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研究内容

全体概要
 19世紀は第一次産業革命に代表されるように鉄と鋼を代表とする金属系ハードマテリアルの時代でしたが、20世紀になると高分子が「硬い」材料をプラスチックという形で置き換えていきました。さらに液晶デバイス、ゲル、有機電子デバイス、生体材料、などの軟らかい材料(ソフトマテリアル)自体の機能性を生かした分野が展開され、日常生活の中で「ソフトマテリアル」は極めて重要になってきています。また、ソフトマテリアルの形成する表面と界面(「ソフトインターフェース」)は身の回りの至る所に存在し、電気物性、生体適合性、摩擦・摩耗、接着などの重要な機能特性がソフトインターフェースの構造と物性に支配されていると推測されています。
 一方、自然界に見いだされるソフトインターフェースは、人工のソフトインターフェースに比べて様々な特徴的な挙動と優れた動的応答性を示しています。例えば自然界の高機能性ソフトインターフェースとして1)血管表面のリン脂質膜の抗血栓性、2)股関節の潤滑表面、3)蓮の葉表面の超撥水性と自己清浄性、4)表面エネルギーの勾配で水を集める砂漠の甲虫、5)ハエ取り草の刺激応答性表面、6)イガイの接着性(水中で接着する接着剤)、7)漆樹液から作られる天然漆の美しい薄膜などがあげられます。これらの表面と界面はユニークな特性を示しますが、合成材料ではこれらを完全に再現することは出来ていません。また、この研究分野は学問的に重要であるにも拘わらず、その科学的解明は不十分です。
 このように、ソフトインターフェースに関する基礎的な研究は緒に就いたばかりですが、本領域では、学術的、工学的に重要なソフトマテリアルの表面と界面の本質を明らかにするための科学的基盤を創成します。具体的には、本プロジェクトで試作する装置により、これまで解明されなかった新しいソフトインターフェースの構造と物性が明らかにされ、この分野の研究が急速に展開するものと期待されます。
 本研究プロジェクトでは、自然界の特徴的なソフトインターフェースの本質を解析し、高性能ソフトインターフェースを人工的に実現するために、上記研究内容に対応した以下の3つの研究グループを組織しました。(1)界面分子設計グループ、(2)階層構造制御グループ、(3)先端界面構造物性解析グループ。これらのグループでは、個々のグループ研究の遂行だけではなく、成果をフィードバックしながら、有機的な連携に基づき研究を推進して参ります。
 

 
各研究グループ概要

界面設計G

本グループは、新しいソフトインターフェースの分子設計に関する研究を中心に行います。自然界の単なる模倣ではなく、その本質である化学的な構造因子や分子間相互作用を動的特性も考慮しながら明らかにし、その知見に基づいて分子設計、合成を行っています。

 

 

 

階層構造制御G

本グループでは自然界の特徴的なソフトインターフェースにおける表面階層構造の役割を明らかにし、高性能ソフトインターフェース構築のための階層構造制御手法を表面ナノ形態制御技術と表面分子鎖凝集構造制御に基づき確立します。

 

 

先端界面構造解析G

本研究グループでは自然界の特徴的なソフトインターフェースの本質を解析し、高性能ソフトインターフェース構築のための界面構造物性解析技術、特に様々な階層でのダイナミクス解析技術を確立します。具体的には摩擦、濡れ、接着などの過程でのソフトマテリアルの界面の様々な階層の分子のダイナミクスをその場観測する実験的手法を開発し、ソフトインターフェースで生じている現象、機構を解明することを目指します。そのためには非破壊手法である分光分析、散乱手法を駆使した研究を手法開発も含めて展開します。例えばSPring-8の高輝度・高いコヒーレンシーの放射光を用いたX線光子相関分光法(XPCS)、世界でも最も高い輝度の中性子源であるJ-PARCを用いた時分割中性子反射率測定、液体界面での高分子鎖の分子運動をその場評価するエバネッセント波動的光散乱法、高速走査共焦点顕微ラマン分光法などをソフト界面の動的特性評価に展開しています。