JSTトッププレス一覧共同発表 >用語解説

<用語解説>

(注1)Meta-II(第二減数分裂中期):
 生殖細胞(卵と精子)を生ずる減数分裂の過程のある時期を示す用語です。減数分裂は特殊な細胞分裂の様式であり、2回の連続した分裂からなっています。Meta-IIは、2回目の分裂中期を指し、脊椎動物の未受精卵は、この段階でいったん分裂を停止し、受精を待ちます。

(注2)Erp1:
 Emi2ともよばれ、分裂終期促進因子(APC/C)の活性を阻害することで、M期促進因子であるCdc2/サイクリンB複合体の分解を防ぎ、その結果、細胞分裂を中期で停止させるたんぱく質です。最近、Mos-MAPK経路とは無関係にCSFとして働くと主張されたたんぱく質です。

(注3)Mos-MAPK経路:
 Mos, MAPKを主体とするたんぱく質リン酸化経路で、CSF活性をはじめ、動物の卵減数分裂で重要な役割を果たすことが知られています。

(注4)リン酸化:
 たんぱく質が受ける修飾反応の一つです。リン酸化の特徴はリン酸の付加と脱離が比較的容易に行えることであり、リン酸化はその特徴を生かして、細胞内のシグナル伝達機構において、中心的な役割を果たすと考えられています。

(注5)単為発生:
 受精/精子なしに卵が発生を始める現象で、下等動物では自然界で普通に起こることがありますが、脊椎動物の場合多くは異常発生につながります。

(注6)卵巣奇形腫:
 卵巣内で卵が自然発生的に成熟かつ賦活化し、奇形腫(テラトーマ)となる病気です。Mosのノックアウトマウスでも同様な病気が起こります。

(注7)細胞分裂抑制因子(cytostatic factor, CSF):
 脊椎動物の未受精卵をMeta-IIで停止させている原因物質とされ、1971年に増井禎夫らによってアメリカヒョウガエル卵の中に見い出されました。

(注8)たんぱく質リン酸化酵素(キナーゼ):
 たんぱく質をリン酸化する酵素の総称で、一般的には基質たんぱく質のセリン、トレオニン、チロシン残基などをリン酸化し、そのたんぱく質の生理機能などを調節します。また、Mos-MAPK経路のように、複数のキナーゼが順に働き、シグナルを伝達することがよくあります。なお、脱リン酸化反応を司る酵素として、たんぱく質フォスファターゼが知られています。

(注9)卵成熟:
 卵の減数分裂の過程で、一般に動物の卵母細胞は第一減数分裂の前期で停止していますが、この停止が解除され、減数分裂が進行し、成熟卵(未受精卵)になる過程を卵成熟と言います。カエルではホルモン(プロゲステロン)が卵成熟の引き金になります。

(注10)Cdc2/サイクリンB複合体:
 M期促進因子(MPF)とも呼ばれ、細胞の分裂期(M期)を誘起する重要な因子です。通常、分裂中期→終期のときにサイクリンBが分解されMPFは不活性化されますが、サイクリンBの分解が阻害されると(図3参照)、細胞は高いMPF活性を持ったまま中期で停止します。Erp1はそのサイクリンBの分解を防ぐたんぱく質として同定されたのですが、今回の成果では、Mos-MAPK経路がErp1の活性や安定性を直接的に制御していることが示されました。