(お知らせ)
平成13年2月26日 
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)-226-5606(総務部広報担当)

高性能新世代電気自動車の試作に成功

 科学技術振興事業団(理事長 川崎 雅弘)の戦略的基礎研究推進事業の研究領域「環境低負荷型の社会システム」(研究統括:茅 陽一 慶応義塾大学 教授)の研究テーマ「都市交通の環境負荷制御システムの開発」(研究代表者:岩田 規久男 学習院大学経済学部教授)で進めている研究の一環として、慶應義塾大学環境情報学部の清水 浩 教授を中心とするグループは、優れた走行性能や広い室内空間を持ち、航続距離の長い高性能新世代電気自動車の試作に成功した。この研究成果は、3月1日からスイス連邦ジュネーブで開催が予定されている第71回国際モーターショウで発表・展示する予定である。
 エネルギー消費量を減らし、地球温暖化や環境汚染の原因と言われているNOやCOなどの汚染物質を低減するためには、ガソリンエンジン自動車やディーゼルエンジン自動車から電気自動車に転換することが有力な方法の一つと考えられている。ガソリンエンジン自動車やディーゼルエンジン自動車は、燃料から動力への変換効率が14%程度と見積もられるのに対し、電気自動車では、発電所での燃料から電力への変換効率や送電ロスなどを考慮しても21%程度と見積もられ、電気自動車が省エネルギーの観点から優れていると言われている。また、地球温暖化物質や環境汚染物質は、ガソリンエンジン自動車やディーゼルエンジン自動車では発生が避けられないが、電気自動車ではそれらが発生しない。さらに、電気自動車は騒音が少なく、騒音公害対策としても有力であり、振動も少なく加速がスムーズであるため、ガソリンエンジン自動車などに比較して乗り心地の面でも優れているなどの特徴を有している。しかしながら、従来の電気自動車は加速力や最高速度などといった走行性能や航続距離など、実用的な性能の面でガソリンエンジン自動車などに比較して劣っており、電気自動車の普及の妨げの一因となっていた。
 今回開発した電気自動車(図1)を、車体のサイズが同程度のガソリンエンジン自動車と比較した結果、加速力や最高速度といった走行性能では優り、航続距離も遜色無いものとなった。また、同様のサイズのガソリン自動車との比較において、より広い室内空間を実現した。
 今回開発した電気自動車の特徴は以下の通りである(図2)。

@ 8輪車であること。
 タイヤの数を増やすことによって、タイヤと路面の接地性が良くなり、自動車の走行安定性を向上させることができるとともに、乗り心地を良くすることができた。また、一個あたりのタイヤのサイズが小さくなり、室内への張り出し部分を小さくすることができ、室内空間を有効に利用することができた。
A 各々のタイヤホイールにモーターを組み込んでいること。
 電気自動車では、動力がモーターであるが、モーターは大きさの選択に自由度が大きいこと、使い易いこと、その配置にも融通がきくことなどが特徴である。本電気自動車では、そのモーターの特徴を活かし、各々のタイヤホイールにモーターを分散して組み込んだ。その結果、エンジンルームや各々の駆動輪へ動力を伝達する車軸などが不要となり、車重が軽くなって加速性能の向上など自動車の走行性能を高めることができたとともに、室内空間を広げることができた。また、各々の駆動輪のトルクを自由に制御することができるため、凹凸のある路面や滑りやすい路面などでの走行安定性を高めることができた。
B バッテリーを床下に組み込んでいること。
 電気自動車の構成部の中で重いバッテリーを床下に組み込んだ。その結果、車の重心を低くすることができて走行安定性が向上するとともに、室内空間を広げることができた。また、このレイアウトでは、より多くのバッテリーを搭載することが可能となるため、航続距離を長くすることができた。

 これらの技術により、本電気自動車は、最高速度約300km/h、0-400m加速14.5秒、一充電航続距離約300kmの性能が実現でき、加速感の良さ、加速時や減速時の車体の前後の傾きの少なさで良好な性能を有している。また、本電気自動車は、悪路での乗り心地の良さ、曲線道路での車体の傾きの少なさ、凹凸のある路面などでの車体の安定性などでも良好な性能を有している。
 本電気自動車の試作において採用した技術は、幅広い車種に適用することができ、特に室内空間を大きく取ることが出来るため、配送用トラック、バスなどにおいてより効果的に特徴を発揮することが期待される。また、この技術は将来を見据えた燃料電池自動車においても応用可能である。さらに、電気自動車は電源さえあればどこでも容易に充電が可能で、ガソリンスタンドのような特別な社会のインフラストラクチャーの整備が必要ないため、今回試作したような高性能新世代電気自動車が多様な車種で普及することが期待される。これは、環境低負荷型の社会システムの実現に大きく寄与するものと期待される。
 なお、今回の電気自動車は、これらの技術を基に、その製造をI.DE.A. Institute社(伊国)に委託した。

本件問い合わせ先:

(研究内容について)
   清水 浩(しみず ひろし)
      慶應義塾大学 環境情報学部 教授
      〒212-0054 川崎市幸区小倉144-8 
            慶應義塾大学Kスクエアタウンキャンパス
      TEL:+49-175-93-12193(3月14日まで)
          044-580-1565(3月15日以降)
      FAX:044-580-1435(3月15日以降)

(事業について)
   石田 秋生(いしだ あきお)
      科学技術振興事業団 基礎研究推進部
      〒332-0012 川口市本町4−1−8
      TEL:048-226-5635
      FAX:048-226-1164

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