評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成22年度終了課題事後評価報告書

3.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

デジタルTV用超小型・低消費電力CMOSワンチップ受信フロントエンドLSIの研究開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:松澤 昭(東京工業大学 教授)
起業家:南部 修太郎

3.研究開発の目的

 放送と通信の融合に向けデジタル(D)TV放送の高付加価値化への期待が高まっている。今後、DTV放送受信フロントエンドは、その小型低消費電力化が一層進み、様々な機器に搭載されていくものと期待される。特に今後はモバイル機器でも高画質が可能なフルセグ対応のDTV放送受信が必要とされており、10MHzという広信号帯域幅で、低歪、高性能と共に超小型低消費電力の実現が必要である。本研究開発では、全く新しい方式のADコンバータ(ADC)をコア技術とする受信フロントエンドCMOS LSIを開発する。

4.事後評価内容

A)成果
 連続時間フィルタを用いたADコンバータ技術と歪みを低減する技術を採用して、世界トップクラスの低消費電力15mWとスプリアスフリーダイナミックレンジ(SFDR) 86dB のADコンバータを90nmのCMOS技術で実現している。また、高品質受信に適した広帯域(信号帯域 10MHz,)、隣接チャネル妨害比 42dB、低消費電力(18mW)CMOS RFフロントエンドを試作・実証した。また、国内大手半導体企業からの受託開発を軸にしたベンチャー会社設立を計画している。
本事業期間中の特許出願数:2件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 ADコンバータ、RFフロントエンド、IPテスト方法の開発など市場で求められる仕様に対してほぼ達成している。また、国際学会等でも技術成果は高く評価されている。今後、特に携帯端末におけるワンセグからフルセグへという市場の要求は急速に本格化すると思われるので、開発された技術をそれらの変化に迅速に対応させていくことが必要である。
②知的財産権の確保
 特許調査分析は充分になされている。本技術に関しては知的財産権での防衛が有効であると思われるので、差別化、優位性を確保するための知財戦略に基づいた知的財産権のより一層の強化が望まれる。
③起業計画の妥当性
 厳しい市場で国内関連企業が選択と集中を進める中、国内大手半導体企業と連携するという経営戦略は妥当である。ただし、具体的な連携の方策については、充分検討する必要がある。
④新産業創出の期待度
 国内大手企業との提携状況や今後のビジネス展開に依存する部分はあるものの、タブレット端末でフルセグを視聴できるなど、携帯機器での高精細な映像放送の需要が顕在化してくる可能性もあり大いに期待できる。
⑤総合・その他
 事業化の成功の鍵は国内関連半導体企業との協業如何にかかっている。これまでの研究成果を基に彼らとの協業成立に向けて最大限の努力をしていただきたい。また、アナログ技術者の人材育成にも期待したい。

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