原子力システム研究開発事業
目次III. 技術開発課題 → 【課題7】炉心損傷時の再臨界回避技術
平成18年度募集要項― 特別推進分野 ―

III. 技術開発課題

○ ナトリウム冷却炉に関する技術開発課題

【課題7】炉心損傷時の再臨界回避技術
(1)研究開発項目
・確率論的安全評価に必要な炉心損傷評価技術(レベル2PSA)の開発
(2)目的
 ナトリウム冷却炉の炉心損傷時の影響緩和については、溶融燃料の集中化等による再臨界に伴う機械的エネルギー放出を回避すること及び損傷炉心を原子炉容器内で保持・冷却することが格納機能を確保する上で重要と考えられている。本技術開発課題では、これらの炉心損傷時の影響緩和方策の妥当性評価に適用できる炉心損傷評価技術を開発する。
(3)達成目標
 炉心損傷時において、機械的エネルギー放出を回避するためには、冷却材のボイド化に伴う正の反応度を抑制するとともに、溶融した燃料を炉心外へ排出する経路を確保することが必要である。炉心損傷事故の進展過程において、溶融燃料の炉心外への排出によって核分裂連鎖反応が停止した以降は、崩壊熱を伴う炉心物質の再配置過程を経て、安定冷却が確立されることによって事故の終息に至ると考えられている。大型ナトリウム冷却炉では、燃料インベントリが大きく、かつナトリウム量/燃料量の比が小さいため、保守的な評価では炉心物質再配置過程での再臨界や保持・冷却失敗の確率が高くなる可能性がある。このため、これら再配置と冷却過程における事象推移を現象に則した物理モデルで評価する手法を開発する。
 一方、これらの方策の有効性を評価する上では、PSAを実施することが効果的であり、格納容器内事象を対象として、大型ナトリウム冷却炉の設計の特徴に応じた評価モデルを開発する。
 PSAのうち、炉心損傷から環境への放射性物質の放出までを扱うレベル2PSAでは、炉心損傷に関する事象進展の解析結果や関連する実験的知見に基づいて、評価者の工学的判断によって現象論的イベントツリーの分岐確率を与える。このため、ここで評価対象とする大型ナトリウム冷却炉に適用可能な分岐確率を検討するための技術的根拠を整備する。
 期待される成果は、炉心物質再配置と冷却に関する評価手法の開発、格納容器内事象に関する評価手法の開発及びレベル2PSA実施上必要となる分岐確率検討のための技術的根拠の整備である。
 本技術開発課題における具体的な開発要件は以下のとおりである。
・FSフェーズIIの大型ナトリウム冷却酸化物燃料炉心を対象とする炉心損傷発生時の事象進展に関する安全評価技術として以下を開発すること。
1 原子炉容器内における核分裂連鎖反応停止後の炉心物質再配置と冷却に関する評価手法
・崩壊熱による発熱を伴う炉心物質の移動挙動を扱えること。
・炉心構成要素として、燃料、スチール、ナトリウム、非凝縮ガスを扱い、これらの相変化と相互のエネルギー及び運動量交換を評価すること。
2 格納容器内事象に関する評価手法
・放射性物質の原子炉容器内及び格納容器内における移行・減衰挙動を、冷却材による保持効果を考慮して扱えること。
・原子炉容器内での炉心物質の保持・冷却に失敗した場合の、炉容器室底部における炉心物質の挙動とこれに伴う放出放射性物質の格納容器内における移行・減衰挙動を扱えること。
・炉心損傷の起因過程、遷移過程、炉心物質再配置と冷却過程及び格納容器内過程を対象として、以下の検討を実施すること。
・放射性物質の施設外への早期または大量の放出につながるシーケンスの確率を左右する現象を摘出すること。
・上記で摘出された現象について、確率を判断するために必要となる技術的根拠を整備すること。
(4)前提条件
・炉心仕様
・熱出力:3,570MW
・炉心高さ:1m以下
・炉心比出力:40kW/kg-MOX以上
・ボイド反応度:6ドル以下
・各燃料集合体に溶融燃料排出ダクトを設置
・冷却系仕様
・原子炉容器直径:約11m
・原子炉容器高さ:約21m
・原子炉容器底部に燃料デブリトレイを設置
・格納系仕様
・建屋一体型矩形コンクリート格納容器(自由体積:約14,000m3
・非常用ガス処理系を備えたコンファインメント
(5)関連技術情報
・技術検討書 - (1)原子炉プラントシステム - 2.2.2.4節
戻る← →【課題8】

Japan Science and Technology Agency
科学技術振興機構 原子力システム研究開発事業 原子力業務室