「高性能悪臭ガスセンサ」を開発

(JST大学発ベンチャー創出推進の研究開発成果を事業展開)

 科学技術振興機構(理事長 北澤宏一)では、平成15年度より大学等の研究成果をベンチャービジネスにつなげていくために、起業化に向けた研究開発を行う独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進を実施してきました。
 この度、平成16年度より開始した研究開発課題「消臭による快適介護環境の創出に関する研究」(開発代表者:玉置 純 立命館大学 教授、起業家:近藤充正)のメンバーが出資して、株式会社デオドライフ(代表取締役:近藤充正、本社:滋賀県草津市、資本金450万円)を平成19年3月28日に設立しました。
 寝たきり老人、身体障害者等の重度介護者が生活する空間(部屋)では、排泄に起因する不快臭(メチルメルカプタンなど)が発生し、介護者はもちろん当人にとっても非常にストレスのかかる環境となっています。そのため、介護者の健康を害したり、被介護者の隔離に繋がる等深刻な問題につながっていくことが懸念されます。
 玉置教授らは、アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6注1を感ガス材料に使ったガスセンサが硫黄系悪臭ガス(硫化水素、メチルメルカプタン)に対して優れた検知特性を示すことを見出し、これを基にして実用型高性能悪臭ガスセンサを開発することに成功しました。本センサはヒトの鼻と同レベルでメチルメルカプタンなどの硫黄系悪臭ガスを感じることができます(検出下限:10 ppb注2)。また、一般居住空間には悪臭ガスのほかに様々なガスが存在しますが、主な妨害ガスとして考えられるエタノールガスにはほとんど応答しません。本センサを用いれば、悪臭ガスを客観的に検知でき、消臭システムをコントロールすることによって、効率よく介護現場の消臭を行い、臭いのない快適な介護環境を創出できると考えられます。
 実用型高性能悪臭ガスセンサを用いた第1段階の商品として「自動消臭ポータブルトイレ」を開発しました。これは排泄により発生した悪臭ガスを高性能悪臭ガスセンサにより検知すると、泡や消臭剤により悪臭をシャットアウトし、臭いのない快適空間を実現します。将来的に、自動消臭介護ベッドや介護室自動消臭システム、口臭チェッカー注3体臭チェッカー注4などを考えています。
 今回の株式会社デオドライフ設立により、プレベンチャー事業(大学発ベンチャー創出推進の前身の事業)及び大学発ベンチャー創出推進によって設立したベンチャー企業数は58社となりました。


<用語解説>

(注1)アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6):
金属元素である亜鉛(Zn)とアンチモン(Sb)からなる複合酸化物。三重ルチル構造をとり、酸素欠陥を含むためn型半導体となる。硫化水素などの悪臭ガスに接触すると抵抗が減少し、ガスを検知することができる。

(注2)ppb:
parts per billion(10-9)の意味。10 ppbは全圧を1気圧とすると、その分圧として10億分の1気圧しか存在しない低濃度を表す。

(注3)口臭チェッカー:
口臭あるいは呼気中に含まれる硫黄系悪臭ガスをチェックする。口腔内に歯周病などがあると硫化水素濃度が増加するので、口臭チェックにより歯周病の予防・診断が可能となる。

(注4)体臭チェッカー:
高齢者になると特有の体臭(加齢臭)が発生し、周りを不快にさせる。不快臭の原因はノネナールといわれており、肌の健康状態の確認や身嗜みとしてノネナールセンサにより体臭をチェックする。

■製品例・実施例
■企業概要
■事業形態

<本件についてのお問い合わせ>

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産学連携事業部 技術展開部 新規事業創出課
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徳山 亜季(トクヤマ アキ)・齋藤 和男(サイトウ カズオ)
TEL: 03-5214-0016  FAX: 03-5214-0017

株式会社 デオドライフ
住所 滋賀県草津市野路東1-1-1 立命館大学BKCインキュベータ309号室
担当者名 近藤 充正
連絡先  TEL/FAX: 050-3455-4232