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補足説明

※1 イノシトール三リン酸(IP3
細胞外情報物質(ホルモンや神経伝達物質)が細胞膜にある受容体に結合した結果、細胞膜の構成成分の一つである、ホスファチジルイノシトール二リン酸が分解されて生じる。IP3受容体に結合してカルシウム放出を誘導する。

※2 IP3受容体
細胞内のカルシウム貯蔵庫の一つである小胞体膜上に存在するカルシウム放出チャネル。IP3と結合することでチャネルが開き、小胞体内のカルシウムを細胞質に放出する。IP3受容体のカルシウム放出活性は低濃度のカルシウムで活性化され、高濃度で抑制される。

※3 小胞体
 小胞体は細胞内小器官の一つであって、一重の脂質の膜で構成され、網状に細胞内に広がっている。その一部は核膜の外膜とつながっている。細胞の中でタンパク質の合成・修飾・輸送、物質代謝など、様々な機能を果たしている。それらの機能の中の一つに小胞体内腔にカルシウムを蓄積し、必要なときに放出し、細胞内のカルシウム濃度を上昇させることがあげられる。このカルシウム放出の中心として働くタンパク質がIP3受容体である。

※4 正のフィードバック
出力が入力に影響を与える仕組みをフィードバックという。正のフィードバックとは、出力が入力を促進することである。カルシウムシグナルでは、細胞外の刺激から、IP3受容体に入力が入り、出力としてカルシウムが放出されます。放出されたカルシウムはIP3受容体のカルシウム放出活性を促進する。この促進のされ方に2つの仮説が考えられている(本文参照)。

※5 IP3結合部位の立体構造
IP3受容体はIP3との結合により、カルシウムを放出する。そのためIP3受容体のIP3結合部位は、IP3受容体の活性化を促すスイッチとして働く非常に重要な部位である。このスイッチの働きを確かめるため、2002年に御子柴チームリーダーは、トロント大学の伊倉教授との共同研究でIP3結合部位の立体構造を、結晶構造解析した。この成果はIP3受容体の機能を知るためだけでなく、IP3センサータンパク質・IRISを開発するためにも、なくてはならない成果であった。

※6 FRET(蛍光エネルギー移動)
2つ以上の蛍光物質が10 nm以内の距離に存在するときに起こる物理現象。一方の蛍光物質から、もう一方の蛍光物質にエネルギーが移動する。生命研究では、タンパク質の立体構造変化や、2種類のタンパク質の相互作用を調べる目的で使用される。