評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

動的な仮想回路による超高速hw/sw複合システムの研究開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:関根 優年 (東京農工大学 教授)
起業家:実籾 富二男

3.研究開発の目的

 マイクロプロセッサ上のソフトウェアとASIC(特定用途向け集積回路)上のVLSI 回路を用いた並列分散処理が望まれているが、大規模・高集積化に伴い、従来の単一プロセッサで実行するプログラムだけでは高性能・高速処理が困難となっている。本研究開発では、動作処理速度の向上を図ったFPGA(Field Programmable Gate Array)と、プログラムから直接制御可能な実LSI 上で動作する仮想回路として、画像処理、音声認識等の各種用途向け基本回路とその制御ソフトウェアを開発する。本技術により、PC及びインターネットの処理能力が数十倍増加し、動画配信ビジネスが急速に立ち上がる画像処理産業、ゲーム業界、PC 業界、半導体産業等の発展に広く貢献する。

4.事後評価内容

A)成果
 ハードとソフトが渾然一体となったアーキテクチャによるハード・ソフト複合システムを開発し、実証モデルとしてCMOSセンサーからの画像を実時間でWavelet変換する圧縮機能、ステレオ・マッチングによる画像認識機能を実装し、仮想回路によるア−キテクチャの有効性が確認出来た。この研究成果を活用して、画像を実時間表示できるインターネット・ブースタ−、机上型のパーソナルスパコンなどを試作開発し、仮想回路作成ツ−ルSystem Development Kit(SDK)も開発した。これらの成果をもとに、平成20年2月にヴオ−ネット株式会社を設立した。 
本事業期間中の特許出願数:3件
B)評価
@研究開発計画の達成度
 一部開発遅れはあるものの、インターネット・ブースター開発に注力することで概ね計画通りに目標成果を達成している。また、仮想回路作成ツールSystem Development Kit(SDK)の開発も実施できている。
A知的財産権の確保
 基礎となる特許はすでに権利化されており、出願も順調に推移している。
B起業計画の妥当性
 インターネット・ブースター、SDKなどを製造販売する起業計画は妥当と考えるが、タ−ゲット市場の環境が目まぐるしく変化しているので、人材育成と利益確保、資金調達の面で足腰の強い会社に育て上げる事が望まれる。
C新産業創出の期待度
 インターネット・ブースターの利用が広がるようであれば、ビジネスとしても成功すると思われる。仮想回路技術とPCとの組み合わせは魅力があるが、競争の激しい分野でもある。
D総合・その他
 ネット動画の高精細化、大画像化は競争の激しい分野であり、事業を維持、拡大するための人材・利益・資金が確保出来るように、製造・販売会社との連携なども視野に入れ、今後の事業方針や開発目標を明確にすることが望ましい。SDKシステムを大学・企業に配布してユ−ザを増やすことはこの分野の事業推進に必須のことと思われる。

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