さきがけニュース
「生体分子の形と機能」領域
蛋白質の中にジスルフィド架橋を創り出す仕組みを分子レベルで解明
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戦略的創造研究推進事業「生体分子の形と機能」研究領域(研究総括:郷 信広)において、領域内でうまれた共同研究テーマとして、稲葉 謙次研究者(平成13年度採択)および村上 聡研究者(平成14年度採択)らは、大腸菌において蛋白質ジスルフィド結合の創生および導入に関わる因子の複合体の結晶構造を解くことに成功しました。この成果は、米国科学雑誌「セル」(2006年11月17日号)に論文として掲載されました。 大腸菌中では、フォールディング途上の蛋白質に効率よくジスルフィド結合を導入するためDsbA-DsbB-ユビキノン酸化システムが存在します。膜蛋白質であるDsbBはユビキノン分子の酸化力をジスルフィド結合という形に変換し、ここで創り出されたジスルフィド結合はDsbAを介して多くの基質蛋白質に受け渡されます。本研究では、DsbA-DsbB-ユビキノン三者複合体の結晶構造を、徹底したサンプル調整法および結晶化条件の検討により、4年以上もの歳月をかけて解くことに成功しました。本研究により、DsbB上のユビキノン結合部位が同定でき、DsbBとユビキノンが共同してジスルフィド結合を創り出すための化学スキームが分子レベルで解明されました。 さらに、DsbBからDsbAへジスルフィド結合をリレーする過程において、DsbBはDsbAとの会合に伴う巧妙な構造変化を引き起こし、両蛋白質間に存在する酸化還元電位のエネルギー障壁を巧みに克服していることが強く示唆されました。さらに、大腸菌のペリプラズムには、ジスルフィド結合導入のための酸化経路に加え、ジスルフィド結合組換えのための還元経路も存在しますが、これら二つの経路の巧妙な分断機構も明らかとなりました。これらの研究成果により、細胞の中でジスルフィド結合がどのように創られ、蛋白質に導入されるのか、そのメカニズムの全貌が分子レベルで解明されたと言えます。 |
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