評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

高感度赤外光FETおよび赤外DFBレーザによるハイブリッド分光・撮像モジュール

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:小倉 睦郎 (独立行政法人 産業技術総合研究所 主任研究員)
起業家:長崎 健

3.研究開発の目的

 1μm 以上の波長において、アレイ状に集積可能な光ディテクタは、感度や応答速度等が十分ではなく、2〜5μm 帯における発光源においても、狭スペクトラム発振が可能なDFB(分布帰還型)レーザの作製は困難であった。本研究開発では、長波長帯で作製が容易なフォトトランジスタアレイと制御用シリコンLSI とをハイブリッド実装した分光・撮像モジュールを開発する。さらに有害ガスのリモートセンシング装置や生体内グルコース濃度等を高精細画像表示する無侵襲診断装置への展開も図る。高感度計測モジュールを安価に供給することが可能となり、日本でやや立ち遅れている赤外線装置技術で優位性を確立し、赤外線利用分野の市場活性化と世界市場への展開が期待できる。

4.事後評価内容

A)成果
 雑音源である暗電流の発生源となる表面電流をブロックする新しいフォトトランジスター構造を設計し、この試作開発を進めた結果、暗電流を従来の100分の1以下と画期的に低減させ、従来の数千倍の増幅率と高い光検出感度を得ることができた。さらに、可視から近赤外域で使われる光ディテクタは、従来は2種類のセンサを必要としていたが、本技術ではセンサを一つにすることができた。1V程度と低い電圧で動作するという特徴もある。これらの成果をもとに、平成21年4月にアイアールスペック 株式会社を設立した。 
本事業期間中の特許出願数:5件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 可視から近赤外域までの帯域に於いて高い感度と雑音の低減を実現し、近赤外帯域の成果目標を達成している。また、近赤外帯域のサンプル品提供によるマ−ケティング活動も開始している。中赤外帯域の開発はやや遅れたが、今後も開発を継続し、製品群を増やす計画を持っている。
②知的財産権の確保
 基本構造および電流ブロック構造などの出願が完了し、必要十分な知財確保が出来ている。
③起業計画の妥当性
 有望顧客にサンプルを配布して、その性能評価と、適用製品や価格設定に関するヒアリングを行い、起業計画を検証することが望ましい。高感度性能が活かされる応用市場の開拓を期待する。
④新産業創出の期待度
 分光分野以外にも、たとえば、脳活動の計測や糖度計などの理化学計測器への展開の可能性が見られる。ニッチな分野ではあるが、高い市場占有率が期待できる。
⑤総合・その他
 サンプル配布による顧客評価を実施し、起業計画の規模、実用化開発のスピ−ド、資金計画などを検証する事が望ましい。技術優位性を活かせる市場を開拓し、事業の着実な育成と拡大を期待する。

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