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地域結集型共同研究事業

平成13年度事業開始地域中間評価報告書



平成16年1月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会

5. 地域別評価
5−4 長崎県
課題名 ミクロ海洋生物の生理機能活用技術の開発
事業総括: 緒方 利隆 (長崎商工会議所相談役、三菱重工業(株)顧問)
研究統括 渡邉 正己 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授)
新技術エージェント 岩永 充三 (財団法人長崎県産業振興財団テクノインストラクター)
中核機関 財団法人長崎県産業振興財団
コア研究室 財団法人長崎県産業振興財団
行政担当部署 長崎県政策調整局科学技術振興課
1*事業進捗状況及び今後の見通し
 海洋県としての長崎県の特性を活かし、地域に密着した実用的な研究事業がほぼ順調に進捗している点は評価できる。今後は、県、地域の産業および県民が海洋環境を保全する場合や、海洋生物を生産する場合に必要な理論や方法を整備して、それを地域社会に提供するようなマリンバイオインフォマティクスの拠点としての地域COEを構築することが望まれる。このような地域COEを実現するために、長崎県水産試験場、長崎大学水産学部及び附属海洋資源教育研究センター等の海洋研究開発拠点の資源を活かして基盤を整備することが必要である。
 また、産業化に向けた実施体制の構築の進捗に遅れが見られることから、企業等との新たな共同研究開発で連携を図ることが望まれる。

2*研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)
 全体としてはほぼ順調に進捗している。特にワムシの研究に関しては、世界的に見ても誇れる内容であり価値があると評価できる。ワムシ耐久卵の缶詰は市場価値のある内容であり、今後の商品化が期待される。また、生理活性機能の探索の研究の中には基礎段階であるものの実用化・企業化への展開が期待できる研究成果も見られる。
 ただし、小テーマが36に分かれ、研究の領域が多岐に渡り、その成果も分散している。また、サブテーマによって成果に大きな差が見られる。今後は、下記の各論において指摘されたことを踏まえ、実効性、予算配分及び研究の実施体制を考慮して研究テーマの内容の見直しが必要である。

(各論)
サブテーマ名 コ メ ン ト
1. 画像処理技術による海洋環境モニタリング
  • サブテーマ1と2を統合して、魚病検出の分子生物学的同定法の確立と現実的な赤潮予知法を構築する小テーマに絞ることが望まれる。
2. 分子生物学手法による海洋生物モニタリング
  • 上に同じ。
3. 赤潮等による海洋生物汚染の除去
  • 小テーマ3-1「赤潮原因微生物の生理機能利用」および小テーマ3-3「アオサ類のアレロパシー物質による赤潮除去」は実用化の可能性を考慮して研究の継続を検討することが望まれる。
4. ミクロ海洋生物の生理機能の探索と応用
  • 4-(A)については、「ミクロ海洋生物の生理活性探索と医薬品素材への応用」の研究は結集型事業から独立させて、他のポテンシャルのある機関との連携を進める方が、研究成果の技術移転の促進が期待される。
  • 4-(B)については、「難分解性生体高分子分解能を持つミクロ海洋生物の探索と応用」の研究には、特徴的な内容で成果が期待できるものもあるので、産業応用に焦点を絞り、細分化された小テーマは統合することが望まれる。
5. 育成環境・餌料生物の開発保存
  • 市場価値のある研究成果が期待できる。
  • 小テーマ5-1は、動物プランクトンの健康度判定に絞り、抗ミズカビ剤を開発するより、小テーマ5-3「細菌叢制御によるプランクトン培養」のように、バイオコントロールのテーマを志向することが望ましい。
6. 餌料生物の育種・保存に関する研究
  • ワムシとその餌料の遺伝子操作に関わる小テーマ6-4と6-6は商品化が難しいので、不飽和脂肪酸等の栄養価の高い化合物を多く含む餌生物を探索するなど、研究内容の見直しが望まれる。
  • 同一研究者が掛け持ちする小テーマは整理統合することが望まれる。
7. 飼育水槽システムの開発
  • 研究は順調で、成果の公表も活発である。
  • 小テーマ7-1と7-2は研究内容の重複が大きいので、整理統合が望まれる。
8. 種別種苗生産技術の開発
  • マハタ、オニオコゼ、メバルは他府県においても重要種として取り上げられているので、他県の技術に比べて何が優れているのかを明確にして、この事業で共同研究する優位性を活かすことが望まれる。3種とも生理生態的特性は異なるので、仔魚の最適飼育条件の網羅的統合には十分な注意が必要である。

3*成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
 地場企業に配慮しつつも全国的な展開も視野に入れた方向性は妥当である。事業総括と新技術エージェントによる企業等に対する共同研究に向けた働きかけと啓蒙活動の展開は今後の成果移転と事業化に結びつくものと評価できる。しかし、現段階では、研究会などへ企業の参加が少ないので、早期に企業を研究に参加させて事業を進める必要がある。
 特に、第1分野「海洋環境保全技術の開発」の成果をいかに地域振興に結びつけるかの戦略が不十分であるので、事業化に向けた企業との連携強化策を具体的に検討することが望まれる。
 そのために、将来の事業化をにらんだシステムとして、起業化も視野に入れて、新技術エージェントが推進する事業化グループネットワーク構想を実現することが望まれる。

4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
 県の本事業に対する前向きな支援姿勢は認められ、海洋資源・環境保全に着目した科学技術振興方針にも合致している。今後県には、より具体的な地域産業活性化ビジョンの提示と海洋研究開発拠点整備による支援を期待したい。また、研究成果をいかにして企業化するか、県の明確な方針が必要である。

◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

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