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平成21年度シーズ発掘試験 研究概要(ライフサイエンス1)

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 ゲノム:7件

No. 研究課題名 研究者 コーディネータ 研究概要
氏 名 所 属 氏 名 所 属
98 魚類養殖及び放流事業の性統御を可能にする魚類の遺伝的雌雄判別技術の開発 井尻 成保 北海道大学 東 陽介 独立行政法人科学技術振興機構 本研究は、魚類の性特異的DNA配列を同定するための技術開発を目的とする。本研究では、雌雄のゲノムDNAの間でサブトラクションを行うことによって性特異的DNA領域を濃縮した後に、AFLP法で性特異的DNA配列の探索を行う。性特異的DNA配列が得られれば、特に雌雄で商品価値が大きく異なる魚種における簡便かつ早期の性判別が可能となる。
326 超分子電気化学に基づく高感度遺伝子センサアレイチップの開発 青木 寛 独立行政法人産業技術総合研究所 小高 正人 独立行政法人産業技術総合研究所 従来の遺伝子検出法は、多大な時間や労力を要し定量性に欠ける問題があり、その根本的な原因は測定対象DNAの蛍光標識化が必要なことである。そこでこの問題を解決するため、測定系に何ら手を加える必要なしに高感度検出可能な、迅速で簡便な電気化学遺伝子センサの開発を行う。超分子化学に基づき、測定対象DNAの認識に伴い信号増加する検出原理を構築し、高感度遺伝子センサアレイチップを開発する。
480 化学物質依存的な核内受容体の応答配列探索技術の開発 吉野 知子 東京農工大学 田中 公 東京農工大学 核内受容体はリガンドと結合した後、応答配列と特異的に結合することで標的遺伝子の発現を制御する。細胞内の転写制御因子により応答する標的遺伝子が異なることが報告されているが、詳しい機構は解明されていない。本研究では、エストロゲン受容体の転写制御に関連する一連の反応様式をin vitroで再現し、化学物質による刺激から応答する標的遺伝子発現の作用機構を解明するための研究技術の開発に着手する。
743 突発的辛味発現のない野菜用トウガラシ品種育成に向けたDNAマーカー開発 松島 憲一 信州大学 福澤 稔 信州大学 突発的な異常辛味を発現することがあるシシトウ等野菜用甘味トウガラシ品種に、シーズである「極低辛味遺伝子(cf )」を導入する研究である。このcf遺伝子は単因子で働くため環境に影響されにくく、安定的に極低辛味形質を維持、発現するトウガラシ品種開発に寄与できる。このため、本課題ではcf遺伝子に連鎖したDNAマーカーを開発し、突発的な辛味発現をすることのない野菜用トウガラシ品種育成に利用するものである。
1128 C型肝炎治療に際しての副作用出現予測のための遺伝子診断系の構築 丸澤 宏之 京都大学 樋口 修司 京都大学 C型肝炎に対する世界的な標準的治療法はインターフェロン+リバビリン併用療法であるが、その治療効果を制約する最大の要因が血球減少をはじめとする高い副作用の出現率である。本課題は、C型肝炎に対する治療に際しての副作用出現を規定する個人間の遺伝子多型を特定し、それを特異的に検出するDNAアレイを用いた遺伝子診断系を構築することにより、C型肝炎に対する安全性と有効性を高めた新しい治療体系を樹立することを目的とする。
1772 自立性自家応答性遺伝子センサー 中野 幸二 九州大学 平田 徳宏 九州大学 本研究では、DNA電極界面に起電力発生の機構を組み込むことで、ポテンシオメトリックな情報応答性を備えた遺伝子センサーを実現する。化学の研究者であれば一度はpHメーターを使用した経験があると思う。センサーを浸すだけでハイブリダイゼーションから情報の読み取りまでを実行する、「遺伝子メーター」のような使い勝手の良いシステムを実現することが目標である。
67(B) Cre-loxによる新規遺伝子増幅系を用いたタンパク質増産系の開発 堀内 嵩 基礎生物学研究所 大森 茂嘉 (財)名古屋産業科学研究所 バイオマーカーに対する診断をはじめプロテオミクス分野は急速に拡大しているが、解析に不可欠なタンパク質の生産過程がボトルネックになっている。従来、動物細胞による遺伝子増幅現象が利用されてきたが、分子機構が未解明で十分に効率化されていない。代表研究者は酵母とCHOにおいてCre-lox系を用いた高速・高効率の遺伝子増幅系を確立することに成功した。この新CHO系によるタンパク質増産の有効性を評価し、現行系の欠点を補うスモールスケールの高速高効率のタンパク質増産系の構築をめざす。

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 医学・医療:351件

No. 研究課題名 研究者 コーディネータ 研究概要
氏 名 所 属 氏 名 所 属
5 糖尿病網膜症における炎症性サイトカインの網膜循環への影響と新規治療法開発 長岡 泰司 旭川医科大学 尾川 直樹 旭川医科大学 糖尿病網膜症の病態には炎症が関与していることが明らかとなった。炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-6の網膜血管内皮機能への影響をin vivo摘出血管とin vivo生体実験系において検討し、抗TNF-α抗体および抗IL-6レセプター抗体による網膜血管保護作用を検討する。
6 内皮前駆細胞抑制剤drug delivery systemの開発 川辺 淳一 旭川医科大学 尾川 直樹 旭川医科大学 内皮前駆細胞(EPC)の機能維持に必要な遺伝子の欠損マウスを用いて、転移癌の増殖にEPCが重要であることを見出した。 本研究の目的は、同遺伝子機能を抑制するEPC機能抑制薬とdrug delivery system (DDS)と組み合わせることにより腫瘍組織内のEPC機能を選択的に抑制する新しい抗癌治療薬を開発することである。 そのために EPC機能抑制薬/DDSを作成し、マウス癌転移モデルを用いて同薬剤/DDSの腫瘍増殖に対する抑制効果を明らかにする。
7 バレット食道における異常遺伝子の正常化に基づく新規食道癌予防法の開発 盛一 健太郎 旭川医科大学 尾川 直樹 旭川医科大学 バレット食道癌は、近年欧米では急速な増加を認め、食道癌の過半数を超えるとされる。本邦でも、将来のバレット食道癌の増加が懸念されている。しかし、バレット食道癌の発生母地であるバレット上皮の分子基盤は不明な点が多く、有効な治療法は存在しない。本研究ではバレット食道における遺伝子異常プロファイルを明らかにし、遺伝子異常の原因となる物質を同定する。さらに、それらの結果を基に新たな治療法の確立を目指す。
8 薬物の血中濃度予測のためのトランスポーター遺伝子変異解析技術の開発 神山 直也 旭川医科大学 尾川 直樹 旭川医科大学 トランスポーターは細胞膜貫通型のタンパク質で、内因性物質や外来の薬物などを基質として細胞内外を結ぶ輸送経路として機能しており、近年ではトランスポーターの遺伝子変異と薬物治療における血中濃度の関連性が指摘されている。代表的な排出系トランスポーターでありカンプトテシン誘導体を基質とするBreast Cancer Resistance Protein(BCRP)に着目し、日本人集団を対象として変異のスクリーニングを迅速に行うために選抜した変異部位を判定する方法の開発を行う。
9 一塩基多型特異的な増幅反応に基づくABO式血液型判定法の開発 浅利 優 旭川医科大学 尾川 直樹 旭川医科大学 血痕や毛髪からの抗原検査によるABO式血液型判定が困難な場合には、試料中に残存するDNAからの遺伝子型(一塩基多型)検査が有効である。本研究では、一塩基多型特異的な増幅反応を用いたABO式血液型判定法を開発する。増幅反応にはARMS原理に基づいてミスマッチ塩基を導入したプライマーを設計し、連続PCR法を用いることで検出感度、特異性、簡便性の向上および低コスト化を図り、法医鑑定法としての実用化を目指す。
10 低酸素応答性転写因子を標的とする新規糖尿病性腎症治療法の開発 牧野 雄一 旭川医科大学 尾川 直樹 旭川医科大学 糖尿病性腎症は、人工透析導入の原疾患第一位に位置し、その克服は、臨床・社会医学的に重要な課題である。病理学的には腎糸球体メサンギウム細胞における細胞外基質産生の増加とメサンギウム領域の拡大を特徴とする。しかしながら、発症メカニズムは不明な点が多く、有効な予防、治療法も確立されていない。本研究開発では、糖尿病性腎症における低酸素応答性転写因子HIF-1の役割を明らかにし、新たな糖尿病性腎症治療法の開発を目指す。
11 血管平滑筋弛緩作用物質の簡易スクリーニング法の開発 仙葉 愼吾 旭川医科大学 尾川 直樹 旭川医科大学 本研究では、血管平滑筋の収縮・弛緩を制御する様々なタンパク質のリン酸化状態を簡便な電気泳動法によって同時に解析する方法を開発する。この方法を用いて、血管平滑筋弛緩作用を持つ様々な化合物の簡便なスクリーニング法を開発する。
26 腸管炎症と発癌に対する新規幹細胞治療の開発 有村 佳昭 札幌医科大学 一瀬 信敏 札幌医科大学 ドナー由来骨髄幹細胞のレシピエント生体内における機能、細胞運命を解明し、傷害腸管の修復・再生・発癌に対する新規幹細胞治療の開発を目的とする。骨髄間葉系幹細胞移植は、前処置下で、腸上皮細胞域へ生着し、腸炎急性期に、前処置なしでは、筋線維芽様細胞に分化し、回復期に有効であった。腸炎関連発癌モデルでは、発癌を抑制する傾向を認めた。動物レベルでの幹細胞治療研究から臨床応用への展開が本研究の最終目標である。
28 飲酒後における脳挫傷に対する抗酸化剤の臨床への応用 片田 竜一 札幌医科大学 一瀬 信敏 札幌医科大学 脳挫傷は生命機能予後に重大な影響を及ぼす。飲酒者の脳挫傷は重症化することが知られており脳挫傷後脳浮腫の管理が重要である。我々は動物実験において、アルコール摂取における脳挫傷後脳浮腫に対し抗酸化剤Nアセチルシステイン(NAC)を投与すると、脳浮腫が軽減し死亡率も改善することを示してきた。本研究では臨床治験として飲酒者の脳挫傷に対し抗酸化剤NACを処方した症例に画像、神経学的評価を行い治療薬としての適用を目指す。
32 新規レスベラトロール誘導体の開発と応用 堀尾 嘉幸 札幌医科大学 一瀬 信敏 札幌医科大学 レスベラトロールはブドウや赤ワインなどにある抗酸化ポリフェノールで、長寿遺伝子とも呼ばれる蛋白質脱アセチル化酵素SIRT1を活性化して細胞死を抑制する。研究者グループの濱田はレスベラトロールの各種糖誘導体をヤマゴボウなどにある天然酵素を用いて合成する。合成されたレスベラトロール誘導体の生理機能を堀尾が医学・分子生物学的に調べ、より高機能なレスベラトロール誘導体を開発しその医学への応用を図る。
56 トキソプラズマ症に対するTh1免疫誘導型ワクチンの開発 西川 義文 帯広畜産大学 田中 一郎 帯広畜産大学 人獣共通感染症であるトキソプラズマ症を制御するにはトキソプラズマ原虫特異的な細胞性免疫反応(Th1)を誘導することが重要であるため、Th1免疫誘導型ワクチンの開発を本研究の目的とする。原虫タンパク質ライブラリーよりTh1免疫を誘導できるワクチン抗原を選抜し、リポソームに封入することでモデルワクチンを作製する。マウスモデル評価系によりモデルワクチンの効果を検証し、応用へ向けた学術基盤を整備する。
69 標識反応の収率・再現性と選択的集積性の高いがん治療用放射性標識ペプチドの開発 秋澤 宏行 北海道医療大学 清水 條資 独立行政法人科学技術振興機構 最近、キレーターのDOTAを導入し、放射性金属の90Yとの錯形成により標識したペプチドが、がんの核医学治療薬剤として注目されている。しかし、この放射性ペプチドでは、90YとDOTAとの標識反応の収率・再現性が必ずしも高くないこと、また、正常な腎臓へも集積することが問題となる。そこで本研究では、これらの問題点を解消した90Y標識ペプチドを開発することを目的とする。
74 歯肉線維芽細胞を用いた骨再生医療への実用化研究 新井田 淳 北海道医療大学 蛸島 武広 北海道大学 異所性骨形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞成長因子(FGF)などを添加した人工骨材料の研究や開発が行なわれているが、担体や移植条件などに制限される傾向にある。本研究では、骨に近い場に存在し、BMP-2の発現やアルカリフォスファターゼの活性を有している歯肉線維芽細胞を用い培養骨を作製し、ヌードマウス皮下と頭頂骨に移植し新生骨の誘導を目的とし、実用化へ向けての手技の確立することを目標とする。
79 リポソームを利用した核酸治療薬の局所投与法の開発 西平 順 北海道情報大学 伊藤 征也 (財)北海道科学技術総合振興センター 核酸医薬は、その効果を期待されながら、生体中での不安定さから実用化が困難とされてきた。本研究では、癌の増殖や転移に関わるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)を標的とした核酸医薬を脂質二重層のリポソームで包含し、癌治療を目的としたドラグデリバリーシステム(DDS)による治療方法を開発する。本年度は、ヒト培養癌細胞を用いたin vitroおよび担癌マウスを用いたin vivo研究を実施する。
83 皮膚・粘膜上皮でのがんや感染症の予後診断法の開発 吉田 繁 北海道大学 清水 條資 独立行政法人科学技術振興機構 皮膚・粘膜免疫の主要な細胞であるNK細胞やγδT細胞はがん化や感染などストレスで誘導されるNKG2Dリガンド(NKG2DL)を認識することで活性化し、異常細胞を排除する。しかし、がん細胞やウイルス感染細胞は可溶型NKG2DLの産生やNKG2DLの発現抑制により免疫監視を回避している。本研究では可溶型NKG2DL測定方法の開発を行い、皮膚や生殖器粘膜上皮でのがんや感染症の予後診断法の確立を目指す。
88 麻薬性鎮痛薬の受容体結合の新規解析法の開発 井手 聡一郎 北海道大学 清水 條資 独立行政法人科学技術振興機構 麻薬性鎮痛薬の作用部位であるオピオイド受容体は、これまでに3つのサブタイプが同定されているが、各サブタイプにはサブクラスの存在が示唆されており、その有用な解析法は存在していない。本研究では、生体試料、および、受容体と種々のタンパク質を共発現させた培養細胞系と、複数の結合リガンドを組み合わせ多角的に解析し、麻薬性鎮痛薬のオピオイド受容体各サブクラスに対する結合の定量的解析法を開発することを目的とする。
94 免疫グロブリンとは異なる新規抗体試薬の開発 笠原 正典 北海道大学 清水 條資 独立行政法人科学技術振興機構 円口類の抗原認識分子 VLRはleucine-rich repeatモジュールを遺伝子再構成により繋ぎかえることにより、その抗原結合部位に免疫グロブリン(Ig)に匹敵する多様性を創出する。VLRはIgに比べて、1)結合親和性、安定性が高い、2)糖鎖抗原を効率よく認識する、などの利点を有している。本計画では、抗原特異的VLR抗体を作成する手法を確立し、腫瘍の臨床診断、病理診断に役立つ試薬の開発を試みる。
95 1次抗体直接標識プローブの開発と実用性に関する検討 山崎 美和子 北海道大学 清水 條資 独立行政法人科学技術振興機構 一般的な免疫組織化学法ではまず目的分子に対する一次抗体を反応させ、次に蛍光色素などで標識した二次抗体を反応させて可視化する。汎用性と利便性が高い方法だが、二つ以上の分子を同時検出するには一次抗体の動物種が異なる必要がある。本研究では酵素・蛍光物質・金コロイドなどの標識物質を一次抗体に結合させる直接法により、検出感度や特異性などの性能比較を行い、直接法抗体製品の開発の有用性と実用性を検討する。
113 ミツバチ由来スーパー抗菌ペプチドの創製 松本 謙一郎 北海道大学 須佐 太樹 北海道大学 ミツバチが産生する抗菌ペプチド、アピデシンはグラム陰性細菌に対して幅広い抗菌活性を示し、人体に安全であり、食品添加物や保存剤としての利用が期待される。しかしながら、実用化のためには、さらにアピデシンの抗菌活性を高める必要がある。本研究課題は、アピデシンを構成するアミノ酸を改変し、抗菌活性を向上させた「スーパーアピデシン」を、当研究室で開発したスクリーニング系を用いて創製することを目的とする。
114 診断用X線被曝線量測定のための小型線量計の開発と応用 石川 正純 北海道大学 須佐 太樹 北海道大学 本研究の目的は、診断用X線による患者の被曝をモニタできる小型の線量計を開発することである。X線診断画像では、わずかなコントラストの違いで疾患を診断する必要があるため、X線診断に影響を与えない材質で構成された線量計であることが望ましい。そこで、本研究では、プラスチックシンチレータを用いて、X線透視像にほとんど影響を与えず、かつ、正確な線量測定が可能な小型の線量計を開発する。
118 Srcチロシンキナーゼを標的とした滑膜肉腫の新規治療法の開発 渡部 琢哉 北海道大学 蛸島 武広 北海道大学 滑膜肉腫は特異な遺伝学的・細胞学的性質を有しており、現在のところ有効な化学療法は存在しない。研究者らはSrcチロシンキナーゼの活性を阻害することにより、滑膜肉腫細胞の増殖能と運動能を著しく抑制できることを見出した。この成果に基づき、Srcチロシンキナーゼを標的とした滑膜肉腫に対する新規治療法を確立するための第二段階として、マウスを用いた非臨床試験を行ない、本薬剤の実用化への可能性を探る。
119 生体内特異的な癌抗原の同定とそれを標的とした治療法の開発 津田 真寿美 北海道大学 蛸島 武広 北海道大学 腫瘍組織中の癌細胞は、単独培養条件下とは異なり、腫瘍微小環境を構成する種々の間質細胞との相互作用が要求される。この環境の相違は、培養細胞と組織中癌細胞間の遺伝子発現プロファイルに変化を生じさせ、実験段階と臨床現場間における抗がん剤の効能の格差にも繋がる。本研究では、癌細胞が腫瘍微小環境に適応するために必要な因子を探索、組織としての癌の性質を理解し、それを標的とした治療技術の確立を目指す。
120 エンドサイトーシス制御因子を標的とした抗ウイルス療法の開発と実用化 大場 雄介 北海道大学 蛸島 武広 北海道大学 研究者らは蛍光蛋白質を用いたバイオイメージング手法による分子間相互作用解析の過程で、エンドゾーム上で特異的に生じる蛋白質間相互作用を発見した。この蛋白質間相互作用は、エンドサイトーシスの制御法と、新規の抗ウイルス感染対策の開発にいたる可能性が高い。本研究課題では、この相互作用を規定する因子の同定と機能解析を行うことで、新規の抗ウイルス薬開発の基盤を創出することを目標とする。
125 バイオマーカーを志向したアデノシンデアミナーゼ2の測定法開発 江川(岩城) 祥子 北海道薬科大学 東 市郎 北海道薬科大学 アデノシンデアミナーゼ(ADA)は二つのアイソザイムADA1とADA2からなる酵素であり、特にADA2活性はHIV感染症、結核、各種肝疾患等の患者血中で上昇することが知られている。しかしADA1と異なり、ADA2の性質はごく最近まで分子・遺伝子レベルで不明であった。申請者のグループは世界に先駆けてADA2精製に成功し、2つの抗ADA2ペプチド抗体を作成した。この抗体を用いて、ADA2の定量法を開発し、バイオマーカーとしての実用化を目指す。
150 網膜色素変性症のペプチド性治療薬の開発 石黒 誠一 弘前大学 工藤 重光 弘前大学 網膜色素変性症は網膜視細胞が原発的に傷害され、夜盲や視野狭窄、視力低下といった症状が段階的に発症する。発症頻度は国内外で3,000〜8,000 人に1 人の割合であり、未だ有効な治療法がない難治性疾患である。本課題は、この網膜色素変性症に対するペプチド性治療薬の開発を目的としており、本疾患のモデル動物であるRCSラットを用い、視細胞死に関与するミトコンドリアカルパインの活性を特異的に阻害する方法を検討するものである。
158 てんかんにおける遺伝子診断用DNAチップの開発 兼子 直 弘前大学 工藤 重光 弘前大学 てんかんにおける主たる治療法は抗てんかん薬(AED)による対症療法である。近年、責任遺伝子やAED代謝に関わる遺伝子多型と代謝能との関連も明らかになりつつあり、遺伝子診断により、責任遺伝子型から作用機序に則した最適なAEDを選択し、個々人の代謝能から投与量を決定する個別化治療の可能性が見えてきている。しかし、責任遺伝子及びAED代謝関連遺伝子が多岐に渡るため、時間・コスト面において効率的に遺伝子診断を行うツールの開発が必須である。
174 血管内膜損傷の新規診断システムの構築;白血球S100A遺伝子群のmRNA解析 人見 次郎 岩手医科大学 早川 信 岩手医科大学 血管内膜の損傷は、脳梗塞、心筋梗塞の原因となるアテローム血栓症の原因母地となる。この予防として血管内膜損傷の診断薬の開発が期待されるが、現在病変を正しく評価する診断薬は存在しない。しかし、申請者が発見したS100A12(CAAF1)蛋白は、白血球が産生し、そのmRNA量の測定や蛋白の血中濃度の測定により頚動脈の動脈硬化症患者と健常者を区別することができる。そこで、本研究では好中球が産生するS100AファミリーのmRNAの発現動態と血管内皮損傷の関連を明らかにし、mRNA量の測定が病態診断法として役立つか否かを評価する。
175 エネルギー弁別高速X線回析装置の開発 佐藤 英一 岩手医科大学 早川 信 岩手医科大学 汎用のX線回折装置(XRD)では、目的に応じてX線管のターゲット材が選択される。本研究ではタングステン(W)ターゲットのX線管を用い、回折されるX線のフォトンエネルギーをシリコン(Si)カウンターを用いて0.4keV程度の分解能で選択し、最大10Mcpsのレートでカウントする。特に残留応力測定、単結晶の評価、小角散乱用として用いることのできるx-yスキャン方式の高速エネルギー弁別二次元センサーを開発してXRD用として実用化することを目的としている。このセンサーを用いてデバイリングなどを撮影し、残留応力測定を主としたX線回折装置の実用化も目指す。
176 細胞接着・遊走促進作用をもつ新規インプラント材料の開発 鍵谷 忠慶 岩手医科大学 早川 信 岩手医科大学 インプラントは、歯科領域の欠損補綴において、義歯と並んで重要な役割を演じているが、埋入してから補綴が完了するまでに時間がかかる点が短所となっている。本研究は細胞接着・遊走促進作用、および骨形成促進作用をもつタンパク質を純チタン表面にコーティングすることで、治療に費やす時間を短縮し、感染リスクの低減可能な新しいインプラント材料を開発することを目的とする。
177 金属イオンを用いた新規口臭予防薬の開発 吉田 康夫 岩手医科大学 早川 信 岩手医科大学 口臭は口腔内細菌によるアミノ酸などの分解産物が主要な原因である。硫化水素やメチルメルカプタン等の揮発性硫化物は主要な口臭物質として認識されており、歯周病細菌によって主に歯周ポケットから産生されることから、口臭と歯周病の関連も示唆されている。国民の15%は口臭の悩みをもっているとの厚生労働省の調査にも拘らず、現在の口臭抑制剤の大半は口臭をマスクするものであり、原因療法に立脚した口臭抑制薬や予防薬は殆ど存在しない。そこで本研究では、臨床応用を目的とした口臭発生メカニズムに基づく口臭治療薬を開発する。
178 リンパ管を利用した抗癌剤投与経路の開発とその剤形 藤村 朗 岩手医科大学 早川 信 岩手医科大学 口腔領域のリンパ管の分布状況を検索し、有効に薬剤を吸収できる部位の特定を動物実験で確認してきた。これらの部位がヒトにおいても同様かどうかを形態的に検証し、実際に吸収量が十分であることを動物実験で検証する。さらにそれらの局所から薬剤をリンパ管にのみ吸収させるための薬剤剤形を開発する。
181 リハビリ診断支援のための歩行動作変化の定量化に関する研究 松田 浩一 岩手県立大学 岸本 輝昭 岩手県立大学 本研究では、歩行リハビリにおける動作変化の定量化システムを開発する。
理学療法の現場では、これまで経験的に把握されてきたリハビリ練習前後の変化について、定量的で具体的な指標が求められている。本研究では理学療法士が経験的に変化を読み取る知識とセンサから得られるデータとの分析を行うことにより、現場で日常的に活用できるシステムの構築を目指す。
190 培養細胞を用いたインフルエンザワクチン生産系の開発 山下 哲郎 岩手大学 小川 薫 岩手大学 インフルエンザワクチンの生産には、通常鶏の有精卵が用いられるが、この生産系は膨大な数の有精卵が必要で、新型インフルエンザが大流行するとワクチン生産が間に合わないことがある。また、ヒトとトリ両方に致死的な新型ウイルスが発現した場合、ヒナが死んでしまいワクチン用のウイルスが生産できない等の問題もあり、近年、動物培養細胞を用いたワクチン生産系の開発が進められている。そこで、本応募課題では、ネコ尿細管由来の培養細胞であるFKD細胞を用いたインフルエンザワクチン生産系の開発を行い、その実用化の可能性を探る。
195 ローズマリー由来のカルノシン酸のグルタチオンを介した脂肪細胞分化の抑制機構 佐藤 拓己 岩手大学 小川 薫 岩手大学 メタボリックシンドロームは内臓脂肪が原因なので、内臓脂肪の蓄積を阻害する成分が求められる。代表研究者は、脂肪細胞の分化を抑制する、ローズマリー由来のカルノシン酸に注目する。この抑制作用にはグルタチオンを介している。本課題はカルノシン酸が、グルタチオンを介してマウスの脂肪蓄積を抑制することを証明する。これらの知見は、ローズマリー抽出物を、脂肪肝を予防する機能性食品として実用化するために必要である。
205 歩行パターン再学習による犬脊髄損傷新規治療法の開発 神志那 弘明 岩手大学 中戸川 明広 岩手大学 近年、椎間板ヘルニアによる脊髄損傷が犬で激増している。重症例では後肢は完全に麻痺し、人の脊髄損傷と同様に有効な治療法がない。本研究は、後肢が完全に麻痺した脊髄損傷犬を再び自力で歩行できるように治療する方法の確立を目指している。そのために、犬用歩行トレーニング装置を試作し、歩行パターンの再学習効果を高める試みを行う。
206 脳神経系疾患診断のためのクレアチンキナーゼBサブユニットの免疫学的定量法の確立 安田 準 岩手大学 牧野 平 岩手大学 クレアチンキナーゼ(CK)は神経系や筋肉に含まれる酵素である。CKは神経型(B)と筋肉型(M)のサブユニットで構成される2量体である。脳神経系疾患では、CKのBBアイソザイム(CK-BB)が血液中に漏出してくるが、漏出量(活性)は病態に応じて変動する。この研究では、犬をモデル動物として用い、動物の脳神経系疾患の病態やその経過を正確に診断するために、血液中CK-BBの免疫学的定量法を確立する。
209 高血糖新規脂質糖化産物マーカーの生理作用究明と当該指標の実用化検証 庄子 真樹 宮城県産業技術総合センター 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 従来、糖尿病症状の診断に血糖値とHbA1Cが用いられてきたが、肥満を伴う糖尿病やその合併症の診断にはより総合的判断が必要と考えられ、新指標の開発が切望されている。これまで、我々は脂質AGE(脂質の後期反応生成物)なる物質が高血糖患者の血中に蓄積していることを認めたが、その生理作用に関しては知見がない。そこで、遺伝子発現解析で脂質AGEの生理作用を解明し、新指標としての病態生理学的意義を見出す。
211 がんで異常に発現亢進する形質膜型シアリダーゼを標的としたがん診断薬の開発 宮城 妙子 宮城県立がんセンター研究所 佐藤 郁郎 宮城県立がんセンター(研究所) シアル酸は糖蛋白や糖脂質糖鎖の末端に位置し、腫瘍マーカーにはシアル酸を持つものが多い。本課題では、この脱離によってシアル酸量調節に重要な役割を果たすシアリダーゼに着目する。特に、各種がんで異常亢進する形質膜型シアリダーゼ(NEU3)を標的として、がんの新しい診断薬開発をめざす。これまでの研究成果に基づき、微量RT-PCRによる発現量の定量、特異抗体による免疫染色、さらに血清診断キットの構築などを試みる。
220 降圧と独立した新規「腎障害改善薬」の開発 米城 淑美 東北大学 芝山 多香子 東北大学 「高血圧性腎障害」に対する新規PAI-1(Plasminogen activator inhibitor-1)阻害剤の降圧に依存しない腎保護作用のメカニズムを検討し、同薬の腎保護薬としての臨床応用に繋げることを目的とする。Dahl食塩感受性ラットに高食塩食を与え、高血圧性腎障害を起こす。新規PAI-1阻害剤を4週間投与し、組織および遺伝子発現の変化を解析する。
