評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

静電アクチュエータを用いたアクアリウム・ロボットの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:樋口俊郎  (東京大学 教授)
起業家:権藤雅彦

3.研究開発の目的

 薄型でしなやかな静電アクチュエータが、世界にさきがけ開発代表者らにより考案されている。本研究開発では、この静電アクチュエータを用いて水槽内で自在に泳ぎ回る魚を模した「アクアリウム・ロボット」を開発する。給電線を不要にし操作性を向上させるなど実用化のための課題に取り組む。

4.事後評価内容

A)成果
 小型のアクアリウムロボットを使って無線給電が可能であることを確認した。開発の過程で得られた成果を基に、移動子部分に給電線を接続する必要がないという魅力的な特長をもつ静電エンコーダを開発した。この静電エンコーダはμmオーダーの高い測定分解能を持ち、その固定子と移動子がフィルム状であるために柔軟性があるうえ、厚さが0.2mmと薄いので、今まで搭載できなかったような狭い隙間に設置したり、回転シャフトなどに円周状に配置することも可能である。これらの成果を基に株式会社青電舎を設立した。
本事業期間中の特許出願数:4件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 当初の開発目標であったアクアリウム・ロボットの実用化は達成できなかったが、研究開発過程で得られた知見に基づいて開発された静電エンコーダは種々の特長をもつユニークな技術である。
②知的財産権の確保
 静電エンコーダに関する特許の確実な確保が重要である。権利拡充ための特許戦略を至急実行する必要がある。
③起業計画の妥当性
 静電エンコーダは回転シャフト測定用としても使用可能である等、多くの特徴を有しており、市場ニーズも高く有望な技術と期待される。今後は実用化に向けて、具体的な用途やパートナーを絞り込んでいくことが必要である。
④新産業創出の期待度
 静電エンコーダは多くの特徴を持つユニークな技術であり、技術に対するニーズは幅広いと思われる。着実に市場に浸透すれば新しい市場分野への展開も期待できそうである。
⑤総合・その他
 アクアリウム・ロボットは実用化には至らなかったが、静電エンコーダはユニークで優位性がある技術である。実用化へ向けて、広く市場開拓を行うとともに、周辺特許も含めて知的財産権の権利化範囲を広く確保するための対策を急ぐ必要がある。

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