評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成24年度終了課題事後評価報告書

3.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

デジタルフォトンカウンティングX線イメージャーの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)、側面支援機関

開発代表者:青木 徹(静岡大学 准教授)
起業家:奥之山 隆治
側面支援機関:静岡大学イノベーション社会連携推進機構

3.研究開発の目的

 新しいデジタル信号処理を採用してエネルギー弁別機能と高いダイナミックレンジ性能を合わせ持つフォトンカウンティングX線イメージャーのラインセンサーを開発し、そのセンサーを利用した応用システムを開発する。特にセキュリティ分野向けに特化したスペック設定を行い、セキュリティ機器の高性能化に対応したラインセンサー実用機を開発する。

4.事後評価内容

A)成果
 CdTe検出素子の集積化、低ノイズアナログ回路と高速ADコンバータおよびFPGAによるデジタル信号処理回路、通信回路と組込ソフトウェア、画像表示ソフトウェアなどの技術開発を実施して、1mmピッチの高速(高入射レート高ダイナミックレンジ)デジタルフォトンカウンティングX線イメージャーを開発することが出来た。本事業成果の一部分を切り出して福島原発事故による需要に対応した携帯型放射線線量レコーダへ展開している。
 これらの研究開発成果を基に、平成23年4月に「株式会社ANSeeN」を設立した。
本事業期間中の特許出願数:1件

B)評価
①研究開発計画の達成度
 当初目論んだセキュリティ市場をターゲットにした研究開発の技術目標、成果は達成出来ている。結果としてセキュリティ市場への参入はかなわなかったが、早期に市場参入できる製品として、コア技術を活かし放射線量を正確に、かつGPS搭載により測定地点も記録できる携帯型放射線線量レコーダを開発したことは評価できる。
②知的財産権の確保
 得られた知的財産がハードウェアに関するものではなくソフトウェア、ノウハウ、アルゴリズム系に属するものが多いために特許化などが難しく結果として権利の確保が十分に図られたとは言えず、さらなる知的財産権の強化が望まれる。
③起業計画の妥当性
 当初の市場分析が十分ではなくタイミング的にも商品スペック的にも市場参入が困難となった。携帯型放射線線量レコーダの販売に注力し、得た利益で次の開発投資に回していくようなサイクルを作って欲しい。
④新産業創出の期待度
 提案技術には、産業創出の可能性はあると思われるが、セキュリティ市場、健康医療市場などの変化は激しくかつ寡占化が進んでいるためベンチャーによる新規参入が難しいため、周到な戦略が必要である。
⑤総合・その他
 デジタルフォトンカウントという技術分野における当該研究の成果は評価できるが、市場化を狙ったセキュリティ市場は変化が激しく、且つ寡占化が進んでベンチャーの参入には適していなかったものの、ベンチャーの経営に資する優位性のある放射線線量レコーダを開発して事業を推進していることは評価できる。本技術の強みを活かした新たな市場の創造に期待したい。

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