評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

高速ビジョンモジュール実用化の研究開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:石川 正俊 (東京大学 教授)
起業家:田渕 紀雄

3.研究開発の目的

 画像処理の産業分野では、動画像で通常利用されているフレームレートが30fps程度と低速であり、高性能化あるいは新規応用分野開拓に向け高速ビジョンへの需要が高まっている。本研究開発では、独自に提案した受光センサと処理回路のワンチップ化を可能とするビジョンチップアーキテクチャに基づき、市販高速カメラとカスタム処理回路の組み合わせによって高速ビジョンモジュールの実用化開発を行う。本成果により、汎用市場での小型化・低価格化にも対応できるLSIの実現が容易になり、現状の画像処理産業応用分野に大きな技術シフトを起こすことが期待できる。

4.事後評価内容

A)成果
 高速ビジョンをリアルタイムに処理できる高速ビジョンモジュ−ル(2モデル)を開発した。ひとつは、導入の容易さを考慮して汎用のパソコンで動作するモジュールとした。もうひとつは、FPGAを用いたボ−ドタイプの高速ビジョンモジュ−ルであり、1000frame/sec画像をコマ落ちなしで処理できる性能を実現している。検査装置などの応用システムを想定した実証実験も行い、関連するソフトウェア並びに評価システムも合わせて開発した。これらの成果をもとに、平成21年1月に株式会社エクスビジョンを設立した。 
本事業期間中の特許出願数:1件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 研究開発は、概ね良好で目標を達成している。技術的な達成レベルも高い。この技術成果に適した応用分野を確定し、事業化に繋げることが望まれる。
②知的財産権の確保
 新規出願が1件であり、多少の不安が残る。今後の資金調達や事業拡大の武器となりうる特許の出願を期待する。
③起業計画の妥当性
 ユ−ザ企業との共同開発を通した顧客開拓、売上確保は妥当と考える。本事業の技術成果は画像処理分野で高く認められていることから、協業先を見つけて事業化の実績を積み上げることが望まれる。また、資金調達の強化と顧客拡大を視野に入れた中期的な事業展開も期待する。
④新産業創出の期待度
 検査装置やFAロボットを当面のタ−ゲット市場としており、初期市場としては妥当である。1000frame/secの高速ビジョンモジュ−ルを必要とする潜在ニ−ズが顕在化すれば、その市場での製品の波及性は高いと考える。
⑤総合・その他
 技術面の成果は高く評価できるが、市場拡大と利用価値のアピ−ルが出来るように事業面での努力を期待する。強力な協業先との連携も視野に入れた事業強化も必要である。

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