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地域結集型共同研究事業

平成14年度事業開始地域中間評価報告書



平成17年3月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会


4. 地域別評価
4−5 沖縄県
課題名 亜熱帯生物資源の高度利用技術の開発
事業総括 仲井真 弘多 (沖縄電力株式会社代表取締役会長)
研究統括 安元 健 (東北大学名誉教授)
新技術エージェント 当山 清善 (琉球大学名誉教授)
中核機関 株式会社トロピカルテクノセンター(TTC)
コア研究室 沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター
行政担当部署 沖縄県商工労働部 工業・工芸振興課
1 事業進捗状況及び今後の見通し
 沖縄産の生物資源を利用して生理活性物質や食品、食品添加物を開発し、地元発の商品に結びつけるための研究であり、地域の特性を生かした科学技術基盤が形成されてきていることは評価できる。さらに、生理活性物質の探索技術が蓄積され、企業につながる成果が出てきていることも評価できる。
 しかし、地元企業に対する本事業のPR活動の促進、中小企業育成支援の強化やビジネス的なセンスを強化した事業実施体制の整備等、成果の事業化を図るための体制を強化することが必要である。また、テーマ間の横の連携に乏しい点が見られるので、共同研究機関である琉球大学、県の工業技術センターや(独)産業技術総合研究所との連携を強化することが必要である。

2 研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)
 研究統括のリーダーシップの下、多種の生物資源を研究対象としてバランスよく取り組み、企業化のためのシーズ探索を行った結果、脱顆粒阻害活性物質といった興味深い生理活性物質の抽出等、単発であるものの成果が出ていることは評価できる。
 しかし、テーマが細分化されており、テーマ間の有機的連携に乏しい面が見られる。今後は、ACE阻害活性物質や脱顆粒阻害活性物質等の競合品に比べ優位性のあるものや実用化に近いもの、およびPP2A(プロテインホスファターゼ2A型酵素)等の学問的に特徴のあるものに的を絞るようなテーマの選択と集中が必要である。また、共同研究機関との協力・連携を含めた有機的・機能的な組織体制の構築や、地域のポテンシャル不足を補うための他地域をも含めた連携を行い、地域産業振興の実をあげることが必要である。
 論文発表に先行する特許出願は事業推進マネジメントとしては評価できるものの、論文発表数が少ないので、今後は、積極的に論文発表を行い若手研究者の育成と動機付けを図ることに期待する。

(各論)
サブテーマ名 コメント

生物資源を利用した有用物質の生産技術開発
 ・ テーマA−2bでのフコイダン分解酵素の研究については、フコイダンの分解がテーマA−1aの加水分解による方法により可能となっているので、これから行う必要性は低いと思われる。むしろ、テーマA−1aの成果の中で企業化しうる要素を見極め、それに的を絞って今後研究開発を進めることの方が大切である。
 ・ テーマA−2aでのサンゴ礁生物利用ついては、環境上の問題からサンゴ採取には限界があるので、これまで収集した物質を試薬原料として販売し、今後の研究については見極めをする必要がある。
 ・ 一方、テーマA−2aでの共生藻利用については、学問的にも興味のあるものなので、今後も研究を進めるべきテーマと考える。
 ・ テーマA−2bでのPP2Aの製造については、仕上げを行って、試薬として企業化・商品化まで進めることが望まれる。なお、産総研や理研など他の有力研究機関と連携してでも、X線構造解析まで研究を進めるのがよいと思われる。

生物資源に含まれる有用物質の機能解析
 ・ テーマB−1のノニやヤブツバキ等の沖縄産生物資源の機能解明については、ACE阻害活性や脱顆粒阻害活性について研究成果が出始めており、興味あるものが見つかる可能性がある。食品分野であれば短期的に商品化が望めるので、そちらに向けて進めることが望ましい。沖縄ブランドの育成にも貢献できるテーマである。
 ・ テーマB−3は、品質管理や保証技術として新しいアプローチであり、今後の県の健康食品、医薬品類を生産する技術として重要な基盤となることが期待できる。

3 成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
 特許取得を第一に考えて事業を推進していることは評価できる。しかし、特許取得のためには、目利き能力、維持・放棄判断能力や戦略策定能力という特殊な能力が必要であるので、県と協力して専門能力を持った人材を加えることが必要である。
 成果移転へのマインドや事業化に向けた活動はまだ十分とは言えない。今後、サツマイモの機能性成分調製で実績が出始めたように、企業への技術移転を中心に考え、県内外の企業を調査して共同研究に参加する企業や技術移転先企業を積極的に増やすよう努めるとともに、企業と事業化戦略を協力して策定することが必要である。また、本事業の成果を事業化・商品化できる企業の育成も必要である。そのために、新技術エージェントのみに頼るのではなく、県も協力して企業化のマインドと能力を持ったサポート人材を確保することが必要である。また、 ヒトを対象とした評価を十分意識して、出口に向けて事業を進めることが必要である。

4 都道府県等の支援状況及び今後の見通し
 産業化に向けては、県の関与が重要であるが、県の取り組みは消極的であり、関与度が希薄である。生物資源を活用した独自の産業の創出を実現するため、今後、地元企業の育成や取り込み、機能性食品開発や特定機能補助食品の申請支援等について、県が主体となって積極的な支援を行うことが必要である。

◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

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