評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

環境改善を指向したマイクロカプセルの調製と製造

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:幡手泰雄(鹿児島大学教授)
起業家:根津修美雄

3.研究開発の目的

 本研究開発では、昆虫フェロモンを多孔質ポリウレタン骨格に内包させた害虫駆除用と乳酸菌や酵母などの有用微生物を内包させた土壌改良用の2種類の農地用カプセルとCO2削減、消エネルギーを目的とした冷熱蓄熱カプセルを開発する。農地用のカプセルは適度の徐放性により、効果を持続させる上に、自らは土壌中で生分解されて残留しないといった優れた特長が期待され、また、冷熱蓄熱カプセルは従来の氷蓄熱式空調システムよりも効率的に熱量を貯蔵できる技術として期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 昆虫フェロモンや有用微生物を内包するマイクロカプセルについては撹拌などの反応条件を変化させることにより要求スペックに合ったカプセルをパイロットプラントレベルで調製する方法を確立し、性能確認のためのフィールドテストを実施した。冷熱蓄熱カプセルに内包するための蓄熱材ついては2種類の有用脂肪酸を種々の割合で混合して必要な特性を有する固溶体を見出した。これらの成果を基に(株)MCラボを設立した。
本事業期間中の特許出願数:2件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 冷熱蓄熱用マイクロカプセルを除いた昆虫フェロモンや有用微生物を内包するマイクロカプセルについては製造に成功した。フィールドテストも行われており製品化が期待できるレベルまで研究開発が進んだと考えられる。今後は大量生産技術の開発を期待する。
②知的財産権の確保
 基本特許の出願はなされているが、十分とはいえない。多様な応用を目指した多くのマイクロカプセルの開発であるので、特許マップを作成することにより、万全な知財権を確保することが重要である。
③起業計画の妥当性
 農薬としては、かなり高価な部類に入ると思われる。フィールドテストにより、競合する他製品に対する優越性を明確にする必要がある。起業したにもかかわらず販売実績が未だ挙っておらず、積極果敢な市場開拓が望まれる。
④新産業創出の期待度
 マイクロカプセルは様々な分野での応用が期待できる技術であるので、更なる低コスト化と生産効率向上に努めるとともに、農業分野及び省エネ分野での市場を開拓していくことが望まれる。
⑤総合・その他
 すでに製造に成功している昆虫フェロモンおよび有用微生物内包のマイクロカプセルは、従来にない商品である。量産化努力によりコストダウンを図るとともに、市場開拓を急ぐ必要がある。

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