(お知らせ)
平成12年12月1日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
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「細菌のDNAを認識する新しい受容体TLR9を発見」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)の戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「遺伝子改変に基づく生体防御システムの解明」(研究代表者:審良静男 大阪大学微生物病研究所 教授)で進めている研究の一環として、細菌のDNAを認識する新しい受容体を発見した。この発見は基本的な免疫メカニズムの解明につながるとともに、将来、癌やアレルギー、伝染病などの治療に役立つと期待される。この研究成果は、大阪大学微生物病研究所の審良静男教授のグループによって得られたもので、12月7日付けの英国科学雑誌「ネイチャー」で発表される。

 生体の免疫システムには、先天的な自然免疫と後天的に生じる獲得免疫の2種類がある。人などの高等生物にしか存在しない獲得免疫に対し、自然免疫は昆虫から人まで広く保存されている。自然免疫を担当する細胞は外界から細菌などが侵入すると、すばやくこれらを探知して攻撃したり、さらには警戒信号を発して獲得免疫を活性化するなど感染防衛の第一線として機能している。ところが、このような免疫反応で最初のきっかけになる「細菌の発見」−どのようにして侵入者と自己を区別しているのか−という認識メカニズムについてはこれまで詳しく分かっていなかった。
 最近になって、TLR(Toll-like-receptor)受容体ファミリー(※注1)がその認識メカニズムにおいて中心的な役割を果たしていることが明らかになった。TLRは細菌が体内に侵入すると、細胞膜などにある細菌特有の分子構造(※注2)を認識する。そして、その情報を複雑な伝達経路によって免疫を担当する細胞に伝え、免疫反応を活性化すると考えられている。しかし、幾つかあるとされているTLRはそれぞれが認識する分子構造が異なり、現在のところ機能解明が進んでいるTLRは2つしか発表されていない。
 今回、審良教授らは新しい受容体であるTLR9を同定し、それが細菌のDNAを認識することを発見した。生体に侵入した細菌は、大食細胞であるマクロファージなどに補食されて殺される。このとき、分解されて遊離した細菌のDNAをTLR9が認識すると考えられる。
 実験は遺伝子操作により、TLR9の働きを欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を作製し解析した。その結果、このノックアウトマウス由来の免疫担当細胞は、細菌の細胞膜成分などに対しては正常マウスと同様に活性化されるのに対し、細菌のDNAに対しては反応が欠如していた。また、正常マウスで引き起こされるショック症状がこのノックアウトマウスでは誘導されなかった。これらのことから、新規受容体TLR9は、細菌のDNAの認識において必須の役割を担っていることが証明された。
 今後、TLR9を介したシグナル伝達経路についてその認識メカニズムを分子レベルで明らかにすることにより、自然免疫という基本的な免疫システムがより解明されていくであろう。また、細菌由来のDNAは免疫反応を特に促進することが知られており、このDNAを用いたワクチンなどは、感染を抑制するだけの低い免疫応答から、細菌を殺す有効性の高い応答へと切り換えることができるため、結核などの感染症の治療、さらには癌、アレルギーなどへの幅広い応用が期待される。

※注1  TLR(Toll-like-receptor):Toll(ショウジョウバエの初期発生において形態形成に関わる受容体)が哺乳動物でも発見されたもので、Tollの遺伝子を欠損させたショウジョウバエは細菌などの感染に弱いことが報告されている。
※注2  細菌特有の分子構造:全てのグラム陰性菌は共通してその細胞外膜に内毒素のリポ多糖体(LPS)を持つ、また、ほとんどの菌体がもつペプチドグリカン、酵母細胞壁成分のマンナンなどがある。


この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下の通りである。
 研究領域:生体防御のメカニズム(研究統括:橋本嘉幸 (財)佐々木研究所所長)
 研究期間:平成8年度-平成13年度
本件問い合わせ先:
(研究内容について)
    審良 静男(あきら しずお)
     大阪大学微生物病研究所・癌抑制遺伝子研究部門
     〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-1
     Tel: 06-6879-8303
     Fax: 06-6879-8305

(事業について)
    石田秋生(いしだ あきお)
     科学技術振興事業団 基礎研究推進部
     〒332-0012 川口市本町4-1-8
     TEL:048-226-5635
     FAX:048-226-1164

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