原子力システム研究開発事業
目次III. 技術開発課題 → 【課題1】システム簡素化のための冷却系2ループ化
平成18年度募集要項― 特別推進分野 ―

III. 技術開発課題

○ ナトリウム冷却炉に関する技術開発課題

【課題1】システム簡素化のための冷却系2ループ化
(1)研究開発項目
・高クロム鋼を用いた1次冷却系配管に適用する流量計測システムの開発
(2)目的
 FSフェーズIIでは、原子炉プラントの経済性向上のために1次冷却系の2ループ化及びその配管材料として高クロム鋼の使用を、また、信頼性向上のために1次冷却系配管を2重化することを検討している。
 本技術開発課題では、FSフェーズIIで想定する上記の使用条件に適する流量センサ、信号処理装置(流量センサからの信号を受けて流量異常を判定する回路及び監視用流量信号を出力する回路)及び流量センサ遠隔交換装置よりなる1次主冷却系流量計測システムを開発する。
(3)達成目標
 本技術開発課題において期待される成果は以下のとおりである。
・以下に示す開発要件及び前提条件を満足する1次主冷却系流量計測システムの仕様を明らかにすること。
・システムの有効性を試験及び評価により示すこと。
・安全保護系に適用できることを実証するための課題を明確にし、解決の見通しを示すこと。

 本技術開発課題における具体的な開発要件は以下のとおりである。
・安全保護系及び運転制御系(監視用)に適用可能な流量計として以下の条件を満たすこと。
- 計測範囲:定格重量流量の約0〜130%(定格平均流速:約7〜10m/秒、停止時から過流量条件までを想定)
- 直線性及び再現性:計測範囲の±2%以内(流量センサから流量異常を判定する回路に入力するまでの間)
- 出力信号変動:中央値の±5%以内(流量センサから流量異常を判定する回路に入力するまでの間)
- 応答時間:0.3秒以内(1次遅れ時定数と無駄時間の和。流量センサを経て流量異常を判定する回路からの出力までの間。出力信号変動抑制機能を含む)
- 単一故障影響範囲の限定:想定される単一故障により複数セットの流量センサから流量異常を判定する回路までの機能及び性能に異常が生じないこと
- 流量センサは、2重化された配管系の外管の内部に、安全保護系用として相互に独立4系統の信号が得られるように4セット設置できるものであること。
・1次冷却系配管のナトリウム漏洩防止のための設計コンセプトの一つである、「配管部のナトリウムバウンダリに枝配管、計装ウェル、異材継手を設けない」に適合する流量計測システムとすること。
・配管の大口径化と流路短縮のため、流量センサの上・下流に十分な直管流路(助走区間)をとることができないこと(直管流路の長さは配管口径の5倍程度)から偏流の影響が想定されるが、本システムは偏流の影響を低減できる能力を有するものであること。
・流量センサから制御盤室までの間に必要なケーブル長さ(100m程度)を想定しても、流量センサからの信号減衰が許容範囲であり、安全保護系として信頼性を確保できること。
・流量センサの他、必要な設備の交換寿命は、実用炉で想定される連続運転サイクル期間(18〜26ケ月)以上であること。
・原子炉運転中は2重化された配管系内の気密を保つことができ、流量センサの交換は原子炉停止時に外管全体を取り外さず遠隔でできるものであること。
(4)前提条件
・設置場所:1次冷却系低温側主配管(図1参照)
・配管構造:2重管構造(内管:ナトリウムバウンダリ、外管:窒素ガスバウンダリ)
・内管材質:高クロム鋼
・内管口径:28B(内径 約710mm)〜50B(内径 約1,270mm)
・取り付け位置:配管直管部長さの合計が配管口径の5倍程度であり、取り付け位置は、直管部の適切な位置に設置
・使用ナトリウム温度範囲:200〜530℃(定格温度395℃)
(5)関連技術情報
・技術検討書 - (1)原子炉プラントシステム - 2.2.2.2節
図1ナトリウム冷却大型炉 低温側1次冷却系配管の概要
図1 ナトリウム冷却大型炉 低温側1次冷却系配管の概要
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