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地域結集型共同研究事業

平成13年度事業開始地域中間評価報告書



平成16年1月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会

5. 地域別評価
5−3 石川県
課題名 次世代型脳機能計測・診断支援技術の開発
事業総括: 澁谷 弘利 (社団法人石川県鉄工機電協会会長、澁谷工業株式会社代表取締役社長
研究統括 鈴木 良次 (金沢工業大学人間情報システム研究所所長)
新技術エージェント 高田 敬輔 (ワイズ福祉情報研究所代表、金沢工業大学非常勤講師)
中核機関 財団法人石川県産業創出支援機構
コア研究室 研究成果活用プラザ石川
行政担当部署 石川県商工労働部産業政策課
1*事業進捗状況及び今後の見通し
 企業経営者が事業総括として指揮をとっており、研究成果の実用化に向けた体制が整っている点は評価できる。この体制の下、金沢工業大学、金沢大学や(財)先端医学薬学研究センターなどと連携を図り、地域のポテンシャルを活用してMEG(脳磁計)の試作機やPET(陽電子断層撮影装置)関連の試作機を完成するなどハードウェア面の成果が出ていることも評価できる。しかし、石川県の最終目標である痴呆の早期診断支援システムを実現するためには、今後、診断プロトコルの開発などのソフトウェアの開発や臨床での実証が必要であり、長期的かつ戦略的な取り組みが求められる。
 そのためには、石川県が強く希望するように文部科学省の知的クラスター創成事業へ本事業を中核の研究として移行することも選択肢の一つであると思われる。その際にも、以下の点に十分留意することが必要である。
 ・ 痴呆の早期発見につながるソフトウェアの開発を行うためには、医学と工学の連携のさらなる促進が必要であり、そのために医学と工学の研究者の混在チームを作ること。
 ・ 痴呆の早期診断という最終目標の達成へ向けて、MEGとPETの研究開発に重点化するようテーマの絞り込みを行うこと。
 ・ PETによる画像標準化データベースの開発など、痴呆に係わる研究は既に数多く行われているので、それらの情報を積極的に取り込んで研究に役立てること。
 ・ 産業化の芽が出てきているので、今後は石川県のポテンシャルを用いてどのように産業を発展させるかのイメージを明確にし、より多くの企業を巻き込んで発展的に行うこと。
 ・ 医療経済学的な観点から、医療費負担の軽減等にどのように貢献できるか、具体的かつ定量的なビジョンを持つこと。

2*研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)
 MEGの試作機の完成など、ものづくりにおいては、目標を上回る研究成果を達成しており、総じて順調な進捗状況である。また、PETとの組み合わせによる診断システムに関する研究にも期待が持てる。今後は、痴呆の早期発見につながるソフトウェアの開発を行うために、医学と工学の研究者の混在チームを作り、サブテーマの重点化・絞り込みを行う必要がある。

(各論)
サブテーマ名 コ メ ン ト
1. 脳深部対応型MEGシステムの開発
  • MEGの試作機は世界レベルのものであり評価できる
  • MEGの痴呆診断における有効性を評価する必要がある。
  • 早期診断のためにサブテーマ5の基本設計グループと密接に連携し、医学研究者との混在チームを作ることによって診断プロトコルの開発を早急に行うことが必要である。
  • 特許出願や論文発表を積極的に行う必要がある。
2. 新規PET診断薬の開発と脳標準化ソフトを用いたデータベースの開発
  • 他の研究機関における知見も取り込み効率的に研究を進める必要がある。
  • 新規脳機能解析用PETトレーサの探索については、研究の独自性を明確にする必要がある。
  • 新規トレーサ自動合成装置の開発は順調であるので、今後は、ヒトに応用できるよう安全性を確認して進めることを望む。
3. 脳機能計測用バイオセンサの開発
  • フェーズI の段階から県内企業に技術移転を積極的に働きかけていることは評価できる。
  • 痴呆の早期診断のためには、Aβ42やタウ以外の新しいマーカを使うことで優位性を確保する必要がある。
  • アレイ/フローチップの産業化技術の開発については、スピードを意識した研究開発が必要である。
4. 医用ナレッジ・ハンドリング技術の開発
  • 電子カルテなどの病院情報の電子管理については、多くの製品があり、競争も激しいので、本事業全体での位置づけを明確にして、目標を絞るべきである。
  • 研究内容に対して比較的多額の研究費が投入されており、重視し過ぎの感がある。
  • 特許出願や論文発表を積極的に行う必要がある。
5. 早期痴呆診断支援システムの基本設計
  • MEGやPETの臨床医学的有効性の評価のために最重要なテーマであるが、具体的成果に乏しいので、他のグループとの密接な連携や予算・人員の重点化が必要である。
  • 住民ボランティアの協力を得て、データの収集・解析を加速することが必要である。

3*成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
 企業と連携を図り、個別の要素技術開発の進捗に合わせて成果を移転して、製品開発を順次進めていく方向性は妥当である。例えば、PET用新規トレーサ自動合成化装置や血球標識自動製剤化装置を試作するなどの実績をあげていることは評価できる。
 しかし、本事業の成果を地域の産業振興にどのように結びつけるかの戦略的なシナリオが描けていないので、今後は、地域企業や医療関係者のニーズを把握し、地域産業振興のための戦略的シナリオを策定する必要がある。また、特許戦略を策定し、権利の確保を積極的に行う必要もある。

4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
 地域の科学技術振興の拠点としていしかわサイエンスパークの整備を支援するなど、科学技術振興への熱意は感じられる。しかし、本事業の成果をどのように活用して地域経済に反映させるかの方針が明確に示されていない。今後は、県がリーダーシップを一層発揮して、痴呆の早期診断システムに関する研究開発・成果移転に対する支援体制や制度整備を行うことが求められる。

◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

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