評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

環境リサイクルを実現させる易解体ねじの研究開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:吉田 一也(東海大学 教授)
起業家:宮嵜 陸朗

3.研究開発の目的

 家電リサイクル法や自動車資源有効利用促進法が施行され、資源の有効活用とクリーンな環境保全に向けて官民一体となった取り組みが始まっているが、廃家電製品等の解体作業の非経済性と不合理性が資源リサイクルを行う際の大きな障害となっている。本研究開発では、加熱のみで形状記憶合金ワッシャが開き、自発的に数秒で解体して材料資源リサイクルを容易にする画期的な「易解体ねじ」を開発する。「易解体ねじ」の実用化・普及によりリサイクル企業での解体作業工程は大幅に効率化され、「リサイクル社会」の達成に大きく貢献する。

4.事後評価内容

A)成果
 多様なサイズのタッピングおよびモジュールタイプの易解体ねじを製造した。また、商品ごとの指定締結力の確保や材料の変態温度のばらつきと解体性との関係を明示するなど、利用面からの品質保証技術も確立した。さらにワッシャ加工およびワッシャとねじとの組み付けの自動機の開発により、量産化とコスト低減に挑戦し、ほぼ計画通りの成果を得て、実用化の目処をつけた。これらの成果を基に株式会社ヨシダ・テックを設立予定。
本事業期間中の特許出願数:7件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 研究開発は順調に進捗し、ねじサイズの多様化、解体温度の精度向上、締結力の向上等、計画通り達成され製品はほぼ完成した。
②知的財産権の確保
 14件の原権利の権利確定に努力するとともに7件の新特許を出願した。特許出願は十分になされているようであるが、今後予定している海外生産などにおいて、技術の流出などへの対応策が万全であるか更なる検討が必要である。
③起業計画の妥当性
 思わぬ原材料の高騰から、製品の採用は思ったように伸びていないが、信頼できるメーカーからの協力を得て、一部製品に採用されており、事業的にも成功する可能性がある。広い領域の製造業で利用可能であるので、如何に認知度を上げるかが大切と思われる。
④新産業創出の期待度
 新規な開発製品に採用されるためのマーケティングを行うことにより、新しい市場を創造することも可能である。循環型社会を実現するための商品を提供する事業であり、ある程度の時間は要するものの、一般の理解を得られるものと期待される。
⑤総合・その他
 目的とした技術は完成の域に達しているが、更なるコスト削減と解体システムの開発を進めることが必要である。事業の成否は、製品の認知度をいかに高めるかにかかっているが、業務用の機器で一定期間に回収される分野を探すとともに、JIS化に努力して戴きたい。

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