233 神経新生を促進する「バナジウム化合物」の前臨床試験とメカニズムの研究 福永 浩司 東北大学 芝山 多香子 東北大学 万能細胞 (iPS 細胞)は神経変性疾患の再生医療への応用が期待されている。私達は末梢投与により神経幹細胞の分化と成熟を促進する低分子化合物としてバナジウム化合物 [VO(OPT)] を創製した。VO(OPT) はインスリン様作用を有して、血糖降下作用が確認されている。これまでの研究で臓器毒性が低く、脳梗塞モデル動物において神経新生を促進して、認知機能を改善することを明らかにした。本研究では VO(OPT) の末梢および中枢での薬物動態と神経新生のメカニズムを明らかにして、再生医療へ応用を目指す。
234 iPS細胞使用の安全装置としての「細胞運命制御遺伝子治療法」の有効性評価研究 佐藤 岳哉 東北大学 芝山 多香子 東北大学 多分化能を有するiPS細胞の作製方法は未完成で、その方法に起因する発ガンの可能性もある。「細胞運命制御遺伝子治療法」は、「遺伝子導入細胞」のみを低濃度薬剤処理で細胞死を誘導可能にする。本研究では、この方法をiPS細胞に応用し、「細胞運命制御遺伝子治療法」を施すことで細胞を細胞死へと誘導するかの検討を行い、iPS細胞の再生医療分野への応用時における細胞の安全装置としての有効性を評価する。
235 網膜変性疾患治療用の薬物徐放性に優れた「強膜上移植型」インプラントの開発 永井 展裕 東北大学 芝山 多香子 東北大学 加齢黄斑変性および網膜色素変性症は原因不明に網膜神経が変性する疾患であり確立された治療法はない。本研究は変性によって失われていく網膜細胞の生存を維持するために、神経栄養因子などを網膜内に安全に持続的に供給して網膜変性を抑制する網膜保護治療用デバイスの開発が目的である。標的部位への局所的薬物送達と患者への身体的・経済的負担の軽減を可能とする「眼外移植可能な経強膜ドラッグデリバリーシステム」の作製を目指す。
236 TSLPの産生誘導剤の開発と応用 平澤 典保 東北大学 相原 淳子 東北大学 Thymic stromal lymphopoietin (TSLP) は主として上皮細胞が産生し、アレルギーの誘発に大きく関与しているサイトカインである。しかし現状ではTSLPの産生を選択的かつ簡便に誘導する方法がない。本研究では、申請者が発見したTSLP産生誘導活性をもつ化合物をリード化合物にして、より強力なTSLP産生誘導剤を開発し、動物レベル及び細胞培養系における TSLP産生抑制薬のハイスループットなスクリーニング系を確立する。
237 がんの悪性度を機能的に診断する新しい評価法の開発 鈴木 孝幸 東北大学 相原 淳子 東北大学 がんは2010年には心臓疾患を抜いて世界第1位の死亡原因になると世界保険機関が報告している日本における3大疾病の1つである。その病気の進行は非常にゆっくりとしており、良性腫瘍から悪性腫瘍になるのには数年かかる。本研究ではこれまで診断が不可能だった機能的に悪性腫瘍になる前段階の腫瘍の状態を、新たに開発する“超高感度血管新生因子検出法”を用いて機能的に評価する方法を開発することを目的とする。本評価法により、従来までの組織学や腫瘍マーカーといった静的な評価法以外に実際に今病理組織が機能的にどれくらい悪性度が高い腫瘍なのかを動的に定量的に評価できる。
238 がん早期診断へ向けたメチル化miRNA遺伝子による遺伝子診断セットの開発 福重 真一 東北大学 渡邉 君子 東北大学 【目的】がんの診断マーカーとなるメチル化miRNA遺伝子の効率的な探索法の開発と診断への応用を目的とする。【内容】膵がんを例として、メチルCpG配列を標的とする転写活性化(MeTA)とmiRNAのマイクロアレイを組み合わせ、3種の膵がん細胞株でメチル化miRNA遺伝子が得られる効率を調べる。また、すべての細胞で共通に発現異常を示すメチル化miRNA遺伝子を見つけ、多段階発がん過程におけるメチル化時期を決定し、診断への応用の可能性を検討する。
241 母体血による非侵襲的インプリント異常症出生前診断システムの開発 有馬 隆博 東北大学 渡邉 君子 東北大学 インプリント異常症は、インプリント遺伝子のDNAメチル化の異常に起因し、先天性疾患、乳幼児の身体的、精神的発達や行動異常、さらには癌や生活習慣病等の原因となる。また、インプリント異常症の出生前(胎内)診断は、発症の予防、新生児の救命治療に直結し、罹患者の予後と家族の負担を大きく左右する。本研究では、母体血中に微量に存在する胎児有核赤血球について、特異的かつ効率的に自動分離、回収する手法について検討し、非侵襲的インプリント異常症の出生前診断法の実用化を目標とする。
243 組織幹細胞機能維持液の開発 久保 裕司 東北大学 渡邉 君子 東北大学 組織にはそれぞれ固有の幹細胞が存在し、臓器損傷後の組織修復に関与している。iPS細胞やES細胞など万能幹細胞研究の進歩に対し、こういった組織固有の幹細胞研究は細胞保存の困難性によりまだ進んでいない。本研究の目的は、各臓器に存在する組織幹細胞の活性と機能を損なわない組織幹細胞機能維持液を開発・実用化することである。このことにより、iPS細胞等では解析困難な加齢に伴う難治性疾患に対する新たな理解が生まれ、高齢者疾患に対する新規治療法開発に寄与できると考える。
257 アルドステロン合成酵素遺伝子安定発現株を用いたオーダーメイド高血圧治療 菅原 明 東北大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 本邦における4,000万人の高血圧患者中で、血圧がコントロールされているのは1,000万人に過ぎない。この現状を改善するためには、高血圧患者の病態に応じたオーダーメイド治療の確立が不可欠である。その推進のために、本研究ではヒトアルドステロン合成酵素(CYP11B2)遺伝子プロモーター/ルシフェラーゼキメラ発現ベクターを安定発現させたヒト副腎癌H295R細胞株を樹立し、その細胞系を用いてヒト患者血漿による簡便な高血圧の病態鑑別法を確立することを目的とする。
258 緑膿菌の新規タンパク質分泌系を標的とした抗菌剤のスクリーニング系の開発 米山 裕 東北大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や多剤耐性緑膿菌等の出現による細菌感染症の脅威に対抗するためには、新規骨格を有する抗菌剤及び新規標的を狙った新薬の研究開発が喫緊の課題である。最近、緑膿菌の病原因子の機能発現に、普遍的なタンパク質分泌系とは異なる分泌系が関わることが明らかとなった。本研究では、この新しい分泌系を標的とした従来の評価系とは異なる抗菌剤の新規スクリーニング系の開発を行う。
260 癌疾患モデルマウスの in vivo ナノイメージング法の開発とナノ医療への応用 権田 幸祐 東北大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 ナノサイズ薬物(10-100nm)を用いた癌治療効果の検討には、腫瘍細胞と薬剤分子間作用を送達1粒子レベルで生体観察することが重要である。これまでに、申請者は独自光学系を用いてin vivoイメージング装置を開発し、担癌マウスにおいて位置精度9nmで数分間連続的にナノ粒子の動態や癌細胞の形態を捉えることに成功した。しかし数分の観察では薬剤分子動態の観察には不十分である。本研究では呼吸や拍動由来の振動(μm〜mm)影響を排除し、ナノサイズ薬物の動態や効果を長時間安定に評価できる計測装置の開発を行う。
261 腎特異的セリンプロテアーゼ阻害因子メグシンを標的とする創薬研究 段 孝 東北大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 腎不全(透析導入)の原疾患第1位の糖尿性腎症の発症に内因性セリンプロテアーゼ阻害因子メグシンの関与が考えられる。本研究では、メグシン阻害薬探索に取り組み、動物モデルで検証する。具体的には、①メグシンの発現精製と結晶化、②構造解析とバーチャルスクリーニング、③化合物のin vitro活性評価、④2型糖尿病モデル動物を用いて薬効を評価する。本研究終了後、実用化研究を製薬企業との共同研究により進める。
262 骨再生材料(リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体)のヒトへの応用 越後 成志 東北大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 歯科・口腔外科領域における骨欠損部への骨補填は、自家骨移植が最も有効とされている。この自家骨に変る骨再生材料として、リン酸オクタカルシウム(OCP)の合成物と、ブタ皮膚由来アテロコラーゲン(Col)との複合材料(OCP/Col)を当研究グループで開発し、小動物や成犬の人工的骨欠損部に使用し、異害作用もなく優れた骨再生能を有することは確認済みである。今回、歯科・口腔外科領域におけるヒトの代表的な骨欠損症例にOCP/Colを適用し、その有効性を検討する予定である。
263 認知症周辺症状を改善する薬剤の創製 中澤 孝浩 東北薬科大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 認知症周辺症状改善効果を示す漢方処方、釣藤散及び抑肝散の主要アルカロイド成分に抗精神病作用が認められることを発見・報告した。また、このアルカロイドの生体内代謝物が抗精神病作用の活性本体であることが分かった。しかしこの活性代謝物は消化管からの吸収性及び血液脳関門の通過性が悪い。本課題では、この活性代謝物のファーマコフォアー以外の部位に脂溶性基を導入することで、化合物の吸収性及び血液脳関門の通過性の向上を図り、認知症周辺症状に有効な新規抗精神病薬の開発に繋げる。
264 スフィンゴ糖脂質蓄積症の新規治療薬としてのケミカルシャペロン療法剤の開発 高畑 廣紀 東北薬科大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 スフィンゴ糖脂質(GSL)蓄積症は、リソソーム酵素の活性低下によって引き起こされる先天性疾患であり、近年新しい分子治療法としてケミカルシャペロン療法(CCT)がある。GSL蓄積症の一つであるゴーシェ病次世代型治療法を目指した新規CCTとして、イソファゴミン(IF)の2位にアルキル鎖を導入することで酵素への親和性が増して選択性の制御が期待されることから、2−アルキルイソファゴミンをデザイン、合成し、その開発を行うことを目的とする。
265 鎮痛耐性を形成しない新規難治性疼痛治療薬の開発 溝口 広一 東北薬科大学 森本 進治 福島大学 研究代表者らは近年、神経障害性疼痛に対しても極めて有効な新規麻薬性鎮痛薬を開発した。既存の麻薬性鎮痛薬は、鎮痛耐性形成に伴う増量による副作用の増大が問題となっている。そこで、研究代表者らが開発した新規麻薬性鎮痛薬の鎮痛耐性形成能を検討する。仮に新規麻薬性鎮痛薬に鎮痛耐性形成能が有った場合でも、その形成強度が既存の麻薬性鎮痛薬よりも弱く、かつ既存の麻薬性鎮痛薬と交差鎮痛耐性を示さない場合、新規麻薬性鎮痛薬をオピオイドローテーションに導入し、患者のQOLを向上することが可能となる。
266 iPS細胞を用いた薬物代謝酵素誘導評価可能な新手法の開発 永田 清 東北薬科大学 森本 進治 福島大学 薬物の投与による薬物代謝酵素の誘導は薬理効果を低下させるために、薬物の投与時あるいは医薬品の開発の過程において薬物代謝酵素誘導を予測することが求められている。しかしながら、現在簡便かつ正確に使用できる酵素誘導の評価系がまだ確立されていない。本研究では簡便でより正確にその予測を可能とするために、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた薬物代謝酵素誘導の新規評価系の構築することを目的とする。
272 未熟児用無拘束無侵襲心拍・呼吸モニタの開発 長南 征二 秋田県立大学 小川 斗鴻 秋田県立大学 未熟児は全身状態が極めて不安定であり、出生後は新生児集中治療用容器(NICU)にて呼吸・心拍のモニタリングおよび治療を受ける。NICUにてのモニタリングはセンサを直接新生児の肌に当てるため、皮膚に外傷ができやすく、感染や浸出液の漏出など重篤な医学的問題の要因となる。本研究はこの問題の解決のため、NICU内の未熟児ベットシーツ下に置き、無拘束無侵襲で呼吸・心拍のセンシングを行うセンサを開発する。具体的には、高分子圧電体であるポリフッ化ビニリデンフィルムを用いたシート状の柔軟センサを開発するものである。
276 眼球荷重センシング技術の開発 西村 弘美 秋田県立脳血管研究センター(研究局) 鈴木 英一 秋田県学術国際部科学技術課医工連携プロジェクトチーム 開頭術における合併症として、1%以下であるが失明などの視力障害に至る事例があり、発症した場合には極めて予後不良となる。この原因として術中、眼球に対する直接外力の関与が疑われる多数の報告がある。そこで、眼球荷重をリアルタイムに計測し、術者に対して圧迫解除や除圧操作を喚起できれば開頭手術合併症である視力障害の予防が可能になる。そのため、本研究課題では眼瞼上で眼球荷重を高精度に計測可能なバルーン型荷重センシング技術を開発する。
277 再生医療用新規基剤の開発 榊 秀次郎 秋田工業高等専門学校 佐々木 揚 秋田県学術国際部科学技術課医工連携プロジェクトチーム 現在、ES細胞やiPS細胞を用いた細胞レベル、そして細胞を積層した組織レベル、さらには臓器などの器官レベルに再生する研究が世界中で取り組まれている。これまでに、申請者はこれら幹細胞からホスホリルコリン基含有高分子を用いて均一な胚様体を作製する培養容器の技術開発に成功し、実用化させてきた。本研究ではさらに、光反応性高分子や温度感受性高分子などを培養容器に表面修飾し、同一培養容器で胚様体から目的とする細胞・組織へ分化誘導可能な培養技術を開発する。
280 歯胚前駆細胞の積層化培養を駆使した歯再生のための新しい歯胚形成技術の開発 小代田 宗一 秋田大学 仙波 日出夫 秋田大学 歯再生のための歯胚形成には、エナメル芽前駆細胞と象牙芽前駆細胞の細胞間の相互作用が必要であり、両細胞の適切な空間配置と細胞密度が重要である。そこで、通常組織に見られるような「細胞の積層化」を可能とする新たな培養法を駆使し、2種の細胞間に適切な相互作用を誘導できる3次元培養組織を構築する。この積層化培養法と腎臓皮膜内培養法を組み合わせることにより、歯胚形成率を飛躍的に向上できる。
281 感温性磁性体を用いた悪性腫瘍の低侵襲的温熱療法に関する研究 小川 純一 秋田大学 仙波 日出夫 秋田大学 癌細胞は、正常細胞と異なり43℃近傍でアポトーシス・壊死が増大する。この性質を応用し、癌に対して温熱療法が行われている。我々は、一定の温度に達すると磁性が失われ、発熱が停止する固有のキュリー温度を有する感温性磁性体を悪性腫瘍内に注入し、体表からの高周波磁場誘導加熱で正確に温度自動制御可能な、悪性腫瘍の低侵襲的温熱療法を考案した。従来の治療に比べて、再発に際し何回でも非観血的に治療が行える。
282 レチノイド受容体をターゲットにした新規アレルギー疾患治療薬の開発 植木 重治 秋田大学 仙波 日出夫 秋田大学 近年、ビタミンAの代謝産物であるレチノイドは、免疫反応をTh2バランスに偏奇させるという研究結果が集積しつつある。しかし、生体内でレチノイドのアレルギー反応形成、疾患モデルでの研究はほとんどなく、また炎症細胞に対する作用メカニズムも不明な点が多い。本研究では、レチノイドの核内受容体をターゲットとした、新しいコンセプトのアレルギー疾患治療薬を開発する基盤研究を行い、その可能性を検証する。
301 再生代用骨部材としての耐衝撃性と耐摩耗性を有する新しいアパタイト真空焼結体の開発 田村 賢一 日本大学 松岡 義人 日本大学 本研究の最終目的は、生体親和性のあるTMA(チタンメディカルアパタイト)真空焼結体からCAD・CAM切削加工により骨再生するアパタイト製の代用骨部材を製作し、アレルギーや骨癒合不良による再手術を無くすと共に早期リハビリ開始の促進である。応募課題の研究では、実用化に必要なTMA真空焼結体の耐衝撃性と耐摩耗性の評価をシャルピー衝撃試験機と摩耗試験機で行い、代用骨部材としての性能向上を図る。
306 iPS細胞を用いた喉頭の軟骨再生技術に関する研究 野本 幸男 福島県立医科大学 田村 光彦 独立行政法人科学技術振興機構 臨床において癌や外傷、炎症などにより喉頭や気管の一部の切除が必要となる場合があり、有効かつ安全な気道再建材料の開発は急務である。本研究では、喉頭の軟骨再生に最適な足場材料の開発、マウス線維芽細胞由来iPS細胞の軟骨細胞への分化誘導技術の開発を行うとともに、この両者を組み合わせて得られた軟骨組織に関して生体内での評価を行い、喉頭の内腔保持を担う骨格として利用可能な軟骨組織の作製手法を確立し、気道の再生における有用性、長期安定性などについて検証する。
327 耐熱性DNAポリメラーゼの新規3’ホスホエステラーゼ活性を用いた遺伝子増幅法 松井 郁夫 独立行政法人産業技術総合研究所 小高 正人 独立行政法人産業技術総合研究所 我々はPhPolDのMre11様のサブユニットが強い3’ホスホエステラーゼ活性を有することを発見した。しかし、3’ホスホエステラーゼの反応中心が3’-5’エキソヌクレアーゼのそれと同一か否かは未だ明らかではない。本提案では、両活性が同一反応中心によるか否かを明らかにし、蛍光色素とクエンチャー物質の種類とプラーマーの長さを検討し、リアルタイムPCRへの応用を図る。
328 骨髄高転移性乳癌細胞で亢進している転移マーカーの解析 岡田 知子 独立行政法人産業技術総合研究所 小高 正人 独立行政法人産業技術総合研究所 近年日本人女性に増えて来た乳癌は、高率で骨髄へ転移し患者の生活の質を低下させる。一方で、乳癌の骨髄転移診断マーカーは未解明のままであり、この解析を本課題の目的とする。具体的には私共が近年新規に樹立した骨髄高転移性乳癌細胞と、その親株の低転移性乳癌細胞を比較し、遺伝子発現の大きく亢進している特定因子の発現を抑制して、その性状の変化を解析する。最終的な目標は、乳癌の骨髄転移マーカーを同定する事である。
329 動物実験に代わる循環器系医療機器の血液適合性評価法確立のための試験研究 丸山 修 独立行政法人産業技術総合研究所 池田 喜一 独立行政法人産業技術総合研究所 循環器系医療機器の開発においては、血液適合性を確認する評価を行うことが必須となる。一般に、血液適合性評価は、ウシやヒツジなどの大型実験動物を使って行われるが、実施できるのは、それらの設備および術医を備えた研究機関にとどまるのが現状である。本提案では、化学実験室で実施可能なin vitroによる血液適合性評価法を確立し、その試験キットの実用化を目指すとともに、循環器系医療機器開発促進に貢献する。
352 多剤耐性アシネトバクター選択検出培地の開発と応用 林 俊治 自治医科大学 松枝 健一 自治医科大学 多剤耐性アシネトバクター感染症の治療は困難である。さらに、本菌は医療施設を汚染し院内感染を起こす。しかし、本菌による汚染箇所の特定は困難である。そこで、多剤耐性アシネトバクターを検出するための選択培地を開発し、本菌による汚染箇所の特定を容易にする。具体的には、我々が開発した培地の「多剤耐性アシネトバクター検出能力」を実験的・臨床的に評価し、この培地が医療施設で実際に使用可能であるかを検討する。
353 心筋細胞の再プログラミングによるバイオペースメーカーの作製 鷹野 誠 自治医科大学 松枝 健一 自治医科大学 徐脈性不整脈の新たな治療法としてバイオペースメーカーが注目されている。我々は容易に入手できる右心房筋細胞を再プログラミングし、バイオペースメーカーを作製することを試みる。洞房結節特異的な転写因子をマイクロアレイによって網羅的に同定し、アデノウイルスベクターにより心房筋細胞に遺伝子導入する。これにより洞房結節特有のイオンチャネル遺伝子の発現パターンを誘導しうる転写因子の組み合わせを決定する。
370 難治性乳がんを標的としたペプチド薬剤の開発 山田 圭一 群馬大学 小暮 広行 群馬大学 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、一般的に予後不良の難治性乳がんであり、分子標的療法が存在しない。本研究課題では、培養TNBC細胞にて抗腫瘍効果を確認しているハロゲン含有環状ペプチドをリード化合物として分子標的治療薬の開発を目指す。具体的には前述のリード化合物をもとに作成したペプチドライブラリーを担がんマウスに投与し、それらのin vivo効果を評価をする。
372 低酸素病態イメージング技術の実用化 穂坂 正博 群馬大学 塚田 光芳 群馬大学 生体内における低酸素状態は、がん、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの病態組織で観察され、我国の三大死亡原因、癌、脳卒中、心筋梗塞の基本的病態である。これまで、イリジウム錯体が低酸素環境で発光する特性を利用して、低酸素状態にあるがん組織をイメージングすることに成功している。本研究では組織の低酸素状態をより鮮明に観察する高感度化と長波長化を施した改良体の検証、皮膚塗布による投与法の確立、がん以外の低酸素病態のイメージングを行う。
373 モデルマウスを利用した口蓋裂治療法の開発 柳川 右千夫 群馬大学 塚田 光芳 群馬大学 口蓋裂は、ヒトでは約500〜1000人に1人が発症する頻度の多い疾患である。我々が作成した小胞型GABAトランスポーターノックアウトマウス(VGAT KOマウス)では全例で口蓋裂が生じる。そこで、本研究ではVGAT KOマウスが口蓋裂のモデルマウスになることを利用する。VGAT KOマウス胎仔にグリシントランスポーター阻害剤などの抑制性神経伝達作用薬を投与し、口蓋裂が治癒できるかどうかをアッセイすることにより「口蓋裂発生抑制因子」を探索し、口蓋裂治療に貢献する。
374 細胞間シグナルシステムを標的とした新規うつ診断法・抗うつ薬の開発 大西 浩史 群馬大学 塚田 光芳 群馬大学 2つの膜蛋白質SHPS-1とCD47は、互いの細胞外領域が細胞間で結合し、双方向性にシグナルを伝えるCD47-SHPS-1系を形成する。代表研究者は、CD47-SHPS-1系の機能異常と「うつ」等のストレス性精神疾患の関連を明らかにしつつある。そこで本申請試験では、SHPS-1遺伝子多型に基づいたうつ病態の診断法の確立を目指とともに、CD47-SHPS-1系シグナルを標的とした抗うつ薬開発を目指す。
375 ポックリ病の新しいマーカーとしてのレムナントリポ蛋白質とスフィンゴシン1-リン酸 佐藤 幸市 群馬大学 塚田 光芳 群馬大学 ポックリ病は「健康な青壮年層の男性が夜間就寝中に突然発症して短時間で死亡する原因不明の病態」どおりその病因は全く不明である。本研究では我々が見出した血漿中レムナントリポ蛋白質とポックリ死との関連研究を発展させ脂質性シグナル分子であるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)の役割を解析し、新しい診断、予知マーカーの確立を目指す。
376 受容体型チロシンホスファターゼSAP-1を標的とした炎症性腸疾患の新たな治療法の開発 村田 陽二 群馬大学 塚田 光芳 群馬大学 クローン病や潰瘍性腸疾患に代表される炎症性腸疾患は、主に腸管内の免疫制御機構の破綻により発症する難治性の疾患である。また、我が国においてその罹患率は増加の一途をたどっており、有効な治療薬の開発が望まれている。最近、研究代表者は消化管粘膜上皮細胞に特異的に発現する受容体型チロシンホスファターゼSAP-1が、炎症性腸疾患の発症を抑制的に制御することを見出している。そこで本研究では、SAP-1の機能を制御することにより新たな炎症性腸疾患の治療法の開発を目指している。
377 新規免疫制御剤の開発 久保原 禅 群馬大学 塚田 光芳 群馬大学 細胞性粘菌Dictyostelium discoideumは土壌微生物の一種である。近年我々は、D. discoideum由来の低分子物質DIF-1 [1-(3,5-dichloro-2,6-dihydroxy-4-methoxyphenyl)hexan-1-one]とその誘導体がJurkat T細胞のIL-2産生に影響することを発見した。本研究ではこの発見に基づき、全く新しいタイプの免疫制御剤の開発を目指す。
400 脳機能改善薬としてのNMDA受容体チャネルブロッカーの創製 柏木 敬子 千葉科学大学 小野 洋一 千葉大学 NMDA受容体を介したCa2+流入が、脳虚血時の機能障害に強く関与していることから、活性及び選択性の高いNMDAチャネルブロッカーが開発されれば脳機能改善薬として極めて有望である。本試験研究では、既存の神経作用薬に種々のポリアミン誘導体を結合させ、より強力なチャネルブロック作用を有した脳内移行性の良い化合物の合成展開と評価を行うことで、臨床応用可能なNMDA受容体チャネルブロッカーの創製を目指す。
408 スプライシング阻害による新規抗癌作用メカニズムの解明と新規抗癌剤スクリーニング用アッセイ系の構築 松下 一之 千葉大学 富岡 登 (財)千葉県産業振興センター 癌ではc-myc遺伝子の発現増大とともに種々の遺伝子のスプライシング変異が多く起こっている。つまりこの両方を分子標的にすることにより特異性が高く副作用の少ない癌治療薬剤が開発できる。本研究ではc-myc遺伝子の転写抑制と遺伝子のスプライシングの双方に関与しているFIR(FBP Interacting Repressor)とその遺伝子産物の機能解析を行い両者の抗がん剤スクリーニング用アッセイ系の確立も目指す。
409 赤外分光法による血中カイロミクロン濃度の無試薬測定法の開発 野村 文夫 千葉大学 井上 里志 千葉大学 赤外分光法を血清成分測定に応用すると、無試薬、微量検体量で迅速な血液検査が可能となる。メタボリックシンドロームさらには動脈硬化の要因ともなる脂質異常症の原因探索の為には血中リポ蛋白測定が必要であるが、その測定には煩雑で長時間を要する超遠心法や電気泳動法が必要となる。当課題は、リポ蛋白の一つであるカイロミクロンの濃度測定に赤外分光法を応用して、迅速簡便な測定法を開発することである。
415 神経ペプチドシグナル伝達を指標にした下咽頭癌遠隔転移予測システムの開発研究 花澤 豊行 千葉大学 小野 洋一 千葉大学 下咽頭癌は予後不良な癌であり、5年生存率は30%程度である。これまでの臨床検体を用いたゲノム解析から、複数の神経ペプチドが、下咽頭癌の転移や再発に関与していることが明らかとなってきた。本研究においては、これら神経ペプチド-受容体シグナルを指標とした遠隔転移患者を見極める診断法の開発を行い、これら患者に集学的治療を施し治療成績向上を目的とする臨床研究への道筋をつけるものである。
418 真菌細菌相互作用の新規分子機構に基づく抗真菌薬のシード化合物の探索 川本 進 千葉大学 中筋 公吉 千葉大学 申請者らは最近、真菌細菌相互作用の新規分子機構を見出した(J Bacteriol 189:4815, 2007)。病原真菌クリプトコックスに黄色ブドウ球菌が付着すると真菌の死滅が誘導され、その現象に必要な細菌側因子として菌体表層酵素トリオースリン酸イソメラーゼ (TPI)を同定した。本研究ではTPI分子の本現象に関わる部分を検索し、クリプトコックスに対する抗真菌薬シード化合物の創出を目指す。
419 コレステロール低下薬の迅速スクリーニング 梅野 太輔 千葉大学 中筋 公吉 千葉大学 高脂血症の予防または治療を目的としたコレステロール低下薬として、スクアレン合成酵素の阻害剤が探索されてきた。しかしSqSは、その基質(ファルネシルピロリン酸)も産物(スクアレン)も無色無臭であり、その活性への影響をハイスループットに分析することが困難である。本課題は、我々が独自に開発したスクアレン活性の可視化技術をもとに、細胞ベースの簡便かつ迅速なスクリーニング系を構築する。
426 テネイシン−Cを分子標的とした難治性炎症性疾患治療薬の開発 深井 文雄 東京理科大学 船越 安信 東京理科大学 炎症部位で高発現するテネイシン(TN)-Cの断片であるTNIIIA2が、炎症の主因の単球、T細胞の血管外浸潤と停滞を促進し、TNIIIA2中和抗体がこれらを抑制することをin vitro実験系により見いだした。本研究では、TNIIIA2中和抗体を抗炎症薬として利用することを前提として、その標的疾患を特定すると共に、in vivo実験に適用する抗マウスTNIIIA2抗体を調製する。
428 新規虚血再灌流障害保護薬の開発 石毛 久美子 日本大学 渡辺 麻裕 日本大学 脳梗塞のような脳虚血再灌流障害により、脳神経障害が誘発されるが、有効な治療薬は少ない。そこで、脳虚血再灌流障害の新規治療薬開発を目的とし、最近、我々が、脳虚血モデルマウスで細胞保護効果を認め特許出願した化合物を出発点に、より有効な物質を探索する。実験では、候補物質をリストアップし、培養細胞系で低酸素再酸素化誘発細胞死保護作用を指標に物質を絞り込んだ後、脳虚血モデルマウスにおける有効性を調べる。
