評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

ガスボンベを用いない希薄標準ガスの簡便な発生・調製技術

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:田中 茂 (慶應義塾大学 教授)
起業家:白井 達郎

3.研究開発の目的

 各種有害ガスの計測機器を校正するために希釈標準ガスを規格化・標準化する努力がなされている。しかし、多くの有害ガスは反応性が高いため不安定で、ボンベ容器内で所定濃度を保つことができず、長期間一定濃度の希薄標準ガスを入手することは困難な状況にある。本研究開発では、多孔質テフロンチューブを境界面とする拡散スクラバーを用いて、対象ガスを溶解している溶液中から空気中へとガスが拡散することを利用して、サブppmv(10-6 以下)レベルの希薄標準ガスを直接的に発生・調製できる簡便な装置を実用化する。本研究は、有害ガスに関わる環境技術をはじめ各種計測技術の進歩発展に大きく貢献できる。

4.事後評価内容

A)成果
 ガス成分のみを効率よく捕集する独自技術の拡散スクラバー法の原理を応用した装置を開発し、ガス発生溶液からサブppmv濃度レベルの希薄標準ガスを簡便に調製する装置を世界で初めて実用化した。この技術によって、高圧で充填された重く危険なガスボンベを用いることなく、希薄標準ガスを簡便な方法で安定に発生・調製することができる。そのため、ガスボンベを使用する従来法のような大掛かりな機材が不要となり、各種排ガス分析計の校正などの作業性や安全性を大きく改善した装置の実用化が図れた。これらの成果を基に平成21年6月に株式会社STEAを設立した。
本事業期間中の特許出願数:1件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 極めて単純な原理に基づき、多種類の希薄標準ガスを比較的容易に得られる装置が実現できている。特に長時間かつ大量に供給できるため、暴露実験には有用と思われる。
②知的財産権の確保
 ビジネス展開には、特許出願が少なく知財の確保が不十分である。更に知財を固める必要がある。
③起業計画の妥当性
 研究機関が主な販売先となるので、研究従事者への働きかけが重要と考える。また、分析機器販売会社とのタイアップも必要で、需要の変化に即応できるよう協力会社との協業態勢を構築しておく必要がある。
④新産業創出の期待度
 今後、様々な分野で利用でき、事業計画以上の市場が望める。
⑤総合・その他
 これまでにない標準ガスの取得方法なので、研究者へのPRと、装置の取り扱いやすさ、応用の幅広さ、多様な試料への対応が求められる。

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