント

 研究領域の運営方針および進捗管理に関しては、報告会の定期開催や数値目標達成度管理がされており、終了時点のULP統合システムによるデモ企画とともに領域全体における目標達成への意識が共有できる優れた運営がなされている。研究進捗状況の把握・評価もほぼ的確と考えられ、デモ企画に向けて先行チームの成果を取り込むために5年の境界を越えた予算措置を含む方策を考慮しており高く評価できる。
 反面、進捗評価基準においては同一技術の改善度評価だけでなく課題採択外の代替え技術との相対比較も求められる。デモ企画の具体的なイメージも中間評価時点ではやや曖昧性が残る。また評価の高い国際研究集会での特別セッション等を通した成果の国際広報活動も求められる。研究費配分ではデバイス、アーキテクチャ階層の研究に予算が多く、システムソフトウェア階層の研究にはやや少ない。また当然のことであるが各階層の最終目標への貢献度にもばらつきが見られ、デモ企画の完成に向け予算面での選択と集中が望まれ、研究総括をはじめとするアドバイザリーの指導力の強化が重要であろう。

4.研究進捗状況

 成果の達成状況に関しては採択課題ごとに多少のバラツキも見られる。先行課題のいくつかは学術的に抜群の成果が得られ数値目標をすでに達成している課題も多く高く評価できる。反面、後発課題のいくつかでは研究途上であることもあり、目標達成に向けまだ成果が見られないものも散見される。ULP統合システムのデモ企画に向けて領域全体の有機的体制作りへの努力を期待したい。そのためにはアドバイザーの影響力強化が求められ、各研究課題の計画により深く介入・手直しできる体制が望まれる。また目標達成度の難易度は階層ごとに異なることを進捗状況判断や達成度判断で配慮する必要があろう。
 社会的・経済的効果を高めるには各階層の成果をシステムにまで結びつける方策も重要である。低消費電力システム実現のためにはシステム階層で成果の統合が重要であるが若干不足していると思われる。産業界における実ビジネスで展開される製品に組み込むための戦略的な研究体制が望まれる。なお数値的業績の中で、学会発表数と論文誌採択数に比べ特許申請の比率が相対的に低い。これは戦略的に行われているのであれば、それも一つの考え方であるが、方針を領域全体で明確にしておくことが求められる。


5.評価

(1) 研究領域としての戦略目標の達成に向けた状況

(1-1) 研究領域としてのねらいに対する研究成果の達成状況
特に優れた成果が得られつつある。

(1-2) 科学技術の進歩に資する研究成果や社会的及び経済的な効果・効用に資する研究成果、及び今後の見通し
十分な成果が得られつつある。

(2) 研究領域としての研究マネジメントの状況
特に優れたマネジメントが行われている。

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