(お知らせ)
平成13年2月26日 
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
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「高い超伝導転移温度を持つ超伝導体の発見」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎 雅弘)が戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「反強磁性量子スピン梯子化合物の合成と新奇な物性」(研究代表者:高野幹夫 京都大学教授)で進めている研究の一環として、秋光 純 教授(青山学院大学理工学部)と研究メンバーの永松 純 氏(同学部4年)が中心となり、中川 鑑応 氏(修士課程1年)、村中 隆弘 氏(博士課程3年)銭谷 勇磁 氏(助手)によって、マグネシウムとホウ素からなる超伝導体の超伝導転移温度が39Kを示す物質であることを発見した。いわゆる高温酸化物超伝導体を除いた金属間化合物の超伝導体では、最も高いもので23Kであり、超伝導転移温度の記録を大きく塗り替えた。なお、この研究成果は3月1日付けの英国科学雑誌「ネイチャー」に発表される。

 現在の超伝導体を化合物の種類で分類すると、銅の酸化物(CuO)を含んだ銅酸化物超伝導体と、銅酸化物以外の非銅酸化物超伝導体に分けられる。多くの銅酸化物超伝導体では、電気抵抗が零となる超伝導転移温度(※1)が80K以上であり、現在では最も高いもので130K(−143℃)を示しており「高温酸化物超伝導体」と呼ばれている。一方、非銅酸化物超伝導体には、これまで数多くのものが発見されているが、超伝導転移温度は最高でも23K(−250℃)程度であった。
 銅酸化物超伝導体(高温超伝導体)は、液体窒素を用いて試料を冷却し超伝導体として使用することができるが、合成・加工が難しいことが問題であった。一方、金属間化合物などの非銅酸化物超伝導体は、超伝導転移温度が20K前後であるため、液体窒素より高価な液体ヘリウムを使用しなければならないなど、産業利用に制約がある。

 今回、秋光グループでは、非銅酸化物超伝導体の一種として、マグネシウムとホウ素からなる超伝導体MgB2(ニ硼化マグネシウム)を作成し、超伝導転移温度を測定した。その結果、MgB2は、これまで発見されている非銅酸化物超伝導体の中では最も高い、39Kの転移温度を示した。これまでは、超伝導転移温度が最高でも23Kであり、今回のMgB2は記録を大幅に伸ばしたことになる。超伝導の機構を記述するBCS理論(※2)では、転移温度の限界が30K前後と言われているが、本実験結果は予想を超えており、従来の超伝導理論の変更を迫ることになる。また、産業への利用という点では、マグネシウムとホウ素は原料として安価で入手が容易であり、このMgB2が導線等に製品化されれば従来に比べ、低コストで高性能な超伝導材料になると考えられる。更に、MgB2は2元素で構成されているため、試料作成についても簡略化が期待でき、今回の研究成果は超伝導の産業利用に向けて大きく前進させたことになる。

 現在は研究段階ではあるが、すでに超伝導ワイヤーも作成されており、今後、産業利用への応用を図っていくとともに、MgB2の詳細な物性測定、超伝導機構の解明を進め、より高い超伝導転移温度を有する物質の開発を進めて行く予定である。

※1)超伝導転移温度… 通常の金属では電気抵抗が存在するが、超伝導体では温度を下げて超伝導転移温度以下になると、電気抵抗が零となる。
※2)BCS理論… 1957年にバーデン、クーパー、シェリファによって発表された理論で、超伝導発生のメカニズムを理論的に説明したもの。
本件問い合わせ先:

(研究内容について)
   秋光 純(あきみつ じゅん)
      青山学院大学 理工学部
      〒157-8572  東京都世田谷区千歳台6−16−1
      TEL:03-5384-6111
      FAX:03-5384-6100

(事業について)
   石田 秋生(いしだ あきお)
      科学技術振興事業団 基礎研究推進部
      〒332-0012 川口市本町4−1−8
      TEL:048-226-5635
      FAX:048-226-1164

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