評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

近赤外分光法を用いたウイルス感染症の非侵襲的迅速診断法開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:生田 和良 (大阪大学 教授)
起業家:上畑 滋

3.研究開発の目的

 近年、動物やヒトまたは輸血や血液製剤を介して感染する、鳥インフルエンザ、プリオン病等の新興感染症が次々と出現し、世界的な社会問題となっている。 本研究開発では、世界的にも例がない試みとして、ヒトや動物の各部位を近赤外分光法にて検査することにより、HIV、肝炎ウイルスやインフルエンザウイルス等のウイルスによる感染を、非侵襲的かつ瞬時に確認ができる診断法を開発する。この近赤外分光法を用いた評価・診断技術の確立は、感染症を的確、迅速、安価、かつ非侵襲的に診断できる手法を提供するのみならず、ウイルスワクチン製剤製造時の効率的な品質管理手法開発への展開も期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 本研究開発では、ヒトや動物の各部位を近赤外分光法にて検査することにより、季節性インフルエンザウイルス等のウイルスによる感染を、非侵襲的かつ瞬時に確認ができる感染症診断法の開発を試みた。しかしながら、個体差等の問題を克服できずに、インフルエンザA型、インフルエンザB型、RSVといったウイルス病変を明確に見分ける事ができる実用化レベルの技術確立までには至らなかった。
本事業期間中の特許出願数:0件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 個体差の問題など難易度の高い技術的課題を克服できず、実用化レベルの技術確立には至らなかった。今後は、試作したプロトタイプの検査機を用いて、例えば特定疾患患者の血流量モニタリング等、個体差の問題が少ない分野への応用展開の可能性を追求すべきである。
②知的財産権の確保
 パテントマップを作成し、特許等の知的財産権の拡充に向け、試作機および周辺特許の取得に努めたが、実用化レベルでのウイルス感染症非侵襲診断の技術確立に至らず、新規出願はできなかった。
③起業計画の妥当性
 今後、新たな研究開発体制にて、近赤外分光法の応用に関して基礎研究を更に深めることにより、測定・検査に関わる科学的な根拠を明確にしつつ、これまでの目標であったウイルス感染症診断の分野に限らず、その他の用途で実用化できる可能性があれば、その出口を目指した事業化検討を望む。
④新産業創出の期待度
 これまでの研究開発で得られた知見や問題点を学術的面から整理・考察し直し、その問題点の解決に向けての科学的なアプローチが可能で、加えてウイルス感染症診断の分野以外への応用展開ができれば、新産業創出の可能性はある。
⑤総合・その他
 ウイルス感染症診断法の開発は、科学的に診断・測定の根拠を明確化することが困難である限り、継続すべきではない。本研究開発にてこれまでに蓄積した技術やノウハウを基に、同用途以外への適応を追求し、可能性があれば、その用途にて当該技術を社会還元することを望みたい。


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