評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

ダイオキシンの高精度・簡易・迅速分析装置の開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:今坂 藤太郎 (九州大学 教授)
起業家:末石 清昌

3.研究開発の目的

 ダイオキシン類の有毒性が指摘されているが、その測定・分析には長時間を要し、かつ分析費用も高いため、高精度で簡便・迅速に分析できる新規な分析技術が切望されている。本研究開発では、レーザー多光子イオン化でレーザー波長を選択するとともに超音速分子ジェットでスペクトル線幅を狭くすることにより、分析の選択性を大幅に向上させうる“超音速分子ジェット/多光子イオン化/質量分析法(SSJ/MPI/MS)”を開発する。本技術は高価な高分解能質量分析装置が不要で、かつ前処理操作が簡略であるため分析コストも低減できる。土壌や人体血液中のダイオキシン類の測定に広く適用され、生活環境の安全確保と医療技術の向上に貢献する。

4.事後評価内容

A)成果
 GC/MPI/TOF-MSによりダイオキシン類の分析を実現し、JISが要求する0.1pgの感度を達成した。また、二次元表示により妨害物の存在を可視化し、その影響を定量的に評価する方法を考案した。しかし、ダイオキシン類の環境計測に関して国の認定を得るには至らなかった。
本事業期間中の特許出願数:6件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 十分実用に耐えるダイオキシン類の高性能迅速分析装置の開発に成功している。また、そのために新たな工夫、改良がなされ、技術的には目的を達成している。しかし、本事業の発展には、国の公定法としての認定が必須と考えられる。
②知的財産権の確保
 新装置の技術開発に伴う新しい発明をいくつも特許化していることは評価できる。また、国内外に複数の出願されており重要な知財は確保されている。
③起業計画の妥当性
 当初より目的としていたダイオキシン類の分析に関して、公定法としての認定取得への努力を期待すると共に、社会状況の変化もあり、市場、認可、事業内容に係わる計画を練り直す必要がある。
④新産業創出の期待度
 ダイオキシン類などの環境計測は、国の認定が事業化の障害となっている。しかし、他への転用も考えられ、開発された分析法の適用範囲が広げられれば可能性を持っている。
⑤総合・その他
 ダイオキシン類をターゲットとした分析装置の開発は、技術的には達成された。ダイオキシン類分析法として公定法認定が取れれば、早く普及するものと期待できる。一方で、ダイオキシン類の分析以外に適用範囲を広げる努力が必要である。

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