本研究では、プログラムされた 共役系分子のナノ領域での自己組織化を利用して、有限な集積構造体の有効的構築法の開発から、一連の集積体群の創製を目指す。さらに、その物性誘起や機能制御を達成することで、次世代の機能性ナノ材料開発に貢献する「 共役ナノ集積体の化学」の開拓に挑戦する。

　ある種の 共役系分子は集積することで、分子単独では見られない特異な物性を発現する。例えば、電子供与性および受容性の 共役系分子が2分子集積した電荷移動錯体や、柔軟な側鎖を持つ共役系分子が無限に集積したゲルや液晶などが挙げられる。しかしながら、その間に位置する“有限な集積体”は、興味深い性質を示すことが期待されるにも関わらず、その有効な合成法が開発されていない。そこで我々は、パネル状およびピラー状有機配位子と金属イオンの自己組織化により組み上がる三次元錯体を利用し、それら2つをインターロックさせ、さらにその間に 共役系分子をインターカレーションすることで、7重の 共役ナノ集積体を一義的に構築することに成功した。この手法を活用することで、8重および9重集積体も選択的に構築した。

　三次元錯体の内部空間を活用することで、通常集積構造を取らない平面状金属錯体であっても、数や順序を厳密に制御して集積できることを見出した。実際に、ポルフィリンおよびアザポルフィリン錯体を選択し、それらと三次元錯体の構成成分を水中で混合することで、新規なCu-Cu-Cu, Cu-Pd-CuおよびCu-Co-Cuの３重集積体をそれぞれ選択的に構築することに成功した。これらの集積体は、3つの金属中心が一直線状に配列しているため、金属間での特異的な相互作用が観測された。特にCu-Cu-Cu集積体では、四重項に由来する特異なスピン-スピン相互作用を明確に観測することに成功した。錯体空間制御による簡便かつ精密な金属集積化を達成した。