研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
超小型ガスタービン・高度分散エネルギーシステム
2.研究代表者
鈴木 健二郎 京都大学大学院 工学研究科 教授
3.研究概要
 本研究は、超小型ガスタービンと固体酸化物形燃料電池のハイブリッドシステムを高度分散エネルギーシステムとして実現するためのフィージィビリティの検討や、システムの最適化指針の確立、システム設計に必要となるモノグラフやデータベース構築のための基礎研究を実験・理論・数値解析による手法で推進するものである。これまでの検討により、提案システムのフィージビリティーおよびシステムの最適化に直接的に影響を与える因子が明らかになった。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 この分野の技術は、世界的に日進月歩であり、刻々と情勢が変わっている。特に燃料電池技術の進歩は速い。グループメンバーにとっても、周辺の見方も要求も、刻々と変わってゆく。そのような意味で、研究に着手した当時に描いた目標や全体構想、重点の置き方などが、担当者も含めて変わってしまったこともやむを得ないことである。

 当初の研究計画ではマイクロガスタービンの開発に重点が置かれ、雑然とした感が否めなかったが、大分、整理が進み、固体燃料電池―マイクロガスタービンの熱力学的な研究に重点が絞られ、ようやくすっきりしてきた。燃料電池とガスタービンの組み合わせの最適化が計られるだけでも大きな成果と言える。

4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)を電解質材料とする高温型SOFCと、タービン入口温度を900℃とするメタリックタービンを複合化する現在技術で構築できるハイブリッドシステムについては、発電効率60%以上が達成できること、また電解質材料にセリア系材料を用いる中低温型SOFCとタービン入口温度を800℃とするメタリックタービンとを複合化したシステムの場合には、発電効率が実に74%に達することを明らかにしている。

 これらの結果を踏まえて、燃料電池、ガスタービンなど要素機器に関する基礎的な研究を深化させるとともに、発電効率65%を目指した実用型ハイブリッドシステムの実験機の設計図を早く見せて欲しい。

4−3.今後の研究に向けて
 SOFC-マイクロガスタービンハイブリッドシステムの開発全体計画の中に、その運用形態について詳細に検討しておく必要がある。例えば、分散型として個別の建物ごとに導入するのか、コミュニティに取り込むのか、DSS運転なのか、ベースロード運転なのか、熱の使い方はどうなるのか、部分負荷特性はどうか、ブレークスルーすべき残るキーテクノロジーは何か、など、関係者が集まって充分に検討しておく必要があろう。実用化は間近なのだ。
4−4.戦略目標に向けての展望
 「資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」 という戦略目標から考えると、前項の指摘は重要である。現在はそのような視点が皆無である。研究修了までに是非、検討しておいて欲しい。
4−5.総合的評価
 研究がスタートしたころの雑然とした感じから、大分、すっきりとしてきた。小型・分散型発電システムで発電効率が70%を超える可能性があるということは、現在の電力システムにとって、大きなインパクトである。そのようなシステムは熱機関のみでは論理的に不可能で、燃料電池との組み合わせによって初めて可能になる。ひと昔前には夢物語であったものが、数年先には現実になることは素晴らしい。そのためには試作実験機が早い時期に動くことが絶対に必要である。

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This page updated on September 12, 2003
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