原子力システム研究開発事業
目次III. 技術開発課題 → 【課題2】原子炉容器のコンパクト化
平成18年度募集要項― 特別推進分野 ―

III. 技術開発課題

○ ナトリウム冷却炉に関する技術開発課題

【課題2】原子炉容器のコンパクト化
(1)研究開発項目
・熱応力が支配荷重となるナトリウム冷却炉の原子炉容器の高温構造設計評価技術の開発
・スリット付き炉上部機構に適用可能な破損燃料位置検出器の開発
(2)目的
 原子炉容器の寸法は周辺の配管系やそれらを格納する建屋全体のサイズに影響することから、そのコンパクト化は高速増殖炉の建設コスト削減に大きく寄与する。このため、コンパクトな原子炉容器の実現に必要な原子炉容器の高温構造設計評価技術とスリット付き炉上部機構に適用可能な燃料破損位置検出器を開発する。
(3)達成目標
1 高温構造設計評価技術の開発
 ナトリウム冷却の高速増殖炉は高温低圧で運転されることから、繰り返し熱応力によるクリープ疲労き裂の発生やラチェット変形が防止すべき主たる破損様式となる。ここでは、熱応力の緩和装置や、炉壁をクリープ温度以下に保つための冷却設備を用いなくとも、熱応力に対して十分な信頼性を持った原子炉容器の構造設計を実現する高温構造設計評価技術を開発する。
 期待される成果は、以下の開発要件を満たす評価技術、その技術の持つ不確定性に対して保守性を確保した設計手法及び保守的である根拠を示すデータの提示である。
 本技術開発課題における具体的な開発要件は以下のとおりである。
・クリープ疲労評価法
繰り返し熱応力下のプラント寿命中の健全性に影響する、ひずみ集中、応力緩和、時効を考慮にいれたクリープ疲労評価法を提案する。
・ラチェット変形許容値
コンパクト化によって厳しくなるクリープ疲労とラチェット変形に対して、両者の相互作用を考慮に入れたラチェット変形の許容値を定める。
・非弾性構成式
設計で想定される様々なバラツキ(材料特性、温度条件等のバラツキ)に対して原子炉容器のラチェット変形を保守的に予測するための非弾性構成式と適用方法を、保守性を示す根拠とともに提示する。
・非弾性解析に基づく設計評価法
非弾性解析結果に基づき、クリープ疲労とラチェット変形を保守的に評価するための荷重サイクル設定法とクリープ疲労損傷係数の算出法を提案する。
・系統熱過渡荷重設定法
原子炉容器の支配荷重である系統熱過渡荷重を、プラント過渡特性の不確定性を考慮した上で設定する方法を開発する。
・荷重と強度を考慮した設計係数の適正な設定法
熱荷重設定のバラツキを考慮して、原子炉の信頼性を確保するために必要な設計係数を定める手法を開発する。
・原子炉容器設計への適用性確認
前提条件及び技術検討書を参考に、コンパクトな原子炉容器の設計例題を設定し、液面近傍部や炉心支持構造に代表される高応力部に対して上記で提案した手法による評価を行う。これらの部位の構造健全性を示すことにより、手法の適用性を確認する。
2 破損燃料位置検出器の開発
 FSフェーズIIでは原子炉容器をコンパクト化するために、スリット付き炉上部機構を採用することとしている(図2参照)。このスリット部分は燃料交換機の移動スペースとなるため、燃料交換時には、破損燃料位置検出に関連する機器がこの部分にあってはならない。また、運転の自由度を拡大するため燃料の破損状況を監視しながら運転を継続する技術への対応も考慮に入れ、ガスリーク型燃料破損のみならず、ナトリウム・燃料接触型の破損にも適用可能とする。これらの条件に適合する破損燃料位置検出器を開発する。
 期待される成果は、以下の開発要件を満足するシステムの概念図、仕様及び技術的成立性の根拠となるデータである。
 本技術開発課題における具体的な開発要件は以下のとおりである。
・炉心燃料集合体に偶発的なガスリーク型及びナトリウム・燃料接触型の破損が生じた場合に、原則として破損検出時の原子炉出力状態で、破損燃料集合体の位置検出が可能であること。
・スリット部以外の燃料破損については、破損燃料集合体の1体同定ができること。
・スリット部での燃料破損については、少なくとも数体まで破損燃料を含む可能性のある燃料集合体を絞り込むことができること。
・スリット部では、燃料交換時には、燃料交換に必要なスペースを確保すること。
・破損燃料位置検出器は、原子炉容器、原子炉容器内構造物、回転プラグ等の配置と整合するものであること。
(4)前提条件
1 高温構造設計評価技術の開発
・原子炉容器材料:316FR
・運転温度:550℃
・設計寿命:60年
・原子炉容器直径約11m 高さ約21m 板厚30mm〜50mm
・液位制御装置、炉壁冷却装置等の原子炉容器保護装置無し
・炉壁における発生応力の概略値 一次応力Pm= 30MPa、一次+二次応力Sn= 370MPa(原子炉起動時の液面上昇に伴う熱応力、原子炉スクラム時に上部プレナムに形成される温度成層化現象に伴う熱応力等)
2 破損燃料位置検出器の開発
・炉心の燃料集合体数:約600体
・1燃料集合体あたりの燃料ピン本数:約270本
・スリット部燃料集合体数:約40体
・原子炉容器内に機器を設置する場合、原子炉容器内の環境に適合すること。
・回転プラグ等に搭載する機器は、それぞれの雰囲気に適合すること。
・プラント運転期間を60年とし、運転期間中に交換を必要とする部品がある場合、交換可能であること。
・供用期間中の動作確認が可能であること。
(5)関連技術情報
・技術検討書 - (1)原子炉プラントシステム - 2.2.2.3節
図2 原子炉構造の概要図

図2 原子炉構造の概要図
戻る← →【課題3】

Japan Science and Technology Agency
科学技術振興機構 原子力システム研究開発事業 原子力業務室