評価報告書 > 3.評価の概要

大学発ベンチャー創出推進
平成21年度終了課題事後評価報告書

3.事後評価の総括

●評価対象の研究開発課題全15課題からは平成22年7月末現在、下表の9企業が設立されている。

分野

設立企業名

代表者

所在地

事業内容

設立年月

資本金(千円)

課題名

開発代表者(研究開発機関)



(株)ウィック・バイオテック・ファーマ 小戝 健一郎 鹿児島県鹿児島市 次世代の増殖型アデノウイルスベクター(m-CRA)の受託作製の共同研究事業とがん治療薬の医薬事業

H22.4

3,000

完全オリジナルの癌遺伝子治療m-CRAベクターを基盤とした試薬・医薬総合的ベンチャーの創出  小戝 健一郎(鹿児島大学)
カイロスファーマ(株) 堅尾 和夫 埼玉県新座市 安全で副作用の少ない新規鎮痛薬の研究開発、製造、販売

H22.1

3,000

安全かつ効果的な疼痛治療薬の応用研究開発 室伏 きみ子(お茶の水女子大学)
(株)アライ・メッドフォトン研究所 二見 精彦 神奈川県横浜市 革新的なPDTによる心房細動治療器の開発、循環器領域を中心としたレーザー医療機器の開発

H22.8

85,000

早期Photodynamic Therapyによる経カテーテル的心房細動治療器 荒井 恒憲(慶應義塾大学)
スリープウェル(株) 吉田 政樹 大阪府大阪市 携帯型脳波計を用いた、睡眠状態計測システム・評価サービスの提供

H22.4

9,600

睡眠脳波計測と睡眠評価技術の確立及び評価システムの構築 裏出 良博((財)大阪バイオサイエンス研究所)
IT Bi2−Vision(株) 村上 隆一 神奈川県横浜市 3D撮影・3D視覚認識・3D監視システムを中心とした両眼認識制御システムおよびその要素製品の開発、製造、販売

H21.8

12,200

人間の眼球運動・網膜情報処理の機能に基づく3次元視技術の開発と実用化 張 暁林(東京工業大学)
株)コレスト 千里 裕通 長野県安曇野市 秘匿通信方式(送・受信者のアドレス情報等個人情報を完全に秘匿した双方向通信方式)による電子メールシステムの開発・運用サービス、ならびにその応用企画・開発と教育及びコンサルティング

H21.9

2,000

個人情報保護のための匿名メールシステムの研究開発 山崎 晴明(山梨大学)
材料・
ナノテクノロジー
(株)Transition State Technology 山口 徹 山口県宇部市 理論計算(量子化学)を用いた化学合成支援(CASS)、受託解析・開発・研究、計算化学・情報化学の総合サポート

H21.6

5,550

ケミカルイノベーションを目指した新薬のin silico合成経路開発 堀 憲次(山口大学)
環境・
その他
バイオ水素(株) 長谷川 幸教 神奈川県茅ヶ崎市 海洋バイオマス、産業廃棄物などを原料とするバイオ水素製造システムの設計、製作および保守管理
水素発生微生物および酵素の製造、販売
水素発生細菌探索キットの販売

H21.9

3,600

新規水素発生菌によるバイオマスからの高効率/高速水素生産 谷生 重晴(横浜国立大学)
(株)スカイプラットフォーム 秋永 和寿 茨城県つくば市 空間ロボットの研究、開発、製造、販売、運用及びコンサルタント

H22.4

7,200

安心・安全・環境モニタ用空間ロボットの開発 恩田 昌彦((独)産業技術総合研究所)


●起業したベンチャー企業の中には、引き続き研究開発の継続が必要な企業もある一方で、既にエンジェルから資金提供を受けているもの(1社)、国内大手企業と提携に至ったもの(1社)、海外からの引き合いがきているもの(1社)、数社の取引先に対して売上実績を上げているもの(2社)など、着実に事業運営をスタートしている企業もある。
●国内では、企業においては研究開発テーマの選択と集中が進んだことからオープンイノベーションの必要性が言われているが、その中にあっても、特に大企業はベンチャー企業の研究成果を戦略的にwin-winの関係となるように活用したり、開発をアウトソーシングしたりすることに未だ積極的とは言えず、特に大学発ベンチャーが育ち難い土壌を形成している。また、昨今の経済危機の影響を受け、ベンチャー企業にとって成長の機会を得ることは難しくなっている。そうした状況の中で、強い成長力を有するベンチャー企業を創出する上で大切な点としてこれまでも個別課題に対して指導してきた内容ではあるものの、今回の事後評価においても取り組みの弱いものが散見された。それらの内容を以下に列記する。
・ 競合する技術との差を明確にしたうえで、起業家が広い視野を持って、その技術でしか実現できないマーケットを常に探求する必要がある。
・ 市場を的確に見据えた研究開発を実施し、そのプロセスの中で市場確保に必要な技術について戦略的に特許を出願していくなど事業化に向けた知的財産権の確保が必要である。
・ 経営資源の制約等によりベンチャー企業1社ではできることに限りがあるので、自他の研究開発機関の有する関連技術も取り込み、自らの技術を中心とした製品開発をコーディネートすることも考慮する必要がある。これにより、より強固な製品を実現できる可能性がある。
・ ライフサイエンス分野のうち特に医療機器を目指す場合は、ユーザーである臨床家からの信頼の獲得に向けた開発が必要である。なお、創薬型ベンチャーについては、国内では、データだけ出して頓挫する例があり、良いものは皆でバックアップして育てるという気運がわが国全体に欲しい。
(注:上記のような起業に向けたマネジメント業務をより一層有効なものにするため、既に平成20年度から起業家をサポートする側面支援機関が参加する制度へと制度改革を実施し、平成20年度採択課題から適用しています。平成20年度の制度改革の詳細については、http://www.jst.go.jp/tt/uventure/seido.htmlをご参照下さい。)


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