3端子NanoBridgeは、プログラマブルロジック(注3)の再構成用スイッチとして用いるのに必要な制御性・信頼性を備えていることから、高性能なプログラマブルロジックの実現に向けて大きく進展しました。
このたび開発した3端子NanoBridgeは以下の特長を有しています(図1)。
(1) | 電流経路であるソース・ドレインとは別の第3の端子(ゲート)により、ソース・ドレイン間の金属イオンの析出・溶解を制御して素子のオン・オフ状態を切り替え。 |
(2) | ゲートが他の電極とほぼ絶縁されているために、回路に大電流を流すことなくスイッチングを行うことが可能 (図2)。 |
(3) | 析出させる金属架橋の太さが制御可能となり、エレクトロマイグレーション(注4)耐性や素子の信頼性が向上。 |
近年、電子機器の製品サイクルの短命化や競争の激化を反映して機器開発期間を大幅に短縮できるプログラマブルロジックがその市場を伸ばしています(図3)。これまでプログラマブルロジックの性能向上は微細化によって達成され、電子機器の高機能化・低価格化を可能としてきました。しかし、LSIのさらなる微細化には限界が予想され、今後は微細化に頼らない性能向上が求められます(図4)。
NEC、NIMSおよびJSTでは、プログラマブルロジックの回路再構成用スイッチとして、NanoBridgeの開発を進めています。NanoBridgeは、固体電解質中での金属イオンの析出・溶解反応を利用し、端子間に金属架橋を生成・消滅させてオンとオフ状態を実現します。複雑な回路から成る従来の再構成用スイッチを単純な構造で実現できるため、微細化に頼らず、プログラマブルロジックの性能を桁違いに向上することができます(注5)(図5)。
これまでは、2端子のNanoBridgeを開発してきました。2端子NanoBridgeでは、電流経路である2端子間に電圧を加えることでオン・オフ状態間をスイッチさせているため、スイッチングの際に大きな電流が流れます。NanoBridgeを再構成用スイッチに適用するためには、制御性・信頼性をさらに向上する必要があり、スイッチング時の電流を抑制することが必要でした(図2)。
このたび開発した3端子NanoBridgeは、以下の構造上の工夫により実現されました。
(1) | ドレインの電極面積を小さくして金属が析出できる場所を限定し、最小限の金属イオンでドレイン・ソース間が接続されるようにしたこと。 |
(2) | 析出した金属によってソース・ドレイン間が接続する前に、ゲートと他の電極間が接続するのを防ぐため、ソース・ドレイン間の距離を、ゲートと他の電極間の距離に比べて短くしたこと。 |
本素子の実現により、微細化に頼らず、プログラマブルデバイスの低価格化、機能・性能向上が図られ、モバイル機器やデジタルテレビなど多くの電子機器において開発の効率化・高性能化が可能になります。さらに、回路の再構成により、携帯電話のようにLSIの実装スペースが限られた小型ポータブル機器でも、あらゆる機能が実行できるようになります(図6)。
本開発の一部は、JSTの戦略的創造研究推進事業ICORP型研究の「ナノ量子導体アレープロジェクト(研究総括:青野正和、物質・材料研究機構ナノマテリアル研究所所長)」とNECとNIMSとの共同研究としてなされたものです。
なお、NEC、NIMS、JSTは、本成果を12月5日から7日まで、米国・ワシントンDCで開催される「IEEE 国際電子デバイス会議(International Electron Devices Meeting:IEDM)」で、6日に発表します。
<この発表に関する報道関係からの問い合わせ先>
NEC 広報部 福本
電 話 (03)3798-6511(直通)
E-Mail
独立行政法人 物質・材料研究機構 広報室 渡邊
電 話 (029)859-2026(直通)
E-Mail
独立行政法人 科学技術振興機構 広報室 住本
電 話 (03)5214-8404(直通)
E-Mail
<本件に関するお客様からの問い合わせ先>
NEC 研究企画部 企画戦略グループ
https://www.nec.co.jp/r_and_d/ja/cl/contact.html