433 組織選択的薬物分布促進剤の創薬に向けたP-糖タンパク分子複合体の解明 登美 斉俊 慶應義塾大学 堀内 正 慶應義塾大学 P-糖タンパクは多剤耐性および薬物の胎児・脳移行性の制限等に働く。トランスポーターは細胞内裏打ちタンパクと分子複合体を形成して細胞膜上に保持されるが、裏打ちタンパクの発現は組織毎に異なる。本研究では、裏打ちタンパク阻害による組織選択的な薬物組織分布促進剤の創薬を目指し、P-糖タンパク分子複合体形成およびそのメカニズムを組織毎に解析する。
434 神経細胞をin vitroで増殖させる技術の開発 味岡 逸樹 東京医科歯科大学 堀内 正 慶應義塾大学 最近、申請者らによって、分化した神経細胞がin vivoで増殖しうることが判明した。本研究では、その研究成果をさらに発展させ、分化した神経細胞をin vitroで増殖させる技術開発を目的とする。本技術開発は、既に分化した神経細胞の増殖を可能にするため、神経変性疾患等の再生医療実現にもつながるシーズ発掘研究である。
435 乳癌の悪性決定因子に対する阻害剤の探索と治療戦略の開発 有馬 好美 慶應義塾大学 堀内 正 慶應義塾大学 ホルモン受容体陰性でHER2陰性の乳癌には、細胞毒性抗癌剤が用いられるが、治療が奏効する症例としない症例が存在し、治療抵抗性の症例は極めて予後が悪い。治療反応性を判別することができる予測因子や治療法はまだわかっていない。本研究では、私達が悪性度を規定する因子として同定した新規タンパク質に対する阻害剤を探索し、分子背景に基づいた抗癌剤の選択と個別化された新たな治療戦略を構築することを目的とする。
436 高感度大腸癌マーカーの開発 藤田 知信 慶應義塾大学 堀内 正 慶應義塾大学 大腸癌の腫瘍マーカーとしてCEAとCA19-9が用いられているが、これらマーカーは大腸癌特異的ではなく、いずれも進行した大腸癌でしか上昇が認められず、早期から発現が上昇する新しい大腸癌マーカーの開発が世界的に期待されている。申請者は、きわめて初期の大腸癌から発現が認められる遺伝子を同定した。この遺伝子を早期診断や治療効果等の判定に用いる大腸癌マーカーとして開発し、新しい診断法や治療法の開発につなげる。
437 寄生虫感染診断薬を目指した糖鎖抗原の構築 羽田 紀康 慶應義塾大学 堀内 正 慶應義塾大学 寄生虫感染は発展途上国において重篤な問題となっており、日本に於いても、一部風土病として問題視されている。しかし創薬に関しては、ウイルスや細菌感染に対する医薬品開発に比べ、遅れている。そこで、いくつかの寄生虫の糖鎖抗原に注目し、化学合成により、単一で均一な化合物を提供し、感染のメカニズム解明への一助にするとともに、ワクチンや診断薬への応用をめざす。今回、マンソン住血吸虫由来の糖脂質を目的化合物に選んだ。
445 運動のインスリン感受性亢進効果を媒介する分子の同定とその活性化薬の探索 藤井 宣晴 首都大学東京 室山 丈夫 首都大学東京 2型糖尿病は、インスリンに対する感受性が低下することにより発症する。血糖を降下させるホルモンはインスリンのみのため、人類は糖尿病に対して極めて脆弱である。最近になって、運動時の「筋収縮」がインスリンの細胞内情報伝達経路を介さずに、強力な血糖降下作用を発揮することが明らかになった。この第二の血糖降下機序を形成する細胞内分子を同定することで、治療のための標的蛋白を定める。
467 生分解性ポリマーを用いた再生医療用中空糸モジュールの研究開発 星 和人 東京大学 小泉 祐延 (財)長野県テクノ財団 再生医療において、患者細胞の体外細胞培養による細胞の増殖が重要な技術となる。申請者らは、優れた細胞増殖と細菌汚染の防止を実現する中空糸モジュールを開発してきたが、モジュール内で増殖した細胞は一旦、モジュールから回収する必要があった。本申請では、モジュール内の素材の研究を進め、細胞回収を不要とした中空糸モジュールを検討し、再生医療における製造コスト・リスクの劇的な軽減を目指し研究を進める。
469 HNF4α活性阻害剤を利用した血中トリグリセリド・血糖値低下薬の開発 井上 順 東京大学 神谷 靖雄 独立行政法人科学技術振興機構 高トリグリセリド血症および空腹時高血糖値は、動脈硬化性疾患のリスクファクターとして広く知られている。核内レセプター型転写因子であるHNF4αは、肝臓からの脂質成分の分泌や糖新生を担う遺伝子を活性化する。本課題では、in vitroアッセイ系により既に見出しているHNF4α活性阻害剤の効果を、マウス個体を用いて評価することを目的としている。これにより、本化合物の臨床治療薬としての有用性を検討する。
487 カプサイシンによる無痛治療を目指した骨転移癌の治療薬創出 稲田 全規 東京農工大学 平田 美智子 東京農工大学 骨に転移した末期癌患者では、癌治療以上に痛みの緩和が課題となっている。本課題では申請者の化合物スクリーニングにより、癌より骨を守る作用が示されたカプサイシンを用いて、In vivo 痛み判定システムによる最終段階の評価を行う。培養において、神経細胞の脱分極作用を示したカプサイシンのモデル動物における痛み緩和作用を検討し、臨床試験を目標に、癌と痛みの双方を同時に抑制する、新規癌治療薬の開発を目指す。
497 遺伝子導入補助試薬の適用拡大 日臺 智明 日本大学 渡辺 麻裕 日本大学 Del-1タンパク質のE3モチーフが、in vitroにおいて非ウイルス性ベクターを用いた遺伝子導入効率を改善することが明らかになっている。本研究では、マウスへの生体内投与を行い、E3のin vivoにおける遺伝子導入効率向上効果と安全性について検討する。また、合成E3ペプチドを作成し、そのin vitro/in vivoにおける遺伝子導入効率向上効果の効果を検証し、量産化の可能性を探る。
515 新規細胞膜透過性シグナルポリペプチドアジュバントの開発 武下 文彦 横浜市立大学 福島 英明 (財)木原記念横浜生命科学振興財団 新規細胞膜透過性シグナルポリペプチドアジュバントN'-CARD-PTDを併用することで既製のワクチンの免疫原性を増強できることをあきらかにした(J Immunol 182:1593 2009、特願2008-220956)。本研究課題は、ワクチンアジュバントもしくは免疫調節薬としてN'-CARD-PTDの臨床治験に必須の諸条件を最短期間で整えることを目標とする。
517 カベオリンペプチドを用いた糖尿病治療への応用 石川 義弘 横浜市立大学 福島 英明 (財)木原記念横浜生命科学振興財団 糖尿病はインシュリン作用の欠乏によっておこる代表的代謝疾患であり、インスシュリン補充が理想的な治療法である。我々はカベオリンと呼ばれる膜構成蛋白に、内因性インシュリン増強作用があることを見出した。さらに30アミノ酸からなる短いペプチドのみでインシュリン効果の増強に十分であることも見出した。このカベオリンペプチドを用いて、全く作用機序の新しい安全で効果的な糖尿病治療薬の開発を試みる。
519 インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼによる抗ウイルス剤の開発 朴 三用 横浜市立大学 福島 英明 (財)木原記念横浜生命科学振興財団 RNAポリメラーゼはインフルエンザウイルスの増殖に必要不可欠で基本的であり変異は少なく、その阻害剤が開発されると普遍的にインフルエンザウイルスの増殖を抑えることが出来る。本申請者は、RNAポリメラーゼのPA-PB1サブユニット複合体の構造解明を世界初めて成功(Nature, 2008)しており、その構造情報に基づき、新規抗インフルエンザ剤を開発する事を目標とする。
530 多置換シクロブタン化合物の製造方法と抗腫瘍剤リード化合物の創製 高尾 賢一 慶應義塾大学 堀内 正 慶應義塾大学 全て炭素原子で構成された4員環構造のシクロブタン化合物は、潜在的に医薬品としての利用価値が高いと考えられるが、その容易でかつ確実な合成法は今までに開発されていなかった。本研究は、天然有機化合物の全合成研究から開発された方法論に基づき、多置換シクロブタン化合物の工業的合成法の確立と、それを利用した誘導体合成を幅広く行い、その中から抗腫瘍剤のリード化合物を探索することを目的とする。
537 体内インプラントのMRI適合性試験装置ならびに試験技術の開発と実用化 黒田 輝 東海大学 加藤 博光 東海大学 近年、体内医療器材を有する被験者のMRI検査の機会が増え、医療器材のMRI適合性評価が重要になっている。しかし現在は国内に対応規格も試験実施機関もない。そこで本課題では米国ASTM規格に準拠し、かつ我が国での必要性に即したMRI適合性評価試験の装置・技術を開発する。特に装置構造や試験方法が複雑な磁気トルク試験(F2213-06)と発熱試験(F2182-02a)に的を絞り試験技術の確立を目指す。
541 高効率心筋誘導因子の分子設計 竹内 純 東京工業大学 松本 進 東京工業大学 心筋は壊死すると再生困難な細胞集団であり、心機能の低下により2次的損傷が生じ壊死が加速することからも、心筋再生、心機能回復に向けた研究は重要である。しかし、効率良く心筋に分化する方法はまだなく、技術の樹立が待たれている現状である。本研究では、マウス胚で申請者が見出し実績のある心筋マスター因子を選出し、細胞培養系を用いて臨床応用を見据えた心臓構成細胞誘導の新技術を樹立することを目的とする。
545 uPAを用いた機能性肝細胞の効率的な分化誘導促進方法の開発 関 泰一郎 日本大学 渡辺 麻裕 日本大学 肝臓移植は、肝硬変などの重篤な肝障害の最終的な治療方法であるが、臓器提供者の不足が深刻な社会問題となっている。肝臓移植に代わる新たな治療法として細胞移植療法が注目されている。しかしながら、肝臓移植同様ドナー不足の問題は解決できない。本研究では肝臓の発生シグナルに着目し、シグナル下流に位置する線溶系酵素を用いることで、従来法に比較して安価でかつ効率的にES細胞を肝細胞へ分化誘導する方法の確立を目指す。
558 微量血液中の末端リン酸化DNAを指標にした癌検診システムの開発 松田 康伸 新潟大学 後藤 隆夫 新潟大学 癌に高頻度に生じる遺伝子異常は、癌診断に有用である。癌患者の血液に混在した癌細胞のDNA末端がリン酸化されている(”末端リン酸化DNA”)ことを初めて見いだし、非リン酸化アダプターによるligation-mediated PCR (LM-PCR)を用いて、血液中に存在する癌細胞DNAを高精度で検出できる方法を確立した。本課題ではこの手法をさらに改良し、これまで困難であった微量血液中の癌DNAを安価・高精度に診断できるシステムの開発を目指すものである。
560 高度増殖能を有する培養口腔粘膜細胞の自動培養/回収システムの開発 泉 健次 新潟大学 小浦方 格 新潟大学 培養液中に浮遊している、高い増殖能を有す口腔粘膜上皮細胞を自動的にかつ効率的に培養・回収するシステムを開発する。すなわち培養フラスコという閉鎖系に出入り口を設置し、動力で培地を循環させて培地交換と浮遊細胞の回収を同時に、効率的かつ簡便に行う広義のバイオリアクターの作製を目標とする。
563 インテグリン遺伝子発現定量を用いた口腔癌体外診断法の開発 永田 昌毅 新潟大学 長濱 勝介 新潟大学 癌の生存率を向上するテーラーメイド医療には悪性度判定技術が必須である。口腔癌は臓器別では世界で20万人の発症と概算されるが、組織分類では扁平上皮癌に属し、食道癌や子宮頸部癌などと合わせると、その年間世界発症人口は100万人を超える。いわば扁平上皮癌は癌病変の最大級のグループをなし、その精密診断実用化による治療効果とその市場規模は潜在的に極めて大きい。本課題は口腔歯肉癌についてインテグリン発現量の定量による精密診断技術の実用化と製品化を意図し、基礎的データを作成する。
567 近赤外蛍光生体イメージングによる骨活性評価法の開発 吉江 弘正 新潟大学 長濱 勝介 新潟大学 近赤外線(NIR)蛍光色を標識したプローブによる骨代謝活性の非侵襲的イメージング技術を開発することを目的とする。従来の骨シンチグラフィと比較して、高い定量性や解像度が得られるのが特徴である。すでに異所性の微小骨形成系においてその定量性を実証しており、今回はこの測定精度をさらに向上させるとともに、新たに骨活性低下モデルを作成し、病理組織学的評価と高い相関性が得られるまで技術を進化させる。
568 Auto-fluorescence imaging による新たな肝腫瘍描出法の開発 皆川 昌広 新潟大学 定塚 哲夫 新潟大学 術中エコーで描出されにくい表在性肝細胞癌に対する鏡視下肝切除術において,Auto-fluorescence imaging(AFI)を応用することを我々は考えた。AFIは組織からの蛍光反射光を画像処理し、腫瘍と毛細血管とのコントラスト画像を得るためのシステムである.本研究では鏡視下を含めた肝臓手術おいて,AFIにて肝表面観察を行い,血流の豊富な背景肝と間質の多い腫瘍を描出・判別ができるかどうかを検討する.
573 両親媒性物質を利用する新規皮膚疾患治療薬の皮膚浸透性の検討 村 菜穂子 新潟薬科大学 茂木 弘邦 新潟薬科大学 ニキビ、色素沈着等々の皮膚疾患に使用されている薬物において、その安定性、安全性はもちろんのこと薬物の皮膚吸収性も重要である。この様な薬物の皮膚浸透性改善を目的に、皮膚角質層との親和性に優れるといわれる両親媒性物質を利用し各薬物との複合体あるいはイオン交換体の作製を試み高い皮膚吸収性を持つ新規皮膚疾患治療薬の開発を行う。本研究における成果は、薬物の低濃度使用でも充分な効果が望め、副作用を軽減した薬物の獲得が期待できる。
618 超音波と海洋深層水を応用した組織固定保存法の開発 八田 秀樹 富山大学 佐貫 大三郎 富山大学 高い抗原性維持能を有する固定液の開発は免疫染色の精度管理上、もっとも重要な課題である。従来はホルマリンの代替品が探求されていたが、形態保持や設備普及に関するホルマリンの優位性は動かし難かった。今回の検討はホルマリン希釈液として海洋深層水を用い、更に超音波を併用することで低濃度のホルマリン保存条件の確立を目指すものである。
620 IV 型アレルギー性疾患迅速診断法の開発と応用 安東 嗣修 富山大学 佐貫 大三郎 富山大学 臨床上問題となるアレルギー性疾患の大部分は、遅延型と呼ばれるIV型アレルギー反応によるものが多い。しかし、その特定には時間がかかり、治療方針を立てる上で迅速な診断技術が求められる。そこで、IV型アレルギー反応に重要であるT細胞から遊離されるタンパク質に着目し、その高感度迅速検出法を確立する。
621 選択的ALR2阻害に基づく副作用発現の少ない抗がん剤の開発とその評価 加藤 敦 富山大学 佐貫 大三郎 富山大学 既存抗がん剤の多くは、がん細胞だけでなく正常細胞にまで障害を与えていることが多く、好中球や赤血球を始めとする血球細胞の減少を引き起こし、治療の継続を妨げる要因にもなっている。本研究で注目するALR2は、正常細胞での発現は少なく、細胞のガン化に伴って発現量が増加する。従って、その阻害剤は正常細胞に障害を与えることなく、がん細胞の増殖を抑制できる点で優位性がある。申請者は既にALR2阻害作用を有する新規三環系化合物を見出しており、本課題ではこれら新規化合物の更なる構造修飾を行い、阻害活性および選択性の向上と各種がん細胞に対する感受性を調べ、次世代型抗がん剤の開発を目指す。
622 動脈硬化の初期判定ができる血管内皮機能検査機器の開発 北島 勲 富山大学 佐貫 大三郎 富山大学 動脈硬化の診断は血管エコー検査法であるが、発症後の重症度が主で検査費用も高い。最近、発症前検査法として、血流依存性血管拡張反応検査(FMD)が注目されている。本研究では、先行する末梢動脈拡張反応を検査の原理とするFMD機器の問題点を光学系検出技術の導入によって解決し、斬新な検査機器の開発を目的とする。特に次の改良を行う。①駆血機器の自動制御化、②プローブを脈圧計測から血流量計測への変換、③自動数値表示による結果解析の迅速化。本申請は、前記の問題を解決し、精度・簡便性の向上と低コスト化を実現した体外診断用診療検査機器の商品化を目指すものである。
623 強い抗癌作用、高い細胞選択性を合わせ持つアポトーシス誘導剤の分子設計と活性評価 松谷 裕二 富山大学 佐貫 大三郎 富山大学 天然物マクロスフェライド類が癌細胞に対しアポトーシス誘導活性を示し、また温熱療法にも併用効果を示すことを見出した。この知見に基づき、マクロスフェライド類を基盤とした新しい抗癌性医薬品の創出を目指し、医薬品として備えるべき優れた性質、すなわち、高い癌細胞選択性と強力な抗癌作用を発揮する新規なアポトーシス誘導剤を見出すべく、分子設計、有機合成、活性評価を進める。
625 赤血球脱核誘導方法の開発 八田 稔久 金沢医科大学 増田 浩子 金沢医科大学 輸血に用いる安全な血液供給のため、幹細胞を基に人工誘導赤血球を安定的に大量生産する技術の可能性を検討する。ラット胎児から見出した有核赤血球の脱核を誘導する因子を用い、その添加時期および添加量などの諸条件を検討し、最適な脱核法を確立する。また、ヒト臍帯血幹細胞から誘導した赤血球前駆細胞に対して、本方法を応用し、ヒト有核赤血球での有用性を確認する。
632 骨腫瘍に対する抗がん剤・カフェイン含有リン酸カルシウムペーストの実用化 白井 寿治 金沢大学 長江 英夫 金沢大学 抗がん剤にカフェインを併用すると顕著な癌治療効果が発現する事を明らかにしており、その研究は昨年、文部科学大臣賞を受賞した。この併用療法を局所的に強く作用させることが可能なら、更に治療成績を上げ、副作用を減らす事が出来る。人工骨であるリン酸カルシウム骨ペースト(CPC)は、drug delivery systemの基材として優れた徐放能をもっており、悪性骨腫瘍・転移性骨腫瘍に対する治療への応用が期待されている。今回、抗がん剤のシスプラチンとその増強効果を示す薬剤であるカフェインをこのCPCに含有させることで、局所治療効果の高い骨補填剤を開発する。
634 鼻腔原発性悪性黒色腫を標的とした内用放射療法の開発 鷲山 幸信 金沢大学 長江 英夫 金沢大学 悪性黒色腫は皮膚や粘膜に存在し、転移を生じやすく、予後は他の癌に比べて不良であり、極めて悪性度が高い。特に副鼻腔原発性悪性黒色腫は、副鼻腔が解剖学的に複雑な形状であること、近傍に眼窩、頭蓋底、内頚動脈などの重要臓器が存在することから、これまで治療法は確立されていない。本課題では、特異的腫瘍集積性に優れた抗体免疫療法と殺細胞効果の高い放射線(α線)の、両方の特長を併せ持つ内用放射療法の開発を目指す。
637 新規インドール化合物を用いた骨粗鬆症の治療薬の研究開発 鈴木 信雄 金沢大学 長江 英夫 金沢大学 我々は骨芽細胞の活性を上げ、破骨細胞の活性を低下させる新規化合物を魚のウロコのアッセイ系により発見し、さらにこの新規化合物が卵巣摘出ラット(閉経後骨粗鬆症のモデル)の骨密度及び骨強度を上昇させることを確認した。本研究では、①化合物を大量合成し、②エームス試験及び急性毒性試験を行い、③哺乳類の培養細胞(in vitro)により作用機構を解析し、実用化につなげる。
639 がん患者の予後判定のための DNAメチル化高感度定量測定技術開発 川上 和之 金沢大学 渡辺 良成 金沢大学 LINE-1はゲノム全体にわたってその由来配列が存在する転位因子であり、ヒトゲノムの約17%を占めることから、LINE-1 DNAのメチル化はゲノム全体のメチル化を知る有用なマーカーである。癌細胞では正常細胞に比較してゲノム全体のメチル化が低下し、癌の悪性度が高いほどLINE-1 DNAのメチル化は低下する。本研究では、癌患者の予後判定や個別化治療への臨床応用を目的として、LINE-1メチル化の高感度・高精度測定技術を開発する。
641 損傷神経修復を促す天然型培養基材の開発 横山 茂 金沢大学 渡辺 良成 金沢大学 神経組織の修復・再生をサポートするバイオマテリアルを開発する。神経損傷受傷者は、知覚・運動麻痺、疼痛等の後遺症に苦しみ、完全な機能回復は困難であることが多い。このため、再生過程にある神経軸索を正確に標的器官に導く微小環境を整える必要がある。本研究では、軸索再生刺激作用と髄鞘形成促進作用をもつ蛋白を天然に近いかたちで保持させた培養基材を作製し、損傷部位に供給することで正常な機能回復の促進を目指す。
644 新規細胞外マトリックスタンパク質を用いた中枢神経再生・修復の技術開発 郡山 恵樹 金沢大学 渡辺 良成 金沢大学 末梢神経系は細胞外マトリックスが豊富なため神経再生が可能であるが中枢神経系は豊富でないうえ、損傷後のさらなる減少が神経再生を困難にする。本研究では魚類よりクローニングした新規マトリックスタンパク質、プルプリンを遺伝子工学的手法により過剰発現させ人工的な細胞外マトリックス環境を提供し中枢神経再生を試みる。またそのメカニズムを精査し将来的な中枢神経再生・修復に向けた治療法、治療薬開発の実用化を目指す。
645 脂質メディエーターS1P受容体のサブタイプ選択化による新しい血管新生療法の開発 岡本 安雄 金沢大学 渡辺 良成 金沢大学 血液不足により四肢末端の壊疽をきたす末梢動脈閉塞性疾患は先進国では頻度の高い疾患である。そのため、この疾病に対して有効性の高い血管新生療法の確立は重要である。本研究課題では、受容体を介して血管内皮細胞に作用し血管新生を促進するスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)とその受容体サブタイプ選択的活性化薬・拮抗薬の血管新生・機能回復促進作用及び血管新生療法の重大な副作用である血管透過性亢進による組織浮腫の軽減作用を実証し、末梢動脈閉塞性疾患に対する新しい血管新生療法に向けてのスクリーニング系を確立する。
654 GSK3β阻害効果に基づく新しいがん治療法の開発 源 利成 金沢大学 海野 徹 有限会社金沢大学ティ・エル・オー 我々はGSK(glycogen synthase kinase)3βのがん促進作用を発見し、GSK3β阻害によるがん抑制効果を各種がん細胞と動物実験で実証した。この成果に基づいて、現在、解析中の新規合成阻害剤と、構造解析からGSK3β阻害作用が新たに判明した医薬品について、それぞれのがん抑制効果と、従来のがん治療法(抗がん剤や放射線)の増強効果を試験する。そして、GSK3β阻害効果に基づくがん治療法、とくに、膵がんや神経膠芽腫など「難治性がん」の治療法開発の実験的根拠を明確にして、本治療法の臨床応用の可能性を見極める。
656 化学物質の非遺伝毒性検出時間を大幅に短縮する方法の開発 山下 克美 金沢大学 五十嵐 泰蔵 有限会社金沢大学ティ・エル・オー 本研究では、「化学物質ストレスにより惹起されるタンパク質結合を、蛍光発光として観測する遺伝子系」を導入した細胞を用い、非遺伝毒性化学物質の発がん性を迅速に予測する手法を開発する。この研究ではまず、遺伝子発現ユニットを種々の細胞へ導入可能なレトロウイルスベクター系へ導入し、ヒト初代培養細胞へ導入できる系を作成する。これらの細胞に対して、既知の化学発がん物質を処理し、本システムの有効性を検討する。
658 薬物の組織移行性に影響する複数の血清蛋白結合状態の同時測定法 川井 恵一 金沢大学 中村 尚人 有限会社金沢大学ティ・エル・オー 本課題では、医薬品の体内動態、特に標的組織への移行性や体外排泄性に大きく影響する血清蛋白結合状態を個別にモニターするため、多くの医薬品に共通する結合部位を同時に測定するモニタリング法を確立するための技術開発を行う。既に、放射性化合物を用いて、極少量の患者血清同一試料から血清蛋白上の複数の結合部位の結合状態を同時に測定する方法を確立し、特許化した(US 7175991)。この原理を光測定技術に応用し、臨床現場で簡便な方法にて投薬設計に重要な、新たな個別化情報を取得し得る検査法を確立する。
678 狭心症治療薬の放射線防護剤への転用化へ向けた実証性検証 松本 英樹 福井大学 祝 一裕 (財)若狭湾エネルギー研究センター 放射線を被ばくすると、ヒトの体内には酸素ラジカルが発生し、障害を引き起こす。昨年度の研究で酸素ラジカルを無毒化する、副作用を持たない放射線防護剤となる狭心症治療薬を5種見出した。投与量・投与時期の最適化、防護機構の検討を行い、最適な薬剤を選定し、実用化へつなげる為にX線以外の放射線に対する防護効果の検討も行い、臨床試験計画を策定することを目標とする。
697 放射性薬剤64Cu-ATSMによる腫瘍内がん幹細胞局在領域診断法の確立 吉井 幸恵 福井大学 巽 信夫 福井大学 「がん幹細胞」は最近の研究から、腫瘍の治療抵抗性・転移能に深く関与することが分かってきている。申請者はこれまでに、PET*用放射性薬剤64Cu-ATSMが腫瘍内のがん幹細胞局在低酸素領域に集積し、非侵襲的にがん幹細胞領域を画像化できるとして特許出願している(特願2008-173276、特願2008-151722)。本研究では、64Cu-ATSMのがん幹細胞局在領域診断薬剤としての実用化を目指し、64Cu-ATSMの集積特性とそのメカニズムについて明らかにする。 
*PET (Positron Emission Tomography, 陽電子放射断層撮影)
720 α-secretase活性化を目的としたアルツハイマー病治療薬の開発 伊藤 正彦 山梨大学 菅原 幸雄 山梨大学 低下しているアルツハイマー病(AD)のPKC活性を回復させることにより、α-secretase活性を回復させることを目的としている。培養細胞系でそのpathwayに関係するPKC活性、およびα-secretase活性、β-secretase活性、アミロイドβ産出の変化を測定し、PKC活性回復物質がAD治療薬になる根拠を確かなものにする。
721 穿刺吸引細胞診検体を用いたメチル化プロファイリング診断法の開発 近藤 哲夫 山梨大学 菅原 幸雄 山梨大学 穿刺吸引細胞診は腫瘍の補助診断に広く用いられている検査法であり、比較的手技が簡便で、侵襲性も少なく、繰り返し検体の採取が行えることがその特徴である。一方で良悪性の判定が困難な場合も多い。本研究では穿刺吸引細胞診検査の利点をさらに発展させるため、細胞診材料を用いたDNAメチル化解析による組織型分類、悪性度推定、抗腫瘍薬に対する感受性を判定できる実用的な診断検査法の開発を目指すものである。
724 Ror2受容体シグナル遮断による骨破壊阻害薬の開発 小林 泰活 松本歯科大学 百瀬 傳一 信州大学 骨破壊を防ぐオリゴペプチド阻害剤を作製、探索し、骨破壊阻害効果を検証する。過剰な骨吸収に起因する骨粗鬆症は高齢者のQOL低下原因の1つであるため、骨吸収を抑制する新規阻害剤を作製するための知見を得ることを目的とする。Wnt5aとRor2の結合を阻害するWnt5aまたはRor2由来のオリゴペプチド(20アミノ酸以下)を作製し、Ror2による破骨細胞分化シグナルを阻害するペプチドを同定する。
734 Cyclin EとLMP2を用いた子宮平滑筋肉腫の新規術前診断法の開発 林 琢磨 信州大学 杉原 伸宏 信州大学 良性である子宮平滑筋腫(LMA)と悪性である子宮平滑筋肉腫(LMS)を鑑別することは、熟練を要したり確実性が高くないなど現行技術では困難である。本課題では、LMSに対する新規鑑別マーカーとして、研究シーズである抗Cyclin E抗体での診断方法を確立させ、別途先行して確立を進めている抗LMP2抗体での診断法と組み合わせることにより、簡便な子宮平滑筋肉腫の免疫組織染色診断法を開発するものである。
739 医薬研究のための、疾患モデルマウス迅速作成技術の開発 新藤 隆行 信州大学 百瀬 傳一 信州大学 遺伝子改変マウスは、ヒトの疾患モデル動物として、医薬研究の基礎から臨床応用までの幅広い研究に応用されている。しかしながら、従来の方法での遺伝子改変マウス作製は大変複雑で、多くの労力と時間を要する。そこで、遺伝子改変マウス作製の多岐にわたるステップに、独自に開発した素材と技術(特許出願準備中)を導入し、短期間に、多目的分析を想定した遺伝子改変マウス作成を可能とするシステムを開発する。
752 生体臓器移植における組織保存技術の開発 永井 慎 岐阜医療科学大学 前田 喜朗 独立行政法人科学技術振興機構 臓器移植に際して、摘出した多くの臓器は、8時間以内に移植する事例が多く、遠方に臓器輸送することはほとんど無い。食品の高鮮度保持のために考案した加圧処理は、ラットの角膜、ニワトリ、魚筋肉において細胞死を無処理の筋肉よりも24時間近く延命できる。本課題では、ラットの肝臓、腎臓および培養細胞に加圧処理を応用することで臓器保存技術を確立し、最終的にはヒト生体臓器の保存および輸送を目指す。
