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地域結集型共同研究事業

平成15年度事業開始地域中間評価報告書

平成18年3月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会


4. 地域別評価
4−2 兵庫県
課題名 「ナノ粒子コンポジット材料の基盤開発」
事業総括 松井繁朋((財)新産業創造研究機構専務理事、兵庫県立工業技術センター所長)
研究統括 中前勝彦(神戸大学名誉教授)
新技術エージェント 山口幸一(前(社)日本ゴム協会会長)
中核機関 財団法人ひょうご科学技術協会
コア研究室 兵庫県立先端科学技術支援センター、大型放射光施設SPring-8
行政担当部署 兵庫県産業労働部産業科学局

1 事業進捗状況及び今後の見通し

 SPring-8という地域の研究開発ポテンシャルを活用し、材料科学の領域における地域の技術発展を目指して事業が推進された結果、地域COE構築に向けた基盤形成は順調に進んでいる。また、ナノ粒子コンポジット材料という専門性の高いテーマ設定の下、計測ニーズが高い18企業を巻き込み事業推進している点は評価できる。
 しかし、学による理論的な補強が弱く現象理解が十分とは言えないため、産のニーズへの対応だけでなく、兵庫県立大をはじめとする学の知を巻き込んでテーマ1の材料開発とテーマ2の計測・評価技術の連携を強めた研究開発体制を構築し、骨太の基盤技術開発と産業創成を目指していくことが望まれる。

2 研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)

 フェーズTまでの目標はほぼ達成しており、SPring-8でしかできない固有の解析結果が得られる等、多くの成果が出ている点は評価できる。ただし、新たな材料の開発というよりも計測技術の開発という側面が強く、材料開発における高輝度放射光分析利用の位置付けが必ずしも明確とは言えない。将来構想としてナノバイオ材料もあげられているが、まずは、今ある課題の中で分析結果がどのように材料開発にフィードバックされたかを示す事例を早急に設定し、実用化を加速することが期待される。また、特許、論文発表件数等は十分ではないので、今後の加速度的増加を期待する。

(各論)
テーマ名 コ メ ン ト
1 ナノ粒子コンポジットの開発
 ・ テーマ設定が現場のニーズに直結したものから行われており、SPring-8の有効性をPRする上でも望ましい。
 ・ 共同研究に参画する18社が小テーマ別に研究を進めるだけでなく、それぞれが達成する要素技術を連携させてシナジー効果を生む体制が求められる。
2 高輝度放射光によるナノ計測・評価技術の開発
 ・ 測定・評価などにSPring-8固有の成果が得られている。
 ・ テーマ2-2「ナノ粒子コンポジットの界面化学状態及び物理状態評価技術の開発」には、物理化学・物性物理学等の基礎理学的アプローチによりナノ物質の分子レベルでの解明を行う小テーマの設定と、理論的・数値計算的アプローチが出来るグループの参加が望まれる。

3 成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し

 ビームラインを2本に増やすなど、ニーズの増大に対応した整備が行われ、高輝度放射光分析が産業の活動に結びつき、有効に活用され実用化されている点は評価できる。企業がニーズに基づき個々に研究開発を進めているので比較的容易に事業化が可能と考えられるが、成果の普及という意味では限界があることが予想されるため、より一層の特許取得に努めて欲しい。また、地域結集型共同研究事業の主旨をイメージさせる学理に裏付けされた成果について、全国区に向けた成果移転像を作成し展開していくことを期待する。

4 都道府県等の支援状況及び今後の見通し

 県のSPring-8にかける思いは強く、県ビームラインの増設とそれに伴う研究整備に向けた支援やナノテクセンター設立計画など、県の積極的な姿勢が表れており評価できる。今後、高輝度放射光による計測・評価の専門家以外の意見も集めて、高輝度放射光利用を将来の地域産業の中でどのように位置付けるかの具体的なビジョンが提示されることを期待したい。また、兵庫県立大には一層の参画が望まれる。


◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

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