評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

クラゲ廃棄物から抽出した新規ムチン生産の企業化

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:丑田 公規 (理化学研究所 ユニットリーダー)
起業家:木平 孝治

3.研究開発の目的

 しばしば大量発生するエチゼンクラゲなどは現状では、発電所や各種工場、漁業関係者に多大な除去作業負担を強いるだけの全く無価値の廃棄物である。本研究開発では、これらエチゼンクラゲなどの各種クラゲを収集して、破砕・減量化/抽出・精製の工程作業を経て有効成分を単離して、食品添加物、生分解性プラスチック、化粧品材料をはじめ、胃腸薬、点眼薬、粘液などの医療品原料として広い用途が期待されるムチンの新規な生産法を開発する。廃棄物の除去作業負担を軽減するなど環境保全に寄与するほか、天然物由来の安全な高付加価値製品の創出が期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 未解決であったクラゲ由来ムチンの構造を解析し、糖鎖構造を明らかにした。NMRや質量分析などを用いた解析により、このムチンの哺乳類ムチンに見られない均一性や純度の特徴を見いだした。大量製造方法や精製方法、品質管理方法は大幅に改善し、エンドトキシンを軽減するなど、高品位のムチン生産も可能になった。用途開発については、関節液補充剤、界面活性剤など、いくつか将来につながる知見が見いだされた。これらの成果を基に平成21年4月に株式会社海月研究所を設立した。
本事業期間中の特許出願数:1件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 ムチンの構造解析及び素材の精製方法、品質管理方法について目標を達成できた。応用についても、関節液補充剤など生体への利用の可能性が見出されたことは、今後の開発に繋がるものと考える。今後、クラゲの大量処理の技術確立と大量生産時の品質の安定化が課題と思われる。
②知的財産権の確保
 知財に関してよく検討されているが、将来可能性のある応用分野についても知財の確保に努めて欲しい。
③起業計画の妥当性
 開発体制は整っているが、まだ、研究開発段階にあり、低コスト化あるいは高付加価値化の、いずれかが必要である。しかし、既に事業会社から支援を受け活動を始めており、今後の実用化が期待できる。
④新産業創出の期待度
 発電所や各種工場、漁業関係者で厄介者扱いされているクラゲから有効物質を抽出でき、低コストで大量に処理可能となれば、クラゲ由来ムチンの用途の多様性から新産業創出の期待がある。
⑤総合・その他
 発電所や各種工場、漁業関係者などに多大の損害を与えるエチゼンクラゲなどを資源化する研究であり、時間はかかるが、実用化が期待される。特に医薬分野での利用は魅力的な事業分野である。クラゲの被害対策として、すぐにでも大量処理技術の確立が望まれる。

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