769 プリオンタンパク質を標的とする抗アルツハイマー病薬の開発 桑田 一夫 岐阜大学 安井 秀夫 岐阜大学 アルツハイマー病において脳に蓄積するアミロイドβオリゴマーは、細胞表面のプリオンタンパク質に結合し、プリオンの立体構造を変えることにより、細胞に対する毒性を発揮する。代表研究者が開発した抗プリオン化合物は、プリオンに特異的に作用し、プリオンの立体構造を制御できるため、アルツハイマー病に対しても有効である可能性が高い。これら抗プリオン化合物のアルツハイマー病に対する治療効果を、試験管レベル、および動物実験レベルで検証することにより、新規アルツハイマー病治療薬のシーズ開発につなげる。
774 免疫アレルギー疾患治療を目指した可溶性ヒトインターロイキン受容体の大量生産法の構築 木村 豪 岐阜大学 丸井 肇 岐阜大学 インターロイキン18(IL-18)は、ヒトの免疫異常疾患、アレルギー疾患等の悪化因子として注目されている。本研究ではIL-18の制御法の開発を目指し、IL-18阻害機能を持った生物学的製剤の開発を行う。2種の可溶性蛋白によるIL-18阻害作用を利用した創薬を目指す。実用化を視野に入れ、可溶性蛋白の大量生産方法の確立、及びその機能評価、蛋白立体構造解析を行う。
785 種特異的組換え抗原による旋毛虫感染の血清学的検査法の開発 長野 功 岐阜大学 小田 博久 岐阜大学 旋毛虫症はアジア、ヨーロッパ諸国において、再興感染症として注目される感染症の一つである。今回代表研究者は、抗体検査により感染旋毛虫の種を特定し、かつ旋毛虫感染の早期診断を行うことができる有用な方法の検討を行う。すなわち、旋毛虫が分泌する特有の蛋白である53kDa蛋白を旋毛虫血清診断法のELISA用抗原として用い、特異性、早期診断の可能性について検討を行い、診断法として確立し実用化させることを目的とする。
790 シアリダーゼ選択的阻害剤の開発と応用 石田 秀治 岐阜大学 馬場 大輔 岐阜大学 ヒト由来シアリダーゼには4種のイソ体が存在し、それぞれ特定の疾患との関連が示されている。本研究では、選択的なシアリダーゼ阻害剤を開発し、ガン、糖尿病、心疾患などの治療薬への応用を目指す。シアリダーゼはインフルエンザの宿主への感染にも関与しており、インフルエンザ感染治療薬への応用も期待される。ヒトシアリダーゼのスクリーニングにおける負の結果は、インフルエンザ治療薬としては副作用が低いことを意味し、興味深い。
848 プロテインホスファターゼ2C活性化物質を用いた新規骨吸収抑制剤の開発 大西 素子 中部大学 木本 博 中部大学 代表研究者らが見出したプロテインホスファターゼ2Cを特異的に活性化する化合物は、強い破骨細胞分化抑制作用を持っているため、今までの治療薬とは全く異なる作用を持つ新規骨吸収抑制剤として、骨粗鬆症などの破骨細胞の過剰な活性化による骨疾患の予防や治療に有効である可能性が高い。そこで本研究では、この化合物の臨床実用化を目指し、細胞レベルおよび個体レベルにおける作用機構および効果を明らかにする。
899 高骨再生機能を付与した立体型不織布の開発 春日 敏宏 名古屋工業大学 岩間 紀男 名古屋工業大学 本課題では、エレクトロスピニング法(電界を用いて高分子を繊維化する手法)を基にした独自の手法にて、高骨再生機能を付与した立体型不織布を開発する。立体型不織布は、細胞の進入・担持機能に優れ、生体組織に類似した三次元構造を有することで高い組織統合性をもつと期待される。これに、骨芽細胞を活性化させる因子を徐放する機能を付与することで、目的とする材料の実現を図る。
902 美味しく食べて健康維持ー酵素パワーを利用した画期的な健康維持法の普及をめざしてー 佐々木 誠人 愛知医科大学 杉本 勝之 特定非営利活動法人バイオものづくり中部 本研究の目的は、食生活を変えることなく健康を維持する画期的方法を普及させ、国民健康維持に寄与することである。消化管内でも活性を有するオリゴ糖生成酵素を食事と一緒に摂取させ、血糖・脂質に及ぼす効果を検証し、メタボリックシンドロームの予防効果につきす検証する。また、酵素摂取の簡便さを達成するための最適な酵素配合や酵素量の決定、および遺伝子操作による酵素活性の効率化により、摂取しやすい小形状薬の開発を目指す。
908 ニワトリ由来抗体による薬剤耐性病原菌の簡易検出試薬の開発 山田 景子 名古屋大学 羽田野 泰彦 (財)名古屋産業科学研究所 重要な病原細菌である黄色ブドウ球菌は70%ほどが薬剤耐性化しているため、耐性菌かどうかを迅速に判定することは治療方針の決定に極めて重要でありニーズが高い。現在は培養に依存した検出方法しかないが、特異的なニワトリ由来抗体を用いて高感度・迅速・簡便な検出試薬の開発を試み、培養を介さない病原菌の検出を試みる。検出限界から算出し適用可能な対象検体の探索を行い、実用性の検討を行う。
911 新規タンパク血中および尿中濃度測定による精神疾患早期診断キットの開発 新田 淳美 富山大学 三浦 英靖 (財)名古屋産業科学研究所 代表研究者らは、覚せい剤精神病モデルマウスの脳側坐核において高い発現量を示す新規タンパクを見出した。本遺伝子については、行動薬理学的、生化学的および細胞生物学的に検討を行った。その結果、このタンパクはうつ病や統合失調症などの精神疾患と深い関わりを持つ可能性が示唆された。そこで、本研究では、研究代表者らが見出した新規タンパクの血液または尿中濃度を測定することによって精神神経疾患を早期に診断するキットの開発を試み、疾患患者における変化を健常人のものとの比較を行うことにより診断マーカーとしての価値を高め、企業との共同研究への移行を期待している。
919 病原性細菌の生育状態を安全にリアルタイム計測する装置 石浦 正寛 名古屋大学 井門 孝治 名古屋大学 病原性細菌(病原菌)の培養は密閉系の振盪培養で行われるが、培養中に生育状態(細胞濃度や増殖速度)を安全に測定することは容易ではなく、実験者は感染の危険を伴いながら作業に従事している。また、操作は手作業であるため、多大な労力を要する。本課題では「病原性細菌を密閉状態に保ったまま培養しつつ培養容器外部から生育状態を全自動リアルタイム計測する装置」を開発して安価に市場へ提供することを目的とする。
934 3次元細胞挙動評価モデルを用いた抗がん剤効果予測システムの開発 本多 裕之 名古屋大学 近藤 良治 名古屋大学 がん細胞の薬剤感受性は非常に多様であり、抗がん剤の副作用は重篤であることから、薬剤種類および投薬量を治療開始時に判定しテーラーメードで投薬するのが好ましい。本研究では、細胞外基質を包含する3次元ゲル中にがん細胞を磁気細胞パターニングにより細胞塊としてアレイ上に整列させ、生体環境に近い細胞培養評価系を構築し、抗がん剤の添加による細胞の生存や増殖阻害効果を定量化するシステムを開発する。抗がん剤感受性は細胞の微小環境により変化することから、様々ながん細胞および間質細胞との組み合わせにおいて抗がん剤の評価システムを構築する。
936 糖尿病合併症リスクモニタリング簡易システムの開発 大河内 美奈 名古屋大学 近藤 良治 名古屋大学 糖尿病は合併症の病気といわれているように、血糖値管理の主目的は合併症の予防と進展の抑制である。このため、酸化ストレスにより生じる血管障害を予測・測定することが重要となる。代表研究者らは、血管障害を反映する新規インデックスとして赤血球の付着特性の変化を提案した。糖尿病患者の日常的な血糖値管理を支援するために利用されているPoint of care testing(POCT)用血糖値センサーと原理を同じくする合併症リスクモニタリング簡易システムの開発を目指す。
948 超撥水性膜を用いた細胞培養法による四肢再生技術の開発 建部 将広 名古屋大学 上井 大輔 名古屋大学 四肢欠損に対する再生現象には幹細胞凝集が必須条件であることが知られており、哺乳類ではこの段階が円滑に進まない。そこで培養未分化間様系幹細胞移植が試みられているが、現時点では未分化状態を保ったまま十分な大きさの細胞塊を誘導する技術が確立されていない。本研究では代表研究者が独自に開発した超撥水性膜を用いた3次元細胞培養法を用い、scaffoldを用いずに十分な大きさの未分化間様系幹細胞塊を形成し、これを移植して哺乳類での四肢再生を実現する。
949 近赤外線を用いた周囲組織を透視可能な内視鏡技術の開発 山本 美知郎 名古屋大学 上井 大輔 名古屋大学 内視鏡技術の発達を受け、多くの外科領域で従来の切開手術に代わり内視鏡下での低侵襲手術が実施可能になってきている。一方で、内視鏡では腸管や関節内など組織の内側からの限られた視野しか得られないため、周辺の血管や神経を誤って損傷する事故が絶えない。このため内視鏡下手術では従来の切開手術に比較して技術の習得がはるかに難しいとされる。代表研究者が開発する内視鏡は近赤外広帯域光源を用いることで腸管や関節腔外の組織を透視することを可能とし、これにより初心者でも安全に内視鏡下手術が実施できるようになるものと期待される。
950 感覚センサーと脳をつなぐインターフェースの開発 平田 仁 名古屋大学 上井 大輔 名古屋大学 現在実用化されている電動義手は指尖部の感覚センサーは動作制御のフィードバックメカニズムとして用いられているが、本研究ではこの感覚センサーからの触覚情報を痛み情報と区別をした上で直接末梢神経系に伝送し、患者の意思に基づいた電動義手の制御を可能とすることを目的とする。
952 人工心肺を用いない大動脈弁狭窄症手術法の開発 碓氷 章彦 名古屋大学 石山 慎一 名古屋大学 本研究では、人工心肺を使用せずに大動脈弁狭窄症を根治する新規術式の開発を目指す。左心室の尖端(心尖部)から新しい血液駆出路を作り、下行大動脈へのバイパスを作成する術式で、心尖部に駆出路を作成するために、ワンタッチで挿入固定できるステント型導管を開発する。本術式の開発により、低侵襲のの外科治療が可能であり、高齢者・高リスク患者においても安全に手術が遂行できる。
953 快適睡眠を得るための環境設定技術の開発 野田 明子 名古屋大学 石山 慎一 名古屋大学 24時間社会および高齢化社会において不眠などの睡眠障害症状を訴える割合は増加している。快適睡眠生活環境は健康維持において非常に重要である。夏季の高温多湿環境では覚醒が増加し、レム睡眠や深睡眠は減少する。一方、冬季の低温環境では覚醒が増加し、レム睡眠の減少が認められる。本研究では、ベッド内の温度・湿度などを調整して、快適睡眠を維持できる環境設定技術を開発し、その効果を検証することを目的とする。
954 Hsp90阻害剤によるポリグルタミン病の治療法の開発 足立 弘明 名古屋大学 石山 慎一 名古屋大学 ポリグルタミン病は責任遺伝子のcoding region内のCAGリピートの異常延長によって引き起こされる遺伝性神経変性疾患で、神経細胞内に変異した病因蛋白質が蓄積して病態が形成され、有効な治療法が存在しない。Heat shock protein 90 (Hsp90)阻害剤には、変異蛋白質の分解を促進する効果が期待され、本研究ではポリグルタミン病マウスモデルを用いてHsp90阻害剤の治療効果を見出し、臨床応用へ発展させる。
957 新規磁性ナノ粒子による肝移植イメージング:三次元培養による磁性粒子の安全評価系の確立 宮本 義孝 名古屋大学 武野 彰 名古屋大学 あらかじめ患者に移植する細胞や組織を磁気標識し、患者の体内動態をイメージング(核磁気共鳴イメージング:MRI)可能な新規磁性ナノ粒子を開発する。これまでに、膵島モデルにおいて、新規磁性粒子の細胞標識が可能であり、有効であることを報告した。本課題では、三次元培養を用いて、新規磁性ナノ粒子の細胞への生体毒性や適合性などの安全性について検証する。
958 分子状水素の抗酸化作用分子機構の解明と新規生理活性分子の同定による神経変性疾患発症予防法の開発 大野 欽司 名古屋大学 武野 彰 名古屋大学 分子状水素はハイドロキシルラジカルのみを選択的に不活化する抗酸化剤であり、代表研究者らはマウスにおける飲用水素水のパーキンソン病発症予防効果を2009年に報告をした。一方、ビタミンCやビタミンEなどラジカル非選択性の抗酸化剤は、パーキンソン病に対する効果がない。本プロジェクトでは、分子状水素の抗酸化作用の分子機構の解明を行うとともに、水素の生理活性を増強する分子の同定を行う。
965 創薬支援を可能にする新規蛋白質結晶評価器具 渡邉 信久 名古屋大学 野崎 彰子 名古屋大学 近年の論理的創薬では、標的蛋白質の立体構造を得た後、多種多様な有機化合物と蛋白質の複合体の結晶構造解析を行なうことでリード化合物の設計指針情報を収集する。蛋白質結晶に有機化合物を添加剤として加える過程で結晶にダメージが無いか、さらには結晶中の蛋白質に化合物が結合したかを迅速に評価する手法が必要である。本課題では、直接X線評価が可能な結晶化プレートの技術を発展させることでこれを実現する。
970 製剤の肺内分布を考慮したsiRNA微粒子吸入剤開発 岡本 浩一 名城大学 松吉 恭裕 名城大学 small interfering RNA(siRNA)はmRNAを配列特異的に切断し、遺伝子発現を抑制する。肺がんなど呼吸器疾患には吸入によりsiRNAを直接投与可能である。しかし、製剤の肺内分布と遺伝子発現抑制効果を同時に検討した例はない。今回、種々のsiRNA微粒子製剤を調製し、当研究室で開発した蛍光/発光イメージング法により、siRNA吸入剤の肺内分布と遺伝子発現抑制効果を同時に評価し、製剤の最適化を図る。本法は実験動物を生かしたまま測定できるので、同一個体での遺伝子発現抑制効果の経時変化も評価可能である。
976 吸入製剤のin vivo肺内送達度モニターシステムの構築 奥田 知将 名城大学 西村 亮 名城大学 ドライパウダー吸入療法は、喘息など肺局所性疾患の有効な治療法である。しかし製剤の物理化学的性質・患者の健康状態・吸入パターンの違いなどの諸条件により吸入後の肺内分布が異なることに起因した治療効果への影響が懸念される。そこで本研究では、吸入製剤の肺内送達度を非侵襲的に評価可能なモニターシステムの構築を目的とし、評価に適した新規近赤外蛍光指示薬を封入したラベル化ドライパウダー吸入製剤の開発を行う。
996 微量血液を用いた脂肪細胞機能のモニタリングとメタボ改善への応用 青木 直人 三重大学 松井 純 三重大学 血液に含まれる特異的遺伝子を標的とし、脂肪組織を摘出することなく脂肪細胞機能のモニタリングを可能にする方法の確立を目的とする。最終的にはこの方法を用いて、脂肪細胞の機能改善、すなわちメタボリックシンドローム(メタボ)改善を目的とした食品・天然物成分のスクリーニングへの応用を検証する。
998 ハイブリッドPEF法抗体作製技術の開発と応用 冨田 昌弘 三重大学 新原 英雄 三重大学 今後予測される人類の緊急課題の1つに未知の「新興ウイルス」対策がある。その感染拡大を防ぐには、如何に素早く感染者を特定し隔離するかにかかっており、迅速、簡便かつ高感度検出法が必要である。その対応策のモデル研究として、近年、広がりを見せている日本紅斑熱(リケッチア)に着目し、短期間で高性能モノクローナル抗体作製を可能とするハイブリッドPEF(電気パルス)法を開発し、抗原抗体反応に基づく高感度簡易検出法を確立することを目的とする。
1011 MR対応ファイバースコープによる内視鏡外科手術画像誘導システムの開発 仲 成幸 滋賀医科大学 宮本 健二郎 滋賀医科大学 安全・確実で低侵襲な内視鏡外科手術システムを実現するために、MRI(磁気共鳴画像)を用いたリアルタイムMR画像による生体透視手術システムとMR対応ファイバースコープを組み合わせた内視鏡外科画像誘導システムを開発することを目的としている。具体的には、MRIスキャナー内にて行われる内視鏡外科手術の際に、MR対応ファイバースコープより得られる体腔内の表面情報である内視鏡画像とMRIによる断層画像であるリアルタイムMR画像を統合し、内視鏡外科画像誘導システムとするものである。
1013 重心動揺の新たな危険因子としての無症候性脳梗塞−脳磁気共鳴画像による検討− 荻田 美穂子 滋賀医科大学 宮本 健二郎 滋賀医科大学 本研究は、65歳以上の高齢者を対象に運動習慣などの生活習慣の影響を考慮した上で脳卒中の危険因子である無症候性脳梗塞病変の有無と重心動揺との関連を脳の磁気共鳴画像(MRI)で判別した非無症候性脳梗塞患者を対照群において比較検討することを目的としている。本研究により、脳卒中予防のための無症候性脳梗塞病変のスクリーニングに関する新たな知見と予防の方向性への示唆が得られるものと考える。
1014 日本人グルクロン酸転移酵素多型による薬物代謝変化の迅速測定システムの構築 佐藤 浩 滋賀医科大学 宮本 健二郎 滋賀医科大学 レトロウイルスベクターを用いて、日本人のUDP-グルクロン酸転移酵素多型の遺伝子を染色体に組み込んだ培養細胞を作成し、本酵素の多型が薬の代謝に及ぼす影響を簡便、迅速、かつ精度高く測定できるシステムを構築する。このシステムを使い、よく使われている薬の酵素多型による代謝排出の個人差を明らかし、適切な投与量を決定する。新たに開発される薬については、多型の影響をこのシステムを使って明らかにし、薬の副作用を未然に防ぐことを目的にする。
1015 増殖チェックポイント異常を標的とする癌の診断と新しい抗癌剤の開発 茶野 徳宏 滋賀医科大学 宮本 健二郎 滋賀医科大学 本学で発見されたRB1CC1(RB1遺伝子誘導蛋白質)は癌診断におけるバイオマーカーとして応用可能である。RB1CC1異常を含め増殖チェックポイントに異常の存在する予後不良癌ではDNAへリカーゼ機能に依存した細胞増生をする。この予後不良癌の特性を生かし、本研究課題ではRB1CC1を用いたチェックポイントスクリーニングを施行しつつ、DNAへリカーゼを分子標的とする治療を試行する。
1042 胚性幹細胞を用いた新規遺伝毒性スクリーニング系の開発 岡本 誉士典 名城大学 西村 亮 名城大学 近年、発癌物質の標的が生体内に存在する組織幹細胞であることが示唆されており、幹細胞への直接的な影響を評価することができる新規発癌性スクリーニング法は有用な評価ツールである。本課題では遺伝毒性スクリーニングに胚性幹細胞を利用することの妥当性を検証する。
1045 内因性アンチセンスRNAによるインターフェロン-αの発現調節機能の評価 木村 富紀 立命館大学 松田 文雄 立命館大学 インターフェロン-アルファ (IFN-α)遺伝子のアンチセンス転写産物(asRNA)による発現調節機構を利用した新規医薬品を開発し、未知ウイルス感染症対策への貢献を目指す。この実現のため、本試験ではasRNAによるIFN-α mRNA発現制御メカニズムの解明を目指すとともに、解明した制御効果をin vivoにおいて検証する。続いて、asRNA 制御によるIFN-α発現増強物質スクリーニング系を構築する。
1057 抗がん剤の耐性克服に向けた多剤耐性トランスポーター阻害剤の分子設計 高田 健太郎 立命館大学 福井 理絵 立命館大学 がん細胞は、多剤耐性トランスポーターを過剰発現し、抗がん剤を細胞外へ排出することで耐性を獲得する。すなわち、薬剤排出ポンプの働きを抑えることで、既存の抗がん剤の効能を回復させる「カクテル療法」による新たながん治療が期待できる。本研究では、申請者が薬剤排出ポンプの阻害剤として発見した天然化合物の基本骨格を用いて、化学合成により有用分子を創製する。
1059 Guanylyl cyclaseシグナルを介する免疫応答の制御 堀 利行 立命館大学 福井 理絵 立命館大学 心房性Na利尿ペプチド(ANP)の受容体と一酸化窒素NOの受容体は、それぞれ膜型および可溶型guanylyl cyclase(GC)である。われわれは、これまでにANPとNOが細胞内cGMPを介して樹状細胞をTh2誘導型へ極性化することを明らかにした。本研究では、われわれが見いだしたこの免疫学的作用をさらに詳細に解析し、GCシグナルを制御する有効な方法を考案し、難治性免疫疾患の新しい治療法の開発を目指す。
1060 低分子ケミカルシャペロン化合物を用いたパーキンソン病治療薬の開発 位田 雅俊 立命館大学 福井 理絵 立命館大学 パーキンソン病(PD)では、タンパク質が異常に凝集・蓄積し、結果的に神経細胞を死に導くものと考えられている。本研究では、低分子ケミカルシャペロン化合物として4-フェニル酪酸を用いて、そのドパミン神経細胞保護作用について、細胞培養系およびモデル動物実験系を統合的に解析することにより、従来のPD治療薬とは違う作用メカニズムからアプローチする新規なPD治療薬の開発を目指す。
1112 高機能MMLV逆転写酵素の作製と迅速診断への応用 保川 清 京都大学 土井 優子 関西ティー・エル・オー株式会社 逆転写酵素はRNAをゲノムとするウイルスがもつ酵素であり、逆転写活性のみならず、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性とRNase H活性を有する。逆転写酵素は分子生物学研究や臨床診断に必須の酵素であり、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV RT)とトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV RT)が実用化されている。本研究では、大腸菌で発現させた組換えMMLV RTの逆転写活性と熱安定性をタンパク質工学により向上させる。本研究の目標は、機能が向上したMMLV RTを実用化させることである。
1125 タバコ病(慢性閉塞性肺疾患)に対する治療器具の力学解析 佐藤 寿彦 京都大学 前河 早希 京都大学 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、長期間の喫煙習慣が原因であり「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、2020年に死因の第3位になると予測されている。COPDの疾患肺は、弾性収縮力を失って過膨張に陥っているが、われわれは弾性収縮力を付与し過膨張を防ぐ合成高分子ネットをもちいた治療方法を提案している。本課題では、実用化に際して不可欠となる該治療具の最適な物性や形状設定を可能とするシミュレーションの開発に取り組む。
1127 ヒト樹状細胞の機能制御と新規免疫制御法の開発 -抗酸化ストレス分子チオレドキシンによる機能修飾- 門脇 則光 京都大学 樋口 修司 京都大学 樹状細胞は、免疫反応および免疫寛容の双方を誘導する免疫系の中心的な細胞である。一方、酸化還元(レドックス)制御分子チオレドキシンは、細胞の生存・増殖・機能を制御する、生体の恒常性維持に必須の分子である。本研究では、ヒト樹状細胞におけるチオレドキシンの発現制御と、内因性・外因性チオレドキシンが樹状細胞の機能に及ぼす影響を解析する。それにより、種々の免疫関連疾患に対する新たな免疫制御法の開発を目指す。
1130 ユビキチン化蛋白輸送阻害性化合物の探索 木村 晋也 佐賀大学 樋口 修司 京都大学 代表研究者は、「GUT-70のユビキリン阻害作用の証明」を目的としている。その次のマイルストンは「GUT-70をシーズに、ユビキリンに対する特異性の高い新規化合物を得る」であり、本研究成果によって First in class のユビキチン化蛋白輸送阻害薬の実用化への行程がより鮮明になると期待できる。本研究の目標が達成できれば、出願済みの特許の強化、さらに新規化合物の特許出願につながることが期待される。
1131 スタンポレーション法を用いたヒトBMP2発現ベクターによる骨誘導に関する研究 別所 和久 京都大学 樋口 修司 京都大学 (研究主題概略)ナノ加工技術を用いて遺伝子導入の新たなディバイスを作製し、それを骨再生に応用する。(研究目的)ヒト骨形成因子(BMP)を蛋白として直接使用するのではなくプラスミドベクターを介して宿主自身の細胞にBMPを作らせるという画期的な方法を考案した。本法を用いた骨再生医療への応用の可能性を検討する。ナノ加工技術で作製された超微細針を用いてBMP遺伝子導入を行う。本研究は今までBMPを蛋白質として使用するという手法に固執していた概念を打ち破るものであると考えられる。
1132 シナプス小胞トンラスポーターの新規機能解析法の開発 中川 貴之 京都大学 樋口 修司 京都大学 最近、自己組織化単分子層と生体膜脂質をコーティングした金基盤上に、細胞膜断片を付着させた固相化細胞膜を用い、細胞膜輸送、特に起電性のトランスポーター電流応答を測定する方法が開発された。本研究では、シナプス小胞トランスポーターの電流応答をリアルタイム記録し、その輸送制御メカニズムの解明、及び最終的には創薬ハイスループットスクリーニング系の確立を目的とし、シナプス小胞での膜輸送機能解析法を開発する。
1135 放射線照射により活性化されるプロドラッグ抗がん剤の開発 田邉 一仁 京都大学 加藤 眞行 独立行政法人科学技術振興機構 本研究では、化学放射線療法に適応可能で、かつ副作用の軽い放射線還元活性化型プロドラッグを開発する。このプロドラッグは単に投与されただけでは何ら薬効を示さないが、放射線を照射すると照射した部位でのみ活性化され、薬効を発現する。具体的には、抗がん活性を示す薬剤に置換基を導入することで不活性化(プロドラッグ化)する一方で、放射線照射により元の活性な構造に戻る機能性分子(プロドラッグ)を合成し、薬剤としての機能を評価する。従来までに見出した各種放射線分解型置換基を活用して、効果的に薬効を発現するインテリジェントプロドラッグを創製する。
1145 ラマン散乱を用いた心臓組織診断法の開発 高松 哲郎 京都府立医科大学 島田 かおり 関西ティー・エル・オー株式会社 心筋組織のバイアビリティは治療を左右する重要な因子であるが、これを直接測定する方法はまだない。本試験研究では、532nm励起によるヘム蛋白の共鳴ラマン散乱を利用して得た情報をもとに、主成分分析を用いたイメージ再構築を行うことにより、無染色・無侵襲で心臓の生体組織診断を行う。つまり、組織を切り取ることなく、ラマン散乱光の持つ分子情報をもとに非浸襲的な光学手段によってリアルタイムで心筋組織像を得るための手段を検討するとともに、この手段を用いて虚血に陥った心筋組織のバイアビリティを測定する。
1149 前立腺針生検3次元穿刺位置情報ソフトの開発 沖原 宏治 京都府立医科大学 羽室 淳爾 京都府立医科大学 前立腺癌密封小線源治療の治療計画装置の基本システムを、経会陰的テンプレート前立腺針生検に応用し、採取された生検コアーの3次元的位置情報ならびに採取された個々のコアー内部の癌・非癌部位を表示する追加アプリケーションを作成する。また、初回生検時における採取できていない、cold areaの自動認識システムと、前立腺全摘術症例の推定癌占拠部位・容積を算定する機能を搭載することが目的である。
1151 新しい作用機序による鎮痛補助薬の開発 衣斐 督和 京都府立医科大学 羽室 淳爾 京都府立医科大学 現在オピオイド(モルヒネ)は鎮痛薬として臨床で汎用されているが、癌性疼痛などの持続性の痛みに長期使用すると耐性が出現し、患者の苦痛は再燃する。この現象はオピオイド使用における最大の未解決の課題である。本研究は代表研究者らが作出した独自の実験モデルを用いて行動薬理学・生化学・細胞生物学的手法を駆使して耐性出現のメカニズムを明らかにし、新しい鎮痛補助薬のターゲットを確立することにより、安定した除痛コントロールによる緩和医療への応用をめざすものである。
1152 糖尿病性腎症の早期診断技術の実用化研究 福井 道明 京都府立医科大学 羽室 淳爾 京都府立医科大学 糖尿病の3大合併症の一つの糖尿病性腎症のために透析にいたる患者数は300万人を超え、医療経済的にも社会問題となっている。自覚症状がないまま腎症は発症・進行し、一旦発病すると完治することはできない。病期・病態の評価に尿中微量アルブミンが有用とされるが、糖尿病性腎症の発症・進展を予期することには無効で、腎症の発症・進展のリスクマーカーは確立されていない。本研究は、京都府立医科大学で新規に発見した4種の糖尿病性腎症発症リスクマーカーの診断技術としての有用性をヒトで検証することを目的とする。
1153 構造解析に基づく新規抗SARS薬リード化合物の探索 赤路 健一 京都府立医科大学 内田 逸郎 独立行政法人科学技術振興機構 重症急性呼吸器症候群SARSは新型コロナウイルスの感染による重症肺炎疾患で特に高齢者に対し高い致死性を示すが、有効な治療法やワクチンはいまだ開発されていない。本課題では、「あらたなSARS pandemicに先んじてSARS治療薬を開発する」ことを目標とし、超高活性変異型SARS 3CLプロテアーゼと各種基質mimeticとの共結晶を作成しX線構造解析を行う。原子レベルでの構造解析によるSARSプロテアーゼ阻害剤リード化合物の設計・評価を行い、ウイルス増殖に必須となるSARS 3CLプロテアーゼ阻害による新規抗SARS薬開発につなげる。
