【論文・著書】【口頭発表・講演】【特許】【受賞】 |
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酸・塩基液晶の鋳型重合による新規多孔性材料の創成 |
石田康博 |
【成果の概要】 |
近年、分子の自己組織化を利用した材料の重要性が指摘され、超分子的相互作用により形成された会合体に関する研究が益々盛んになっている。現時点では多くの研究が「精緻な超分子構造の形成」までをゴールとしているが、この分野を次のステージへと展開する上で、「超分子構造の化学的固定」は欠くことの出来ない概念の一つである。超分子構造を保ったまま系中で化学反応を進行させる技術は、「非共有結合の化学」と「共有結合の化学」との長所を併せ持つ新物質創成へ繋がると考えられる。我々は最近、カルボン酸とアミノアルコールとの塩において、どちらか一方のユニットに両親媒性を付与することにより、極めて高い確率で柱状サーモトロピック液晶が得られることを見いだした。生じる液晶は結晶に準ずる分子配列規則性を持ちながらも、分子の並進運動や重心の移動をある程度許す場でもあるため、どちらかのユニットに反応活性な部位を予め導入しておくことで、他方の成分を鋳型とする化学反応が系中で容易に進行するものと考えられる。両ユニットは非共有結合のみにより連結されており、反応後に両者を容易に解離・回収することが可能であるため、この二成分液晶は全く新しいタイプの有機ゼオライトアナログとして機能することが期待される。 |
(1)カラム外側成分の架橋重合に基づくキラル固相ホストの開発:1バッチ処理による光学分割
重合官能基を導入した両親媒性カルボン酸と光学活性なアミノアルコールとの塩よりなる液晶を架橋重合し、その後にアミノアルコールユニットを除去することにより、鋳型の構造情報(サイズ・形状・キラリティーなど)を「記憶」した固相ホストが得られると期待される(Chem.
Eur. J. 2007, 13,
5186.)。この手法は、一見すると通常のモレキュラーインプリント法に類似しているが、構造秩序性の高い液晶中にてインプリントが行われる点、鋳型とマトリックスの2成分のみよりなる極めてシンプルな系である点において、古典的なモレキュラーインプリント法の限界を克服するものと考えられる。この概念の有効性を実証すべく、鋳型として(-)-ノルエフェドリン、マトリックスとしてジエニル基を3つ導入した両親媒性カルボン酸を用いて上述の鋳型重合を行ない、得られる架橋高分子の固相ホストとしての能力を評価した。ラセミ体のノルエフェドリンをゲストに用い、この固相ホストに対する両鏡像異性体の競争的捕捉を行ったところ、鋳型と同じ立体のゲストが優先的に吸着され((-)体:(+)体
= 60:40)、わずか1バッチの処理により、20%
eeの鏡像体過剰率が達成されることが明らかとなった。ここで観察された不斉選択性は、既往のモレキュラーインプリント高分子の中で、知る限り最も高い値の一つである。液晶構造に由来する一義的なゲスト吸着サイトが形成されていることを考えると、合目的的な分子設計により、さらなる選択性の向上も可能であると期待される。 |
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(2)カラム内側の成分系内反応に基づく液晶反応場の開発:テーラーメイド可能な反応媒体
光学活性な両親媒性アミノアルコールと反応活性なカルボン酸との塩よりなる液晶中にて、カルボン酸ユニットの系内反応を行なった場合、液晶のキラリティーを反映した反応が進行すると予想される。我々はこれまでに、カルボン酸ユニットとして2-アントラセンカルボン酸を用い、液晶の光照射によりアントラセン部位の二量化反応を行なうと、特定の異性体が極めて高い不斉選択性(+80%
ee)で得られることを報告している(Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47,
8241.)。この光二量化は元来、4種類の異性体(うち2種類はキラル化合物)が生成する複雑な反応であるが、マトリックスとなるアミノアルコールをデザインすることにより反応経路を制御することができれば、本液晶反応場の一般性・有用性は一段と明確となる。そこで、アミノ基に隣接する炭素の置換様式を系統的に変化させた3種類の両親媒性アミノアルコールを設計・合成し、これらが形成する液晶マトリックス内にて2-アントラセンカルボン酸の光二量化反応を行なった。その結果、いずれのアミノアルコールを用いた場合にも特定の異性体1種類が優先的に生成し、主生成物の種類はアミノアルコールによって異なることが明らかとなった。見方を変えると、アミノアルコールの構造を僅かに変えるだけで、光反応生成物の作り分けが出来ることになる。同様の傾向は、基質を2-アントラセンカルボン酸から1-アントラセンカルボン酸に変えた場合にも観察され、本系が基質に対する一般性も併せ持つことが分かった。アントラセンカルボン酸類の光二量化については、これまでに様々な超分子構造体を用いた反応制御の試みが行なわれてきたが、シンプルさ・収率・選択性・チューニング容易性の観点から、本系は最も実用的かつ完成度の高い反応場の一つである(論文投稿中)。 |
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【論文・著書】【口頭発表・講演】【特許】【受賞】 |
【主な論文・著書】 |
著者 |
石田康博 |
表題 |
液晶中での鋳型反応に基づくキラル認識場・反応場 |
発表先 |
超分子研究会アニュアルレビュー |
掲載日 |
2011/3/31 | | |
著者 |
Yasuhiro Ishida |
表題 |
Organic Zeolite
Analogues Based on Multi-Component Liquid Crystals:
Recognition and Transformation of Molecules within
Constrained Environments |
発表先 |
Materials |
掲載日 |
2011/1/11 | |
著者 |
Yasuhiro
Ishida・Shun-ya Kato・Ammathnadu S. Achalkumar・Yukiko
Kai・Aya Misawa・Yumi Hayashi・Kuniyo Yamada・Yuki
Matsuoka・Motoo Shiro・Kazuhiko Saigo |
表題 |
Tunable Chiral
Reaction Media Based on Two-Component Liquid Crystals:
Regio-, Diastereo-, and Enantio-Controlled
Photo-Dimerization of Anthracenecarboxylic Acids |
発表先 |
Journal of the
American Chemical Society |
掲載日 |
2010/11/22 | |
著者 |
Yasuhiro
Ishida・Yukiko Kai・Shun-ya Kato・Aya Misawa・Sayaka
Amano・Yuki Matsuoka・Kazuhiko Saigo |
表題 |
Two-Component Liquid
Crystals as Chiral Reaction Media: Highly
Enantioselective Photo-Dimerization of an Anthracene
Derivative Driven by the Ordered Micro-Environment |
発表先 |
Angewandte Chemie
International Edition |
掲載日 |
2008/9/22 | |
【主な発表・講演】 |
発表者 |
Ammathnadu S.
