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地域結集型共同研究事業

平成13年度事業開始地域中間評価報告書



平成16年1月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会

5. 地域別評価
5−2 千葉県
課題名 ゲノム情報を基本とした次世代先端技術開発
事業総括 君島 次男 (財団法人千葉県産業振興センター新産業創出コーディネーター)
研究統括 大石 道夫 (財団法人かずさDNA研究所所長、東京大学名誉教授)
新技術エージェント 富岡 登 (財団法人かずさDNA研究所主席研究員)
中核機関 財団法人千葉県産業振興センター
コア研究室 財団法人かずさDNA研究所
行政担当部署 千葉県商工労働部産業振興課
1*事業進捗状況及び今後の見通し
 千葉県が支援し基盤を構築してきた(財)かずさDNA研究所を中心として極めて高い水準の研究実施体制が整えられている。この体制の中で、長鎖cDNA関連の独自技術を用いて、世界的なレベルでの研究とデータ蓄積が進められており、フェーズI における基礎段階の研究開発は順調に進捗しているものと認められる。かずさアカデミアパーク内における連携機関の集積及び神戸市等他地域との連携も進んでいるので、今後、研究開発が加速して行われることが期待される。また、将来的には、東京圏ゲノムベイ構想の中で、本事業の成果が大きなコアの一つになることも期待される。
 ただし、本事業が基礎的研究にとどまらないためにも事業化・産業化に向けた企業等との幅広い連携や効率的な事業展開が必要である。そのためには、産業界や特許戦略の専門家の人材確保等による体制強化が望まれる。

2*研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)
 ヒトに対応するマウス長鎖cDNAの取得・抗体作製・マイクロアレイ作製等の基本計画で掲げた目標のほとんどは実現可能である事は評価でき、それ以上の成果が出ることを期待する。また、研究開発水準の高さから、他の遺伝子収集、塩基配列の国内プロジェクトにも適用可能な尺度・基準・判定方法が提起されることも期待する。一方、研究の効率的推進のために外部ソース(他の国内プロジェクトのcDNAクローン等)の利活用の検討を望む。
 今後、共同研究を通じて、研究成果を活用した新事業・新産業創出のための研究体制の確立及び共同研究者の拡充が望まれる。また、共同研究体制として県内企業の更なる参画及び県内発ベンチャーにより、(財)かずさDNA研究所のみならず地域全体の科学技術ポテンシャルを高める体制作りを期待する。

(各論)
サブテーマ名 コ メ ン ト
1. マウス長鎖cDNAの取得・構造解析とそのための効率化技術の開発
  • 短期間で、基本計画におけるマウス長鎖cDNAの取得・構造解析の目標数を達成可能であることは高く評価できる。
  • 今後、ヒト長鎖cDNAクローンに対応するマウス長鎖cDNAクローンを取得するための効率化技術の更なる掘り下げを期待する。
2. マウス長鎖cDNAがコードする蛋白質に対する抗体作製技術の開発及びその作製・評価
  • 543抗体作製済みであり、350抗体の免疫化学的組織染色法による評価で9割以上が使用可能という結果は、充分な成果を挙げている。
  • 抗原が分子量の大きい蛋白質だけに、研究成果の抗体を用いれば新しい発見や用途開発が期待できる。
  • 抗体の作製、評価、蛋白質の発現情報の収集は、今後の重要な課題である。実施するチームが分散しているように見受けられるので、再編成も考慮すべきである。
3. DNA・抗体マイクロアレイの作製技術開発及びその作製・評価
  • cDNAアレイの共同研究先への配布、改良型アレイヤーの商品化等、研究を意欲的に進めている。
  • マイクロアレイについての使い途及び商品コンセプト等研究の成果移転が弱い。今後、最終的な成功イメージを持つ構想力及びベンチャー企業による実用化等のスピード感が必要である。
4. 共同研究全般にわたるデータベースの構築及び管理
  • ワークフロー管理システムが完成し、実際に当該事業において効率的な運用がなされている。
  • ワークフロー管理、マウスDB(cDNAクローン・抗体・マイクロアレイ)とヒトDBのリンク、国内プロジェクトDBとのリンク等統合的データベース構築がポイントであり、完成したシステムの維持管理に留意が必要である。
  • シーズの蓄積に留まらず、ニーズ側の立場からの項目の追加(付加価値)を考慮すべきである。

3*成果移転に向けた活動状況及び今後の見通し
 cDNAアレイの共同研究先への配布、改良型アレイヤーの商品化、特許出願、情報の発信等により研究成果の相応の進展は見られるが、事業化・企業化を促すような外部への積極的な働きかけが十分でない。(財)かずさDNA研究所が中心となってコンソーシアムを形成し、成果移転・応用を図る等の企業化・事業化のための仕組みを作る必要がある。
 また、抗体のビジネス化、創薬を目指した企業との連携、特許による知的財産収入等事業化のコンセプトを早期にまとめる必要がある。

4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
 千葉県は長らく、(財)かずさDNA研究所の設立、維持、運営に財政支援を行っており、本課題はその基盤の上に順調に推移している。しかし、研究成果を研究レベルに止めず産業化を含めた地域COE形成に繋げていくためには、具体的な戦略策定が望まれ、県の主体的関与によるリーダーシップ発揮が望まれる。
 また、国際的ゲノム情報発信基地として国際的に有名にすることを千葉県がもっと県民に周知させる必要がある。

◆(参考1)事業の目標・概要

◆(参考2)フェーズI における学術的、技術的、対外的活動実績

◆(参考3)フェーズI における研究項目と実施体制

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