1156 天然型トロポロンー亜鉛錯体の開発と肥満・糖尿病治療薬への応用 安井 裕之 京都薬科大学 内田 逸郎 独立行政法人科学技術振興機構 糖尿病患者のQOL増進を目指し、すでに代表研究者らは実験糖尿病動物を用いて、有機医薬品に代わる血糖降下作用を示す亜鉛錯体を提案している。その後、高活性な亜鉛含有医薬品もしくは栄養機能性食品の開発をめざし、種々の亜鉛錯体を合成してきた。しかしながら、高い経口吸収性を有する亜鉛錯体の開発は非常に難しく、現在も模索中である。本課題では生体利用率が高い、天然型分子を配位子にもつ新規亜鉛錯体を合成し、「安定度定数、分配係数、上皮細胞膜透過性」などの物性データと「脂肪細胞を用いたグルコース取込促進およびアディポサイトカインへの影響」を検討し、高活性な候補化合物の開発を目指す。
1157 生体分解性マイクロニードルを用いたインスリンの次世代型経皮吸収製剤の開発 山本 昌 京都薬科大学 内田 逸郎 独立行政法人科学技術振興機構 糖尿病治療薬インスリンは、現在、臨床上、注射で投与されるが、注射は患者に痛みを伴い、また様々な副作用を発現しやすいため、非侵襲的で安全なインスリンの投与形態が望まれている。本研究では、生体分解性素材を用いて微小な針構造を有するマイクロニードルを調製し、本マイクロニードル中にインスリンを一定量含有させ、これを皮膚に適用することにより、注射に代わる非侵襲的で安全なインスリンの次世代型経皮吸収製剤の開発ならびに糖尿病の治療を目指す。
1158 インフルエンザウイルスのヘマトグルチン開裂部位を標的とした新規抗ウイルス剤の開発 根木 滋 同志社女子大学 堀内 真幸 同志社女子大学 本研究では、高病原性インフルエンザに対する抗ウイルス薬の開発に取り組む。インフルエンザウイルスは、その外膜タンパク質であるヘマトグルチンの開裂により感染能を獲得する。ここでは、ヘマトグルチンに存在するカチオンクラスター部位と特異的に相互作用するポルフィリン骨格を有する抗ウイスル剤のリード化合物を合成し、その感染阻害効果およびそのメカニズムについて様々な角度から検討を行う。
1164 角膜移植の治療成績を向上させる新しいドナー角膜保存液の開発 小泉 範子 同志社大学 平尾 正三 同志社大学 角膜混濁に対する外科的治療法としてドナーから提供された角膜組織を用いた角膜移植術が広く行われている。角膜移植の治療成績を不良にする要因の一つとして、移植後のドナー角膜組織の角膜内皮細胞密度が減少することによって、再び角膜が混濁する移植片機能不全がある。現在、米国および日本を含む多くの国々では、ドナーから提供された角膜組織を患者に移植するまでの間、ドナー角膜を角膜保存液に浸漬して4℃で冷蔵保存する方法が用いられているが、保存期間中に角膜内皮細胞が障害されて移植後早期に内皮細胞密度が低下してしまう可能性がある。代表研究者らは角膜内皮細胞に対する接着、増殖促進効果を有するRhoキナーゼ阻害薬を添加することにより、保存中の角膜内皮細胞障害を軽減し、角膜移植の治療成績を向上させる新しいドナー角膜保存液の開発を行う。
1169 プロテアーゼ活性化受容体の機能に着目した新規心不全治療薬の開発 大谷 ひとみ 関西医科大学 和田 省二 関西医科大学 狭心症、心筋梗塞の虚血性疾患による心不全の発症・進展要因として局所での炎症反応が注目されている。特に虚血時に微小血管壁の破綻で心筋内に漏出したトロンビンや心臓内局所に集積した炎症細胞から放出される多くの蛋白分解酵素(プロテアーゼ)による受容体刺激が、心臓の機能低下に関わることが最近判ってきた。本研究では、プロテアーゼ活性化受容体刺激が心肥大を誘導する機序について、疾患モデル動物や細胞レベルで明らかにするとともに、新規心不全治療薬としての可能性を追求する。
1170 mTOR経路を標的とした新規樹状細胞機能制御法の開発 松田 達志 関西医科大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 代表研究者は、ごく最近、mTORが樹状細胞においてIL-10遺伝子発現の鍵分子として機能していることを明らかにした。mTOR経路を介したIL-10遺伝子発現制御は、T細胞・B細胞などに見られない樹状細胞特異的な現象であることから、本研究においてmTOR経路の下流で樹状細胞特異的にIL-10産生制御を担う分子の同定と、当該分子を標的としたIL-10産生制御法の確立を目指す。
1183 GABAシステムによる軟骨肉腫の新規迅速診断法の開発 神原 清人 大阪医科大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 軟骨肉腫の中で特に悪性度の高いものでは、外科的治療を行ったとしても局所再発や肺などへの遠隔転移を起こし、死亡例も少なくない。しかしHE染色などの従来法では良性の軟骨系腫瘍と軟骨肉腫との鑑別だけでなく軟骨肉腫の悪性度の判定にも難渋する。細胞の増殖や成熟などの神経系以外の機能をもつことがわかってきたGABAシステムによる軟骨肉腫の新規診断法の開発ができれば早期に軟骨肉腫の悪性度を診断し、早期に治療を開始でき、予後が改善する。
1184 細菌自身の蛋白質合成活性制御機構を利用した耐性菌出現低確率抗生剤の開発 吉田 秀司 大阪医科大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 本課題は細菌自身が有するリボソーム不活性化機構の解明を通じて耐性菌出現の可能性が低い薬剤を開発することを最終目標としている。細菌はストレスに曝されるとリボソームを二量体化して蛋白質合成活性を失わせる。この機構を欠損した細菌は自然界を長期間生存できないことから、細菌はこのストレス応答(蛋白質合成活性休止機構)をターゲットにした抗生剤に対して耐性を獲得しにくいことが予想される。本課題では研究期間内に薬剤デザインの基盤となる蛋白因子の機能最小部位の同定を行う。
1187 慢性肝障害バイオマーカーとしてのサイトグロビンの有用性の検討 河田 則文 大阪市立大学 間 健一 大阪市立大学 本研究ではAST/ALTに替わる簡易で高感度な慢性肝障害スクリーニング血清バイオマーカーの開発を目指す。サイトグロビン(cytoglobin、 Cygb)は代表研究者らが発見した星細胞のみに発現するグロビン蛋白である(J Biol Chem 276、 25318、 2001)。サイトグロビンに対するモノクローン抗体を作製し、ELISA法によりキット化し、動物モデルあるいはヒト臨床検体を用いて、肝炎や肝線維化との相関性、感度や特異度を検討する。最終的には大量臨床サンプルを用いてCygbの慢性肝疾患スクリーニングバイオマーカーとしての臨床応用を模索する。
1188 多発性骨髄腫の腫瘍マーカー蛋白の特定 中尾 隆文 大阪市立大学 間 健一 大阪市立大学 多発性骨髄腫は造血器悪性疾患の中では最も頻度の高いものの一つで、本邦でも人口の高齢化に伴い増加の一途を辿っている疾患であるが、病勢を正確に反映する腫瘍マーカーと言えるものが存在しないために臨床病期の判定が困難で、治療介入の時期決定に支障を来している。本研究の目的は多発性骨髄腫患者血清中の抗体を腫瘍細胞との抗原抗体反応でスクリーニングし、質量分析計を用いて多発性骨髄腫の腫瘍マーカーとなり得る蛋白を特定することである。
1189 エピジェネティクス制御に基づく心不全の機序解明と治療応用 泉 康雄 大阪市立大学 間 健一 大阪市立大学 ヒトゲノムが解明され、病態における遺伝子発現情報も数多く報告されているが、実際の機能を評価するためには、細胞によって異なるメイン・スイッチ情報や蛋白質の構造解析解明(エピジェネティクス研究)が不可欠である。本試験では、病態モデル動物を用いて、心機能・心筋代謝機能をエピジェネティクス制御の観点から明らかにし、心不全の発症・進展に対する予防および治療応用を目指すことを目的とする。
1190 内視鏡的に視認不可能な炎症性腸疾患関連癌を視認するPDD(photodynamic diagnosis)の開発 渡辺 憲治 大阪市立大学 中島 宏 大阪市立大学 世界的に患者数が増加している難治性炎症性腸疾患の致死的合併症である癌の内視鏡的検査において、非効率なランダム生検の根拠となっている内視鏡的に視認困難な癌(dysplasia)病変を視認し得る、実臨床に応用可能な、PDD(photodynamic diagnosis)検査法の確立を目指す。そのため通常内視鏡、色素拡大内視鏡、特殊光内視鏡、PDDを用いた検討を行い、内視鏡的視認困難な炎症性腸疾患関連癌(dysplasia)病変の内視鏡像、病理学的特徴などを解明する。
1192 薬剤耐性機構を打ち破る物質のスクリーニング 藤田 憲一 大阪市立大学 中島 宏 大阪市立大学 ガンが再発したときにおきるガン細胞が獲得する多剤耐性能により、抗ガン剤による化学療法はその継続が困難となる場合が多い。本試験研究では、ガン細胞の薬剤耐性機構のうち薬剤排出機構に着目し、それを打ち破る薬剤と既存の抗ガン剤を組み合わせることによって、無能力になった既存の抗ガン剤を再び使用可能にしようとする試みの一つである。この目的の為、多剤耐性を示す微生物および動物培養細胞を用いて、本研究室にストックする放線菌や植物由来抽出成分などの天然資源より本細胞の薬剤排出機構を抑える物質をスクリーニングしていく。
1201 インプラントを併用した新しい部分入れ歯治療のための支台の開発 呉本 晃一 大阪歯科大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 歯の欠損に対して、インプラントもしくは部分入れ歯(RPD)いずれかによる治療が行われている。 RPDは咬合力を顎の粘膜で支えるため、天然歯に比べて著しく弱い咬合力しか発現できないことや、咬合力が加わった時に義歯が沈下することにより粘膜に疼痛が生じやすいという問題点を抱えている。本研究は、従来の粘膜支持にインプラント支持が加わることで、義歯の沈下を抑え強い咬合支持を発現することができるハイブリッドRPDの治療法を簡便に導入するための、専用の支台を開発することにある。
1202 歯の硬組織再生を促す極薄アパタイトシートの開発 吉川 一志 大阪歯科大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 歯科の三大疾患として齲蝕、歯周病、顎関節症が挙げられ、1999年の資料では歯周病は国内患者数が3、700万人と推計されている。歯周病により歯肉が後退し発症することが多い知覚過敏症への治療は、症状に対する対症療法がほとんどで、生体への侵襲がない原因療法の確立には至っていない。代表研究者らはレーザーアブレーション法によりハイドロキシアパタイト薄膜を作製することが可能で、HApシートを知覚過敏症の患歯に直接貼付し、再石灰化を促すという根本的治療の開発を目指す。
1221 バイオ人工膵臓用免疫隔離膜の開発 宮川 周士 大阪大学 大屋 知子 大阪大学 欧米においては膵島移植はI型糖尿病の根治療法として定着しつつある。しかし、日本では同種膵島移植の普及には限界があり膵島の提供源を異種に求める動きが有る。中でも臓器の生理学的、解剖学的機能が人に近くSPF化が容易なブタが最適な移植用動物とされる。 最終的な目的は、免疫隔離バックに入れたブタ・バイオ人工膵島を作り、臨床応用を図る事である。今回はラットの膵島を利用し、in vivoで長期に使用できる免疫隔離膜を作製する。
1230 高病原性鳥インフルエンザウイルスに対するキメラ型中和抗体の開発 中屋 隆明 大阪大学 内田 国克 大阪大学 高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスは世界中で今もなお流行し、人に致死的な感染を起こす。本研究では、これまでに作製した抗H5N1中和(感染防御)抗体の抗体療法への応用を目指し、生体における抗ウイルス効果について、マウス感染実験系を用いて評価する。さらに、本抗体とヒトIgGとのキメラ型抗体を作成し、その感染防御効果について検討する。
1233 パイエル板を利用した経口ワクチンの開発 近藤 昌夫 大阪大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 昨今の分子生物学や免疫学の発展には目覚しいものがあり、感染症(年間死者数2000万人)や癌(年間死者数700万人)のみならず、アルツハイマー病(患者数2000万人)やリウマチ(患者数600万人)などの疾病に対するワクチン療法の萌芽が生まれつつあり、副作用の無い夢の治療法としてワクチンが脚光を浴びている。本研究では、独自の腸管粘膜免疫組織指向性分子を有効活用した新規経口ワクチンの開発を試みる。
1234 密着結合蛋白質を利用した経鼻粘膜ワクチンの開発 八木 清仁 大阪大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 腸管と異なり消化酵素による分解を受けないこと、投与が低侵襲性であることから、経鼻ワクチンは有効性、安全性を兼ね備えた次世代ワクチンとして期待されている。しかしながら、鼻粘膜免疫組織に効率良く抗原を送達する技術の開発は著しく遅延しており、経鼻ワクチンの開発は遅々として進展していない。当該研究課題では、独自の鼻粘膜免疫組織特異的リガンドを利用した新規経鼻ワクチンの開発を試みる。
1237 中枢神経の再生能力を増強する薬剤の開発 村松 里衣子 大阪大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 交通事故や様々な疾患により脳や脊髄など中枢神経が障害されると、障害神経が担っていた神経機能は失われる。この重篤な症状の自然回復が期待できない理由の一つに、大人の中枢神経の再生能力が低いことが挙げられる。代表研究者らは、損傷神経の再生能力を増強する分子の同定に成功した。本試験では、同定した分子の個体レベルでの神経再生作用ならびに治療効果を検証し、得られる知見を基に神経再生薬剤の開発を目指す。
1238 新規抗菌性ペプチドを用いた創傷治癒剤の開発 中神 啓徳 大阪大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 代表研究者らは緑膿菌・黄色ブドウ球菌・真菌などに対する広い抗菌活性と同時に強力な血管新生作用も有するユニークな新規抗菌性ペプチドを同定した。抗菌ペプチドは耐性菌ができにくく広域な抗菌スペクトルを有する利点を持つ反面、生体内で分解されやすく有効な濃度を保てないことなどから臨床開発は進んでいない。そこで、難治性皮膚潰瘍を対象疾患とした治療薬・創傷被覆材の開発を本研究の目的とする。
1239 生分解性マイクロニードルを応用した経皮ワクチンシステムの開発 岡田 直貴 大阪大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 本研究は、ヒアルロン酸を素材として新規開発した生分解性マイクロニードルを応用し、従来の注射投与型ワクチンの有効性に匹敵する「経皮免疫製剤」の実用化に必須の情報集積を図る。まず、実験動物を用いた生化学的・病理組織学的評価により、生分解性マイクロニードルの安全性を精査する。また、抗原を含有させた生分解性マイクロニードルを実験動物に適用し、本経皮免疫製剤の免疫誘導特性を注射投与型ワクチンと比較検討する。さらには、実験動物における感染症耐過試験モデルにおいて本経皮ワクチンシステムの有効性を実証する。
1270 消化管を用いた神経変性疾患治療薬のスクリーニング系の開発 竹内 正吉 大阪府立大学 下田 忠久 大阪府立大学 本研究の目的は、消化管運動に対する作用を検討することにより、アルツハイマー病やパーキンソン病などの中枢神経変性疾患に対する治療薬を評価するための一次スクリーニングシステムを開発することである。そこで、神経変性疾患モデル動物から腸組織を採取し、中枢神経症状と腸運動の変化、その際の中枢神経系と腸神経系の変化の相同性を併せて評価するシステムを構築する。その後、神経変性疾患治療薬を投与した神経変性疾患モデル動物腸組織の運動変化を調べることで、構築したシステムの評価と改善点を検討する。
1286 リズム調節障害治療薬スクリーニング法の開発 加藤 啓子 大阪府立大学 西村 紀之 大阪府立大学 近年、成人の20%に及ぶ不眠症、10〜20%に及ぶうつ病、17%に及ぶ不安障害が知られており、環境ストレスから受けるリズム調節障害に有効な治療薬を開発することが、公衆衛生上重要課題であることがわかる。しかしながら現状は、治療薬の有効性や副作用をスクリーニングするための有効な方法がほとんどなかった。本課題達成後は、リズム調節の治療薬スクリーニングへの実地展開が可能となる。
1290 水頭症突然変異マウスを用いたヒト水頭症の遺伝子診断法の開発 森 展子 大阪府立大学 西村 紀之 大阪府立大学 小児の水頭症は、多くが先天性で、出生数1000に対し、日本では0.5人、米国で1.5人と、低くない頻度で起こる。そのほとんどが原因不明で、根治療法もなく慢性的経過をたどる難病であり、患者とその家族の精神的・経済的負担は重い。本研究では、代表研究者が保有する新規水頭症突然変異マウスの、原因遺伝子を解明した研究の成果を、ヒトに適用し、水頭症の遺伝子診断法の開発をめざす(特許出願の予定)。
1299 新しい肥満モデルマウスを用いた薬剤スクリーニング法の開発 藤森 功 大阪薬科大学 長谷川 新 (財)大阪市都市型産業振興センター プロスタグランジン(PG)D2を過剰産生する遺伝子改変マウスは高脂肪食を摂餌させたときにのみ肥満になる。この遺伝子改変マウスを肥満モデルマウスとして用いる抗肥満薬の薬剤評価や肥満治療法の効果判定の新規スクリーニング法の開発を目指す。また、PGD2合成酵素阻害剤を肥満モデルマウスに経口投与し、X線CT装置により体内脂肪蓄積量を経時的に測定し、さらに中性脂肪、コレステロール、血糖値などの各種血液生化学データの測定により抗肥満効果を総合的に評価する。
1302 白血病新規治療薬としての有機ビスマス化合物の可能性試験 矢倉 達夫 関西学院大学 山本 泰 関西学院大学 ビスマス含有有機化合物は、近年、その合成研究が目覚しい発展を遂げており、ビスマス元素本来の安全性から、新規薬剤候補として期待が高い。本研究では、特に再発性急性前骨髄性白血病(APL)細胞に対して低濃度でかつ即効性の抗癌活性を有するヘテロ環ビスマス有機化合物の開発を行う。すでにバクテリアや培養細胞に対し強い生理活性を持つ8員環有機ビスマス化合物を開発しており、これらの化合物の白血病細胞に対する特異性の検証と白血病治療薬としての可能性を探る。
1304 正確性と耐熱性を有する逆転写酵素の開発 藤原 伸介 関西学院大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 逆転写酵素は、特定の遺伝子の転写量を測定する際に不可欠の酵素である。従来法のレトロウイルスに由来する酵素では合成中に間違った塩基を取り込んだり、鋳型となるmRNAが高次構造を取った際に、cDNAの合成が途中で止まってしまうなど欠点があった。本研究では、超好熱菌由来のDNAポリメラーゼをタンパク質工学的に改変し、レトロウイルス由来の酵素が有する欠点を改善し、正確性と長鎖mRNAからの活性の向上した逆転写酵素の開発を目指す。
1309 ヘリコバクター・ハイルマニ感染症検査法の確立 東 健 神戸大学 小野 英男 神戸大学 H.heilmanniiは、ヒト胃粘膜においてH.pylori感染と同様に慢性胃炎をきたし、ヒト慢性胃炎患者の0.2-6 %から検出される。しかしながら、現在のところ、H. heilmanniiの培養、ならびにその診断方法は確立されておらず、その感染診断は、組織切片中の大型のらせん状形態を示す細菌の存在をもとに行われていることから、H. heilmanniiはH.pyloriに比較し正確な感染率の調査や疫学的検討は十分には行われていないのが現状である。そこで本研究では、H. heilmannii感染症検査法を確立することを目的とした。
1311 新規バイオマーカーTFLを用いたがん診断法の開発と臨床応用 松井 利充 神戸大学 小野 英男 神戸大学 ヒト癌に特徴的な遺伝子変異を標的とした新しい抗がん剤の開発が進み、その有用性が次々と証明されている。代表研究者らが発見した新規がん抑制遺伝子TFLがリンパ系悪性腫瘍においてしばしば欠損している事を遺伝子診断法の開発により明らかになってきた。TFLは肺癌の発症にも関与するが、本研究ではTFL蛋白発現異常を検証する病理組織診断法を開発し、その臨床応用をめざす。TFL「がん診断法」の特許申請は既に公開中である。
1312 腫瘍特異的増殖型アデノウイルスをアジュバンドとする新規腫瘍細胞ワクチン 白川 利朗 神戸大学 小野 英男 神戸大学 現在までに代表研究者らは腫瘍ワクチン細胞をキャリアー細胞として用いた制限増殖型アデノウイルス(Conditionally replicating adenovirus: CRAd)の新規ドラッグデリバリーシステムを開発してきたが、一方、CRAdが自然免疫系のInnate Immune ResponseによりNK細胞、マクロファージ、および樹状細胞などを活性化させることから癌ワクチンのアジュバント効果を有することも報告されている。今回、遺伝子治療薬の効率的なドラッグデリバリーと強力な抗腫瘍免疫の惹起を一つの治療薬で達成する新規遺伝子治療薬の開発を目指す。
1313 質量分析計による食道がんに対する抗がん剤治療効果予測因子の同定 奥野 達哉 神戸大学 小野 英男 神戸大学 これまでの食道がん患者の治療効果予測に関する研究は、遺伝子型によるものがほとんどである。生命の設計図は遺伝子から構成されているものの、表現形は遺伝的要因だけではなく、環境的要因にも影響され出現してきており、実際には多くのタンパク質や代謝産物がその生命活動を担っている。そこで代表研究者らは、実際の表現形である代謝産物を検討する必要があると考え、生体内の代謝産物を網羅的に解析できるメタボローム解析に注目し、質量分析計を用いたメタボローム解析による食道がん治療効果予測因子の同定を目的として研究を実施する。
1315 薬剤タンパク質内包バイオナノカプセルの開発 近藤 昭彦 神戸大学 上村 八尋 神戸大学 B型肝炎ウイルスの表面抗原のみで構成されるバイオナノカプセルは、安全かつ導入効率の高いDDSキャリアとして非常に有用である。これまで小分子や遺伝子を封入し、そのデリバリーに成功しているが、巨大分子であるタンパク質の封入は、その封入効率が低く、またタンパク質の失活が見られ非常に困難であった。本課題では、生理活性を持つタンパク質が内包されたバイオナノカプセルを、一段階で生産する手法を確立し、これを用いたタンパク質デリバリー技術として確立させる。
1338 難合成医薬品のP450酵素による生物生産技術の開発と応用 今石 浩正 神戸大学 鶴田 宏樹 神戸大学 哺乳動物のチトクロームP450(P450)は、100万種にもおよぶ様々な化合物が持つ炭素骨格の特定位置に水酸基を付与する活性を持つ。特定位置への水酸基の導入は、医薬品合成の成否を決める重要なステップとなっているが、有機合成技術のみでは難しい。そこで、哺乳動物のP450遺伝子を安定かつ大量に大腸菌へと発現させ、これらP450による医薬品化合物の改良へと応用する。
1373 多発性嚢胞腎の治療薬開発を支援するPKDシグナル活性評価法の開発 越智 陽城 奈良先端科学技術大学院大学 谷 直樹 奈良先端科学技術大学院大学 多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease : PKD)は、中年期以降に腎不全を引き起こす進行性遺伝疾患であり、我が国には現在10万-20万人の患者が存在する。これまでに、PKDは膜タンパク質であるPKD1あるいはPKD2の機能不全によって発症すること、またそれら腎組織ではPax2タンパク質の発現が亢進することが明らかにされている。しかしながら、PKDシグナルの分子機序が解明されていないため、未だ根本的な治療薬の開発がなされていない。代表研究者らはPax2遺伝子近傍のゲノム領域の解析から、Pax2の腎臓での発現を調節するシス配列を発見した。本研究は、このシス調節配列を用いて腎細胞でのPax2の発現を定量的にモニタリングするシステムを構築し、PKD治療薬の開発を支援することを目的とする。
1376 軟組織に用いる生体吸収性3次元細胞培養足場の開発 楠 正暢 近畿大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 軟組織再生に対応できる3次元細胞培養足場の開発を行うことを目的として、生体内に豊富に存在するリン酸カルシウム系材料を用い、直径数10〜数100μmのパイプを組んだ構造の3次元マイクロメッシュを形成する。3次元マイクロメッシュが、細胞培養中には壊れることなく、形状を維持できるだけの十分な強度を有し、かつ、長期的には体内で吸収される結晶性とパイプ厚を実現するための作製方法を確立する。
1391 高機能RNA干渉プラスミドライブラリーの構築 河野 強 鳥取大学 山岸 大輔 鳥取大学 医薬品等の評価・開発等に用いられる線虫C. elegansは、RNA干渉による遺伝子機能抑制が可能で簡便かつゲノムワイドに行えるモデル生物である。ところが、rrf-3 遺伝子の機能により神経系におけるRNA干渉が阻害される。そこで、神経系疾病モデルとなる変異株に対して神経系で機能する遺伝子を標的とした効率的なRNA干渉を行うことを目的として、rrf-3 遺伝子の機能を同時に抑制できる高機能RNAプラスミドライブラリーの構築を行う。
1392 万能細胞バンク活用を加速する複数外来遺伝子導入用の安全な収納デバイス 加藤 基伸 鳥取大学 山岸 大輔 鳥取大学 iPS細胞を臨床応用する上で、50種類のHLAタイプのものを用意すれば拒絶反応なしに活用できるため、現実的なバイオリソースとして万能細胞公的バンク構想がある。本研究では、複数外来遺伝子の安全な「収納」に特化した極小人工染色体ベクターを作成する。外来遺伝子はこの極小染色体上にのみ導入され、宿主ゲノムへの挿入が回避できることから、遺伝子導入に伴う癌化の懸念が払拭される。これをバンク細胞に導入し再リソース化し、iPS細胞のさらなる活用を安全を加速させる。
1401 電子タグを用いた医療機器運用管理システムの開発 花田 英輔 島根大学 宮崎 稔 島根大学 高度医療機関が多用する高価な医療機器は、厳格な管理や紛失防止が求められる。既存管理システムは極めて高価か、ほぼすべて管理項目と内容が変更できない。そこで臨床工学技士の意見を取り入れ、管理項目の追加・削除・内容変更が可能で、かつ安価な医療機器管理システムの構築を図る。またオプション機能として電子タグを用いた①貸出/返却、②機器の患者割当、③機器の所在把握、④機器の動作状況確認、の各機能を開発する。
1402 全年齢層に対応可能な小麦依存性運動誘発アナフィラキシー診断法の開発 高橋 仁 島根大学 宮崎 稔 島根大学 これまでに、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの主要な抗原であるω-5グリアジンを用いた本疾患に対する診断法を開発した。本法の成人患者における陽性率は非常に高いものの、未成人患者における陽性率は低い。その原因として、未成人患者は、ω-5グリアジンとは異なる小麦タンパク質が抗原であることが示唆された。本課題は、未成人患者における診断精度の向上を図るため、一度の測定で複数の小麦抗原が検査可能な診断法を確立することを目的とする。複数の小麦抗原を搭載したプロテインアレイを作製し、その有用性を検証する。
1408 血中テネイシンX の濃度測定による血管疾患早期発見診断法の開発 松本 健一 島根大学 中村 守彦 島根大学 国民の高齢化により、血管疾患は急激に増加しつつある。そのため、分子レベルでその発症機構を理解すると同時に、是非とも血管疾患の早期の診断法の確立が必要である。我々が見いだしたテネイシンX(TNX)は、血管疾患に伴い発現量が変動する細胞外マトリックス分子として報告され、血管疾患マーカー蛋白質としての可能性を秘めている。本研究課題においては、血管疾患患者の血清を用いて、テネイシンXの血中濃度を簡便に測定できる酵素免疫測定系(ELISA)を開発し、血管疾患早期発見診断法の実用化を目指す。
1412 精神科ケアビギナーを対象としたケアスキル習得のためのe-learningソフトの開発 渡邉 久美 岡山県立大学 小林 東夫 岡山県立大学 精神障害者への地域社会資源は極めて不足しており、特にマンパワー不足の問題はケア提供者のバーンアウトを招くなど深刻である。また、精神障害者への経験が浅い看護介護職に、精神障害者特有の共感しづらい訴えや精神症状に対応が困難な場合も多い。本課題は熟達した専門職のもつ精神科ケアスキルを元に精神科ケアのビギナー向けの学習支援システムを構築する。システム構築はケア提供者の自宅での自己学習を支援するためe-learningソフトとして開発する。
