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地域結集型共同研究事業

平成19年度事業終了地域事後評価報告書

平成20年5月
独立行政法人科学技術振興機構 産学連携事業本部 地域事業推進部


(参考1)地域別事業概要
(ii) 三重県
事業の目標・概要

 本事業は、近年環境の悪化が進行する閉鎖性海域である英虞湾を対象とし、その環境改善を行いつつ、養殖漁業等の経済活動が、持続的かつ円滑に行われる新たな環境を創生する技術の開発が目的である。
 このため、現在、負荷量>浄化量となっている英虞湾の自然循環のバランスを、極力負荷量=浄化量となるように、海域の自然浄化機能の増進を研究の中心課題に据え、浚渫汚泥を利用した人工干潟の造成、それに連続した生態系としてのアマモ場の造成、環境に調和した真珠養殖等、新しい里海の創生を目指す技術の開発を行う。同時に底質汚染の進行した現状の環境に対しては、海底に堆積した底質は有益な未利用資源であるとの考えに基づくその処理と再利用技術の開発、底層への酸素補給等による底質改善技術の開発を行うとともに、英虞湾の環境動態予測システムを構築する。

 研究テーマの概要は以下のとおりである。

1.干潟・藻場の造成と高機能化
 浚渫土を利用して造成した人工干潟と英虞湾内の代表的な天然干潟の環境調査を行い、人工干潟の持つ自然浄化能力を定量的に評価し、人工干潟造成が新しい里海の創生技術として有効であることを実証する。また、潮止め堤防内の湿地において、ポンプにより干満に対応する海水交換を行うことによって、地質、水質、生物に関する調査を行い、干潟に再生するための技術開発を行う。
2.里海の物質循環
1)底質中のフミン物質の最適な分解手法を探索することで、英虞湾底質の特性解明を行う。また人工干潟と天然干潟の浄化能を比較検討することで、英虞湾全体の自然浄化機能の定量化を行う。また。干潟・藻場でのラビリンチュラの役割の定量的把握や現存量の把握、食物網を解析することで、干潟・藻場における物質循環の解明に繋げる。

2)英虞湾海域の負荷を軽減するため、アコヤガイの貝肉処理技術や洗浄排水処理技術を開発するとともに、アマモ等の未利用海草の有効利用を図ることで、藻場造成による海域浄化効果を確実にする。また、有機物分解技術の向上に役立つものとして中層海底の効果を確認する。さらに、養殖産業界で問題となった高水温期に斃死しないアコヤガイ系統を見つけ出し、環境負荷の軽減を図る。
3.英虞湾の環境動態予測
1)汚泥負荷推定モデル、降雨流出系モデルをGISモデルに組み込み、流入負荷計算プログラムを開発する。また、水質・底質及び流況の観測を実施し、環境動態予測モデルや物質循環モデルの改良、検証のためのデータ取得を行う。さらに、精度の高い環境流動シミュレーションの開発に繋げるため、鉛直拡散係数や海底の酸素消費速度、溶出速度を計測する。

2)流動シミュレーションを行い、3次元流動モデルを開発する。また、生態系シミュレーションプログラムを目指し、低次生態系モデル開発の海洋調査、底質モデル開発の海底物質循環調査、アコヤガイ成長モデル開発の代謝特性調査を実施し、それらをモデル統合する。

3)流動、水質、底質の3つの数値モデルを用いて、英虞湾の環境状態を再現し、予測する環境動態シミュレーションのシステムを作り上げる。また、英虞湾の炭素、酸素、窒素、リンに関する物質循環像と底質悪化の原因について明らかにする。また、赤潮などプランクトン発生状況をリアルタイムに取得できるモニタリングシステムの構築を目指す。

事業実施期間中の研究項目と実施体制
研究項目 実施機関 グループリーダ JST負担研究費
(百万円)
1.
干潟・藻場の造成と高機能化
三重大学、広島大学、四日市大学、九州大学、三重県科学技術振興センター、大成建設梶A中部電力梶A鰍の津技研、椛蜷ウ印写、サンエー化学梶A日本酢ビ・ボバール梶A褐、電社、叶シ組 三重大学
教授 前川行幸
500
2.
里海の物質循環
三重大学、甲南大学、広島大学、(独)養殖研究所、三重県科学技術振興センター、古野電気梶A海洋建設梶A大成建設 三重大学
教授 前川行幸
410
3.
英虞湾の環境動態予測
四日市大学、三重県科学技術振興センター、大塚電子 四日市大学
教授 千葉賢
267
合        計 1,177

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