評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

ユビキタス通信IC用のマイクロ燃料電池の開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:渡辺 正夫 (室蘭工業大学 特任教授)
起業家:駒崎 慎一

3.研究開発の目的

 ICカード、RFタグ等に内蔵される高周波ICへどのようにして電力を供給するかが大きな技術課題となっている。本研究開発では、特殊なアルミ微粒子を使用して空気中の水分子を分解し、純粋水素ガスを製造するなどの優れた特徴を有する安価で、常温動作の可能なマイクロ燃料電池を開発し、更にこれをICタグへ実装する技術の開発を行う。

4.事後評価内容

A)成果
 平面状のマイクロFCを試作し、ICタグのボタン電池の代わりにこれを用いることにより、その出力電力がICタグを動作させるに十分であることを確認した。しかしながら燃料電池評価装置を使用して行った試験ではマイクロFCの寿命は不十分であったため、複数のアルミ微粒子パックを準備して時間差をもたせて水を供給することで解決を試みている。これらの成果を基に株式会社ハイドロクラフトを設立した。
本事業期間中の特許出願数:2件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 本研究開発の本来の目的である「水蒸気からの水素発生技術」に関しては水素発生の確認はできたものの、発生速度 を制御する技術の確立がなお必要である。また電子部品として求められる信頼性試験がほとんど行われておらず、電池としての寿命も不十分と思われる。しかしながら、今後の実用化に向けた課題が具体的に把握され、そのための研究開発が進められている。
②知的財産権の確保
 基本特許の出願はなされているが、多くの会社と関係を持っているので、特許マップを作って権利関係を明確にし、戦略的な特許出願を進める必要がある。知財を活用してロイヤリティーを適切に得る方法についても更なる検討が必要である。
③起業計画の妥当性
 ICタグへの応用を中心として事業を進めるのならば、現在行われている「ボタン電池」および「無線電力供給」と比較した利点を定量的に示す必要がある。また、多くの会社ごとに部分的な技術を供与している状況であるので、権利確保のための対策をたてるべきである。
④新産業創出の期待度
 多くの会社が注目し、共同開発を進めているのは、本技術に対する期待が大きいためである。提案のマイクロFCが完成すれば、社会的なインパクトは大きい。
中長期的な開発計画で進めている人体装着用電池なども画期的製品として期待できる。
⑤総合・その他
 わが国のFC事業の立ち上がりが遅れている現状からして、本開発においても、焦って応用展開を考えるよりも、マイクロFCそのものを着実に完成することが肝要と思われる。また、用途に関しても“ユビキタス”のみにこだわらず、携帯電話など対象を広く考えるべきである。確固たるコア技術を有する自立性のある企業にするための事業計画を策定して戴きたい。将来性のある技術で、大型市場に育つ可能性を持っている。

■ 目次に戻る ■