1414 簡易消化器癌スクリーニングキットの開発と応用 永坂 岳司 岡山大学 大村 祐章 (財)岡山医学振興会 便からヒトDNAメチル化検出方法を利用した非侵襲的消化器癌スクリーニングシステムの実用化に向けて、問題の克服と更なる高精度化に取り組むものである。本スクリーニングシステムは、研究代表者の独自に開発した高感度かつ擬陽性の少ない検出方法を用い、大腸癌だけでなく、その他の消化器癌をも便からスクリーニングすることが可能な画期的なシステムである。本研究は、この次のステップとして、実際の便潜血反応に用いられる程度の便検体量を解析できるように改良を加え、実用化に目途を付けることを目指す。
1415 難治性疼痛治療薬の持続性向上に関する開発研究 大内田 守 岡山大学 大村 祐章 (財)岡山医学振興会 末期癌や糖尿病、交通事故や手術後の後遺症でみられる慢性的な耐え難い痛みは末梢神経および中枢神経系の圧迫、変性、損傷に起因している。これは創傷などによる初期の痛みとは異なり、創傷が治癒した後に新たに発生する痛みで、急性痛で有効な非ステロイド系消炎鎮痛剤や麻薬系鎮痛薬等の薬剤が効きにくく決定的な治療法がない。本課題は難治性疼痛治療薬の実用化に向けた技術開発であり、当該治療薬の持続期間の延長・向上を目指した研究である。
1421 肝細胞増殖因子(HGF)産生誘導作用を有する新規発毛素材の開発と応用 合田 榮一 岡山大学 梶谷 浩一 岡山大学 肝細胞増殖因子 (HGF) はヒト及び動物の毛包に働き、発毛・育毛を促進することが知られている分子量9万のタンパク質である。本課題は代表研究者が見出した新規HGF産生誘導剤のマウス皮膚におけるHGFレベル上昇効果及び発毛促進効果を試験し、市販発毛薬と同等かそれ以上の発毛効果を得ることを目標とする。試験するHGF産生誘導剤は天然物由来であり、今回の動物試験で効果が確認できれば、今後ヒト試験を経て安全な発毛薬としての開発・応用が期待できる。
1428 新規持続性う蝕・歯周病予防剤の口腔細菌叢への影響と安全性評価 吉田 靖弘 岡山大学 梶谷 浩一 岡山大学 現在,多くの口腔ケア製品が市販されているが,抗菌物質を歯質表面に留める機能を有する物はない。申請者が開発したリン酸化プルランは抗菌物質を歯質表面に運ぶ役割を担い,かつ,歯質表面に留めておくことから,類似機能を謳った市販品の約1〜10万倍の優れた抗菌効果を発揮する。本研究では,リン酸化プルランと抗菌物質との併用による「う蝕・歯周病予防剤」の実用化にあたって,必修事項である口腔細菌叢に対する本剤の影響を確認する。
1431 食用種子由来の機能性糖ペプチドを利用した人工糖鎖ポリマーの調製と応用 木村 吉伸 岡山大学 梶谷 浩一 岡山大学 食用種子中には糖タンパク質性の貯蔵タンパク質が豊富に存在し,機能性糖ペプチドの調製にとっても貴重な生物資源である。本研究では,(1)食用種子中に豊富に存在する糖タンパク質に注目し,糖鎖構造が均一な機能性糖ペプチドの多量調製法の確立,(2)糖ペプチドを用いた高機能性多価糖鎖ポリマーおよびリポソーム合成,(3)抗原性糖鎖含有ポリマーおよびリポソームを用いた免疫細胞の活性化およびリソソームターゲティングへの応用を目標とし,糖タンパク質糖鎖の医薬応用研究への展開を目指す。
1434 細胞内局在分子の絶対量の定量化による組織評価法の開発 小阪 淳 岡山大学 梶谷 浩一 岡山大学 組織切片標本上の細胞標本一個のレベルで、標的分子であるmRNA、蛋白質の絶対量の定量化、つまりmRNAであれば何コピーか、蛋白質であればその分子数を決定できる新技術の実用化を進めます。この技術が実用化されれば、癌組織の悪性度を客観的に予測したり、農産物、畜産物、養殖魚の品質を数字で表すことができます。
1437 消化器系希少疾病“潰瘍性大腸炎”に有効な治療薬の開発 加来田 博貴 岡山大学 梶谷 浩一 岡山大学 潰瘍性大腸炎は、大腸に潰瘍ができる原因不明の疾患で、薬物療法、白血球除去療法などがあるが、患者を満足させるには至っておらず国の特定疾患(難病)に指定されている。そのような中、申請者は本疾病モデル動物で薬効を示す化合物を発見した。本研究では、開発化合物に対する拮抗薬を創出し、作用点として予測される遺伝子発現やタンパク質発現に関するデータを収集することで作用機序の明確化を行い、開発ステージの発展を目指す。
1438 細菌熱ショックタンパク由来の免疫抑制ペプチドの基礎的検討 横田 憲治 岡山大学 桐田 泰三 岡山大学 【技術内容】ヒトの口腔内常在菌であるStreptococcus由来の熱ショックタンパク:Heat Shock protein 60kDa(HSP60)の合成ペプチド(HSPペプチド)による免疫抑制剤の開発を行う。
【目 的】ヒト常在菌由来の安全な免疫抑制物質を作製する。
【実施内容】細菌やその炎症物質刺激により活性化した単球系細胞や、これらを投与したマウスにペプチドを作用させ、サイトカインの産生の抑制や炎症の病理像を検討する。
【目 標】ヒト常在細菌から分離した安全な抗炎症薬の開発を目指す。
1439 成人T細胞白血病・リンパ腫発症の早期発見・早期診断および発症危険度推定法の開発 岡 剛史 岡山大学 桐田 泰三 岡山大学 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)はその原因ウイルスであるHTLV−Iのキャリアーの中から数千人に一人の割合で発症する難治性の白血病であり日本で約100万人のHTLV−Iキャリアーがいる。これまでの基礎的研究をもとに定量的測定技術の開発により高精度・高感度な技術改良を行い、実際の医療現場で実用可能なATLL発症早期発見・早期診断・予後推定・発症危険度推定システムの開発をおこなう。
1440 難治てんかん発症予測のスクリーニングテストのプログラム開発 大守 伊織 岡山大学 桐田 泰三 岡山大学 小児の約8%には発熱等によって誘発される熱性痙攣がみられる。熱性痙攣の多くは6歳までに治癒し積極的な治療を必要としないが、少数でてんかん重積など危険な状態をもたらす難治性てんかんになる場合がある。本応募課題は1歳未満の病初期に良性の熱性痙攣の中から難治性てんかん患者を早期に選別するスクリーニングテストの実用化を目指している。一般小児医師・家庭医がコンピュータで難治性てんかん患者を簡便に選別可能にするプログラムを開発すること、および、実際に本テストを多くの熱性痙攣既往小児に適用し検証・確認試験を行うことにしている。
1452 新規抗住血吸虫薬の開発研究 金 惠淑 岡山大学 東 英男 岡山大学 住血吸虫症は76カ国2億人が感染し、6億5千万人が感染の危機にさらされている寄生虫感染症である。現在、住血吸虫症の治療はプラジカンテル一剤に頼っており、耐性住血吸虫の出現が危惧されている。私たちが開発を目指す新規抗住血吸虫阻害剤である、環状過酸化化合物(N-89)は、中体の抑制効果、及び虫卵数の減少効果を併せ持つ。本研究では住血吸虫への阻害作用を精査し、より効果的な抗住血吸虫薬の臨床開発を目指す。
1460 テトラスパニンCD81を用いた新規リウマチ診断薬の開発と応用 中西 徹 就実大学 大村 祐章 (財)岡山医学振興会 テトラスパニンは4回膜貫通細胞表面分子の総称で近年我々はこの中の一つであるCD81が関節リウマチ(RA)の発症と強く関連していることを発見した。このCD81分子の細胞、特に滑膜細胞等における増大が関節炎からRAへの移行に関係していると考えられることから、この分子の血液あるいは関節液における濃度を測定することで早期にRA発症の診断を行うことが可能と考えられる。これまでRAを早期に診断することは難しく、RAを発症してからの対症療法に終始している。高齢化社会の到来を踏まえて、RAの早期診断が可能となることは画期的なことで社会へのインパクトも大きい。
1461 新規手法を用いた生体ガス・皮膚滲出液成分分析による非侵襲的診断法の開発 齋藤 啓太 就実大学 梶谷 浩一 岡山大学 高齢化社会の到来に伴い、高齢者の加齢臭、歯周病などによる口臭は、疾病だけでなくストレスや生活習慣などに起因する臭いとしても注目されている。また、生体ガスや皮膚滲出液中の生体成分が、様々な疾病の診断マーカーとして注目されている。本研究は、従来の診断検査では処理が面倒な血液や尿を試料として行われていたことに着目し、生体ガスや皮膚滲出液中の成分を簡便かつ迅速に採取、固相マイクロ抽出 (SPME) 法により分析する方法を考案開発し、新しい健康診断や疾患診断に繋がる非侵襲的診断法の確立を目的としている。
1472 α-fetoprotein の腫瘍抑制機能の検証 矢間 太 県立広島大学 佐伯 達志 県立広島大学 α-fetoprotein(以下、AFP)は胎児肝臓で産生され、生後健康な生体では産生されない。しかし、肝がんになるとAFPが産生され血中に放出されるので、現在AFPは肝がん腫瘍マーカーとして臨床応用されている。本課題代表研究者はこれまでの研究により、AFPが細胞分裂停止に関連する機能を有することを示唆するデータを得ている。本課題では定説とは全く異なった、AFPの腫瘍に対する細胞分裂抑制機能の検証を目的とする。
1493 アミノアシル基を有したプロドラッグ型抗生物質の開発 的場 康幸 広島大学 山田 一徳 広島大学 申請者は、ある抗生物質の生合成を研究する過程において、最終前駆体として産生されるアミノ酸と結合した抗生物質(アミノアシル化抗生物質)は、それ自身抗菌活性をほとんど示さないが、アミノペプチダーゼで脱アミノアシル化されると、抗菌活性を持つ化合物に変換されること発見した。この現象にヒントを得て、アミノアシル化した抗生物質を創出するとともに、アミノペプチダーゼを産生する病原細菌をターゲットとして、その病原細菌に対し選択毒性の高いプロドラッグの開発を目指す。
1494 イネ発現系を利用した新規ヒト型化抗う蝕予防抗体の開発と応用 高橋 一郎 広島大学 山田 一徳 広島大学 う蝕は太古より現代に至るまで人類に蔓延している細菌感染症のひとつである。申請者らはう蝕の病原細菌Streptococcus mutansの歯面への初期感染に関与するエフェクター分子PAcを世界に先駆けて発見し、あわせてその遺伝子構造、タンパク質一次構造、さらに唾液タンパク質被覆歯面への感染機構を解明した。またう蝕のエフェクター分子PAcはう蝕予防用粘膜ワクチンとしても有用であることを明らかにした。本研究ではエフェクター分子PAcに対するマウスモノクローナル抗体Fab領域遺伝子をイネにおける異種遺伝子発現系に応用し、安全で機能性の高い抗う蝕予防抗体の開発をめざす。
1495 小胞体ストレスを標的とした新規抗肥満薬の開発 細井 徹 広島大学 山田 一徳 広島大学 肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化症といった生活習慣病の主要な危険因子であり、肥満の発症機構の解明と有力な治療法の開発は重要な研究課題である。今回、肥満発症の新機構として、私達の見出した小胞体ストレスの関与(Molecular Pharmacology 2008, 74:1610-9.)に着目し、新規抗肥満薬開発の可能性を模索する。
1496 蛋白質リン酸化反応を超高感度に検出するためのリン酸基認識試薬の開発と応用 木下 英司 広島大学 山田 一徳 広島大学 近年、蛋白質リン酸化反応の検出技術は、癌などの分子標的薬のスクリーニング法として注目を集めている。よって、生体内のごく僅かな蛋白質リン酸化反応を網羅的にプロファイルできる、より特異的で、かつ、超高感度な分析技法の開発が急務である。申請者はリン酸基を特異的に捕捉する亜鉛錯体(フォスタグ)に1分子のビオチンを導入したリン酸基認識素子を既に開発している。本研究では、これを改変させることで、既存の機器や発光試薬を改良することなく検出感度を飛躍的に高めることを目指し、以下の目標を設定する。①複数分子のビオチンを導入した誘導体を合成する。そして、Aそれをペプチドアレイチップやティッシュアレイチップ等のラボオンチップ技術に応用することで、簡便・高効率、かつ、超高感度に蛋白質リン酸化反応を検出するための新しい分析技法を創出する。
1526 再生医療のための生体外組織形成へ向けた新規細胞伸縮装置の開発と応用 岩楯 好昭 山口大学 井本 良 山口大学 再生医療の最先端の現場では、細胞を生体から取り出し生体外で細胞から組織を形成させた後、生体に戻す試みがなされ始めている。多くの生体組織は血流や筋肉の運動といった機械的な刺激の影響下で形成される。そのため、生体外で組織形成させる場合でも、細胞に適切な機械刺激を与え続ける技術が今後ますます重要になっていく。本課題では、形状記憶合金を動力源とした振動ノイズの無い細胞伸縮装置を「生体外での組織形成装置」として実用化への展開を図る。
1530 膵癌化学療法抵抗性を誘導増強する蛋白質の制御による治療法の確立 藏滿 保宏 山口大学 殿岡 裕樹 山口大学 ゲムシタビン(GEM)は唯一膵癌に有効な抗癌剤であるが抵抗性の膵癌が多いのが現状である。GEM抵抗性を規定する蛋白質をターゲットとし、これを阻害してGEM治療の増強効果を有する物質の探索を行うことを目的とする。(1)これまでにGEM抵抗性を規定する蛋白として同定したHSP27についてインヒビターとしての制御活性を有する物質やGEMの効果を増強する物質を探索する (2)またGEM感受性と抵抗性の膵癌株の細胞内蛋白を二次元電気泳動を行い、それぞれのスポットの発現に差異のある蛋白スポットを選定して質量分析により蛋白を同定する。
1531 精神疾患の病態に関与する脂質の同定と診断マーカーとしての有用性検討 大和田 祐二 山口大学 殿岡 裕樹 山口大学 我々はヒト精神疾患のモデルマウスとして、脳内のオメガ3系脂肪酸代謝に関わるFABPノックアウトマウスを世界に先駆けて報告した。これは、脳内の脂肪酸代謝異常が精神疾患の発症や病態につながるという、新しい概念を提示するものである。本研究では、FABP7ノックアウトマウスを用いて、ヒト精神疾患の診断や病態把握に有用な、脂肪酸および脂肪酸代謝物質の同定を試みる。
1532 タグ付抗体を利用した次世代抗体チップの開発と応用 古元 礼子 山口大学 殿岡 裕樹 山口大学 ある表面加工を施した基板に特殊なタグ付蛋白を安定的に結合させる技術を利用し、産業的に大きな波及効果が期待できる抗体チップの開発を行う。この技術の確立のため、本課題では組み換え免疫グロブリンG (IgG)にタグを導入し、合成したタグ付組み換えIgGが抗体としての蛋白構造と抗原認識能を保持するか検討を行う。
1533 肝硬変患者における超音波B-mode画像を用いたテクスチャ解析による肝線維化の定量、及びM-mode画像を用いた肝硬度診断 瀬川 誠 山口大学 殿岡 裕樹 山口大学 肝硬変患者における肝線維化診断は、肝硬変の進展度を評価する上で重要であり、超音波診断では、肝内部の不均一性の評価により行われるが、現状では定量化(数値化)されていない。超音波画像での肝実質の不均一性の定量化の手法を開発し、硬変肝と正常肝を鑑別する技術を確立する。また、大動脈の拍動による肝の動的変化を超音波m-modeで計測する手技により肝硬度を測定する技術を開発し、新しい肝硬変診断技術の開発を目指す。
1534 心筋細胞内カルシウムを制御する新たな心不全治療薬の開発 乾 誠 山口大学 殿岡 裕樹 山口大学 心臓の収縮・弛緩は心筋細胞内Ca2+により制御され、心筋小胞体の膜蛋白質ホスホランバンは、細胞内Ca2+調節で主要な役割を果たす。本研究では、ホスホランバンに結合する一本鎖オリゴヌクレオチド(アプタマー)を利用して、心筋小胞体Ca2+輸送を促進することにより弛緩の促進と強心作用をもたらす新たな心不全治療薬を開発することを目指す。そのためアプタマーのヌクレオチド配列の最適化、血中での安定化、細胞内導入法を検討し、心不全モデル動物での効果を確認する。
1537 新規女性ホルモン受容体をモデルにした未知1塩基変異の高速検出方法の開発 水上 洋一 山口大学 殿岡 裕樹 山口大学 ガンなどの生活習慣病は予想以上に遺伝子の変異が関与している。しかし、未知の変異検出を行う従来のシークエンス法は膨大な費用と時間がかかる。そこで、卵巣ガンや乳ガンに関与しているGPR30をモデルにして高速で安価な未知変異解析法を開発する。
1541 2-ベンズアゼピンを基本骨格とした新しい創傷治癒促進薬シーズの開発と応用 上村 明男 山口大学 浜本 俊一 山口大学 本課題は、2−ベンゾアゼピン骨格を有する新規創傷治癒促進薬の実用化に向けて、合成的な問題の高効率化と生理活性のさらなる向上に取組み、この化合物を新薬としての実用化に向けた研究をおこなうものである。2−ベンズアゼピンを有する骨格は、細胞増殖ではなく細胞遊走のみを促進する新しいメカニズムによる創傷治癒促進効果があることが見出され、画期的な新薬の可能性が期待できることがわかっている。本化合物の実用化(=製薬企業にバトンタッチ)に向けて、以下の目標に取組む。(1)高純度な2−ベンゾアゼピン骨格の効率的合成法の確立、(2)さらなる活性を有する2−ベンゾアゼピン誘導体の探索と生理活性作用の解明
1558 抗菌活性天然物を鋳型とする新規抗菌剤の開発 宍戸 宏造 徳島大学 安田 崇 株式会社テクノネットワーク四国 本研究では、抗MRSA活性抗菌剤を含む新規抗菌剤の開発に直結するリード化合物の探索、創製を目的とする。研究代表者らはこれまでに、抗MRSA活性を示すテルペノイドや広範な抗菌活性を示すポリケチドの全合成を達成した。今回は、これらの天然物に加え、系統的な活性評価がなされていない微量天然物を鋳型とし、関連化合物のライブラリー構築と構造活性相関研究を機軸に特異的な新規抗菌剤リード化合物の探索、創製を行う。
1559 がん放射線治療装置・PET診断装置の安全確認イメージセンサーの開発 佐瀬 卓也 徳島大学 塩崎 紀子 株式会社テクノネットワーク四国 がん治療や診断に用いられる医療用加速器は、その運転に付随して放射線を発生する。これらの放射線が異常に漏えいすると、患者ならびに医療従事者が危険に晒されるだけでなく、機器本体や周辺環境までもが中性子による放射化現象によって汚染される危険性がある。医療の品質保証と、放射性廃棄物の発生量低減のために、放射線の漏えいを臨床の場で簡便かつ視覚的に測定する手法を安全確認イメージセンサーの開発によって確立する。
1560 新規エストロゲン受容体活性化制御分子によるホルモン依存性乳癌増殖機構の解明および新規乳癌治療法の開発 片桐 豊雅 徳島大学 斎藤 祐一 徳島大学 乳癌症例の多くは、エストロゲン受容体(ER)陽性であり、その治療薬タモキシフェン(TAM)は、顕著に生存率を向上させた。しかし、ER陽性乳癌でもTAM抵抗性を示す症例や、TAMの長期使用により抵抗性を獲得する症例も多く認められる。本申請課題では、我々が同定した新規ER活性化制御分子の機能解析を通じて、ホルモン依存性乳癌における新たな増殖機構の解明や新規治療薬開発を目指す。
1561 昆虫の形質転換技術の応用による薬剤評価システムの開発 三戸 太郎 徳島大学 斎藤 祐一 徳島大学 代表研究者らが開発したトランスジェニックコオロギ作製技術を応用し、昆虫個体を用いた新規の薬剤評価システムを開発することを目的とする。まず、ヒト型の受容体タンパク質等の有用な遺伝子をコオロギに導入する。トランスジェニック個体における導入遺伝子発現効果を、脚の再生能や鳴き声などの高次機能のアッセイ系と組み合わせて解析し、さらに、この解析系で薬剤効果の評価を行う。実用可能な簡便な薬剤評価システムを開発することを目標とする。
1564 多発性骨髄腫由来ガン幹細胞に対する新規バイオマーカーの探索 辻 大輔 徳島大学 斎藤 祐一 徳島大学 組織幹細胞は、多系統にわたる分化細胞を産生する多分化能と自己複製能を併せ持つ。最近、ガン組織が正常の幹細胞システムと類似した階層構造から成り、ガン細胞がその幹細胞に由来するという“ガン幹細胞”という概念が注目されている。本研究では組織幹細胞に共通した性質である色素排出能を利用し、ヒト多発性骨髄腫細胞株からSide population(SP)細胞集団を単離し、トランスポーターなどの遺伝子発現や細胞表面タンパクを解析することで癌幹細胞を特定できる新規バイオマーカーを探索することを目的としている。
1589 ヒト唾液タンパク質由来複合ペプチドによる歯周病細菌定着阻害剤の開発 片岡 宏介 徳島大学 平岡 功 徳島大学 歯周病は、数種の細菌によるバイオフィルム感染症であり、その予防法のひとつとして、口腔内における歯周病細菌の初期付着・定着時の選択的な定着阻害が考えられる。本研究では、歯周病細菌に対する複数の唾液タンパク質上の結合部位を含むペプチドをキャリアータンパクに結合し、新規の(結合領域)ペプチド複合体を作製する。そして、そのペプチド複合体による口腔内歯面モデル(唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズ)への歯周病細菌結合阻害効果を検討する。
1597 新規検定法によるシトリン欠損症治療薬の検索 佐伯 武頼 徳島文理大学 富田 基郎 徳島文理大学 申請者らが開発した疾患モデルマウスを用いて、また申請者らが病因遺伝子を発見し、発症機構を解明したシトリン欠損症の、内科的治療法を開発・確立することを目的とする。モデルマウスは、ヒト患者と同様に糖質を嫌う。この性質を利用し、自由摂取のショ糖溶液摂取量を増加させる物質を探索し、シトリン欠損症治療薬の候補薬とする。
1608 近赤外線分光法を用いた嗅覚評価法の開発 唐木 將行 香川大学 倉増 敬三郎 香川大学 嗅覚評価は自覚的検査法である基準(T&T)や静脈性嗅覚検査にて評価されている。我々は近赤外線分光装置を用い、嗅覚の他覚的検査方法を確立するために嗅覚刺激時の脳血流測定から嗅覚の他覚的な評価法を検討している。本方法が実用化すれば他覚的な評価が可能となり、詐病や心因性嗅覚症の評価が可能となる。また、嗅覚刺激による脳血流変化は嗅覚以外に作業効率や覚醒度、リラックス効果、作業環境の評価などが可能となりうる。
1611 希少糖D-アロースの癌細胞増殖抑制効果の有効な利用法の開発 徳田 雅明 香川大学 長崎 倶久 香川大学 ブドウ糖と同じ六炭糖である希少糖D-アロースは、癌細胞増殖抑制作用を有し、そのメカニズムが通常の抗癌剤とは異なる。癌細胞の培養系での実験で、D-アロースは抗癌剤5-fluorouracil (5FU)との併用による相加的効果を示し、5FUの使用量を約半分以下に減らすことができた。こうした機能を持つD-アロースを、新規抗癌剤として単独あるいは既存の抗癌剤との併用で用いることの有用性につき、また癌発症のリスクの高い状態にある個体の発癌予防目的で用いることの有用性につき、動物実験で確認する。
1612 筋萎縮性側索硬化症における希少糖による治療法の開発 板野 俊文 香川大学 長崎 倶久 香川大学 筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルマウスを用いて、希少糖の一つであるD- アロースの効果をあきらかにする。さらにその作用機序を解析する。また、治療薬開発としての可能性を追求するため、投与形態、投与量、有効量等のデーターを取得する。これらの研究により現在、治療薬がほとんどないALSの新しい治療法の開発を目指す。
1614 臨床検査としての高感度ガレクチン−9測定法開発と種々疾患における意義 有川 智博 香川大学 長崎 倶久 香川大学 申請者らはマウスを用いたリウマチ関節炎モデルや多発性硬化症などの自己免疫疾患モデルにおけるガレクチン9の炎症抑制効果を報告し、さらにヒト乳癌組織での当因子の発現が転移予測に有用であることを見出している。将来的にヒト疾患での解析の必要性が高まることを見据え、容易に採取可能な血液検体中での定量系の開発は必須であると考える。系構築後は種々疾患別にガレクチン9を指標とした病態解析や予後診断のデータベース化を最終的な目標とする。
1615 脳卒中特異的血中因子同定と血液診断の開発 細見 直永 広島大学 長崎 倶久 香川大学 死亡率第3位を占める脳卒中において、その早期診断を可能とし救命率の向上を図ることを目的とする。この目的のため、脳卒中後に脳組織より血中に漏出するタンパク質(ペプチド)を同定し、これを定性・定量的に検出することにより、脳卒中超急性期血液診断を可能にする。
1622 ヒト常在性真菌の感染性表現型の簡易検出法の開発 文谷 政憲 徳島文理大学 中島 賢一郎 徳島文理大学 真菌Candida glabrataの感染性の有無を簡易に求める方法を開発する。日和見感染菌が感染性を示す原因となる遺伝子を明らかにするためには、菌の感染力を容易に検出する手法の開発が不可欠である。本応募課題では真菌を飼料とする線虫を用いて、餌とした菌の感染能力を測定する系を作製する。感染力に違いがある菌を用いて、線虫の形態や寿命などの観察し、感染性に対する簡易な検出法の可能性を追求する。
1623 表面薄膜における反射干渉の位相検出に基づく高感度非標識検出技術の開発 大槻 荘一 独立行政法人産業技術総合研究所 和田 英男 独立行政法人産業技術総合研究所 蛍光色素によって直接または間接に試料の標識化を行うことなく、血液中などに微量に含まれるタンパク質を測定するため、基板の表面に存在する薄膜の反射干渉によって生じる、2つの直交する偏光の位相差を検出することにより、基板表面に結合したタンパク質を高感度に計測する技術を開発する。表面に結合したタンパク質の量を、基板表面1 mm2あたり1 pg (10-12 g)以上の感度で検出することを目指す。
1637 体内菅腔縮小用次世代経カテーテルデバイスのクリップ開発 高橋 学 愛媛大学 神野 俊一郎 愛媛大学 完全閉口せず微小クリップを用いて欠損孔を縮小する次世代の菅腔治療用経カテーテルデバイスの開発を行ってきた。そのカテーテルデバイスのクリップについて、超弾性特性を示す材料を適用し、形状、動作についてプロト開発を試みる。形状記憶合金線によるスプリングコイル加工・リング形状加工し、超弾性による形状復元力(スプリングバック)を調査する。クリップに必要な復元力をもつ構造を検討する。針格納機能のクリップへの付与を試みる。
1650 局所麻酔薬リドカインによる癌浸潤・転移阻害標的剤の開発とその応用 井上 博文 愛媛大学 入野 和朗 愛媛大学 癌細胞の浸潤・転移抑制は癌治療の重要な課題のひとつである。我々はこれまでに低分子局所麻酔薬が癌の浸潤・転移を阻害することを報告し、その分子機序の一端を明らかにしてきた。この作用機序には膜型増殖因子遊離が関与していることが示唆されており、局所麻酔薬が癌自身の生物活性制御に効果的であると思われる。本研究では、この分子機構に基づき、より高い浸潤・転移阻害活性を持つ局所麻酔薬類似化合物を創出し、新規癌浸潤・転移阻害・麻酔剤の創薬と応用を目指す。
1656 交流磁場誘導焼灼療法用の安定した発熱特性を有する無方向性磁性体針の開発 猶原 隆 愛媛大学 入野 和朗 愛媛大学 本研究の目標は、人体内部に留置した磁性体を磁場中で加温して腫瘍を壊死させる、新しい癌治療法の確立である。しかし、深部臓器癌に適用する場合、腫瘍はコイルに挿入された状態となり、その位置や深さにより針の刺入角度が異なる。そのため、コイル内の磁束方向と針の角度の相違で発熱特性が変化して、正確な温度制御が不可能となる。本研究では、この課題を克服するため、磁場に対し無方向性で、安定した発熱特性を持つ焼灼用針を開発する。
1659 機能的 small RNA を用いた新規口腔癌治療法の開発 中城 公一 愛媛大学 塩崎 紀子 株式会社テクノネットワーク四国 ヒト癌の治療に、癌細胞の増殖、浸潤、転移を支持する分子を標的とする治療法が応用されるようになっている。一方、RNAi 技術は生命科学研究において頻繁に利用されている。また、医薬品への応用も期待され、種々の難治性疾患に対する臨床治験が米国で進められている。本試験では、機能的 small RNA の腫瘍組織を用いた抗腫瘍活性評価法を開発し、複数の癌関連遺伝子を標的とする機能的 small RNA を組み合わせることにより、最大の抗腫瘍効果を発揮する併用方法を探索する。
1660 赤血球保護作用を持つ脂溶性高麗人蔘成分の循環改善剤、血液保存剤、貧血治療薬への応用 満田 憲昭 愛媛大学 大山 真吾 株式会社テクノネットワーク四国 代表研究者らは高麗人参抽出液中より、酸化ストレスに対する赤血球膜タンパク質保護効果を持つ2成分を見出した。これらの成分は、赤血球膜上のBand-3タンパク質の酸化を抑制することにより、赤血球の変形能やガス運搬能を維持している。このことは、脾臓や肝臓における赤血球の破壊の抑制にもつながる。そこで、これらの成分の循環改善剤、血液保存剤、貧血治療薬としての医学・薬学分野での応用を目指す。