Achalkumar・山田邦代・石田康博・西郷和彦 |
表題 |
Liquid Crystals as
Chiral Reaction Media: Regio-, Diastereo-, and
Enantiocontrolled Photodimerization of
Anthracenecarboxylic Acids |
発表の場 |
第60回高分子学会年次大会 |
発表日 |
2011/5/26 | |
発表者 |
石田康博 |
表題 |
キラル液晶反応場を用いる光反応の制御 |
発表の場 |
日本化学会第91春季年会 |
発表日 |
2011/3/29 | |
発表者 |
Yasuhiro
Ishida・Ammathnadu S. Achalkumar ・Kazuhiko Saigo |
表題 |
Two-Component Liquid
Crystals as Chiral Reaction Media: Highly
Enantioselective Photodimerization of an Anthracene
Derivative Driven by the Ordered Microenvironment |
発表の場 |
Pacifichem 2010 |
発表日 |
2010/12/16 | |
発表者 |
Ammathnadu S.
Achalkumar・山田邦代・石田康博・西郷和彦 |
表題 |
Development of Robust
Chiral Molecular Sieves by the Template Polymerization
of Multicomponent Liquid Crystals |
発表の場 |
第59回高分子討論会 |
発表日 |
2010/9/15 | |
発表者 |
石田康博 |
表題 |
分子集積体の鋳型反応に基づく新規ソフトマテリアルの創成 |
発表の場 |
統合バイオナノシステム研究がもたらすイノベーション基盤の新展開 |
発表日 |
2010/8/6 | |
発表者 |
Yasuhiro Ishida |
表題 |
Recognition and
Transformation of Organic Molecules within Anisotropic
Soft Materials |
発表の場 |
2010 RIKEN Advanced
Science Institute & Yokohama Institute Forum |
発表日 |
2010/2/9 | |
発表者 |
石田康博 |
表題 |
キラル液晶中の鋳型反応に基づく分子フラスコ |
発表の場 |
第17回超分子創製化学セミナー |
発表日 |
2010/2/3 | |
発表者 |
石田康博 |
表題 |
Recognition and
Transformation of Organic Molecules within Chiral Liquid
Crystals |
発表の場 |
RIKEN Conference
2010 |
発表日 |
2010/1/11 | |
発表者 |
石田康博・天野清香・西郷和彦 |
表題 |
キラルな液晶反応場におけるアントラセンカルボン酸の高不斉選択的二量化反応 -
反応場の相転移に伴うキラリティーの反転- |
発表の場 |
第58回高分子討論会 |
発表日 |
2009/9/1 | |
発表者 |
石田康博・松岡由記・甲斐裕紀子・西郷和彦 |
表題 |
酸-塩基液晶の鋳型重合により得られる「分子スポンジ」の動的挙動 |
発表の場 |
第58回高分子討論会 |
発表日 |
2009/9/1 | |
発表者 |
松岡由記・甲斐裕紀子・加藤峻也・石田康博・西郷和彦 |
表題 |
キラルな液晶反応場におけるアントラセンカルボン酸の不斉光二量化反応 |
発表の場 |
日本化学会第89春季年会 |
発表日 |
2009/3/28 | |
発表者 |
坂田宏明・岩橋伸卓・天野清香・石田康博・西郷和彦 |
表題 |
カラム状液晶の鋳型重合により得られる架橋高分子の可逆的構造変化 |
発表の場 |
日本化学会第89春季年会 |
発表日 |
2009/3/28 | |
発表者 |
石田康博・西郷和彦 |
表題 |
カルボン酸-アミン塩よりなる液晶を用いた認識・反応場の構築(1) |
発表の場 |
創造機能化学講演会 |
発表日 |
2008/6/10 | |
発表者 |
甲斐裕紀子・石田康博・西郷和彦 |
表題 |
キラル液晶反応場におけるアントラセンカルボン酸の光二量化反応の制御 |
発表の場 |
日本化学会第88春季年会 |
発表日 |
2008/3/28 | |
発表者 |
石田康博・天野清香・西郷和彦 |
表題 |
液晶の鋳型重合を用いた有機ゼオライトの開発 |
発表の場 |
高分子材料開発のための俯瞰的シンポジウム |
発表日 |
2008/1/11 | |
【特許】 |
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【受賞】 |
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