評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

金磁性ナノ粒子をコア技術とする医療・診断・分析ツールの実用化

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:清野 智史 (大阪大学 講師)
起業家:樋口 堅太

3.研究開発の目的

 近年、ゲノミクスやプロテオミクス等のポストゲノム研究用ツールとして、より高感度で高選択性を有する磁気ビーズの開発が注目を集めている。本研究開発では、磁性酸化鉄ナノ粒子の表面に数ナノメートルの金粒子を多数担持させた金磁性ナノ粒子を基に、酵素・抗体・DNA 等を表面固定して、従来の磁性ビーズより遙かに優れた酵素反応・抗原の検出・DNA/RNA検出と精製能を持つ磁気ビーズを開発する。また更には、この磁性ビーズを用いたペプチドライブラリーの構築や遺伝子導入補助試薬、MRI造影剤等の生体内応用等への展開も行う。これらの技術は、医薬研究、分子生物学や生化学などの生命科学基礎研究領域のコアツールとなり、高度医療の実現に貢献する。

4.事後評価内容

A)成果
 金磁性ナノ粒子をコア技術とした医療・診断・分析ツールの開発を行い、当初想定した各用途に対して金磁性ナノ粒子を最適化する技術と粒子の量産技術を、ほぼ計画通りに確立した。このうち、試薬用途ではタンパク質相互作用検出システムや遺伝子導入補助試薬については市場投入できるレベルまで到達し、生体内用途であるMRI造影剤についても要素技術を概ね確立し、今後の実用化展開が期待できるところまでに至った。尚、本研究成果を基にして、平成21年5月に株式会社アクト・ノンパレルを設立した。
本事業期間中の特許出願数:7件
B)評価
@研究開発計画の達成度
 当初想定した各用途に対して金磁性ナノ粒子を最適化する技術や粒子の量産技術についてほぼ計画通りに確立し、用途毎に試薬会社や製薬企業等との販売提携・共同開発ができるレベルまで到達したことは高く評価できる。
 今後も企業の維持・発展に向けて、既存技術に対する優位性をより一層明確にし、ユーザーのニーズにあったカスタマイズ化や収益性の高い商品企画やビジネスモデル構築等に対する継続的な努力が望まれる。
A知的財産権の確保
 本研究開発の成果から、当初の想定用途に関する周辺特許の基本出願を終えているが、他者の参入を阻止する為に、更なる権利強化(周辺特許・応用特許出願等)が望まれる。
B起業計画の妥当性
 遺伝子導入補助試薬や磁気分離/精製試薬を、大手試薬会社を通じてベンチャー設立初年度より市場投入するべく、具体的な販売準備を進め、その他の事業も試薬会社や臨床検査企業との共同研究を通じて事業化展開を狙う基本事業方針は妥当である。但し今後の発展の為には、市場分析の精査に基づく高付加価値製品開発と収益モデルの再構築が望まれる。
C新産業創出の期待度
 開発した金磁性ナノ粒子のコア技術を基にした磁気イムノクロマトシステムや新規MRI造影剤は、既存技術では達成できない“標的タンパクの高感度定量分析やそれを用いた高度医療の実現”に貢献するものであり、開発に成功すれば新産業創出が期待される。
D総合・その他
 本研究課題は、ナノとバイオの異分野融合領域としての困難さがあったものの、研究者らの努力により、研究目標をほぼ達成できた。しかしながら、設立したベンチャーを今後維持・発展させるためには、既存技術に対する優位性をより一層明確にし、ユーザーのニーズにあったカスタマイズや収益性の高い商品企画やビジネスモデル構築を心掛ける事が大切である。これまでに得られた技術成果を、起業ベンチャーを通じて確実に社会に還元して欲しい。

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