1661 がん特異性とがん病巣集積性に優れる新規細胞免疫療法の開発 安川 正貴 愛媛大学 大山 真吾 株式会社テクノネットワーク四国 現在国内で、活性化リンパ球を用いたがんに対する細胞免疫療法が実施されているが、投与するリンパ球のがん特異性とがん病巣集積性に劣り、期待される治療効果が得られていないのが現状である。これらの問題を克服するために、がん特異的T細胞レセプター遺伝子とがん組織に高発現されるケモカインに対するレセプター遺伝子を同時に強制発現させた細胞傷害性T細胞による新規がん細胞免疫療法を発案した。このことによってがん治療効果の飛躍的な向上が期待できる。
1662 口腔扁平上皮癌における新規インテグリン阻害剤の開発 荒本 孝良 愛媛大学 大山 真吾 株式会社テクノネットワーク四国 口腔扁平上皮癌において細胞外接着因子のレセプターであるインテグリンファミリーが多く発現し、転移浸潤に大きく関わっていることが知られている。そのうちbeta4 integrinは口腔扁平上皮癌細胞株に多く発現しており、細胞運動性に大きく関与していることが我々の研究で判明した。 本試験ではbeta4 integrin及びヘミデスモゾーム関連タンパク質に対するsiRNA、microRNAを同定し、新規のインテグリン阻害治療薬として確立することを目指す。
1665 柑橘類果皮に含まれる脳機能活性化物質の単離とサプリメントへの応用 古川 美子 松山大学 葛谷 昌之 松山大学 柑橘類をはじめ植物にはカテコール類、ポリフェノール類など様々な物質が含まれているが、その多くは低分子であることから血液脳関門を通過し、直接脳の神経細胞に作用する可能性がある。本課題では、神経細胞内の基幹シグナル伝達分子であり、脳神経細胞の機能を高め、記憶・学習や認知機能など幅広い高次脳機能に不可欠の分子と解明されつつあるmitogen-activated protein kinase (MAPK)ファミリーErkの活性化を指標として、柑橘類果皮に含まれる脳機能活性物質を単離・同定し、脳活性化サプリメント開発へと発展させる
1681 海洋細菌由来抗がん性色素の新しい生理活性 榎本 恵一 高知工科大学 都築 俊夫 高知工科大学 海洋細菌から得られる抗がん性色素の細胞内標的分子とそれに対する作用を明らかにするため、細胞内シグナル伝達機構に対する色素の効果を検証する。特に発がんに関わる標的分子に対する色素の効果を調べ、医薬や診断・研究用試薬としての利用を図る。
1690 IL-27の分泌制御可能な樹状細胞の作成とその応用 谷口 武利 高知大学 大山 真吾 株式会社テクノネットワーク四国 IL-27は感染初期にnaiveT細胞に作用してTh1への誘導に重要な役割を果している。IL-27は、EBI3 とp28からなるが、特にp28遺伝子が転写レベルで制御されており、感染に伴いAP-1の作用でIL-27p28が誘導されることを明らかにした。最近、IL-17が、関節リュウマチなど炎症性の疾患に関わっており、IL-27がこのIL-17の分泌を抑制し、炎症を制御することが示唆された。そこで、関節リュウマチの実験系(CIA)にIL-27の産生を制御できる樹状細胞を用いてその治療効果を明らかにする。
1691 フローサイトメトリーによる白血病細胞増殖機構の解析・治療戦略決定への応用 池添 隆之 高知大学 大山 真吾 株式会社テクノネットワーク四国 我々を含め国内外の研究グループの報告から、急性骨髄性白血病では細胞増殖を刺激する様々なシグナル伝達機構(PI3K/Akt/mTOR、 MEK/ERK、 JAK/STATなど)が活性化していることが明らかとなった。また、これらのシグナルの活性化状況は患者生命予後と逆相関する可能性が示唆されている。我々はフローサイトメトリーを駆使し僅かな検体量で各種シグナルの活性化状況を瞬時に明らかにして患者の生命予後を予測したい。それにより患者を層別化して、治療法を選択決定するシステムの構築を目指す。
1692 胸部CT画像によるじん肺自動診断の開発とその臨床応用 菅沼 成文 高知大学 大山 真吾 株式会社テクノネットワーク四国 鉱物性粉じん吸入に起因するじん肺は胸部エックス線写真で健診されるが、判定者間の不一致が問題となる。一方、単一結節影を主病変とする悪性疾患のコンピュータ支援診断(CAD)の中にはR2 (Hologic, Inc., CA)のように米国での乳がん検診で一次読影に実用されているものもある。じん肺CADに関する研究は草創期には肺がんなど単一結節影検出用に先んじていたが当時の技術では実用化できなかった。しかし、近年のコンピュータ技術の進歩により可能性が高まった。
代表研究者は、じん肺臨床画像研究グループの一員として文部科学科研や厚生労働科研による研究の中で、DICOM方式でCT画像データを収集しじん肺画像データベース(福井DB)を構築してきた。この貴重な症例集を用いてILO国際胸部エックス線じん肺分類を補完する職業性呼吸器病のための国際HRCT分類(ICOERD)(Kusaka 2005; Suganuma, IAOEH 2006; Suganuma, JOH 2009)を国際共同研究により開発し、その健診応用に向けて富士通と共同でICOERD-Viewer Ver.1を開発した(Suganuma, RSNA 2007; Suganuma, ICOH 2009)。これはじん肺のCT所見を細分化しそれぞれにスコアを与えて半定量化する支援ソフトである。現状では医師がビユアー上で観察しそれをスコア化するが、この延長線上に、木戸尚治(山口大学)らがびまん性間質性肺炎のスコア化のために開発したアルゴリズムを応用し、じん肺の自動スコア化を実現すべく準備を重ねてきた。また、画像の3次元化を考慮して新たに収集した高知じん肺画像DBを検討に用いる。こうして完成するじん肺CT-CADはじん肺読影医養成の際の精度管理のツールとして利用可能であるし、大量の健診画像の一次読影としても利用可能である。
1694 物理的刺激が血管平滑筋ミネラロコルチコイド作用に及ぼす効果の評価法の確立 次田 誠 高知大学 石塚 悟史 高知大学 近年、血管平滑筋などの非上皮性細胞で、アルドステロンやコルチゾールなどの副腎皮質コルチコステロイドが MRを介して炎症・線維化を惹起する可能性が報告され注目を集めている。一方血管平滑筋は、炎症ストレスのみならず物理的ストレスを常時受けている。しかし、それが細胞内ステロイド代謝および GR/MR を介したステロイド作用にいかなる影響を及ぼすかは明らかにされていない。我々は血管平滑筋細胞に機械的伸展刺激を与える物理的ストレスが、細胞内ステロイド代謝の変化を介して動脈硬化関連遺伝子の発現に影響を与えるか否かを解明し、その評価法を確立する。
1695 新規ペプチドホルモン・ウロコルチンの腎性尿崩症尿崩症治療への応用 岩崎 泰正 高知大学 石塚 悟史 高知大学 難病である「家族性腎性尿崩症」の新たな治療法の開発。内容:腎性尿崩症に対しウロコルチンという最近見出された内因性の神経ペプチドを用いることにより、V2受容体に変異が存在しても、異なった受容体(CRF1/2)を介して細胞内の cAMP 産生を刺激し、結果的にバソプレシンの作用と同様の効果を発揮させる新しい治療法の開発を試みる。
1696 末梢神経電気刺激法による静脈血栓塞栓症の予防効果に関する臨床研究 池内 昌彦 高知大学 石塚 悟史 高知大学 静脈血栓塞栓症は生命を脅かす疾患であり、脱水、手術、骨折、麻痺、寝たきりなどが原因で生じる。現在、各種理学療法や薬物療法が行われているが不十分な場合がある。末梢神経電気刺激法は、簡便でかつ安全に施行でき、静脈血栓塞栓症予防効果以外にも様々な効果が期待できる有望な方法である。
1699 共役輸送担体 SGLT の癌細胞における発現機能解析と糖代謝を標的とする新規抗癌治療戦略への応用 田口 崇文 高知大学 石塚 悟史 高知大学 近年、細胞膜を介した糖取り込みやグルコースセンサーとして働くナトリウム/グルコース共役輸送担体: SGLT が、糖尿病や癌治療戦略の新規標的因子となりうることが示唆されている。 本研究では、SGLT 遺伝子の癌細胞における発現機能解析とシグナル伝達経路に関連する遺伝子群を明らかにすると共に、細胞内糖代謝機構を標的とする新規抗癌治療戦略への応用を検討する。
1700 前立腺癌の次世代バイオマーカーの開発と臨床応用 田村 賢司 高知大学 石塚 悟史 高知大学 前立腺特異抗原(PSA; Prostate Specific Antigen)は最も広く用いられている前立腺癌のスクリーニング検査の一つであるが、前立腺癌の有病率は従来考えられていたよりもはるかに高く、生検が推奨されるPSAの閾値を下げれば下げるほど、過剰診断が増えることが明らかになっている。理想のマーカーとしては、早期の前立腺癌を検出するにとどまらず、患者の予後を反映するものが望ましい。つまり、すぐに治療が必要な進行の早い癌なのか、生命に影響を及ぼすとは考えにくいため経過観察すればいい癌なのかということである。本研究は、PSAに替わる次世代バイオマーカーの開発とその臨床応用を目的とする。
1701 ウイルス関連造血器腫瘍におけるウイルスを標的にした新規治療法の開発 大畑 雅典 高知大学 石塚 悟史 高知大学 ウイルスは様々な発癌に関与している。Epstein-Barrウイルス (EBV) による悪性リンパ腫はその代表である。これらEBV関連リンパ腫の治療は通常のリンパ腫と同じ化学療法が施行されるが、その治療成績は満足できるものではない。腫瘍化にウイルスが密接に関与している以上、ウイルスを標的にした新しい治療法の開発はより良い治療成績をもたらすことが期待される。本研究では、ウイルスを標的にしたEBV関連造血器腫瘍に対する新規治療法の開発に向けての研究を行なう。
1704 多血小板血漿を用いた皮膚潰瘍の新しい治療法開発 高橋 綾 高知大学 北添 英矩 高知大学 近年社会の高齢化に伴い肥満、下肢静脈瘤、糖尿病、動脈硬化症などによる下肢の難治性皮膚潰瘍の患者が増えている。血小板を濃縮した多血小板血漿は、創傷治癒を促進する成長因子を高密度に含むため、再生医療・創傷治癒の側面からも注目されている。今回、多血小板血漿の皮膚潰瘍治癒促進に及ぼす影響を検討し、標準化された皮膚潰瘍治療法として確立させ、将来的には患者ごとのオーダーメイド治療に発展させたいと考えている。
1705 糖尿病性腎症の早期診断のための新規尿中バイオマーカーの開発 井上 紘輔 高知大学 北添 英矩 高知大学 わが国では、糖尿病患者の増加にあわせ糖尿病性腎症も増加の一途をたどり、1998年以降、糖尿病性腎症が慢性維持透析導入の原因疾患の一位となっている。さらに糖尿病患者の透析導入後の5年生存率は約50%と予後不良である。糖尿病性腎症の発症をより早く発見できる尿中バイオマーカーの開発は、治療の早期介入を促し、糖尿病性腎症の予後改善に貢献できると考えられる。近年、急性腎障害において、NGAL(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)、IL-18、 L-FABP(liver-type fatty acid binding protein)等の尿中バイオマーカーの変動が報告されており、糖尿病患者の尿検体での同マーカーの変動と腎症病期との相関を調べ、糖尿病性腎症の新規バイオマーカーとなりうるか検討していく。
1709 海藻由来抗インフルエンザ物質の開発 津田 正史 高知大学 北添 英矩 高知大学 ウイルス性疾患は世界中で大きな社会問題になっている。代表者は海藻類や微細藻の抽出物が、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス(HSV)、Epstein-Barrウイルス (EBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)に対して、抗ウイルス活性を示すことを見出してきた。本研究では、ある種の褐藻抽出物に含まれる抗インフルエンザ物質について各種分離法を駆使して分離し、核磁気共鳴と質量分析を用いてその化学構造を明らかにすることで、インフルエンザ薬のリード分子あるいは予防用素材を開発することを目的とする。
1714 マイコプラズマ特異抗原を使ったマイコプラズマ肺炎診断キットの開発とその臨床応用 桑野 剛一 久留米大学 池田 敬史 株式会社久留米リサーチ・パーク 抗生物質耐性マイコプラズマ菌の増加により、正確且つ迅速な菌同定法の開発が急務となっている。研究者らは既にヒトのマイコプラズマ肺炎の起炎菌であるMycoplasma pneumoniaeから分離・同定した炎症誘発物質、リポプロテインに対する抗体を作製し、リポプロテイン検出用サンドイッチELISA法を構築している。これを基盤にマイコプラズマ起炎菌であるM.pneumoniae抗原を検出する診断キットを開発し、迅速で正確な菌同定法の確立を目指すのである。
1715 セレウス菌産生嘔吐毒素セレウリドのアプタマーによる新規検出方法の開発 東元 祐一郎 久留米大学 池田 敬史 株式会社久留米リサーチ・パーク セレウス菌は自然界に広く分布し、しばしば食品を汚染し嘔吐型または下痢型の食中毒を起こすが、嘔吐型の発症には嘔吐毒素、セレウリドが関与している。この毒素検出には現在バイオアッセイ法やLC-MS法が用いられているが、操作が煩雑で時間を要する。本研究は、分子標識能を有する一本鎖DNAの中からセレウリドを特異的に認識するDNA 断片(アプタマー)を試験管内進化法により選別し、セレウリドを迅速かつ簡便に検出する方法を開発するものである。
1716 プロテアーゼ活性化受容体2の機能を修飾するDNAアプタマーの開発 木田 豊 久留米大学 池田 敬史 株式会社久留米リサーチ・パーク プロテアーゼ活性化受容体(PAR)は創薬標的として重要なG蛋白質共役型の受容体であり、4種の受容体が同定されている。中でもPAR-2は細菌感染に伴う炎症や免疫応答反応に重要であり、細菌感染により上昇する。従って、PAR-2活性阻害剤は新規医薬品の可能性を秘めているが、今までPAR-2を標的としたアンタゴニストは未開発である。本研究は創薬シーズの一つとして、DNAアプタマー作製技術を利用してPAR-2アンタゴニストの開発を行なうものである。
1719 大腸癌の簡易診断を目指した異常メチル化検出試薬の開発 竹中 繁織 九州工業大学 北井 三正 (財)北九州産業学術推進機構 後天的遺伝子変化(エピジェネティクス)であるDNAの異常メチル化は癌化に深く関与している。従って、その現象の迅速かつ簡便な検出法の開発が重要。本提案では大腸癌の診断のため、独自開発した蛍光性ペプチドインターカレータ(FKA)の分子構造を改良し,DNA異常メチル化の簡易測定法を開発。FKAはDNA塩基の違いを識別できる可能性があり、従来法では識別が困難だったパターンの簡易識別法となる可能性もある。
1755 がん微小環境の生体レドックス分子イメージングを指向したリポソームの開発と応用 兵藤 文紀 九州大学 山本 英樹 九州大学 研究者はこれまでに磁気共鳴法を用いた生体レドックス状態の非侵襲評価法により、がんで著しくレドックス反応が亢進する事を明らかにしてきた。近年がん微小環境(間質) においてレドックス変動を生じることが明らかとなってきており、がん微小環境のレドックス情報を基にした新しい診断薬の開発や治療・予防への応用が期待される。本研究では、この微小環境を生体レドックス分子イメージングで無侵襲局所解析/評価するためのニトロキシルプローブ封入リポソームの開発・レドックス分子イメージングへの応用を目的として研究を進める。
1756 微生物毒素を利用した新しい内視鏡がん治療薬剤の開発と応用 北田 栄 九州大学 山本 英樹 九州大学 研究者らは、微生物毒素を利用し正常細胞に影響の少ない新しい抗がん作用の基盤研究に成功した。人畜に無害な微生物の中に存在する毒素タンパク質が細胞を特異的に認識して破壊する特性を、がん治療に活用する試み(PS2AC)である。がん摘出後にPS2AC を患部投与することで、未摘出のがん細胞があっても、これを効果的に死滅させ、がん再発や転移を防ぐ効果が期待できる。
1757 PET薬剤創出のための多機能性ガリウム錯体の開発と応用 向 高弘 九州大学 山本 英樹 九州大学 本研究では、ポジトロン放出核種68Ga がサイクロトロンを必要とせず、簡便なジェネレータから産生できること、また1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)との錯体において、4つのCOOH 基のうち2つが錯体形成に関与していないことに着目して、この2つのCOOH 基に、機能性分子を導入した多機能性ガリウム錯体の合成法を確立することを目的とする。本手法により、様々な疾患の診断を可能とするPET 薬剤への応用とともに、2 つの異なる機能を有する分子を導入した多機能性PET薬剤への展開を試みる。
1771 糖尿病性腎症の臨床診断マーカー探索およびスクリーニング系の構築 稲田 明理 九州大学 平田 徳宏 九州大学 独自に開発した糖尿病モデルマウスを用いて、腎症早期発見のためのマーカーやステージ別のマーカー、治療薬の開発等を目指すとともに、薬効評価にも使用できるスクリーニング系を確立する。
1777 DNA/キトサン/人工脂質複合体のインジェクタブルGTRへの応用 井上 勇介 福岡医療短期大学 田村 明美 福岡歯科大学 目的:抗菌性を有するDNA/キトサン/人工脂質複合体をその特性を保持したままインジェクション可能な形態にしたGTR材料の開発を行うことを目的とする。
実施内容: DNA/キトサン/人工脂質複合体を微細に粉砕した後、蒸留水、グリセリン、精油等と溶解あるいは懸濁させ、稠度を整えたペーストを作成する。そして、このペーストについてラットを用いた生体親和性、生体分解能性の検討および抗菌性を検討する。
1782 接着歯冠修復用新規ガラス線維強化型コンポジットレジン (FRC) の開発 清水 博史 福岡歯科大学 石川 宗晴 独立行政法人科学技術振興機構 接着歯冠修復は歯の削除量が少なく最小侵襲で最大効果を求めた技法であるが、金属を用いるため、審美性やアレルギーの問題がある。近年フィラー含有率が高いハイブリッドセラミックスとガラス繊維強化型コンポジットレジン(FRC)等のメタルフリー材料が歯冠修復や欠損補綴に用いられはじめたが、金属以上に歯を削除して使われているのが実情である。そこで本研究では薄くても実用に耐える接着歯冠修復用の新規歯科用FRCの開発を目的とする。
1783 ヒトリラキシンの合成およびその抗体を用いる新規定量法の確立 安東 勢津子 福岡大学 坂本 弘明 福岡大学 本研究では、抗原性の高くなる合成RLNペプチドをMAP法により合成し、これを抗原としてRLN抗体を作成する。そして抗体の感度を向上させるため抗RLN抗体をアフィニテイクロマトグラィーにより高純度に精製し、得られる抗RLN抗体を用いてRLN検出系を最適化する。また高感度なRLN検出系の構築で安価でかつ高感度のRLN検出キットの開発が可能となり、不妊治療における治療効率の向上と患者の経済的負担の軽減に貢献する製品の開発に寄与する。
1785 糖鎖の機能を基盤とした分子設計による新規抗ウイルス活性化合物の探索 壬生 伸子 福岡大学 松山 拓郎 福岡大学 既存薬とは異なる新しい作用機序でウイルスの侵入・増殖を抑制する新規薬剤の開発が切望される。我々は糖鎖の認識機能を基盤とした作用機序に注目し、新規抗ウイルス薬の開発を目指す。即ち、2,6-ジアミノピリジン、トリアリールメタンなどを基本分子骨格とし、これらに糖鎖親和性のある側鎖を導入した糖鎖認識機能を有する新規化合物の分子設計を行い、標的化合物の合成、および合成した化合物の抗ウイルス活性評価の実施により、有効な新規抗ウイルス活性化合物を探索する。
1786 麻薬性鎮痛剤の耐性形成の仕組みの解明と耐性抑制剤の開発 高野 行夫 福岡大学 松山 拓郎 福岡大学 モルヒネは、痛みを軽減する上で欠かすことのできない薬剤であるが、耐性や依存症を引き起こし、その使用には多くの制約がある。申請者は、脳のバソプレシン受容体がモルヒネの耐性や依存に関与していることを証明し、この研究からモルヒネの新たな使用法を提案した。そこで本研究では、その研究成果を基礎に、モルヒネ耐性形成を阻止する新規バソプレシン受容体関連薬剤の開発を目指す。
1787 民間伝承植物成分のガン治療薬およびガン発症予防薬としての可能性 藏元 佑嘉子 福岡大学 田中 洋征 福岡大学 ガン化した細胞は活発に細胞分裂を繰り返し増殖するが、その増殖能は正常細胞と異なる時刻にピークを示すとの報告がなされ、時間薬物療法がガン治療に応用できないか注目を集めている。当研究室では北九州地方で昔から抗ガン作用を持つといわれている二種類の植物を入手し、実際にどの程度の抗ガン作用を持つのか、また報告されているガンの増殖リズムに合わせて投与した場合、どの程度効果に違いが出るのかを詳細に検討する。
1796 アトピー性皮膚炎に対する治療薬の開発 出原 賢治 佐賀大学 奥田 あゆみ 佐賀大学 アトピー性皮膚炎の治療に用いられているステロイド薬や免疫抑制薬は、易感染性、皮膚の萎縮などの副作用が問題となっている。研究者らは特定の細胞外マトリックスタンパク質が、アトピー性皮膚炎の病態形成に必須な役割を果たしていることを見出した。本研究の目的は、このマトリックスタンパク質の作用を阻害する抗体を作製、あるいは低分子化合物を探索し、副作用のない分子標的薬治療薬として開発することである。
1797 マンナンの高分子医薬品素材並びに化粧品素材開発への生物活性探索 亀井 勇統 佐賀大学 原 尚道 佐賀大学 伝統的な食材であるこんにゃくの主要成分マンナンは多糖類であり、胃腸の消化酵素により分解されないことから、近年はダイエット食品として注目されているが、実際のマンナンの生理活性に関する情報はほとんどないのが現状である。そこで本研究では、マンナンを種々の生物活性評価法によりスクリーニングして、見いだされる有用生理活性物質について解明すると同時に、マンナンの医薬品や化粧品素材への応用について検討する。
1799 スフィンゴミエリン合成酵素阻害剤スクリーニングキットの開発 北垣 浩志 佐賀大学 原 尚道 佐賀大学 スフィンゴミエリン合成酵素はセラミドからスフィンゴミエリンを合成する酵素である。この酵素を阻害すればアポトーシスを昂進させることができ、抗ガン剤などに幅広い用途があるが、阻害剤のスクリーニングシステムは未だ開発されていない。そこで本研究では、酵素を酵母の細胞表層に提示させて酵素作用を持たせ、それにいろいろな薬剤を作用させて阻害効果を測るという手法で、阻害剤スクリーニングキットとしての開発を目指す。
1810 アルギン酸部分分解物のα−グルコシダーゼ阻害作用を利用した食後血糖上昇抑制食品の開発と応用 奥 恒行 長崎県立大学 竹下 哲史 長崎大学 アルギン酸に対する分解能が強いSUN-53菌を用いてアルギン酸を培養し、低分子分解物Algを作成した。このAlgはスクラーゼやマルターゼに対して強い拮抗阻害を示すので、同時に摂取した糖質の消化が阻害されるために血糖を上昇させない食品開発が可能となる。今後、このAlgの物理化学的性質を明らかにすると共に、大量生成法を試みる。また、ラットへショ糖とAlgを同時投与して血糖上昇が抑制されることを実証する。
1820 多種類呼吸器ウイルス診断方法 吉田 レイミント 長崎大学 藤原 雄介 長崎大学 呼吸器感染症は世界でも最も重要な感染症の一つである。特に発展途上国では依然小児の主な死亡原因であるが、その起炎微生物は十分に解明されていない。従来の方法では細菌の同定には数日かかり、またウイルス分離は煩雑で日常診療では行われていない。従って、迅速・簡易な診断技術の実用化が望まれる。本研究では、実際に小児の鼻咽頭から採取したサンプルを用いて、多種類ウイルスの検出キットの臨床的実用性を示す。
1822 サイクロトロンを必要としないPET用画像診断薬剤製造システムの構築 原武 衛 長崎大学 藤原 雄介 長崎大学 現在、国内では206の医療施設でPETが稼働し、早期ガンの臨床診断に確実な貢献を果たしている。しかし、PETは、大掛かりなサイクロトロン施設で製造される短寿命の放射性核種を必要とする。そこで本研究者らは、サイクロトロン施設を設置することなく、PET用核種68Gaを供給する新規ジェネレータシステムの開発を目的として、ジェネレータの最も重要な構成要素である放射性核種の吸着分離剤に関する検討を重ねてきた。本研究では、これまで独自に開発したN-メチルグルカミン基を含有する有機系高分子吸着剤の表面改質による高機能化に取り組み、臨床現場での実用化に向けたジェネレータ制作を目標とする。
1823 水溶性ラメラリンアナローグの合成とin vivo抗腫瘍活性評価 岩尾 正倫 長崎大学 藤原 雄介 長崎大学 本研究者は改変自由度が高いラメラリン類の全合成に成功し、H20年度本事業においては高活性のラメラリンアナローグの創出に成功している。一方、ラメラリン類は水に難溶なため、in vivoでの使用に問題を残していることも明らかとなった。本試験研究においては、ラメラリンによる阻害分子機構が明らかになっているトポイソメラーゼIに着目し、SBDD (Structure-Based Drug Design) の手法により水溶性ラメラリンアナローグを設計・合成し、in vivo抗腫瘍活性評価を行うことにより、動物実験レベルにおいて著効を示す抗がん剤の開発を試みる。
1824 生体レドックス画像解析のための同位体15N標識アミノ酸型ラジカルの開発 田中 正一 長崎大学 藤原 雄介 長崎大学 生体レドックス反応(酸化と還元)の異常(活性酸素・フリーラジカルの過剰発生)は、生活習慣病・がん・脳疾患などの原因の1つである。この生体内レドックス反応の画像解析には、レドックス感受性ラジカルを用いるスピンプローブ法が有用である。本研究では、生体内酸化ストレスに感受性が高く、生体類似成分である環状アミノ酸型スピンプローブ剤として、同位体15N標識アミノ酸型プローブを合成し、既有の14Nと新規15N標識ラジカル情報の同時にかつ分離した2チャンネルでの画像解析に有用かを調べる。
1827 脳梗塞治療薬のスクリーニング 植田 弘師 長崎大学 藤原 雄介 長崎大学 代表研究者はプロサイモシン・アルファ(PTa)は、脳梗塞で引き起こされる神経細胞死を抑制する性質を持ち同時に様々な脳内細胞に作用し脳虚血性脆弱性を抑制するなど、血栓を溶かすtPA(組織性プラスミノーゲン)と全く異なったメカニズムで脳梗塞の治療に有効であることを発見している。本研究ではヒトへの適応を進める研究開発を促進するため、PTa活性本体部分のペプチドや誘導体に着目したスクリーニングを行い有用性と安全性の高い創薬の候補分子(シーズ)を提示する。
1828 光誘起作用と毛細管現象により優れた骨伝導能を有するインプラント材の開発 澤瀬 隆 長崎大学 藤原 雄介 長崎大学 失った歯牙の機能回復法として骨結合型インプラント治療が注目を集めている。本研究では骨量不足の部位においても、インプラント骨結合を確実にし、インプラント治療をより安全、かつ短期間に完了するために、光触媒超親水性効果ならびに毛細管現象を応用した、優れた骨伝導能を有するインプラント材の開発を試みる。さらに本光触媒抗菌効果を利用し、現在インプラント治療において問題となっている、インプラント周囲炎による骨吸収に対する再生治療にも繋がるもので臨床的価値は高い。
1832 新規MAPキナーゼTNNI3Kを用いた新しい心疾患診断薬の開発 頼仲 方一 熊本大学 津田 弘久 (財)くまもとテクノ産業財団 心筋に特異的に発現する細胞質局在の新規MAPキナーゼであるTNNI3Kは、心筋前駆細胞で遺伝子を高発現することで、心筋細胞への分化を促進するという知見を得たことから、TNNI3Kが心疾患のユニークな病態マーカーとして利用できないかを探る。本課題では、ヒトTNNI3K蛋白に対する抗体を作製し、これを用いたELISA測定系を確立し、心疾患で既存のマーカーとの比較解析を行う。
1837 非アポトーシス性細胞死を時空間的に制御できる光応答性ペプチドの創製と応用 國安 明彦 熊本大学 荒木 寛幸 熊本大学 ネクローシスやオートファジー性細胞死などの非アポトーシス性細胞死への関心が高まっているが、これらの特異的誘導剤はほとんどない。本試験では、非アポトーシス性細胞死の基礎研究に有用と期待される光制御可能な細胞死誘導ペプチドの創製とがん治療への応用性について検討する。
1839 家族性アミロイドポリニューロパチーの予防及び治療のための抗体医薬品の開発 安東 由喜雄 熊本大学 荒木 寛幸 熊本大学 家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP) は、トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異によって起こる予後不良の遺伝性疾患であり、全身の諸臓器にアミロイド線維の沈着をきたす全身性アミロイドーシスである。本研究では、FAP の新規治療法の開発を目的とし、アミロイド線維の重合および沈着を効果的に、かつ選択的に抑制する抗体医薬品の開発研究を行う。
