評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

光トライオードを用いた負帰還光増幅器の開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:前田 佳伸 (近畿大学 准教授)
起業家:辻 正人

3.研究開発の目的

 エレクトロニクスにおいて,アナログ電子回路のほとんど全ては負帰還増幅器で構成されているが,光エレクトロニクスの分野では未だ負帰還光増幅器が実現されていない。本研究開発では、エレクトロニクスにおけるトランジスタや三極管が有する信号増幅作用を全光信号で実現する、相互利得変調を用いたタンデム波長変換型の光トライオードのモノリシック化と高速・低雑音化を図る。さらに、3端子素子であることを利用して負帰還光増幅器、光リミッタ機能付き光増幅器等を開発する。出力信号の非線形歪の低減および利得の安定が得られ、波長変換素子,光バッファメモリ素子といった全光通信産業を支えるキーテクノロジーへの展開も期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 光信号で光信号を制御する光トライオ−ドおよび低雑音な負帰還光増幅器技術を開発した。短期間で製品化が期待できるファイバ型CRDS(キャビティリングダウン)分光分析システム、負帰還半導体光増幅器モジュ−ルの製品試作も出来ている。これらの成果をもとに、平成21年4月に光トライオ−ド株式会社を設立した。
本事業期間中の特許出願数:4件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 光トライオ−ドおよび低雑音な負帰還光増幅器の研究開発はほぼ順調に進捗した。今後、技術優位性が活かせる市場を新たに開拓することが望まれる。
②知的財産権の確保
 開発技術の全般にわたって出願されており妥当である。
③起業計画の妥当性
 分光分析システムを当面のターゲット市場とすることは妥当と考える。次の段階として、本技術を光通信に応用して優位性を活かすことも検討すべきである。電気通信事業者の研究所に光トライオ−ド技術、光増幅器技術を提供することもひとつの選択肢であると思われる。
④新産業創出の期待度
 技術の進歩性は評価できるが、既存技術の代替としての事業展開では事業育成・拡大に時間が掛かると思う。電気通信事業者との共同開発や技術販売もひとつの方策であり、通信市場への用途展開が実現すれば、新産業創出が期待できる。
⑤総合・その他
 技術成果は学術面で評価できるが、事業を拡大させるためには電気通信事業者との強い連携が必要と考える。ただし、光通信ビジネスに参入するのであれば、粘り強い事業運営が必要である。

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