1840 ANGPTL分子によるがん、動脈硬化性疾患、メタボリックシンドロームに対する新規診断法及び治療法の開発 尾池 雄一 熊本大学 荒木 寛幸 熊本大学 ANGPTLファミリー分子(ANGPTL1〜7)が生活習慣に依存したストレス刺激で発現が誘導され、生体防御システムの一躍を担っていること、さらにその破綻もしくは過剰応答が肥満、糖尿病、動脈硬化、がんなどの生活習慣が関連する疾患の発症、進展に関わっていることを見出している。本研究では、ANGPTL分子によるがん、動脈硬化性疾患、メタボリックシンドロームに対する新規診断法及び治療法の開発を目指す。
1841 赤血球成熟を促進するS19リボソーム蛋白質二量体の骨髄液濃度定量法の開発 西浦 弘志 熊本大学 荒木 寛幸 熊本大学 赤血球幹細胞は、骨髄中で腎臓由来エリスロポエチン(EPO)依存性に増殖した後、部分的なアポトーシス機構により分化成熟する。従って、透析患者の腎性貧血症には、EPO投与が有効である場合が多い。しかし、腎性貧血症例の一部や骨髄異形成症候群症例はEPO治療抵抗性であるため、本研究では、赤血球成熟を促進するS19リボソーム蛋白質二量体の骨髄液濃度定量法の開発研究を行う。
1842 高感度がん細胞特異的癌治療戦略 桑原 一彦 熊本大学 森田 高広 熊本大学 治療困難な癌の一つである胆管癌の治癒切除術時の5年生存率は30〜50%、唯一有効な抗癌剤ゲムシタビンの延命効果は7ヶ月である事から、生体に副作用をきたさない、新しい抗癌治療技術の基盤の確立が求められている。
1844 中枢神経細胞移植に必須となる神経前駆細胞培養法の確立 玉巻 伸章 熊本大学 森田 高広 熊本大学 本研究では、神経幹細胞から生み出された神経前駆細胞が様々な神経細胞マーカーを発現する事に関する研究者の発見に基づき、中枢神経細胞移植において必要となる神経前駆細胞培養法の確立を目指す。
1851 電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR)/MR撮像法を使った脳虚血モデルにおける酸化ストレスの測定 上田 徹 大分大学 横田 喜一郎 大分大学 生体内フリーラジカルの分布を画像化することは、酸化ストレス由来の疾患診断や創薬における酸化能評価に有用である。電磁ホーンを用いたESRでは、従来の共振器型と比較し、大きな空間が利用でき、より多くの不対電子数の計測が可能で、高感度測定化が実現される。本研究では、電磁ホーン型ESR装置に、2電源方式コイルを組み合わせて電磁ホーン型ESR/MR撮像法を開発し、脳虚血モデルで酸化ストレスの画像化を行い、その有用性を確立する。
1852 神経膠芽腫浸潤に対する新たな分子標的としてのGEP100の機能検証 森重 真毅 大分大学 横田 喜一郎 大分大学 細胞の浸潤能の獲得には様々な分子が関与しており、治療法を発展させるためには浸潤に特異的に関与する分子メカニズムの解析が必須である。神経膠芽腫は浸潤性が高い悪性脳腫瘍であり、これに対する過剰発現が確認されているEGFR(Epithelial Growth Factor Receptor)は、すでに分子標的として臨床応用され始めている。浸潤メカニズムには未だ不明な点が多いが、本代表研究者はEGFRを介した乳癌の浸潤能獲得においてGEP100がEGFRと結合して機能する分子メカニズムの一端を解明した。本研究では、このメカニズムが神経膠芽腫においても機能しているかを分子生物学的に検証する。
1853 腎淡明細胞癌の発生・悪性化に関与するmicroRNAの同定 中田 知里 大分大学 横田 喜一郎 大分大学 腎淡明細胞癌(CCC:Clear cell type renal carcinoma)は、腎細胞癌の約80%を占める予後不良の亜型である。最近は外科的切除に代わる治療法としてSorafenib、Sunitinibなどの分子標的治療薬が試されているが、その効果は30%程度と低く、新規治療法の開発が望まれている。本課題では腎細胞癌で異常発現するmicroRNAの機能解析を行うことで、分子標的の候補となる「癌の発生・進行、悪性化に関与するmicroRNA」を探索し、同定を目指す。
1854 ピロリ菌病原遺伝子の解析チップの開発 内田 智久 大分大学 横田 喜一郎 大分大学 世界人口の約半数の感染が報告されるヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)はWHOも認める胃癌の原因であり、これが関与する胃癌研究は国際的にも喫緊の課題である。その病原性は菌株によって異なるため、ピロリ菌感染者の胃癌発症リスクを推定するためには数十種類以上のタイプが存在するピロリ菌病原遺伝子の解析が必須である。感染者のピロリ菌病原遺伝子がどのタイプであるかをより簡便に判別するための解析チップの開発を行う。
1855 胃癌分子標的治療薬の開発を目指した悪性化関連遺伝子の探索 塚本 善之 大分大学 横田 喜一郎 大分大学 癌の分子標的治療薬で実現化されたものにはグリベック(白血病)、イレッサ(肺癌)、ハーセプチン(乳癌)などがあるが、胃癌に特化した分子標的治療薬はまだ実用化されたものが無い。その開発のためには、多くの症例に共通する遺伝子異常を見つけ、標的を特定することが必須である。研究代表者らは既に胃癌で高頻度に検出されるゲノム増幅領域を発見しており、その領域から標的とすべき癌関連遺伝子を特定する。これで得る知見を元に、胃癌分子標的治療薬の開発を目指す。
1856 リン酸化EGFRを指標としたGefitinib感受性予測診断キットの開発 泥谷 直樹 大分大学 横田 喜一郎 大分大学 肺癌に対する抗癌剤Gefitinib(商品名:イレッサ)は、重篤な副作用を伴う場合があるため、感受性予測因子の同定が強く求められてきた。これまで、EGFR遺伝子の変異とGefitinib感受性が相関していることが報告されている。しかし遺伝子解析には手技の煩雑さ、コスト等の問題があり、現実的な検査法として確立されていない。我々は、Gefitinib高感受性の肺癌組織ではEGFRの特定のチロシン残基がリン酸化されていることを明らかにした。この知見に基づき、Gefitinib感受性予測が簡便に行える診断キットを開発する。
1884 新しいヒト造血幹細胞の同定ならびに純化法の開発と疾病治療への応用 池脇 信直 九州保健福祉大学 竹下 義隆 (財)宮崎県産業支援財団 ヒト造血幹細胞は、骨髄細胞や胎児血液細胞中に存在する自己複製能を持つ細胞で、現在、造血幹細胞移植の供給細胞として白血病の治療に用いられている。しかしながら、造血幹細胞は均一な細胞集団ではないため、治療効果をさらに向上させるには新しい均一な造血幹細胞が求められている。本試験研究では、自主開発した抗体を用いて、新しい造血幹細胞の同定ならびに純化法の開発と疾病治療への応用をを目指す。
1896 促通刺激法と免荷装置を併用した高機能片麻痺上肢訓練システムの開発 林 良太 鹿児島大学 遠矢 良太郎 鹿児島大学 脳卒中片麻痺患者の6割は、麻痺側上肢の肩の痛みを経験しており、その痛みは上肢の機能、殊に上前方へ腕を伸ばすリーチング動作の回復を阻害している。肩の痛みを予防し、同時に上前方へのリーチング動作を回復するため、肩屈曲時のインピンジメントを避け、共同運動による肘屈曲を抑制した状態で、上前方へのリーチングを反復訓練する必要がある。そこで本研究では、上肢の免荷と肩(三角筋前部)・肘(上腕三頭筋)への振動刺激、ならびに電気刺激の併用によって、効果的な上肢訓練を可能にする技術を提案する。
1897 高強度・高弾性を有する新規義歯床用材料の開発と応用 蟹江 隆人 鹿児島大学 遠矢 良太郎 鹿児島大学 義歯床用材料として使用されているアクリル系硬質レジンは、メタクリレート系ポリマー粒子とモノマー液を混合して流動性を持つ塊状物として成型・重合される。重合した義歯床表面は、巨視的には鏡面となっているが、微視的にはポリマー粒子の形態が明瞭に残り、破折やヒビ割れの原因となっている。本研究の目的は、アクリル系ウレタンオリゴマーとアクリル系エステルを応用して、ポリマーが均一分散する高強度・高弾性の重合体を開発し、義歯床に応用することである。
1902 ヒトへの臓器移植に最適化されたミニブタ系統の開発 佐藤 正宏 鹿児島大学 中武 貞文 鹿児島大学 ブタのような異種動物の組織をヒトへ治療目的で移植する際、通常では必ず移植拒絶が生じ、移植片は脱落する。しかし、近年このような拒絶のメカニズムが解明され、それに係わる遺伝子がある程度判明して来た。本件では、遺伝子工学技術を用いて異種移植拒絶に係わる遺伝子群の発現の抑制、あるいは過剰発現誘導により、極力移植拒絶を抑えた遺伝子改変ブタ細胞及びそれから由来するミニブタ個体を作製することを目標とする。
1911 前立腺癌由来ハプトグロビンベータ鎖を標的とする新規治療法の開発 米納 浩幸 琉球大学 宮里 大八 琉球大学 糖鎖エピトープを認識するモノクローナル抗体RM2は、前立腺癌由来のハプトグロビンベータ鎖に選択的に反応する。RM2処理により前立腺癌細胞の増殖・浸潤能が低下するため、癌治療に応用できる可能性が示唆される。
本研究では、ヒト前立腺癌細胞がヒト成人骨に転移を起こす骨転移モデル(ヒト成人骨を移植しヒト化したNOD/SCIDマウス)を用いて、RM2をベースにハプトグロビンベータ鎖を標的とした癌治療法の開発を行う。
2(B) ジアシルグリセロールキナーゼα阻害によるメラノーマ治療 坂根 郁夫 千葉大学 一瀬 信敏 札幌医科大学 メラノーマはNF-κBが常時活性化されおり、現在のところ有効な化学療法は存在しない。最近、ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)αの特異的阻害剤の投与によってNF-κB活性を阻害し、メラノーマの死を個体レベル(動物実験)で誘導することが可能となった。そこで、作用機構の基礎的解析と共に、詳細な動物実験(非臨床試験)を行い、DGKαを標的とした新たなメラノーマ治療薬の実用化の見通しを得ることを目指す。
7(B) 遺伝子組換え動物を用いた生命科学研究に資する抗体開発 渡辺 雅彦 北海道大学 清水 條資 独立行政法人科学技術振興機構 生命科学研究は、遺伝子組換えモデル動物や発現の部位や時期をコントロールできるコンディショナル遺伝子組換え動物を用いて、生命機能の解明、医薬品の開発、治療予防法の開発がより一段と加速している。本研究では、この技術の基盤となる遺伝子組換え酵素や、テトラサイクリン耐性オペロン、発光蛋白を含むタグ分子などを可視化でき生命科学研究に資する特異抗体を、種々の発現系を駆使して開発する。
16(B) 視覚再生研究:網膜局所への遺伝子導入とその安全性・副作用の評価 富田 浩史 東北大学 芝山 多香子 東北大学 緑藻類、クラミドモナスより単離されたチャネルロドプシン-2(ChR2)は、光受容体と陽イオンチャネルを合わせ持つタンパク質である。遺伝的に失明を来たすラットの網膜へのChR2遺伝子の導入により視機能が回復されることを既に明らかにしている。しかし、臨床応用を考慮した場合、異種タンパク質を導入・発現させること、遺伝子導入にウイルスベクターを利用することから、生体の免疫学的な副作用が懸念される。本研究では、ChR2遺伝子の長期的な発現変化および血液学的見地から遺伝子導入による副作用を明らかにする。
18(B) 細胞分化・増殖を誘発する新規生体内埋入材料の臨床への応用 福田 雅幸 秋田大学 仙波 日出夫 秋田大学 歯科インプラントなどに使用されている生体内埋入材料は、材料と骨との間の接合特性や骨芽細胞の増殖特性を有するが、骨との接合に時間を要する。骨と材料とを短時間で接合させるには、細胞の分化・増殖を促進させる必要があり、その促進因子として微量な酸素ラジカルと亜鉛イオンがある。本研究では、骨芽細胞の分化・増殖を促進させる、亜鉛イオンの徐放機能をもつ、新規生体埋入材料を開発し、臨床応用を目指す。
19(B) 光造形技術による高精度実物大顎口腔モデルの開発と臨床応用 田中 清志 秋田大学 仙波 日出夫 秋田大学 従来、患者の口腔内に金属修復物がある場合にX線CTで撮影すると金属ハレーションを起こし、十分な歯型部分のデータを得ることができない。そこで、ガターパーチャー付熱可塑性レジンスプリントを患者と患者の石膏模型に装着して撮影し、金属ハレーションを削除し、得られたデータと石膏模型データを合成させた光造形モデルを考案した。すなわち、高精度な噛み合わせが得られる実物大顎口腔モデルを開発して臨床応用する。
26(B) Nrf2システムを利用した抗癌剤感受性診断法の開発と臨床応用 石井 幸雄 筑波大学 柿本 茂八 筑波大学 Nrf2の自発的活性化は肺癌を始めとした各種癌細胞で観察され、抗癌剤耐性に強く関与している。Nrf2の活性化はKeap1により制御され、癌細胞には高率にKeap1の遺伝子変異が存在する。我々は今迄に同変異が抗癌剤耐性の遺伝子マーカーとして有用であることを明らかにしてきた。本研究では、Keap1遺伝子変異を一括して簡便、迅速に検出する方法を開発し、抗癌剤耐性の新規診断法として各種癌における臨床応用を図る。
28(B) 経口で効く安全な血糖降下薬の開発 武田 茂樹 群馬大学 小暮 広行 群馬大学 我々はこれまでに、微生物培養液上清中に2型糖尿病病態ラットであるSDTラットに経口投与することでインスリンの分泌を促し、血糖値を降下させる活性を見出した。またこの培養上清中に含まれる化合物は高血糖時にはインスリン分泌を促すが低血糖時には作用を示さないことがわかった。したがってこの培地中の活性成分は、経口で投与でき低血糖時に服用しても血糖値が下がりすぎる心配がない安全な新しい2型糖尿病治療薬として開発できる。本研究ではこの活性成分を精製してその化学構造を決定し、近年中の臨床試験を視野にいれた活性成分の生理機能解析を行う。
29(B) 新規膜型分子抗体を利用したリウマチ疾患治療法の確立 的崎 尚 群馬大学 塚田 光芳 群馬大学 関節リウマチは、未だ原因不明の難病である。研究代表者は、免疫応答の要である樹状細胞に強く発現する膜型分子であるSHPS-1を発見している。さらに、抗SHPS-1モノクローナル抗体によりマウスのリウマチ疾患モデルの発症抑制が可能であることを見出している。そこで、本研究では効果的な樹状細胞制御法を開発し、関節リウマチなどの治療法への実用化を目指す。樹状細胞を標的としたリウマチ疾患の治療法は従来なく、画期的な治療法の開発が期待される。
35(B) がん性疼痛に有効な新規鎮痛薬の創製研究 高山 廣光 千葉大学 中筋 公吉 千葉大学 我々は既存のモルヒネ分子とは基本骨格が全く異なる新しいオピオイド性鎮痛薬候補物質を見いだした。本化合物はマウスを用いた実験においても経口投与で有効など、鎮痛効力、バイオアベイラビリティー共に優れている。本新規物質をリードとして、モルヒネの持つ副作用(麻薬性、耐性獲得、便秘など)を軽減した、ガン性疼痛に対する有用な鎮痛薬の開発を目指す。
47(B) ヒト制御性樹状細胞を用いたアレルギー性疾患に対する免疫細胞療法の開発 佐藤 克明 独立行政法人理化学研究所 岩野 はるか 独立行政法人理化学研究所 制御性樹状細胞を用いた免疫細胞療法のアレルギー性疾患に対する臨床開発を目標として、ヒト制御性樹状細胞のアレルギー性免疫応答に対する治療効果について免疫系ヒト化マウスモデルを用いて明らかにする。具体的にはアレルゲンを免疫してアレルギー性免疫応答を誘発したヒト末梢血白血球生着免疫不全マウスにヒト制御性樹状細胞を投与し、アレルギー性T細胞免疫反応と抗アレルゲン抗体産生に対する阻害効果を解明する。
48(B) 次世代型ペースト状人工骨の開発 相澤 守 明治大学 諸石 昌人 明治大学 これまでイノシトールリン酸のキレート作用を利用して硬化する新しい「ペースト状人工骨」の開発に取り組んできた。本試験研究では、この人工骨をさらに医者と患者の方々が安心して使用できるように作りこむことを目的とし、以下の3つの機能、1)骨誘導能、2)抗菌能、3)抗腫瘍能を付与させる。これらの機能を単独あるいは複数同時に付与させて高機能化を達成させ、「次世代型ペースト状人工骨」の実用化につなげる。
49(B) 糖尿病モデルブタの確立と生殖細胞の保存 長嶋 比呂志 明治大学 北川 貞雄 明治大学 変異ヒト肝細胞核因子1α遺伝子の導入により糖尿病を発症する遺伝子改変ブタの系統を樹立するために、生殖細胞の採取と保存をおこなう。その過程で、糖尿病発症個体の病状制御や育成方法の検討、内臓・組織の詳細な病理学的解析など、本遺伝子改変ブタを糖尿病モデルブタとして確立するための基礎データを収集する。最終目標として、糖尿病研究に有用な大型動物モデルの供給を目指す。
51(B) 骨膜培養に至適化した生分解性基材を主体とした骨膜培養キットの開発による再生医療の推進 奥田 一博 新潟大学 定塚 哲夫 新潟大学 自家培養骨膜シートを用いた歯周組織再生療法の社会的普及を目指して、その組織工学的操作性を簡便にするとともに、培養中および移植後の骨再生を促進する基材を本体とする骨膜培養キットを開発することを目標とする。遅延型生分解性素材からなるフィルムあるいはメッシュ状の基材を採用し、そこにコラーゲンや生理活性物質を固層化する。試作モデルとしては、基材上に静置した骨膜をガス透過性パウチに封入する閉鎖系システムを検討している。
58(B) 神経系遺伝子発現に影響を与えるII型ピレスロイドの修飾と脳機能改善効果 津田 正明 富山大学 佐貫 大三郎 富山大学 長期記憶に遺伝子発現レベルの関与することはほぼ間違いない。アルツハイマー病やうつ病などでは、脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現量が症状に対応して変化する。BDNFは記憶だけでなく高次神経機能変化に根幹的に関わるが、これにはBDNF以外の遺伝子発現も関わっている。申請者らは、II型ピレスロイド殺虫剤デルタメトリン(DM)がラット培養神経細胞でこれら一連の遺伝子群を効果的に誘導することを見出した。一方、DMは神経細胞生存効果を持つとともに神経幹細胞新生も促進する可能性が高い。このDMとその類似化合物が脳機能改善効果について、動物実験を行う。
62(B) 経口TGF-β投与が霊長類のアレルギー発症に及ぼす抑制効果についての試験研究 中尾 篤人 山梨大学 河西 あゆみ 山梨大学 本研究は、ヒト母乳中に多量に存在するサイトカインであるTransforming growth factor-β(TGF-β)の経口投与がアレルギー疾患の発症を抑制するという申請者の知見をもとに、アレルギー疾患の予防を目的とするTGF-βを含有する経口医薬品や機能性食品の実用化を目指すものである。本課題では、実用化には不可欠である霊長類におけるアレルギー疾患抑制効果と安全性について検討する。
68(B) 難治性筋疾患の複合的治療法の前臨床試験研究 土田 邦博 藤田保健衛生大学 吉田 勝 (財)名古屋産業科学研究所 難治性筋疾患では、病気の進行に伴い筋萎縮と共に骨格筋内の繊維化や脂肪変性、心筋の繊維化が生じる。特に、心筋障害は予後を決定する重要な病態である。本研究では、筋疾患で生じる筋萎縮を阻止し、繊維化や脂肪変性を防ぐ治療法の開発を行なう。筋萎縮については、骨格筋幹細胞に作用し、筋量を増やす治療法を用いる。骨格筋や心筋の繊維化に関しては、繊維化を担う細胞や分子標的を探索し統合的な治療法開発を目指す。
69(B) 多剤耐性を克服する新物質の開発 山村 初雄 名古屋工業大学 岩間 紀男 名古屋工業大学 メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に代表される多剤耐性菌の出現と蔓延に対抗するべく、新規な抗菌物質の開発に挑戦する。天然抗菌物質を模倣発展させてナノレベルで細菌膜傷害性官能基を集積させるという独創的なコンセプトに基づいた特許出願を研究シーズとし、医療および衛生目的での実用化に向けて、当該物質に抗菌性とともに溶解性、安全性を付与するための試験研究を行う。
80(B) Pモード超音波診断技術の臨床応用に関する研究 福澤 理行 京都工芸繊維大学 行場 吉成 京都工芸繊維大学 本課題は、P(phase)モード超音波診断技術の実用化を目的とする。Pモードとは、Bモード動画像から組織の周期的な動きの強弱や位相を検出し、動きの周期性に基づいて特定組織を色づけ描出する独自の技術である。しかし、その適用は新生児頭部に限られていた。本課題では、新生児頭部以外にPモード手法の適用を試み、有望な臨床応用分野を明らかにする。また、医師による臨床現場でのPモード画像化を実現するため、既存のBモード超音波診断装置に付加できるセットトップボックス(STB)型のリアルタイムPモード画像化装置を試作する。
84(B) 遺伝性・炎症性角化症に対するカンナビノイド作動薬による治療の確立 高橋 健造 京都大学 樋口 修司 京都大学 ダリエー病や尋常性乾癬などの角化症に対してのカンナビノイド作動薬をもとにした外用剤の開発が目的である。ダリエー病は思春期以降に発症する極めて難治な皮膚疾患であり、ATP2A2遺伝子の変異により小胞体カルシウムポンプの蛋白量が低下し、正常な角化プロセスより逸脱し特有の皮膚症を発病する。 この発症機序より残存するATP2A2対立遺伝子の発現を亢進させることが治療になりうるとともに、表皮角化細胞のカルシウム濃度を安定化をもたらし、広く炎症性角化症に対する治療薬になりうると考えた。
85(B) 医学用語シソーラスに基づく医療文書入力支援システムの開発 金子 周司 京都大学 樋口 修司 京都大学 医療の電子化が医療の効率化と安全に貢献するためには、入力された医療情報を読解し、さらに医療従事者の判断を助言や警告で支援するととも、蓄積された医療情報の統計学的解析を可能にする電子システムが求められている。しかし、テキストで記述される医療文書の解析を行うためには、専門用語の不統一や表記の『ゆれ』が大きな問題となっている。本研究は、これまでに構築した16万語の医学用語を2.5万語の統制語に集約したシソーラス(同義語辞書)を用いて、様々な医療文書(電子カルテ、添付文書、副作用報告等)を対象に、専門用語(疾患、生体分子、医薬品、手技など)の自動解析を行って用語の整理、関係づけ、集計を可能にするプログラムを開発する。さらに、実際に医療文書の入力時に、医学知識に基づく適切なアドバイスや警告を表示するエキスパートシステムを試作する。本研究により,医療高度情報化時代に活用できる実効性の高いICTシステム開発のための基盤技術が提供される。
91(B) 天然物クルクミン類縁化合物を用いた心不全治療の開発 森本 達也 静岡県立大学 樋口 修司 京都大学 代表研究者らは天然物ウコンの主成分であるクルクミンがp300の特異的アセチル化阻害作用を持ち、心不全ラットモデルにおいて、心不全の進行を抑制することを見出した。しかしながら、クルクミンは腸管からの吸収効率が極めて悪いため、より強力で心臓特異的に作用する薬物を開発する必要がある。そこで、本研究の目的は、天然物クルクミン類縁化合物を用いた心筋細胞核をターゲットとしたより良い心不全治療の開発を目指すことである。
97(B) 細菌の宿主細胞侵入モチーフを用いたワクチンデリバリーシステムの構築 寺尾 豊 大阪大学 大野 安男 独立行政法人科学技術振興機構 ワクチン開発において重要となるのが、効果的な抗原の選択と抗原分子の投与・輸送方法である。そこで、微生物侵入因子の機能ドメインを利用し、ワクチン抗原自身にドラッグデリバリー能を付与させることを提案する。具体的には、侵入因子のモチーフ下流にワクチン抗原を融合タンパクとして発現させるプラスミドシステムを構築し、PCR法で増幅した種々の微生物の抗原遺伝子から、普遍的、短時間、小コストで細胞侵入能を有するワクチン抗原を作製することを目標とする。
114(B) がん組織特異的に作用する新規機能性間葉系幹細胞の創出 井上 敏昭 鳥取大学 山岸 大輔 鳥取大学 本研究では、シトシンデアミナーゼ(CD)遺伝子とチミジンキナーゼ(TK)遺伝子をヒト人工染色体(HAC: Human Artificial Chromosome)ベクター(以下、本ベクター)にてヒト間葉系幹細胞(hMSC)に導入する。このhMSCはがん組織の間質として生着し、CDにより5-fluorocytosineを5-fluorouracil(抗がん剤)へ変換し、gancicloviの投与によりhMSCは周囲のがん細胞を巻き添えにして死滅させる。
115(B) 癌細胞を正常細胞へ形質転換するマイクロRNAの解析と医薬開発 三浦 典正 鳥取大学 清水 克彦 鳥取大学 癌抗原であるテロメレース関連分子は抗癌剤開発の主要な標的の一つである。研究代表者らは、ヒトテロメレース逆転写酵素(hTERT)の発現を抑制するsiRNAに関する研究の中で、hTERTの発現に関連する11種の新規マイクロRNA(miRNA)を同定した。このmiRNAはhTERTの発現を抑制すること、癌細胞を正常細胞化させること、siRNAと比較して高い癌抑制効果を有することを確認した。分子の新規性、癌抑制への有効性に加え、miRNAは副作用が低いことから、患者のQOLを向上させる新規抗癌剤の創出を期待できる。製薬企業と連携して医薬品開発に移行するに十分なエビデンスを蓄積することを目指す。
117(B) 熱ストレスタンパク60を標的とした新規の動脈硬化治療・予防薬の開発 綾田 潔 岡山大学 大村 祐章 (財)岡山医学振興会 動脈硬化は炎症を伴う病態であり、特に慢性感染性病原体の熱ストレスタンパク60(HSP60)に対する炎症免疫反応が、宿主の血管内皮細胞上に発現するHSP60に作用し、動脈硬化の進展に関与している。そこで、これまで研究代表者らが明らかにしてきた本免疫反応機序を阻害する抗体製剤を開発し、独自に確立した血管内皮モデル(in vitro)および実験動物モデル(in vivo)においてその有用性を評価する。
127(B) 癌治療臨床応用に向けての癌細胞ミサイル攻撃機能を有する人工細胞の開発 加藤 敬一 愛媛大学 入野 和朗 愛媛大学 我々の開発した新規レクチンESAは癌細胞表面の異常糖鎖構造を分子認識して特異結合し、その癌細胞にアポトーシスを誘導する。一方、非イオン性界面活性剤Span80ベシクル(人工細胞)は膜流動性・膜融合性に富み、癌細胞に選択的に膜融合する。本試験では、抗癌剤内包の上記人工細胞上にESAを装着し、従来のリン脂質リポソームの場合よりも優れた、癌ミサイル攻撃人工細胞による新規なDDS癌治療法の開発を試みる。
130(B) 皮膚癌多発マウスを用いた新規シグナル阻害薬の紫外線による前癌症状の抑制効果 横川 真紀 高知大学 石塚 悟史 高知大学 高知県を始め日本の南西部には紫外線による皮膚癌が多発している。当講座の佐野栄紀教授らは、遺伝子改変マウスを用いた系で紫外線による発癌にスタット3とよばれる細胞内シグナル伝達物質が大きく関わっている可能性を報告した。ヒトの紫外線による前癌症状や皮膚癌においてもこのシグナルの活性化を認めている。今回、このマウスに生じる紫外線による前癌症状が新規のスタット3阻害薬により抑制されるか、また治療として効果的かどうかを検討する。
138(B) 妊娠初期の母体血を用いた妊娠合併症の発症リスク検査法の開発と応用 三浦 清徳 長崎大学 藤原 雄介 長崎大学 妊娠高血圧症候群、双胎間輸血症候群あるいは癒着胎盤などの危険性の高い妊娠合併症の発症リスクを推定し予防管理することは、母児の安全性の向上につながるため、周産期医療にとって最重要課題のひとつである。そこで、本研究ではこれまでの成果を生かした発展型(B)として、母体血漿中に流入する胎盤特異的mRNA(cell-free placental mRNA:cfp-mRNA)および胎盤特異的microRNA(cfp-miRNA)を用いて、妊娠初期に将来的な妊娠合併症の発症リスクを推定する検査法を開発する。
143(B) HB-EGF関連分子の難病治療への医薬化応用 小戝 健一郎 鹿児島大学 中武 貞文 鹿児島大学 本代表研究者はHB-EGF(ヘパリン結合EGF様増殖因子)が、画期的な肝再生治療薬となりえることを、まず見出した。平成19年度のシーズ発掘試験で、HB-EGFの適応拡大の可能性とともに、それに関連した研究の中で、ある分子を抑制すれば血管新生が抑制できることを示唆する可能性を見出した。本研究で、疾患動物モデルでその分子の遺伝子発現抑制剤による治療実験を行い、血管新生が主病態である眼と癌の疾患の画期的医薬を開発するための基礎的知見を獲得する。

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